企業法務は未経験でも目指せる?仕事内容や求められるスキルを紹介

法律知識を生かせる仕事の1つとして、「企業法務」が挙げられます。企業法務とは、どのような業務を担当するのでしょうか?一般的な定義や年収、求められることが多いスキル・資質を紹介します。役立つ資格や疑問についても、見ていきましょう。

企業法務とは何か

六法全書

(出典) pixta.jp

「企業法務」は、事業経営において重要な役割を持つ仕事です。具体的に、どのような業務を指すのか確認しましょう。併せて、企業法務担当者の一般的な年収も紹介します。

事業活動における法律関連業務の総称

企業法務とは、企業が事業を行う上で発生する、法律問題に関する業務全般を指します。法律の知識が必要な業務は、基本的に企業法務に該当するため、内容は幅広いといえるでしょう。

社内で企業法務を担当する場合、「法務部」「法務課」のような部署に所属するケースが一般的です。

会社や労働に関する法律のほか、何らかのトラブルが起きたときには、民法も関わってくるでしょう。企業法務を担当する場合は、携わる業務に関連する法律の知識が求められます。

一般的な年収は約478万円

厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagによると、企業法務担当の年収は約478万円とされています。法律に関連しない事務作業を担当する「一般事務」の場合、年収は約510万円となっており、企業法務担当の年収はやや低く感じられるかもしれません。

しかし、企業法務担当者には有資格者もいます。企業法務を担当する司法書士・弁護士の場合、職業は「司法書士」「弁護士」として分類されることが多いでしょう。

例として、job tagによると司法書士の年収は約1,122万円です。同じように企業法務に携わっていても、高度な専門性を求められる業務の場合は年収が高くなります。

企業法務担当として年収アップを目指す場合は、国家資格の取得を考えておきましょう。

出典:企業法務担当 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

出典:一般事務 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

出典:司法書士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

企業法務の主な種類と仕事内容

書類チェック

(出典) pixta.jp

企業法務には、いくつかの種類があります。主な分類である「予防法務」「臨床法務」「戦略法務」の特徴と、具体的な仕事内容について確認しましょう。

全ての業務に携わるとは限りませんが、法務担当者が関わる業務を理解しておくことで、就職・転職を検討しやすくなります。

トラブルを防ぐ「予防法務」

予防法務は、主にまだ発生していないトラブルを未然に防ぐための業務を指します。以下のような業務が挙げられるでしょう。

  • 社内規定や契約書の作成・チェック
  • 労働関連の管理
  • 知的財産の登録や重複チェック

どの業務も、トラブルが起きる前に規定や契約を定めることによって、法律問題に発展するのを防ぐ目的で行われます。

また、問題が発覚した場合に速やかに対応することで、トラブルが大きくなることを防止するのも予防法務の大切な役割です。

発生した法律問題に対処する「臨床法務」

臨床法務は、すでに発生した法律問題に対処する業務を指します。「対処法務」と呼ぶケースもありますが、内容は同じです。主な業務には、以下のようなものがあります。

  • 法律に関連するクレーム対応
  • 訴訟対応
  • クレームや訴訟に関わる法律相談

臨床業務は、すでに問題が大きくなっている段階で行われるため、顧問弁護士や外部の専門家に相談しながら進めるケースが多くなります。

高度な法律知識や対応が必要な場合は、社内の法務担当者ではなく、専門家に業務を任せることもあるでしょう。

企業に利益をもたらす「戦略法務」

戦略法務は、法律に関わる分野で企業経営をサポートする業務を指します。「法律に関わる分野」は幅広く、さまざまな業務が該当するでしょう。例としては、以下のような業務が挙げられます。

  • M&Aのサポート
  • 海外進出の準備や法律面の整備
  • 新規事業立ち上げに関する業務

M&Aでは、契約書の確認や合併・買収に関する法務を担当します。海外進出では、国際的な法務知識が求められるでしょう。

新規事業の立ち上げでも、会社設立や契約書の確認、規定の作成などさまざまな業務があります。

企業法務担当者に求められるスキル・資質

デスクワーク

(出典) pixta.jp

企業法務担当者には、法律に関する知識以外に、さまざまなスキル・資質が求められます。仕事をする上で役立つスキル・資質を、見ていきましょう。

リスクを察知する能力

法務担当者は、法律面でのリスクを事前に察知する能力が求められます。特に予防法務に携わる場合、法律的な問題や契約書のミスなど、細かいリスクに気付かなければなりません。

潜在的なリスクを発見するには、幅広い法律知識も必要です。知識に加えて、危機管理意識やミスを軽減する業務体制を取れるかどうかも関わってきます。

普段から細かいことによく気付き、どのようなリスクがあるかをしっかり把握・分析できる能力が、企業法務の仕事には欠かせません。

他者と連携するためのコミュニケーション能力

企業法務に携わる人材は、主に法務部で働きます。法務部は、他部署や専門家と連携を取る機会も多いため、コミュニケーション能力が求められるでしょう。

また、経営層や現場の責任者と話をする機会が多くなるのも特徴です。経営層や責任者の希望に対し、法律的に問題がないかを分かりやすく説明しなければならない場面もあるでしょう。

相手の立場に立って落としどころや方向性を探っていくには、人の話をじっくり聞き、自分の思いを伝えるための能力が必要です。法律だけでなく業界の知識も持ち、専門家との間を取り持つ役割が求められます。

文書作成スキルと知識

企業法務では、書類作成やチェックの業務が多くなります。パソコンや事務処理ソフトを使用し、文書の作成をしなければなりません。

特に、契約書レビューや社内規定など、専門的な書類作成が中心となります。文書作成のスキルに加えて、専門的な書類を作成するための知識も求められるでしょう。

一定の速度で完成度の高い書類を作成するには、高い文書作成スキルが必要です。

企業法務への転職に生かしやすい資格

資格の勉強

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企業法務への転職を目指す場合、知識・経験をアピールできる専門的な資格を持っている方が有利です。どのような資格を取得しておくべきなのか、生かしやすい資格を紹介します。

法律知識を証明するための国家資格

法律の知識を証明する国家資格には、司法書士・弁護士・行政書士などがあります。取得しておけば、企業法務担当としても活躍できるでしょう。高度な業務に対応できる資格を持っていれば、キャリアアップや企業からのオファーも期待できます。

税の分野であれば、税理士資格も生かせるかもしれません。いずれにしても、実際に携わる分野や業務内容によって、必要な資格は異なります。

必ずしも国家資格が必要というわけではありませんが、高度な専門業務やキャリアアップを目指すなら、国家資格の取得を検討しましょう。

出典:法務省:司法書士試験

出典:法務省:司法試験

出典:一般財団法人 行政書士試験研究センター

出典:税理士試験|国税庁

ビジネス関連の資格

ビジネス関連の資格の中にも、企業法務に役立つものがあります。例えば、公認会計士や中小企業診断士など、主に戦略法務に携わる上で役立つ資格も多いでしょう。

また、ビジネス実務法務検定試験のように、企業法務の経験・知識を証明できる検定もあります。ビジネス実務法務検定試験は、特別な受検資格が定められていないため、これから転職を考えている人にも向いています。

そのほか、携わる業務によっては個人情報保護士や知的財産管理技能士のように、情報や企業の財産を守るための資格も取得しておくと有利です。

出典:公認会計士とは|日本公認会計士協会

出典:中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です

出典:東京商工会議所検定サイト | ビジネス実務法務検定試験®

出典:個人情報保護のエキスパートを育てる 個人情報保護士認定試験│全日本情報学習振興協会

出典:国家試験 知的財産管理技能検定 トップ

語学関連の資格

外資系や国際法務を扱う企業で働く場合は、語学関連の資格が役立ちます。全ての企業法務に必要な資格・知識ではありませんが、目指す業界によっては検討しましょう。

英語の語学関連資格としては、TOEICやTOEFLがあります。どちらも、試験を受けて高いスコアを得ると、評価につながるでしょう。

スコアの目安は企業によって変化するため、一概にはいえません。TOEICの場合、中には700~800点以上を求める企業もあります。

出典:【公式】TOEIC Program|IIBC

出典:TOEFLテスト 国際基準の英語能力測定試験 | TOEFLテスト日本事務局

企業法務の仕事に関するQ&A

Q&A

(出典) pixta.jp

企業法務への転職を検討している場合、求人の傾向や転職後のキャリアプランが気になる人もいるでしょう。それぞれ、Q&A方式で紹介します。

未経験でも企業法務の求人に応募できる?

企業法務の仕事には、原則必須資格はありません。未経験であっても、基本的には応募できます。

しかし、企業法務の求人には専門性の高い業務もあり、経験者や有資格者を求めるケースも多い傾向です。求人ごとに、募集要項や必須条件を確認しましょう。

未経験であっても、法学部卒業生や法務に近い仕事の経験を持っている人の方が、応募できる求人は多いといえます。

まずは、未経験でも応募できる求人を見つけた上で、できるだけ若いうちに転職を検討する方が、転職成功の可能性は高くなります。第二新卒やポテンシャル採用が見込める若いうちの転職では、それほど経験を重視しない企業も多いためです。

企業法務のキャリアプランの例は?

企業法務の仕事に就くと、まずは実務を通して経験を積むことになります。業務内容は携わる分野によって異なりますが、オフィスワークが中心となるでしょう。

ある程度の経験を積んで、自分の裁量で仕事が進められるようになると、いくつかのキャリアプランが見えてきます。そのまま現場で実務の経験を磨き、スペシャリストとしてステップアップする道もあるでしょう。

そのほか、マネジメント領域や管理職を目指し、部署をまとめる仕事もあります。管理職を目指す場合、いずれは経営に近い場所で高度な専門業務を任される可能性も高いでしょう。

企業法務は法律面のサポートを担う仕事

法務関係者

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企業法務担当者は、事業活動に関連する法律問題におけるサポートを担います。法律の知識や専門的な書類作成など、幅広いスキルが求められる仕事です。

経験者や法律の専門家を募集している求人が多いものの、未経験から目指せるものもあります。これから転職を考えているのであれば、自分の経験・スキルに見合った求人を探すのがポイントです。

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