医師や看護師・薬剤師など、医療機関ではさまざまな専門職の人が働いており、医療従事者と呼ばれています。医療従事者を目指す人は、代表的な職種や仕事内容、将来性を確認しておくと役立つでしょう。特徴を押さえてから転職を検討するのがおすすめです。
医療従事者の種類はさまざま
医療従事者に分類される職種には、さまざまなものがあります。代表的な職種について詳細を確認しましょう。国家資格を取得しなければならない職種が多いのも特徴です。
医師
医療従事者の代名詞ともいえる職種が医師です。医師は大きく臨床医と研究医に分けられ、それぞれ以下の業務に携わります。
- 臨床医: 病院や診療所で患者の診療に携わる
- 研究医: 大学などの研究機関で医学・医療に関する研究に携わる
通常、私たちが接する機会が多い医師は、上記のうち臨床医です。臨床医は内科や外科など、特定の診療科を担当するのが一般的といえます。
医師になるには、大学や医科大学の医学部で必要なカリキュラムを修め、医師国家試験に合格して医師免許を取得しなければなりません。長期間の学習が求められ、資格取得の難易度が高い職の1つです。
歯科医師
歯科医師は、歯科・口腔外科で治療や予防・保健指導に携わります。日本国内で歯科医師になるには、医師免許とはまた別の歯科医師免許が必要とされます。
歯科医師免許を取得した人の活躍の場は、一般歯科・小児歯科・矯正歯科・口腔外科の4分野です。免許を取得するには大学か歯科大学の歯学部で6年間学び、歯科医師国家試験に合格しなければなりません。
医師と同様に、難易度が高い職の1つといえるでしょう。
看護師
病院や診療所などの医療機関で働き、診療に当たる医師や患者をサポートするのが看護師です。看護師の資格を取得すると、医師の指示に従って一部の医療行為を担当できるようになります。
具体的には、点滴や投薬の実施や検査の実施と結果確認、医療機器の管理などが主な仕事です。ほかにも問診を担当したり、医療チームの一員として患者と医師の架け橋として円滑なコミュニケーションが取れるようにサポートしたりします。
看護師として働くには看護師資格が必要で、取得するには看護大学や看護専門学校で所定のカリキュラムを修了し、国家試験に合格しなければなりません。
臨床検査技師
臨床検査技師は、患者の状態を正確に識別したり治療方針を定めたりする上で欠かせない臨床検査を担当する医療従事者です。臨床検査の一例には、以下のようなものが含まれます。
- エコー検査
- MRI検査
- 血液検査
- 尿検査
状況に応じて必要な検査を実施することで、治療を担当する医師は患者がどのような状態なのか、適切な治療が何かを見極められます。
臨床検査技師として働くには資格が必要で、大学・短期大学・専門学校で臨床検査技師の養成課程を修了して国家試験に合格しなければなりません。資格取得後は主に医療機関内の検査室や検査センターで働きます。
薬剤師
薬剤師は薬学のスペシャリストとして、疾病の治療や症状の緩和に必要な医薬品の調剤・管理を担当します。医薬分業と呼ばれる基本的な考え方に基づいて、医薬品の処方を医師が、調剤を薬剤師が担当するのが基本です。
そのため、薬剤師は調剤薬局で働き、医薬品の調剤・管理・服薬指導に当たるのが一般的といえるでしょう。処方内容にミスや疑わしい点がある場合は、医師に問い合わせる疑義照会を行うのも薬剤師の重要な仕事です。
薬剤師も国家資格が必要な職種で、大学か薬科大学の薬学部で6年間のカリキュラムを修了した後に国家試験を受けて合格しなければなりません。就職するまでに長期間かかり、一定の努力が求められる職の1つです。
医療従事者が活躍している職場
医療従事者にはさまざまな職種が含まれ、活躍する職場も多種多様です。ここでは、医療従事者が働く主な職場を3つ紹介します。
病院・クリニックなどの医療機関
医師や看護師、臨床検査技師など、多くの医療従事者が働いているのが医療機関です。医療機関には、総合病院や専門病院といった大規模なものから、地域の診療所をはじめとした小さなものまで、多種多様なものがあります。
どのような医療機関であっても、医療を提供するためには医療従事者が欠かせません。医療機関で働く場合の仕事内容は以下の通りです。
- 医師: 診察・治療を担当する
- 看護師: 医師や患者をサポートする
- 薬剤師: 院内の医薬品を管理する
- 臨床検査技師: 検査室で臨床検査を担当する
職種に応じて定められた分野を担当し、1つのチームとして医療を提供します。
老人福祉施設などの福祉施設
特別養護老人ホームやデイサービスセンターといった老人福祉施設や、障害者支援施設でも医療従事者が活躍しています。
施設によって在籍している医療従事者の種類や人数は異なりますが、医師や看護師が在籍しているケースが多いでしょう。
福祉施設で働く医師は配置医と呼ばれ、入所者の健康管理や健康診断、疾病の予防などに携わります。看護師は医師と連携して健康管理を担当することに加えて、食事介助や入居者との交流を担当するのが一般的です。
一般企業
一般企業で働いている医療従事者も存在します。代表的な存在が産業医と産業看護師で、それぞれの仕事内容は以下の通りです。
- 産業医: 一般企業の労働者の健康管理や適正な作業環境の整備に関する指導・助言を与える
- 産業看護師: 一般企業の健康管理部門で健康診断や保健指導などを担当する
一般企業に就職する場合は、健康管理部門や医務室を設置している比較的規模が大きい企業が就職先になるでしょう。医療機関で働く医療従事者と比較して、医療行為に携わる機会は少ないといえます。
医療従事者の需要は高い
社会のさまざまな分野で活躍している医療従事者は、将来性にも期待できる職種です。医療従事者の需要が高いといえる3つの理由を紹介します。
全体的に人手不足が続いている
医療従事者は全体的に人手不足に陥っており、さらに多くの人材を必要としています。2021年度の統計によると、看護師の有効求人倍率は2.37倍、薬剤師の有効求人倍率は2.87倍です。
職種によって差があるものの、需要に対する医療従事者の供給は不足気味といえます。短期間で爆発的に医療従事者が増えるとは考えにくいため、今後しばらくはこの状況が続くと考えられます。十分なスキルと経験を有する人材は特に重宝されるでしょう。
参考:看護師 - 職業詳細 _ job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
日本国内では少子高齢化が進行している
日本においては、少子高齢化の進行に伴って医療ニーズ自体が増大しています。高齢者が増加することで医療を必要とする人の絶対数が増える一方、医療従事者として働く現役世代が減少するためです。
需要の増大と供給の減少が同時に起こるため、ますます人手不足が深刻化すると考えられるでしょう。これから医療従事者を目指す人にとっては、追い風となる状況が続く可能性が高いといえます。医療従事者の将来性を過度に心配する必要はないでしょう。
職種によっては離職率が高い
職種ごとに数値が異なるものの、離職率が高い職種があるのも医療従事者の特徴です。特に医師や看護師は、激務に陥りやすい職として知られています。
急患をはじめとした緊急事態に対応したり、交代で夜間対応に当たったりするのも、激務に陥りやすい理由の1つといえるでしょう。
激務によって離職する人が多く、人材が定着しないことで人手不足に陥りやすくなります。さらに、内情が広く知られれば人材確保が難しくなるケースもあるでしょう。上記の状況を根本的に解消するには、働きやすい環境づくりが求められます。
医療従事者が転職・復職する方法
かつて医療従事者として働いていたものの、何らかの理由で離職した人もいるでしょう。そのような人に向けて、ここでは医療従事者が復職する2つの方法を紹介します。
公開求人から自分に合う職場を探す
医療従事者を募集する公開求人は多数存在します。そのため、復職したいと思ったら自分に合う求人がないか、一度探してみるのがおすすめです。
医師や看護師・臨床検査技師などのさまざまな求人が存在するため、自分が持つ資格に応じて適した職を探してみましょう。
転職サイトに掲載されている情報は定期的に更新されます。気になる求人が見つからなかったとしても、定期的にチェックしてみることをおすすめします。時間をおいて再び探すことで、自分に合った求人に出会える確率を上げられます。
公的な就職支援サービスを活用する
医療従事者を対象にした公的な就職支援サービスも存在します。看護師を対象にしたナースセンターをはじめとして、特定の職種を対象にした公的な転職支援サービスがあるため、目指す職種でどのようなものを利用できるかチェックしてみるとよいでしょう。
自分が目指す職種で利用できる公的サービスが見つかったら、一般的な転職サイトと併用して活用するのがおすすめです。求人探しの間口を広げておくことで、アクセスできる求人情報の数を増やせます。
医療従事者の転職でチェックしたいポイント
求人情報には多種多様なものがあるため、自分に合ったものを見つける上でいくつかのポイントに注目することが必要です。転職後のミスマッチを防ぐためにチェックしておきたい2つのポイントを解説します。
適正な報酬水準を提示しているか
転職・再就職のいずれの場合においても、提示されている報酬水準を忘れずにチェックしましょう。報酬水準をチェックするときは、業務内容や勤務時間に適しているかという点だけでなく、内訳を確認することも大切です。
基本給・各種手当・固定残業代など、提示されている金額の内訳を細かくチェックします。額面は同じでも各種手当が占める割合が高く、報酬水準が適正水準より低いケースもあるためです。
報酬面は仕事のモチベーションに直結するため、転職後に後悔しないためにも欠かせません。
ワークライフバランスに問題がなさそうか
医療従事者は激務に陥りやすいため、ワークライフバランス面も忘れずにチェックしましょう。時間外労働の時間が極端に長くないか、休日はきちんと確保されているか、救急対応がどの程度発生しそうかという点を確認することをおすすめします。
救急病院をはじめとして、一刻を争う患者が運ばれてくる医療機関を選んだ場合は、緊急対応で激務に陥る可能性が高まるでしょう。
一方で、激務を解消するためにワークライフバランスの改善に注力している医療機関も存在します。働きやすさを重視するなら、ワークライフバランスを考慮した勤務形態を整えているところを選ぶことが大切です。
医療従事者のキャリアアップのためにできること
スキルや経験を生かしてキャリアアップすることも、将来有望な医療従事者になるために重要なポイントです。医療従事者としてキャリアアップするためにできることを、2つ紹介します。将来性を高めるためにも、ぜひ取り組んでみましょう。
専門性を高める
自分が担当する分野で専門性を高めれば、より高度な医療に携われるようになります。医師であれば、自分が極めたい分野の専門医を目指すとよいでしょう。
例えば循環器専門医に認定されれば、心臓や血管に関する分野において、高度な医療技術や知識が求められる症例に対応できるようになります。
高度なスキルが求められる領域に対応できるようになれば、活躍の場をより広められるでしょう。
薬剤師にも専門性認定制度があるため、感染制御や精神科・妊婦授乳婦といった特定領域を選んでスキルを極められます。
複数のライセンスを取得する
キャリアの幅を広げるためには、複数のライセンスを取得するのもおすすめです。
例えば、看護師と介護福祉士の2つを取得していれば、医療機関や介護施設で携われる業務の幅が広がります。柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師を取得していれば、施術範囲が広がるため、さまざまな患者に対応できるようになるでしょう。
複数のライセンスを取得しようと考えているなら、自分が目指すキャリアを実現するために役立つ資格はどれなのかリサーチしましょう。その上で、現実的にライセンス取得が可能かという点を判断します。
医療従事者は需要が高くキャリアアップも可能
医療従事者は全体的な供給不足や少子高齢化の進展により、今後も需要が高まると考えられています。国家資格の取得が求められる職種も多く、市場価値も比較的高いといえるでしょう。
スキルアップに励めばさらなるキャリアアップも可能です。転職することでキャリアアップを実現したいと考えている人や、一度離職したものの、復職したいと考えている人は、この機会に自分に合った求人がないか探してみるのもおすすめです。
スタンバイでも、医師や看護師をはじめとしたさまざまな医療従事者の求人を扱っています。気になるキーワードで検索してみるといいでしょう。