地方公務員への転職を検討している場合は、職種やなり方を理解しておくのがおすすめです。どのような仕事なのかを知っておけば、転職に向けて何をすべきか整理できるでしょう。地方公務員の種類や国家公務員との違い、なる方法について解説します。
地方公務員とは
公務員は大きく地方公務員と国家公務員に分けられます。地方公務員の特徴や国家公務員との違いを押さえておきましょう。
地方自治体に勤める公務員のこと
地方公務員とは、都道府県や市町村といった地方自治体で働く公務員のことです。公務員全体の約8割を、地方公務員が占めています。
地方公務員の代表例は、県庁・市役所・町役場で働く職員や公立の機関に勤める教員・医師、警察官や消防官です。知事・市町村長・地方議会議員も特別職の地方公務員に該当します。
地方公務員になるためには、地方公務員試験に合格しなければなりません(特別職は除く)。資格や免許が必要な職種も存在します。一定の年齢を超えると試験を受けられなくなるため、転職を希望するなら受験資格の年齢について調べておくことが重要です。
国家公務員との違いは?
国の行政機関や独立行政法人などに勤務する国家公務員は、国家の運営に関わる公務員です。財務省や経済産業省などの中央省庁や国会・裁判所などで働く職員が該当します。
国家公務員と地方公務員で大きく異なる点は、仕事のスケールです。国家公務員が国家レベルのスケールの大きな仕事に関わるのに対し、地方公務員は地域に密着した業務に携わります。
就職の難易度も異なります。国家公務員と地方公務員のいずれも、公務員試験を突破する必要がありますが、国家公務員の方が試験の難易度は高めです。地方公務員の方がチャレンジしやすい職業だといえるでしょう。
地方公務員の職種
地方公務員の種類は、仕事内容により大きく3つの職種に分けられます。それぞれの特徴や代表的な職業を見ていきましょう。
行政職
役所で事務業務全般に携わる地方公務員のことを、行政職といいます。行政運営の事務処理や管理を行うのが主な仕事です。一般的な役所の窓口業務をイメージすると分かりやすいでしょう。
行政職は、主に都道府県庁や市町村役場に勤務します。市民生活をサポートするサービスの提供が多く、地域の住民と接する機会も多いのが特徴です。
地方公務員の行政職に就くと、一般的には2~3年ごとに部署異動を繰り返すことになります。そのためさまざまな仕事を経験できるでしょう。学校事務や警察事務など、採用時から配属先が限定されているケースもあります。
公安職
地域住民の安全や財産を守る警察と消防は、地方公務員の公安職と呼ばれる職種です。基本的に、警察官は都道府県が採用し、消防官は市町村が採用します。
警察官は刑事課や交番に勤務するほか、交通違反を取り締まる交通警察や、少年非行の防止などに取り組む生活安全課などで働きます。消防官の主な仕事内容は、消火活動や逃げ遅れた人の救助などに当たる災害対策業務です。救命救急の仕事も担います。
公安職の仕事は体力が必要となるため、採用試験時に体力検査や身体検査を受けなければなりません。自治体によっては、スポーツで実績がある人を優先的に採用するケースもあります。
専門職
地方公務員の専門職は、専門的な領域を担当する職種です。心理職・福祉職・技術職などの職種があり、配属先が限定されます。
薬剤師・保健師・管理栄養士・保育士・臨床心理士・社会福祉士など、特定の免許や資格を持った人を採用の対象にする職種もあります。専門的な領域で知識やスキルを磨いてきた人は、専門職を目指すのがおすすめです。
例えば、公立の小中高等学校に勤務する教員は、地方自治体に属する専門職です。地方公務員の教員になるためには、教員課程のある大学で教員免許を取得した上で、各自治体の採用試験に合格する必要があります。
地方公務員のメリット
地方公務員にはさまざまなメリットがあります。代表的なメリットを確認し、地方公務員への転職を検討する際の参考にしましょう。
安定した収入が得られる
地方公務員の大きなメリットの1つに、安定した収入を得られる点が挙げられます。民間企業は社会情勢や景気に収入が左右されるケースがありますが、地方公務員の場合は収入が大きく変わることはありません。
福利厚生が充実している点もポイントです。地方職員共済組合や互助会に加入することで、医療費補助や保養施設利用補助などのさまざまなサービスを受けられます。
完全週休二日制や休暇制度の充実もメリットです。仕事とプライベートを両立させたい人に向いています。民間企業に比べて雇用も安定しており、よほどのことがない限り免職されることはありません。
地域に貢献できるやりがいのある仕事
地方公務員の仕事は地域密着型の業務が多くを占めます。地域住民と接して要望や不満を聞き、住民の生活に反映する仕事ができるため、地域に貢献していることを実感できるでしょう。
仕事の結果が目に見えやすいのも特徴です。自分が業務で取り組んだことの結果が分かりやすく、住民の役に立っていることを実感できます。地方公務員はやりがいのある仕事だといえるでしょう。
利益重視の民間企業と異なり、地方公務員は利益を追い求める必要がないため、地域に貢献したいという思いを強く持って業務に取り組めます。純粋に仕事の満足度を追求できる点は、民間企業との大きな違いです。
地方公務員になるには
地方公務員になるためには、地方公務員試験に合格しなければなりません。合格までのルートにはさまざまな種類があるため、それぞれのルートの特徴を理解する必要があります。高卒・大卒・社会人が地方公務員を目指すルートについて解説します。
高卒の人が地方公務員を目指す場合
地方公務員試験は一般的に、3つの区分に分かれています。高卒者が地方公務員を目指す場合は、高卒程度の区分(初級)の試験を受けるのが基本的なルートです。
例えば東京都の場合は、試験区分が1類・2類・3類(正規な表現はローマ数字)に分かれており、高卒程度の区分は3類に該当します。一般的な年齢制限は17~22歳程度です。試験に合格するためには、高卒程度の学力が求められます。
高卒の人が目指せる主な職種は、都道府県・市町村の職員や警察官・消防官です。公務員試験用の問題集や資格学校を利用して勉強すれば、合格できるレベルの知識が身に付くでしょう。
参考:試験・選考情報(令和5年度実施)|試験・選考情報|東京都職員採用
大卒の人が地方公務員を目指す場合
大学卒業で地方公務員を目指す場合は、中級または上級の区分の試験を受けることになります。東京都の場合、中級は2類、上級は1類です。
中級の年齢制限は19~25歳程度、合格するためには短大・高専卒程度の学力が求められます。上級の年齢制限は30歳程度で、合格には大卒程度の学力が必要です。
地方公務員はどの学部を卒業しても受験できるほか、自治体によっては高卒より職種の幅が広い場合もあります。専門職に就きたい場合は、免許や資格の取得も視野に入れる必要があるでしょう。
社会人が地方公務員を目指す場合
社会人が地方公務員への転職を希望する場合は、社会人採用枠があるかどうか調べてみましょう。民間企業出身者のみを対象とした試験が実施されるケースがあります。
地方公務員試験の年齢制限は緩和される傾向にあり、かつては35歳程度が上限となっていましたが、現在は年齢制限がない試験が実施されるケースも増えています。
社会人経験者に求められているのは即戦力です。民間企業での経験を生かすことを期待されているため、地方公務員への転職はますますチャンスが広がっていくでしょう。
地方公務員の試験の概要
地方公務員試験のレベルや受験区分について詳しく解説します。専門性が高い仕事を希望する場合は、資格や免許が必要かどうかも押さえておきましょう。
地方公務員試験のレベル
地方公務員試験のレベルは、一般的に初級・中級・上級に分かれています。それぞれの試験に合格するために必要な学力の目安は以下の通りです。
- 初級:高校卒業程度
- 中級:短大・専門学校卒業程度
- 上級:大学卒業程度
基本的には、級が上がるほど試験のレベルも高くなります。いずれも学習範囲が広く、学校では教わらない分野からも出題されるため、学校以外の勉強が必須です。
なお、短大・専門学校・大学を卒業してから地方公務員を目指す場合、初級は年齢制限により受けられない可能性がある点に注意しましょう。
地方公務員の受験区分
地方公務員試験には受験区分が設けられており、出願時に希望する区分を選択して試験を受けることになります。
一般的な受験区分の種類は、行政職・技術職・公安職です。自治体によっては呼び名が違ったり、さらに細かい区分に分かれているケースもあります。
希望する受験区分を選択しても、なりたい職種に配属されるとは限りません。配属後も数年ごとに異動を命じられるケースがあるため、区分によってはさまざまな仕事に従事することを意識しましょう。
資格や免許が必要な職種もチェック
職種によっては資格・免許が必要な場合があります。希望する職種の専門性が高い場合は、免許や資格が必要かどうかチェックすることが大切です。
免許や資格が必要な職種には、看護師・保健師・栄養士・保育士・教員・社会福祉士などがあります。これらの免許や資格を持っている人は、専門職も視野に入れるとよいでしょう。
希望する職種に必要な免許や資格を持っていない場合は、事前に取得しておかなければなりません。転職を目指すなら、働きながら効率的に勉強しましょう。
地域に貢献する地方公務員を目指そう
地方公務員とは、地方自治体の行政機関に勤務する公務員です。行政職・公安職・専門職などの職種に大きく分けられます。
安定した収入を確保できることや、業務を通して地域に貢献できることが、地方公務員になるメリットです。
地方公務員になるためには、公務員試験に合格する必要があります。自分に合ったルートを確認し、しっかりと試験勉強をして地方公務員への就職を成功させましょう。