自衛隊の仕事は、「日本の防衛」「災害派遣」「国際平和協力」です。組織は陸上・海上・航空の3つに分れており、各隊の隊員は日々任務や訓練に励んでいます。自衛隊の活動内容や3組織の役割、入隊方法を紹介します。
自衛隊とは
自衛隊は、日本が自衛権を行使する上で必要な組織です。国際法では、国家が自国を守る「自衛権」が認められています。自衛隊とはどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
日本を守るために置かれた組織のこと
自衛隊は、日本が自国の平和と独立を守るために設置する組織です。組織は防衛省によって管理され、最高指揮官は内閣総理大臣が務めることとなっています。
自衛隊の発足は、1954年の「防衛庁設置法」および「自衛隊法」施行によるものです。戦後日本の軍隊は解体され、海上警備隊や警察予備隊が海や陸上の警備を行っていました。
法律の施行により「陸上自衛隊」「海上自衛隊」「航空自衛隊」の3組織が誕生し、現在に至ります。
自衛隊の活動
自衛隊の活動は、「日本の防衛」「災害派遣」「国際平和協力」の3つを軸に展開されます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
国の平和や安全の確保
名前の通り、自衛隊は日本の国防を担う組織です。日本の平和と独立を守るために必要な任務が、日々行われています。
例えば日本の領海や領空を侵す外国籍の船・航空機を警戒・監視したり、武装工作員による活動・テロを未然に防いだりするのは自衛隊の仕事です。
日常では、有事の際に適切な防衛力を発揮できるよう、厳しい訓練が行われています。内容は個人を鍛えるための訓練のほか、装備品の操作訓練や部隊ごとの実地演習などとさまざまです。
災害派遣活動
大きな災害が起こり「人命または財産の保護のため必要がある」と認められる場合、自衛隊が現地に派遣されます。派遣は被災した都道府県知事の要請に基づいて行われますが、一刻を争う場合はこの限りではありません。
現地では行方不明者の捜索・救助・物資の輸送など、必要に応じてさまざまな活動を行います。被害の大きさによっては、派遣期間が長期にわたるケースも少なくありません。
自然災害が頻繁に起こる日本では、自衛隊の支援が必要となる場面が多々あります。自衛隊では平素より災害に備えた訓練が行われ、確実に初動対処できるような体制が整えられているのです。
国際平和協力活動
自衛隊が海外の紛争地などに赴き、国連平和維持活動に従事するケースも増えています。従来の日本の憲法では、自衛隊を海外に派遣できませんでした。
しかし国際平和維持の重要性・緊急性の高まりにより、国際平和協力法・国際緊急援助法・各種特別措置法などの施行・改正・発令が相次ぎます。
現在は人道支援活動に限り、海外でもさまざまな業務に当たることが認められています。これまでに自衛隊が関わった活動は、災害発生時の医療・救助・救援活動のほか、国際テロ対応、国家再建のための支援などです。
自衛隊の3組織別の任務内容
自衛隊には、「陸上自衛隊」「海上自衛隊」「航空自衛隊」の3つがあります。それぞれの任務内容を詳しく紹介します。
陸上自衛隊
3つの組織の中で、中核を担うのが陸上自衛隊です。全国に約160の駐屯地があり、約14万人が任務に従事しています。
陸上自衛隊の主な任務は「国土の防衛」です。外国からの侵略を未然に防ぐための抑止活動を行うとともに、侵略があった場合に適切に対処できるよう常に警戒・訓練を行っています。
また自然災害が発生した場合、救援活動を担当するのは主に陸上自衛隊です。災害地に派遣された隊員は、昼夜交替で支援を行います。
一口に陸上自衛隊といっても、地上戦闘を担当する普通科・戦車部隊を持つ機甲科・火力戦闘を行う特科などとさまざまです。任務の内容は、所属する部署・部隊によって異なります。
海上自衛隊
海上自衛隊は、海上防衛や海上交通の安全確保を主任務とする組織です。全国を5つの警備区に分け、約4万3,000人が任務に従事しています。
海上自衛隊の仕事場は、主に護衛艦や潜水艦などの艦船です。船上で各種業務をこなすほか、海上パトロール用の航空機・ヘリコプターを操縦する任務もあります。
海上で支障なく活動できるように、陸上基地で後方支援に当たる隊員も少なくありません。このほか国連平和維持活動では、海上自衛隊が燃料や人員の輸送などを担当します。
航空自衛隊
航空自衛隊は、日本の領空の保安を担当する部隊です。戦闘用や輸送用などさまざまな航空機を保持しており、約4万3,000人が任務に当たっています。
主な任務は、わが国周辺空域における24時間365日体制での警戒監視や、領空侵犯の恐れがある国籍不明の飛行機へのスクランブル(緊急発進)などです。
災害時には捜索・救助に加わるほか、国際平和協力活動で人員や物資を輸送したり、海外へ赴く要人を輸送したりといった業務も担当します。
航空自衛隊の日常任務も、担当部署によってさまざまです。航空機の操縦や航空管制に携わる隊員もいれば、兵器管制や通信・プログラムに従事する隊員もいます。
自衛隊へ入隊するには
自衛隊に入るには、どのような方法があるのでしょうか?入隊の条件や試験について紹介します。
入隊するための条件
自衛隊に入隊するためには、自衛官の採用試験に合格しなければなりません。受験できる種目(採用時のコース)は、年齢や学歴などによって異なります。
学歴と選択できる主な種目は以下のとおりです。
- 大卒・大学院卒:自衛隊幹部候補生
- 高卒:一般曹候補生・自衛官候補生・防衛大学校学生・防衛医科大学校医学科学生・防衛医科大学校看護学科学生・航空学校学生
- 中卒:陸上自衛隊高等工科学校
一般曹候補生と自衛官候補生については、学歴は不問です。ただし「18歳以上」の年齢制限が設けられているため、中学校を卒業したばかりの人は応募できません。
就業歴のある社会人が自衛隊に転職したい場合は、中途採用に応募するのも1つの方法です。募集は随時行われており、条件を満たせば就業のチャンスがあります。気になる人は、防衛省・自衛隊のホームページを小まめに確認してみましょう。
自衛隊の試験内容
採用試験の内容は、選択する種目によって異なります。
- 一般曹候補生:【1次】筆記および適性試験・【2次】口述および身体検査
- 自衛官候補生:筆記・口述試験および身体検査
- 自衛隊幹部候補生:【1次】筆記試験・【2次】小論文・口述および身体検査
- 防衛大学校学生(一般):【1次】学力試験・【2次】口述試験および身体検査
防衛大学校学生の場合、一般試験のほかに推薦や総合選抜という枠もあります。
いずれの試験でも、合格発表では地方協力本部などへの掲示や、合格者本人宛てに通知が行われる決まりです。
自衛隊の気になる疑問
自衛隊という組織は、一般企業とは大きく異なります。年齢制限や身体基準について疑問を抱いている人も多いでしょう。入隊を検討するとき、確認しておきたいポイントを紹介します。
自衛隊には年齢制限がある?
自衛隊への入隊には、年齢制限が設けられています。ただし少子高齢化の影響により、入隊できる年齢は徐々に引き上げられているのが現状です。
2023年6月時点の募集年齢の上限は、以下の通りです。
- 一般曹候補生:18歳以上33歳未満(学歴不問)
- 自衛官候補生:18歳以上33歳未満(学歴不問)
- 幹部候補生(一般):22歳以上26歳未満(大卒)、22歳以上28歳未満(大学院卒)
- 防衛大学校学生: 21歳未満(高卒:見込含)など
基本的に33歳以上の人は、通常のルートでの入隊は難しいでしょう。しかし前述のとおり、自衛隊ではさまざまな役職・技能職について中途採用しています。技能や経験がマッチすれば、年齢がオーバーしていても入隊のチャンスはゼロではありません。
身体検査の基準は?
身体検査の詳細は種目によって異なるため、事前の確認が必須です。例えば一般曹候補生の場合、男性は身長150cm以上・女性は140cm以上と定められています。
視力は両側の裸眼視力が0.6以上または矯正視力が0.8以上必要で、色覚障害や強度の色弱の人は応募できません。
このほか歯の欠損が多い人、高血圧・低血圧症の人も身体基準不適格と見なされます。身体検査の基準にない項目でも、任務遂行に支障があると思われる疾患を持つ人は、不合格となるケースがあります。
身体の基準が設けられている一方で、体力については特別な規定がありません。体力のなさが病気に由来するものでない限り、それほど気にしなくても大丈夫です。
自衛隊のキャリアパスは?
自衛官として上のキャリアを目指したい人は、幹部を目指すルートがあります。自衛隊は厳密な階級制となっており、下から士・曹・尉・佐・将・幕僚長の16階級で構成されています。
3尉以上は「幹部自衛官」となり、管理・監督する部隊の規模が大きくなるのが一般的です。幹部を目指すルートは、スタートする種目により異なります。
例えば一般曹候補生から入隊した場合、昇任試験を受けられるのは採用後約2年9カ月後です。合格すれば、3等陸・海・空曹に昇任できます。
幹部になるには、さらに4年後に幹部候補生部内選抜試験を受験しなければなりません。これに合格すれば、幹部として組織をマネジメントできるようになります。
女性も自衛隊に入隊できる?
女性自衛官の数は増加傾向にあり、入隊は十分に可能です。防衛省における女性職員に関する統計資料によると、2021年の女性自衛官の数は1万9,160人に上ります。2017年の1万4,686人から大幅に増加しており、特に新規採用者が増えている傾向です。
自衛隊は「職場環境がハード」というイメージがありますが、育休・産休を含めて3年間の休業が認められています。駐屯地の中には託児所が設置されているところもあり、出産や子育てに関する支援環境は比較的整っているといえるでしょう。
参考:防衛省・自衛隊:防衛省における女性職員に関する統計資料
日本を守る自衛隊
自衛隊は、日本の平和と安全を守るための組織です。主な任務としては、有事に備えての監視・訓練や、自然災害が発生した際の支援・復旧活動や国際平和強力活動などがあります。
自衛官に興味がある人は、日本最大級の仕事・求人探しサイト「スタンバイ」をチェックしてみましょう。キーワード検索を行えば、自衛隊や駐屯地の求人情報を探せます。
少子高齢化が進む日本では、自衛官の数も減少傾向にあります。国防を担いたい・人の役に立ちたいと考える人は、自衛隊でならやりがいを感じながら働けるはずです。