建築業とはどんな業種?建設業・土木業との違いや具体的な職業を紹介

建築業は、安全で住みやすい建物の建築に従事する業種です。家を1軒建てる過程においては、建築士や大工、デザイナーをはじめとする数多くの人々が関わります。建設業・土木業との違いや業界の動向、職業別の役割について確認しましょう。

建築業とは?意味や役割をわかりやすく解説

建築現場

(出典) pixta.jp

建築に関わる業種は建築業と呼ばれ、家屋・ビルなどを建築します。具体的にどのような職種が含まれ、社会においてどのような役割を担っているのでしょうか?

「建築」の意味

建築業は、建物を建築する業種です。建築とは、一般家屋・マンション・ビル・商業施設といった生活の拠点となる建物を、土台から作り上げることを意味します。

また建物を建てるだけでなく、内装のデザイン・電気工事・管工事なども建築業に含まれます。

建物を設計する「建築家」や内装をデザインする「インテリアデザイナー」、木造建築を手掛ける「大工」などは、建築業に含まれる代表的な職種です。建築業は衣食住の「住」に関わる業種であり、人々の暮らしになくてはならないものといえるでしょう。

社会における建築業の役割

建築業の役割は、安全で快適な建物を建築することです。日本は台風や大雨、地震などの自然災害が多い国なので、耐震性・耐久性などに問題があれば、住む人の命が脅かされてしまいます。

また、建物は特定のオーナーの所有物であると同時に、街の景観を形作る「社会の財産」です。建築業に従事する人は、景観を損なわないか・周囲の環境に適合しているか・持続可能であるかといった点を考慮した上で、仕事を進めなければなりません。

建築業と関係が深い業界

建築現場

(出典) pixta.jp

建築業と混同されやすい業種に、建設業や土木業があります。建築業との違いや関係性について理解を深めましょう。

建設業

建設業は、建築物・土木工作物を建設する業種です。建設業の工事は、建物を作る「建築」と地面に関わる「土木」に大別されます。建築業と土木業は、建設業に含まれる業種と考えましょう。

建設業では、家屋・マンションだけでなく、ダム・橋・高速道路・空港・鉄道といったインフラにも関わります。インフラ関係はほとんどが公共事業であり、国の計画に基づいて進められるのが一般的です。

国の商業分類では、工業・製造業と同じ第2次産業に区分されます。第2次産業とは、第1次産業で獲得した材料を加工して、新たな価値を生み出す産業です。

土木業

土木業は、建設業の一種です。土石・木材・鉄材などを用い、いわゆるインフラと呼ばれる建造物の新設・整備・復旧を行います。

海・川・山・地下などのあらゆる場所が対象で、ビル・マンションを建てる前に地盤をならす工事も土木業の範囲に含まれます。以下は、土木工事の一例です。

  • 河川・海岸工事
  • ダム工事
  • 道路・トンネル工事
  • 空港の建設工事
  • 公道下の下水道工事
  • 土地区画整理工事
  • 土地造成工事
  • 林道工事

建築物の設計・デザインに関する職業

住宅設計

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建築業は、異なるスキルを持つ人々が互いに協力し合う分業制で成り立っています。

建築物の設計・デザインに関する代表的な職業には、建築士・CADオペレーター・インテリアコーディネーター・エクステリアデザイナーなどがあります。それぞれの仕事内容と役割を見ていきましょう。

建築士

建築士は、建物の設計・監理に関わるプロフェッショナルです。実際の業務は、建築物の設計図面を作成する「設計」と、現場で作業員の指揮・監督する「工事監理」に分かれます。

日本には、建物の安全性の最低基準を定めた建築基準法があります。建築士は、法律に基づいて設計図を作成し、設計図通りに工事が行われているか確認するのが役目です。

建築士になるには、建築士免許(国家資格)を取得する必要があります。免許には1級建築士・2級建築士・木造建築士の3種類があり、取り扱える建築物がそれぞれ異なります。

CADオペレーター

CADオペレーターは、ものづくりの現場で活躍する職業です。建築業では、建築士やデザイナーからの指示を受け、CADで図面・完成予想図を作成します。

CAD(Computer Aided Design)とは、コンピュータによる設計支援ツールで、立体の形状を2次元(平面)で表現する「2D CAD」と、平面を3D化できる「3D CAD」に大別されます。

かつては、建築士が手描きしたラフ図を、CADオペレーターがトレースするのが一般的でした。しかし近年は、CADでの製図は建築士が行い、CADオペレーターが編集・修正を手掛けるパターンが多いようです。

インテリアデザイナー

インテリアデザイナーは、建築のインテリアデザインを行う職業です。建築士と混同されやすいですが、インテリアデザイナーは主に建物の内装に関わります。大規模な商業施設においては、建築士と協働して空間設計を行うケースもあるでしょう。

仕事内容は、大きく「空間のデザイン・設計」と「インテリア用品のデザイン・設計」に分けられます。依頼主・設計士・施工業者と打ち合わせを重ね、見た目の美しさ・快適さ・機能性を備えた空間を目指します。

なお、インテリアデザイナーと似た職種にインテリアコーディネーターがありますが、後者はデザイン・設計は行わず、インテリア用品を用いた空間演出のみを担当するのが一般的です。

エクステリアデザイナー

エクステリアデザイナーは、エクステリアのデザイン・設計を行う職業です。エクステリア(Exterior)とはインテリアの対義語で、建物の塀・エントランス・玄関アプローチ・庭・駐車場・フェンスなどの建物の外観全体を指します。

依頼主の要望を受けてデザインをした後、現地調査を実施して日当たりや構造物の有無、地盤の状態などを確認します。

実際の工事は業者に依頼しますが、素材の選定・発注・見積り・現場監理・顧客対応はエクステリアデザイナーの業務です。

建築物の施工に関する職業

施工管理

(出典) pixta.jp

建築物の設計・デザインが完成したら、建物の基礎部分や地下部分、外壁などの工事がスタートします。施工には、大工をはじめとする多くの職人が関わります。施工を担う代表的な職業をチェックしましょう。

建築施工管理技士

建築施工管理技士は、建築現場の監督を行うための国家資格です。元請として工事を受注した場合、現場に主任技術者または監理技術者のいずれかを配置しなければなりません(建設業法第26条)。

1級建築施工管理技士は監理技術者、2級建築施工管理技士は主任技術者の条件を満たします。監理技術者と主任技術者は、配置される工事の規模が異なるだけで、業務内容はほぼ同じです。

主な業務内容としては、施工計画の決定・進捗管理・作業員のスケジュール管理・安全管理・品質管理などがあります。

参考:建設業法 第26条 | e-Gov法令検索
  :監理技術者⼜は主任技術者となり得る国家資格等|国土交通省

大工・左官

大工は、主に木造建築の建築や増改築、修理を行う職人です。作業場で建築資材を加工した後、現場に運搬して組立を行います。

近年は、鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建物が増えていますが、内部に木質の建築資材が使われていれば、大工が加工・組立・取付を担います。

神社仏閣の建築に携わる大工を「宮大工」、コンクリートの基礎を作る大工を「型枠大工」と呼ぶ点も覚えておきましょう。

左官は、壁の塗付け施工をする職人です。鏝(こて)やはけ、ローラーなどの専用道具を使い、壁面にセメント・モルタル・土などを塗っていきます。

電気工事士

住宅や工場、ビルなどの電気工事を行うには、電気工事士の資格が必要です。電気工事士は電気工事に関わる国家資格で、第1種電気工事士と第2種電気工事士に区別されます。

第2種電気工事士は、一般住宅・小規模店舗などの電気工事(600V以下で受電する一般用電気工作物)ができるのに対し、第1種電気工事士はビル・工場などの電気工事(最大500kW未満の自家用電気工作物)にも従事できます。

電気工事士の具体的な業務内容は、変電設備および分電盤の据え付け・配線・コンセントの取付・放送通信施設の工事などです。規模の大きな工事では、電気工事の責任者が現場を取り仕切ります。

参考:電気工事士 (METI/経済産業省)

業界全体の動向と課題

建築現場

(出典) pixta.jp

少子高齢化や労働人口の減少により、多くの業界では人手不足が深刻化しています。建築業・土木業を含む建設業界は、どのような課題を抱えているのでしょうか?業界全体の動向と課題について解説します。

建築物の老朽化で需要が増大

高度成長期やバブル期には一般住宅をはじめ、ビル・マンション・商業施設など多くの建築物が建てられました。今後10~20年の間で、当時建てられた建物の老朽化が急速に進むため、改築・修繕工事で建築業の需要は大きく増えると予想されます。

2022年の国土交通省の資料によると、築30~50年超の分譲マンションの戸数は、2031年末で約425.4万戸以上、2041年末では約588.4万戸以上になる見通しです。

道路橋・トンネル・河川管理施設などの公共土木構造物も、老朽化が進んでいます。建築物やインフラは、定期的に老朽化対策・災害対策を行わなければならないため、建設業の需要は途切れないでしょう。

参考:マンションを取り巻く現状と課題|国土交通省

深刻化する人手不足

需要が拡大する一方で、建設業界では人手不足が深刻化しています。2023年の国土交通省の資料によると、2022年における建設業就業者の年齢は、55歳以上が35.9%・29歳以下が11.7%です。

年齢階層別の建設技能者数では、60歳以上の技能者が全体の25.7%を占めており、引退を迎える10年後には、熟練技能者が大きく減少します。若手の確保と育成に早急に取り組まなければ、国民生活や社会にも大きな影響が及ぶでしょう。

参考:最近の建設業を巡る状況について【報告】|国土交通省

働き方改革とDXが急務

若年層の就業者が少ない理由の1つに、過酷な労働環境が挙げられます。2023年の国土交通省の資料によると、2021年には全産業と比べて年間の総実労働時間が90時間も長い結果です。

長時間労働の是正や、働きに見合った待遇を真剣に検討しなければ、人手不足は解消されないでしょう。ドローン・ICT建機などのデジタル技術を駆使し、業務プロセスを最適化する「建設DX」の必要性も高まっています。

政府は、建築業界の働き方改革を推進するため「建設業働き方改革加速化プログラム」を発動しました。国土交通省は、建設現場でICTを活用する取り組みである「i-Construction」にも力を入れています。

参考:最近の建設業を巡る状況について【報告】|国土交通省
  :建設業働き方改革加速化プログラム|国土交通省
  :i-Construction|国土交通省

建築業は社会や暮らしを支える重要な仕事

建築の打ち合わせ

(出典) pixta.jp

老朽化する建物・空き家が増える近年、建築業の重要性が再認識されています。一方で、建築業を含む建設業全体では、技術者の高齢化・人手不足が進んでいるのが実情です。

長時間労働やデジタル化の遅れなど課題は山積みですが、国もただ手をこまねいているわけではありません。今後は労働環境が徐々に整備され、新しい時代に即した働き方ができるようになるでしょう。

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