インテリアコーディネーターの仕事は、顧客の理想の住空間を創造することです。ライフスタイルが多様化する近年では、新築・改築の際にプロのアドバイスを求める人が増えています。インテリアコーディネーターの業務内容や将来性、必要なスキルを解説します。
インテリアコーディネーターとはどんな仕事?
住まいに関わる職種の1つに、インテリアコーディネーターがあります。その名の通り、インテリアをコーディネートするのが主な役割ですが、具体的にはどのような仕事を担当するのでしょうか?
快適で魅力的な空間を作るエキスパート
コーディネートには、「複数の要素を組み合わせて、全体の調和を図る」という意味があります。インテリアコーディネーターは、壁紙・カーテン・家具・照明などをうまく組み合わせ、快適で魅力的な空間を作るエキスパートです。
具体的には、「どのような空間にしたいか」「用途は何か」「予算はいくらか」といった点を顧客に細かくヒアリングし、インテリアの選定や配置をサポートします。
日本でインテリアコーディネーターが活躍を始めたのは、マンション・団地の建設が進んだ1980年代です。洋室やLDKという間取りが普及するにつれ、空間を素敵にコーディネートしたいという人が増加しました。
求められる知識・スキルは幅広い
インテリアコーディネーターには、インテリアの知識はもちろん、建築・住環境・色彩などに関する幅広い専門知識が求められます。美しく心地よい空間に仕上げるには、美的感覚・表現力も欠かせません。
インテリアコーディネーターとして働く上で必要になる知識・スキルとして、以下のようなものが挙げられます。
- インテリアに関する知識
- 建築に関する知識
- 住環境に関する知識
- 内装材・塗料に関する知識
- カラーコーディネートの知識
- CAD・製図のスキル
- 接客スキル
- コミュニケーションスキル
依頼主や工事担当者と打ち合わせをする際は、図面・立体図を使用するのが一般的です。CADをはじめとする設計用ソフトの使い方にも、慣れておく必要があるでしょう。
活躍できる舞台は多岐にわたる
フリーで活躍するインテリアコーディネーターもいますが、主な就職先はハウスメーカー・工務店・建設会社・住宅設備メーカー・大手不動産会社などです。多くの物件で老朽化が進む近年は、リフォーム会社での需要が増加傾向にあります。
一般住宅関連だけでなく、デパート・ホテル・飲食店・美術館・公共施設・オフィスなどの空間プロデュースを手掛けるケースもあります。
インテリアショップ・家具店に就職して、顧客にインテリア選定のアドバイスを行う人もおり、インテリアコーディネーターが活躍できるフィールドはかなり広いといえるでしょう。
収入の目安と雇用形態
厚生労働省が公表する「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、インテリアコーディネーターの平均年収は480万6,400円(※)です。
雇用形態はさまざまで、正社員や契約社員、パートといった働き方のほかに、フリーランスとして活躍する人もいます。
依頼主・設計者・施工業者・製品の納入業者などと予定を合わせながら業務を遂行するため、労働時間は不規則になる傾向があります。
※インテリアコーディネーターが属する主な職業分類(その他のデザイナー)に対応する統計情報に基づき、「企業規模10人以上」における「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出
インテリアコーディネーターの仕事の流れ
インテリアコーディネーターの仕事は、インテリアを選ぶだけに留まりません。商品を手配したり、工事現場の監理をしたりと、業務内容は多岐にわたります。一連の仕事内容を見ていきましょう。
打ち合わせとプランニング
インテリアコーディネーターの業務は、顧客との打ち合わせからスタートします。
一般住宅の場合は、家族構成・間取り・ライフスタイル・趣味・予算まで細かく聞き、隠れたニーズをしっかりとキャッチしなければなりません。依頼主の抱いている漠然としたイメージを、いかに具現化できるかが問われます。
打ち合わせ後は、ヒアリング内容に基づきプランニング(企画立案)を行います。イメージが伝わりやすいように、写真や色見本、サンプルなどを集めてインテリアプランボードを作っていくのが一般的です。
インテリアの選定・提案
次のステップは、インテリアの選定です。全体のバランスや予算を考慮しながら、壁紙や家具、照明などの小物を選びます。
依頼主に提案する際は、立体モデル・図面を活用して視覚的にわかりやすく説明したり、ショールームを案内したりします。
すべての提案が1回で受け入れられるとは限らず、2回・3回と修正を依頼されるケースも珍しくありません。依頼主が提案に納得したら、選定したインテリアの見積書を提出し、正式契約に進む流れです。
商品の手配・工事の現場監理
商品の手配後は、施工業者との打ち合わせを経て工事に着手します。工事期間中は、工事の現場監理が主な役目です。
現場監理とは、計画書通りに工事が進んでいるかを確認する業務です。現場でなければできない指示もあるため、施工業者に丸投げはできません。依頼主と施工関係者との間に入って、さまざまな調整を行う場合もあります。
工事完了後は依頼主に立ち会ってもらい、仕上がり具合のチェックを行います。不備がなければ、引き渡しをして完了です。
インテリアコーディネーターになる方法
業界未経験者がインテリアコーディネーターになるためには、どのようなルートがあるのでしょうか?必須資格の有無や、就職・転職に役立つ資格について解説します。
仕事をするのに国家資格は必要?
インテリアコーディネーターに国家資格はなく、業務を遂行する上で必須の資格もありません。専門学校や大学を卒業した後、住宅業界・インテリア業界などに就職し、日々の業務の中でスキルを磨いていくのが一般的です。
就職・転職を有利に進めたい人は、インテリアコーディネートに関連する資格を取得しましょう。
建築・デザインについての専門知識を得たい人は、大学の建築学科・空間デザイン学科・生活デザイン学科・住居学科などに入学するか、インテリアコーディネーターの専門学校で学ぶことをおすすめします。
転職・スキルアップに役立つ資格
転職・スキルアップに役立つ資格としては、以下のようなものがあります。
- 建築士試験(国家資格)
- インテリアコーディネーター資格試験(インテリア産業協会)
- インテリアプランナー試験(建築技術教育普及センター)
- カラーコーディネーター検定試験(東京商工会議所)
- キッチンスペシャリスト資格試験(インテリア産業協会)
建築士試験(1級・2級・木造)以外は、民間団体が認定する民間資格です。プランニングや商品選定のアドバイスに役立つ知識を得たい人は、インテリア産業協会のインテリアコーディネーターを目指しましょう。
インテリアプランナーは、プランニング・インテリア設計がメインです。学科試験と設計製図試験があり、建築士は学科試験が免除されます。
資格試験:建築技術教育普及センター
インテリアコーディネーター資格試験|公益社団法人インテリア産業協会
インテリアプランナー:建築技術教育普及センター
東京商工会議所検定サイト | カラーコーディネーター検定試験®
キッチンスペシャリスト資格試験|公益社団法人インテリア産業協会
インテリアコーディネーターの将来性は?
インテリアコーディネーターは、衣食住の「住」を担当します。人々が理想の住まいを求める限り、インテリアコーディネーターの需要は途切れないと考えてよいでしょう。家の改築・リノベーションが増えれば、需要はさらに拡大します。
生活様式の多様化で個人宅での需要が増加
かつては、インテリアコーディネーターが活躍する場面は商業施設が中心でした。
しかし近年は、生活様式の多様化やコロナ禍の巣ごもり生活により、「自宅をもっとおしゃれで快適な空間にしたい」「リモートワークがしやすい環境を作りたい」という人が増え、個人宅における需要が増加傾向にあるようです。
インテリアの情報はインターネットでいくらでも検索できますが、素人にとっては快適性・機能性・安全性・デザイン性のすべてを追求するのは容易ではありません。
経験に裏付けされた質の高い提案ができるインテリアコーディネーターは、一般住宅の新築・改築の際に重宝されるでしょう。
中古物件・空き家に関する案件も増える予測
近年の日本では、少子高齢化・人口減少に伴う空き家問題が深刻化しています。国土交通省の資料によると、空き家の総数(二次的利用・賃貸用または売却用の住宅を除く)は1998〜2018年までの間で1.92倍にも増加しました。
増加する空き家に歯止めをかけるため、空き家を活用するリノベーションの取り組みが全国で進められています。
「リノベーションした古民家で快適に暮らしたい」「購入した中古物件をおしゃれにしたい」という人も多く、インテリアコーディネーターが活躍する場面は今後ますます増えそうです。
顧客の理想を形にする専門家
インテリアコーディネーターは、快適な住まいづくりに欠かせない職種であり、将来性も有望です。業務遂行に必須の資格はありませんが、顧客の理想を形にするためには、さまざまな専門知識・美的センスが必要です。
これから目指す人は、関連資格を取得した上で、住宅・インテリア業界への転職を試みるのもよいでしょう。
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