税理士に向いている人の特徴は?見極めのポイントや必須スキルを解説

税理士になるためには、さまざまな知識・スキルが必要です。性格の向き・不向きもあり、誰でも容易になれる職業ではありません。税理士に向いている人には、どのような特徴があるのでしょうか?見極めのポイントや身に付けたいスキルを解説します。

税理士を目指すのに適性は重視すべき?

電卓を操作する税理士

(出典) pixta.jp

税理士は、税理士法が定める国家資格です。税理士を目指している人の中には、「自分はこの仕事に向いているのだろうか」と、職業の適性について悩む人もいるでしょう。進路を決める際、適性はどのくらい重視すべきなのでしょうか?

適性があれば能力を発揮しやすい

職業における適性とは、本人の性格・能力がその仕事を遂行するのに適しているかを指します。例えば、採用時に企業が行う適性検査は、応募者の人となり・能力を定量的に測定し、自社が求める人物像に合致しているかを判断する材料とします。

自分の適性に合った職業に就くと、長所や能力をいかんなく発揮できるのがメリットです。やりがいも感じやすく、向上心と熱意を失わず仕事に向き合えるでしょう。

どの職業にも適性がありますが、税理士は専門性が高い職業なので、向き・不向きが顕著に表れやすいといえます。

適性がなければ長続きしない可能性も

適性がない職業に就くと、自分の長所や能力がなかなか生かせず、仕事に慣れるまでに時間がかかります。ストレスも溜まりやすく、やりがいや喜びをなかなか見いだせないでしょう。

特に、税理士はゴールまでの道のりが長い上、資格試験に合格してからも多くの学びが必要です。職業への熱意と適性がなければ、勉強や仕事が長続きしない可能性があります。

ただし適性がないからといって、憧れの職業を諦める必要はありません。適性は絶対的なものではない点にも、留意すべきです。自分の性格・能力を正しく理解した上で、短所をどれだけ克服できそうかを考えましょう。

税理士の仕事に向いている人の特徴

パソコンを手元に打合せする男性

(出典) pixta.jp

税理士の仕事に向いている人の代表的な特徴を、いくつかピックアップします。絶対的な条件ではありませんが、以下に挙げる資質・能力を備えていれば、日常業務を円滑に進められるでしょう。

几帳面で仕事が丁寧

税理業務には、証憑書類のチェックや税金の計算などが含まれます。小さなミスが命取りになるため、個々の業務を注意深く進めなければなりません。地道な作業が苦にならず、細かい作業を正確に処理できる人が向いているでしょう。

確定申告のシーズンになると、業務は多忙を極めます。申告期限・納期限が定められているので、正確さに加えて迅速さが求められます。事務処理能力が高い人は、自分の長所を十分に発揮できるでしょう。

大雑把で細かい作業が苦手な人は、税務業務には適していないといわざるを得ません。ただし、将来的にはAIが事務処理・記帳代行業務などの定型業務を担う可能性があります。

数字に強い

企業の財務状況・業績をチェックして、適切なアドバイスをするのも税理士の重要な役目です。数字に苦手意識がある人よりも、数字に強い人の方が業務を円滑に進められるでしょう。

ここでいう「数字に強い」とは、計算力の高さを指すわけではありません。会計処理・税金計算は、ソフト・電卓を使って行うのが一般的なので、計算力の高さが求められるシーンはそれほどないといってよいでしょう。

試算表・決算書に記載されている数字から企業の経営状況を把握できる能力、すなわち「数字から状況を読み取る力」が必要です。

コミュニケーション能力が高い

税理士というと、申告書や決算の数字にひたすら向き合うイメージがあるかもしれません。しかし実際は、顧客企業の経理担当者・経営者と連携して業務を進めていくため、高いコミュニケーション能力が必要です。

コミュニケーション能力とは、他者とスムーズに意思疎通を図る能力を指します。「良好な人間関係を構築する能力」と言い換えてもよいでしょう。具体的には、以下のような要素によって成り立っています。

  • 伝える力
  • 聴く力
  • 非言語によるコミュニケーション

税務相談やコンサルティングでは、相手のニーズを丁寧にくみ取り、適切な解決策を提示するプレゼンテーション能力も重視されます。

税理士の仕事に不向きな人の特徴

打ち合わせをするビジネスマン2人

(出典) pixta.jp

不向きな人の場合、勉強や仕事でストレスが溜まったり、思うように活躍できなかったりする状況が続きます。不向きな特徴に当てはまる人は、いかに短所を克服できるか考えましょう。

向上心がない・勉強が苦手

税理士になるには、難関の国家試験に合格し、2年以上の実務経験を積む必要があります。学ぶことが好きで、コツコツと努力を重ねられる人でなければ、税理士になるのは難しいでしょう。

税理士試験は科目合格制で、11科目のうち5科目に合格する必要があります。2022年度の合格率は19.5%で、5科目すべてに合格した人は合格者5,626人中620人でした。

税制は頻繁に改正されるので、税理士になってからも情報のアップデートは欠かせません。自分の知識にあぐらをかいて日々の努力を怠る人は、業界で長く活躍できないでしょう。

参考:令和4年度(第72回)税理士試験結果|国税庁

人の話をすぐうのみにする

人の話やSNSの情報をすぐにうのみにしてしまう人は、税理士に向いていない可能性があります。

税務は租税法律主義であり、いかなる状況でも法律の条文が絶対です。そのため、不明点・疑問点があれば、法律の条文や国税庁のWebサイトなどを確認するのが基本となります。

人の話をすぐにうのみにする人は、「税務署の職員に確認したから」「信頼できる先輩が言っていたから」といった理由で、一次ソースを自分で確認しない傾向があります。情報が間違っていた場合、取り返しのつかないミスにつながる恐れがあるでしょう。

ストレスを溜め込みやすい

責任感の強さは税理士に欠かせない要素の1つですが、何でも自分で背負い込む性格の人は、ストレスに押しつぶされてしまいます。判断に迷った場合は自分で何とかしようとせずに、上司・先輩に相談する姿勢が必要でしょう。

会計事務所・税理士事務所の繁忙期は、12~5月です。繁忙期以外は定時退社が可能ですが、年末調整や確定申告、決算の時期になると時間外労働も多くなります。

申告期限の直前に資料を提出する顧客もおり、業務がスケジュール通りに進まないケースも珍しくありません。税理士を目指すのであれば、肉体面・精神面のタフさを備えている必要があります。

税理士に必要なスキルセット

経理作業

(出典) pixta.jp

どの職種にも、業務遂行に欠かせないスキルセット(知識・技術・経験の組み合わせ)があります。これから税理士を目指す人は、今の自分に何が欠けていて、どう補強すべきなのかを考えましょう。

知識・スキルは長い時間をかけて培われるものなので、日々の自己鍛錬が欠かせません。

会計・税務の専門知識と実務経験

税理士を名乗るには、日本税理士会連合会が備える税理士名簿への登録が必須です。登録の条件は、大きく以下の2つがあります。

  • 税理士試験に合格していること(公認会計士・弁護士・税理士試験を免除された者を除く)
  • 通算2年以上の実務経験があること

税理士の業務は複雑かつ多岐にわたるため、試験勉強で習得した知識だけでは、業務の遂行は困難です。会計に関する事務などに従事し、会計・税務の基盤をしっかりと固める必要があります。

必要な知識・スキルは、勤務先によって異なります。近年は、グローバル化に伴う企業の海外展開が盛んなため、国際税務の知識があると活躍の場が広がるでしょう。

参考:税理士の登録|国税庁

経営に関する知識

税理士の独占業務の1つに、税務相談があります。経営者に経営面・節税面のアドバイスをする「経営コンサルタント」のような役割を担うため、会計・税務の知識に加え、経営の知識が不可欠です。

経営者からの相談内容としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 事業戦略
  • 人事・労務に関する問題
  • 節税対策
  • 経営者の資産管理
  • 資金繰り・資金調達
  • 事業承継(M&A)

近年は、中小企業の事業承継が増加傾向にあります。後継者に事業用資産を承継するにあたって、企業の資産価値を正しく評価するスキルが不可欠です。

情報を整理・分析する力

税制は年々複雑化しており、改正も頻繁に行われます。優秀な税理士は、税務判断に必要な情報を素早く取捨選択し、税法規定に照らし合わせながら分析する能力を備えています。

企業のデータから現況を読み取り、問題解決の糸口を見いだすのは容易な作業ではありません。情報の整理力・分析力に加え、物事の本質を見極める洞察力・推理力も求められるでしょう。

業務遂行に必要なスキルは、実務経験を積むことによって磨かれていきます。適性・スキルがないからと諦めず、日々努力を重ねることが大切です。

ITリテラシー

近い将来、税理業務の一部をAIやRPAといった最新テクノロジーが担う時代がやってきます。

「AIが税理士の仕事を奪う」という声も一部に聞かれますが、AIが導入されれば作業効率が大幅に向上するため、空いた時間を付加価値の高い業務に投入できるようになるでしょう。

時代の波に取り残されないためにも、最低限のITリテラシーと最新技術を使いこなすスキルを身に付けておかなければなりません。60歳以上のベテランが多い税理士業界において、ITに強い若手人材は重宝されます。

税理士が備えるべきマインド

税理士

(出典) pixta.jp

業務遂行に必要な知識・スキルを身に付ける前に、税理士が備えるべきマインドを確認しましょう。不正を許さない心と強い責任感がなければ、税理士としての役目を果たすのは困難です。

不正を許さない正義感

税理士には、不正を許さない正義感が求められます。「顧客の要望にできる限り応えたい」という気持ちがあっても、違法な節税・脱税への協力は許されません。

法令順守意識・正しい倫理観を備えている人であれば、顧客を正しい方向に導けます。しかし、目先の利益に捉われやすい人・顧客に対して強く主張できない人は、成り行きで脱税ほう助をしてしまう恐れがあります。

専門的な知識・経験を身に付ける以前に、税理士としての心構えをしっかりと確認しましょう。脱税だと知りながら税務申告をした場合、税理士業務の停止・禁止に処される恐れがあります。刑事処罰を受ける可能性も否定できません。

参考:税理士法 第45条 | e-Gov法令検索

職務を全うする責任感

税理士の職務は、企業・個人の納税業務をサポートすることです。専門知識を駆使して、申告漏れ・脱税を未然に防ぎます。

税務申告では、決して数字を間違えてはならないため、常に大きなプレッシャーが付きまとうでしょう。職務を全うする強い責任感とプロ意識がなければ、税理士の仕事は務まらないといっても過言ではありません。

企業・個人が納めた税金は、国民の生活や健康、安全を守るために広く使われます。「税務を通して国の発展や人々の生活を支えたい」という人にとっては適職といえるでしょう。

税理士に必要なスキルはどう身に付ける?

セミナー

(出典) pixta.jp

未経験者が税理士になる道のりは長く、試験に合格したからといって、すぐに活躍できるわけではないのが実情です。業務に必要なスキルは、どのようにして磨けばよいのでしょうか?

セミナーや講座に参加する

税理士試験のテキストだけでは、生きた知識がなかなか身に付きません。税理士会・税理士が開催するセミナーや講座に積極的に参加し、最新情報・ノウハウをキャッチアップしましょう。

近年は、オンラインセミナーが増えており、場所・時間を気にせず手軽に知識の習得ができます。

税理士法人が主催するセミナーでは、国際税務や事業承継、相続といったさまざまな事例に触れられるため、業務への理解が深まるはずです。

関連企業に転職して経験を積む

税理士を名乗るには資格が必要ですが、関連企業への転職に資格は必要ありません。会計事務所や税理士事務所、コンサルティングファームで税理士補助・アシスタントとして働き、実務経験の中でスキルを身に付ける手もあります。

税理士登録には、通算2年以上の実務経験が必要です。会計事務所・税理士事務所などで働けば実務経験の要件を満たせるため、資格試験に合格した後すぐに税理士登録が可能となるでしょう。

なお、税理士試験には「職歴による受験資格」が設けられています。税理士・弁護士・公認会計士の補助事務に通算2年以上従事した場合は、税理士試験の「税法に属する科目」の受験資格を満たせます。

参考:受験資格について|国税庁

適性の見極めと短所をカバーする努力が大事

パソコンに向かうビジネスマン

(出典) pixta.jp

どんな職業にも向き・不向きがあります。自分の価値観・性格に合う仕事かを見極めた上で、短所の克服が可能かどうか考えましょう。

これから税理士を目指す人は、実務経験を通じて必要なスキルを身に付ける選択肢もあります。会計事務所・税理士事務所などのアシスタントとして働けば、税理士への理解がより深まるでしょう。

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