美容師は、ヘアカット・ヘアメイクなどを担当する仕事ですが、将来性のある職業なのでしょうか?現状や今後の需要、主な働き方について解説します。美容師を目指す方法や、主なキャリアプランについても見ていきましょう。
美容師の現状と将来性
美容師は、ヘアスタイルの提案やカットなど、美容院で活躍する職業です。資格の取得を考える上で、将来性は気になるポイントでしょう。美容師を取り巻く現状と、将来性について解説します。
美容師の現状と需要
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、美容院の数はここ数年増加傾向です。2021年には26万軒を超えています。
美容師の数も増加傾向で、2022年に実施された第47回美容師国家試験の合格者数は1万7,266人です。過去数年の合格者数を見ると、増加傾向にあります。例を挙げると、第43回試験の合格者数は1万5,502人です。
店舗の数が増えている分、働く場所も増えていますが、美容師数の増加は競争率が高まっていることを意味します。
労働条件や地域にもよりますが、魅力のあるサロンで働くには国家試験を持っているだけでなく、技術やスキルが求められるでしょう。
参考:過去の試験実施状況|公益財団法人 理容師美容師試験研修センター
実力があれば安定的に仕事が見込める
美容師の仕事は顧客の髪をカットし、シャンプー・カラー・パーマなどを施して、希望のヘアスタイルを作り上げることです。ヘアカットにはセンスや技術が求められるため、実力があれば安定して仕事を請け負えます。
一部の美容室ではすでに自動シャンプーが普及しており、今後単純作業がロボットに代わる可能性はありますが、全ての仕事がなくなるとは考えにくいでしょう。
今後は実力を身に付け、自己プロデュースを考えていくのがポイントです。AIにはできない分野を開拓し、顧客を増やしていく必要があります。
美容師に将来性がないといわれる理由
美容師は、国家資格を取得した人だけが就ける職業です。安定した職業のように思えますが、将来性がないという意見もあります。主な理由とされる要因を見ていきましょう。
収入が低い傾向がある
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、美容師の年収は約330万円です。国税庁の2021年民間給与実態統計調査では給与所得者の平均年収が443万円なので、美容師の年収は全体の平均よりも低いといえます。
収入が少ないと考えると、将来性の面では不安が大きいでしょう。しかし、あくまでも平均であり、全ての美容師の収入が少ないわけではありません。
営業力や実績のある美容師にはインセンティブが支払われるケースが多く、独立によってさらに年収アップの道も目指せます。労働条件を確認して、求める収入が得られるのかチェックしておくのが大切です。
参考:美容師 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
労働環境が厳しいといわれる
美容師は顧客の予定に合わせて動くため、休憩の時間帯が不規則になり、まとまった休みが取りにくいといわれます。接客業である以上、予約が多い時間帯や時期の休みは難しくなると考えておきましょう。
シャンプーや薬剤を毎日使うため、手荒れに悩まされるケースもあります。労働環境の面で長く働くのが難しいのではないかと考える人もいますが、勤める店舗の選び方や日々のケアにより対処は可能です。
求人情報を確認する際は、休日の設定や福利厚生のチェックも怠らないようにしましょう。
美容師のキャリアは性別によって異なる
美容師は長く働いていくうちに、ステップアップしていきます。キャリアの築き方は性別によっても傾向が異なるようです。性別ごとのポイントを確認しましょう。
男性はセカンドキャリアも視野に入れよう
美容師は、若い世代が多い職業です。積極的にサロンへ通うのは若者が多く、顧客を集めるには最新のヘアスタイルや好みを熟知していなければなりません。
厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」をさかのぼって見てみると、男性美容師の人数は40代までが多くなっていることが分かります。年収に関しても、一般の会社員と比べると早い時期に下がる傾向です。
独立や転職を考える男性美容師が多い点も影響していると考えられますが、40~50代からセカンドキャリアを視野に入れるのが適しています。美容師資格や経験を生かして似た業種のサロンで副業をする、本社勤務を目指すなど、目指せる方向性は多様です。
参考:賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種第3表DB | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
女性美容師のニーズは高い
文部科学省では「学校基本調査」を実施しています。2022年の調査によると、美容学校の卒業者数は女性の方が多い傾向です。男性に対して、女性は約3倍となっています。
しかし女性の場合、美容師免許を持っていても長く働くとは限りません。ライフステージによって雇用形態を変える、退職するなど、勤続年数が長くなるに従って変化があります。
子育てをしながら働ける環境を整えているサロンもあり、需要に合わせて働ける女性美容師のニーズは高いといえるでしょう。
美容師のパート求人も存在します。美容師免許を持っていれば働ける場所は多く、一般のパートよりも高い時給で働けるメリットもあるでしょう。
参考:学校基本調査 令和4年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校《報告書掲載集計》 学校調査・学校通信教育調査(高等学校) 専修学校 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
美容師が活躍できる場所や働き方
美容師にはさまざまな働き方があります。主な雇用形態と、活躍できる場所を覚えておきましょう。転職先・就職先を見つける際には、求人情報の条件面をチェックするのがポイントです。
直接雇用で働く
美容師には、直接雇用で働いている人が数多くいます。正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態はさまざまです。派遣社員として働く場合は直接雇用ではありませんが、派遣会社に雇用されています。
店舗に雇用される働き方は安定感があり、魅力も大きいでしょう。しかし、美容室では歩合給を導入しているケースが多く、顧客からの指名数によって収入が変動するのが一般的です。
直接雇用といっても、保証されるのが基本給だけとなると、他の雇用形態と収入面で大きな差はありません。
できるだけ安定した職業に就き、管理職や本社勤務を目指したいと考えるなら、直接雇用で働くことを検討しましょう。
フリーランスとして働く
美容師は独立して店を開く人がいることからも分かるように、フリーランスが多い職業です。業務委託や訪問美容など働き方は多様で、個人事業主として働く人が多いでしょう。
業務委託の場合、サロンと雇用関係は結ばず、個人事業主として契約します。一般の従業員と同様に店舗に勤務しますが、シェアサロンのように各自のスペースを与えられるケースもあるでしょう。
訪問美容は、介護やサポートが必要な人のために、指定場所へ出向いてヘアカットやシャンプーを行うサービスです。フリーランスとして働くと、実力に応じて店を開くことも可能で、収入アップを目指せます。
美容師を目指す方法
美容師を目指すには、資格が必要です。資格を取得するまでの一般的な流れを解説します。美容師免許を持っていない場合は、まず資格取得から検討しましょう。
美容専門の施設に通う
美容師試験を受けるには、一定の技術を学ぶ必要があります。受験資格は「理容師・美容師養成施設で定められた課程を修了した人」となっており、最短で2年以上、養成施設に通わなければなりません。昼間・夜間学部は2年、通信課程では3年以上です。
美容専門学校で学ぶのは、学科と実技です。衛生管理や香粧品化学などの専門的な授業が行われ、店舗で顧客に施術するための知識を身に付けます。
一般の学校とは異なり、美容師・理容師になるための授業が行われるのが特徴です。
参考:受験資格 |公益財団法人 理容師美容師試験研修センター
国家試験に合格する
学校で必要な単位を取得すると、国家試験を受験できます。卒業だけで資格が得られるわけではなく、試験に合格しなければなりません。
合格率は8割程度と高いですが、授業で学んだ知識や技術が身に付いていないと合格できない可能性はあります。
実技試験・筆記試験が行われ、両方の試験に合格すると免許が発行されます。試験に合格した後は、免許登録申請が必要です。
免許が発行されて初めて、美容師として勤務できるようになります。
美容師の基本的なキャリアプラン
学校を卒業して免許を取得した後、どのように美容師のキャリアを積むのが一般的なのでしょうか?免許取得後の主な流れを紹介します。
アシスタントとして技術を身に付ける
一般的に、ヘアカットを担当するには一定の技術が必要です。失敗が許されないこともあり、最初はアシスタントとして先輩の技術を見ながら学びます。
アシスタントの業務は、掃除・シャンプー・接客・受付など多様です。アシスタント業務の多くは免許がなくても可能となっており、専門学校に通いながらアルバイトもできます。
早く技術を身に付けて一人前になりたいと考えているなら、美容室でアルバイトをしながら免許取得を目指すのもよいでしょう。スタンバイでも、美容室のアシスタント業務の求人情報を探せます。
あくまでも、ヘアカットを含む専門的な業務は担当できないため、本格的に働くには免許が必須です。
スタイリストとして活躍
アシスタントとして技術を学び、一定の基準を満たしていると判断されればスタイリストとして働けます。ヘアカットを含む専門業務を担当し、指名客に対応するのが基本的な仕事です。
スタイリストにはランクが設けられている場合が多く、ランクが上がるほど収入も増えていきます。ランクアップの基準は店舗ごとに異なりますが、指名客の数や顧客満足度を総合的に判断されるでしょう。
管理職や独立を目指す
スタイリストとして5~6年以上技術を磨くと、管理職へのステップアップや独立が視野に入ってきます。実力があれば指名客が多くなり収入も増えるため、自分で店を構えるだけの資金も手に入るでしょう。
管理職と独立のどちらを目指すとしても、一定の実績が求められます。顧客とコミュニケーションを取る力や、満足度を高めるためヘアカットのセンスや技術を身に付けるのも重要です。
管理職になると、店長やエリアマネージャーとして新人美容師の育成やマネジメントが主な業務になります。独立した場合は、自分の店で活躍することになるでしょう。
資格が必要な美容師は将来性のある職業
美容師になるには資格を取得しなければならないため、実力があれば安定した仕事が得られます。管理職や独立を目指せる程度の実績を積めれば、将来性は高いといえるでしょう。
65歳が定年となる一般の会社に比べると早い時期に年収が下がる傾向があるため、セカンドキャリアを考えておくのも重要です。
まずは美容専門学校に通い、免許取得の見込みが立ってからアシスタント業務や美容師の求人を探してみましょう。