弁理士は将来性が高い職業?なるメリットや習得したいスキルを解説

弁理士を目指している人の中には、将来性を不安視している人もいるのではないでしょうか。弁理士は需要が高い職業であるため、将来性のことは気にせず資格の勉強を進めるとよいでしょう。弁理士に将来性がある理由や、活躍するために必要な点を解説します。

弁理士には将来性がある理由

弁理士バッジ

(出典) pixta.jp

弁理士は特許に関する専門家であり、将来性が高い職業の1つです。なぜそのようにいえるのか、さまざまな角度から見ていきましょう。

PCT国際出願件数が増えている

特許庁が公表している資料によると、日本における特許出願件数は年々減りつつあります。弁理士の主な仕事は知的財産権の出願手続きであるため、国内でのニーズは減少傾向です。

一方、日本の特許庁を受理官庁とした特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数は、2019年まで増加傾向にあります。その後はやや減っているものの、依然として高い水準を維持しています。

研究開発や企業活動のグローバル化を受け、国際的に見ると弁理士のニーズは高まっているのです。

参考:特許行政年次報告書 2022年度版 P2

全ての業務がAIに代替されるわけではない

AIの登場により、多くの職業が将来的にはAIに代替されるといわれています。弁理士業務の1つである商標出願業務においても、他の会社の商品名やロゴを検索・調査する作業は、AIによる代替が可能です。

一方で、同じく弁理士の主力業務である明細書作成業務は、AIには不可能であるとされています。明細書作成業務には、さまざまな知識や高い文章力が求められるためです。

見方を変えれば、明細書作成業務における弁理士の重要性は、AIの登場によりますます高まっていくともいえます。AIが弁理士の将来性を脅かす心配はないと考えてよいでしょう。

企業内弁理士として働ける

これまで弁理士資格を取得した人は、特許事務所に入所するのが一般的でした。しかし近年は、企業の知財部や法務部で働く企業内弁理士のニーズが高まっています。

企業内弁理士の主な仕事は、特許・商標・ライセンスに関する契約業務です。これらの仕事は外部の特許事務所に外注するのが一般的でしたが、近年はコスト削減を目的に、自社で申請しようとするケースも増えています。

内閣府が企業に知的財産や無形資産を生かして競争力を高めるよう促している事情もあり、企業内弁理士はますます注目を集める職業となるでしょう。

参考:知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン

スタートアップからのニーズが高い

弁理士に将来性がある理由の1つに、スタートアップからのニーズが高い点も挙げられます。スタートアップは自社の成長を加速させるために、アイデアや技術を特許として保護する必要があるためです。

スタートアップの支援に力を入れている特許事務所も現れています。特許庁が特許審査に関するベンチャー支援策を打ち出しているのもポイントです。

スタートアップが生み出す新たなアイデアや技術は、国際競争力の維持・強化に欠かせません。弁理士がスタートアップの知的財産戦略に貢献することで、技術面における日本の発展にも寄与できるのです。

参考:特許審査に関する新たなベンチャー企業支援策を開始します | 経済産業省 特許庁

専門性が高く異業種から参入しにくい

特許や実用新案の申請代行業務は、弁理士の独占業務です。弁理士以外がこれらの業務を行うことは、法律により制限されています。

特に、弁理士の主力業務である明細書作成は、高度な専門スキルを求められる作業です。異業種からの参入が難しい領域であるため、弁理士の価値は下がらないといえます。

世の中から特許や実用新案の申請代行業務がなくならない限り、弁理士の将来も明るいと考えられるでしょう。

弁理士になるメリット

知的なイメージ

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弁理士には将来性があることを理解できたら、次に弁理士の魅力をチェックしておきましょう。メリットを把握しておけば、弁理士を目指すモチベーションを維持しやすくなります。

社内外から高い評価を得られる

弁理士になるためには、国家試験である弁理士試験に合格しなければなりません。弁理士試験の2022年度の合格率は6.1%、前年度も6.1%と、弁理士資格は難関資格に位置付けられます。

弁理士試験を突破するためには、相当な時間をかけて勉強する必要があります。弁理士の資格を取得していれば、知識や向上心を社内外から評価されやすくなるのです。

例えば、企業内弁理士として働く場合、弁理士の肩書があると取引相手に安心感を与えられます。社内の人からも注目される人材となるため、より働きやすい環境で業務に取り組めるでしょう。

参考:令和4年度弁理士試験の結果について

やりがいのある仕事に従事できる

天然資源が乏しい日本において、知的財産は重要な経営資源と位置付けられています。国際競争力の維持・向上を図るためにも、日本で生まれたアイデアや技術に関しては、他国の模倣を防がなければなりません。

このような状況において、開発者や権利者の知的財産を守る弁理士の業務は、社会的意義の大きな仕事といえます。弁理士になると、やりがいのある誇り高い仕事に従事できるでしょう。

近年はPCT国際出願件数が増えていることもあり、諸外国から日本の知的財産を守る弁理士の重要性は、ますます高まっていくでしょう。

働き方を選べる

弁理士になるメリットとしては、働き方の選択肢が多い点も挙げられます。特許事務所勤務・経営や企業内弁理士など、さまざまな働き方から選ぶことが可能です。

日本弁理士会が公表している資料によると、どの働き方にも一定数の弁理士が存在していることが分かります。特に多い就業形態は、特許事務所勤務・経営や企業内弁理士、弁理士法人勤務です。

特許事務所や企業で実績を積んだ後、独立開業しやすいのもメリットといえます。特許事務所で働く場合、働き方に融通が利くケースが多い点もポイントです。

参考:日本弁理士会会員の分布状況 7.弁理士の就業形態別

弁理士は20代~30代半ばまでの人におすすめ

打ち合わせをするビジネスウーマン

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若いうちに弁理士になれば、さまざまなメリットを得られます。弁理士が20代~30代半ばまでの人におすすめできる理由を見ていきましょう。

若手弁理士は企業や法律事務所の需要が高い

日本弁理士会の資料の年齢分布から、35歳以上65歳未満の弁理士が多い事実が分かります。弁理士業界は若年層が極端に不足している業界なのです。

若手弁理士は多くの企業や法律事務所から注目されており、転職市場においては引く手あまたです。求人の選択肢が多いため、自分の希望に合った職場が見つかりやすいでしょう。

新たな視点やアイデアを生み出せる点も、若手弁理士の需要が高い理由です。中高年世代が主体となっている職場では、個性や創造性を十分に発揮することが期待されています。

参考:日本弁理士会会員の分布状況 3.弁理士年齢分布

フレキシブルに働ける

多くの特許事務所では、フレキシブルな働き方が可能となっています。弁理士の仕事は担当者の裁量に委ねられる部分が大きいためです。

テレワーク・フレックス制・時短勤務など、働き方に融通が利きやすいため、昔ながらの働き方になじめない若手でも働きやすいでしょう。

プライベートの時間も充実させたい人や、残業・休日出勤にストレスを抱えながら働きたくない人にとって、弁理士は理想の働き方を追求できる職業だといえます。

若いうちから高収入を狙える

年功序列型の評価制度を採用している企業では、若手の賃金が安く抑えられています。どれだけパフォーマンスが高くても、大きく稼ぐのは難しいでしょう。

一方、多くの特許事務所では出来高制や成功報酬制を採用しています。能力や実績が評価されれば、若いうちから高収入を狙うことも可能なのです。

報酬が増えればモチベーションがアップし、さらなる自己研さんに励みやすくなります。お金が貯まっていけば、早い段階での独立も視野に入れられるでしょう。

弁理士として活躍するために必要なスキル

コンサルタントのイメージ

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弁理士には将来性があるとはいえ、スキルアップを怠っていると仕事にありつけなくなる恐れもあります。活躍できる弁理士になるために習得したいスキルをチェックしておきましょう。

特定分野の専門スキル

弁理士として活躍するためには、特定分野の専門性を高めることが重要です。得意な分野の専門スキルに磨きをかけることで、弁理士としての希少性が高まります。

知的財産はほとんど全ての経済活動に関連しており、業務の対象となる分野が幅広いため、需要が高い分野を選んで専門性を高めていくとよいでしょう。

特定分野のスペシャリストとして活躍するためには、技術トレンドや研究動向に敏感になり、常に最新の情報を追うことも大切です。

語学スキル

国際出願件数が増えているため、これからの弁理士には英語や中国語などの語学スキルも求められます。世界を相手にできる弁理士は、どの組織からも重宝されるでしょう。

弁理士に求められる語学力は、会話スキルではなく読み書きの能力です。文献や手続き書類の内容を正確に理解し、適切な日本語に訳せるスキルが重要といえます。

英語の資格取得を目指すなら、TOEIC700点以上を目標に勉強しましょう。ただし、弁理士業務では実務英語も使うことになるため、一般的なビジネス英語と並行して実務英語の学習も必要です。

知財コンサルティングスキル

これからの弁理士の働き方として、知財コンサルティングが注目されています。知財コンサルティングのスキルを身に付ければ、企業の特許戦略をサポートすることが可能です。

アイデアや技術を保護することも重要ですが、ビジネスにおける知財の生かし方が分かれば、企業の成長をより加速させられるでしょう。

知財コンサルティングの領域はまだ発展途上の段階にあり、サービスを提供している特許事務所も限られています。知財コンサルティングスキルがあれば、企業を相手としたコンサルタントとしての独立も視野に入るでしょう。

弁理士は将来性が高い職業

ビジネスカウンセリング

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PCT国際出願件数が増えていることや、企業内弁理士のニーズが高まっていることなどから、弁理士は将来性が高い職業であるといえます。弁理士の仕事が全てAIに代替される可能性も低いでしょう。

弁理士になれば社内外から高い評価を得られる上、やりがいのある仕事に従事できます。活躍するために必要なスキルもチェックし、将来性のことは気にせず資格取得に向けて学習を進めましょう。