日本語教師の将来性について。働き方や活躍する方法などもチェック

日本語教師の需要は、国内の在留外国人数や日本に興味がある外国人の数に左右されます。コロナ禍を経験し、教師を続けるかどうかで悩んだ人も多いでしょう。日本語教師の将来性について、今後の動向や活躍し続けるためのヒントとともに解説します。

日本語教師の将来性

日本語学校のイメージ

(出典) pixta.jp

日本語教師は、主に在留外国人を相手にするため、仕事の需要が世界の政策や経済情勢に左右されやすい傾向があります。コロナ禍では入国制限によって外国人数が減少し、離職を余儀なくされた人も少なくありませんでした。先行きが不透明な時代、日本語教師に将来性はあるのでしょうか?

外国人労働者や留学生の増加

日本語教師の仕事は今後もなくならず、将来的には需要が増える可能性があります。その背景には、日本を訪れる外国人労働者や留学生が増加していることが挙げられます。

日本では少子高齢化の影響で労働人口が減少しており、特に介護・看護・農業の分野では、外国人労働者に頼らざるを得ないのが現実です。

2019年4月、政府は人手不足解消を目的とした在留資格「特定技能」を創設し、外国人労働力の確保に乗り出しました。2023年4月時点の外国人労働者数は182万2,725人で、企業の届け出が義務化された2007年以来、過去最高を更新しています。

一方で、日本語教師の雇用は国の政策や経済情勢の影響を受けやすく、今と同じ状況がずっと続くとは限りません。「日本語教師の需要は今がピーク」とする声もあります。

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省

日本語教師の国家資格が創設

在留外国人の増加で需要が増えていることを受け、日本語教師の資格を国家資格化する「日本語教育機関認定法」が国会で可決されました。

筆記試験に合格して実践的な研修を修了した者は、2024年4月より「登録日本語教員」と呼ばれる国家資格の有資格者として認められます。国家資格の創設で日本語教師の働きが注目され、職業としての価値が高まる可能性があるでしょう。

登録日本語教員の資格を取得をすれば、文化庁が認める「認定日本語教育機関」での勤務が可能となり、活躍のフィールドが大きく広がります。

参考:日本語教師を国家資格にする” 法律が成立 在留外国人増加で | NHK 

日本語教師の需要

日本語を教える教師

(出典) pixta.jp

日本語教師の需要は、国内と海外の両方にあります。これから目指す人も、既に日本語教師として働いている人も、どこでどのような働き方をしたいのかを明確にしましょう。日本語教師を取り巻く現状は常に変化するため、情報収集が欠かせません。

国内の需要

国内では、主に在留外国人を対象に日本語を教えます。在留外国人の数は、国の政策や経済情勢、入国制限によって影響を受けるため、需要は常に一定ではありません。

わが国の在留外国人数は、新型コロナウイルスによる入国制限を受けて大きく落ち込みました。2021年末の在留外国人数は前年よりもおよそ12万人少ない約276万人となり、日本語学習者数の減少で日本語教師の需要も低下する事態となっています。

現在は入国制限が解除され、在留外国人の数は増加傾向にあります。出入国管理及び難民認定法の改正や特定技能の創設により、今後は日本語学習者の拡大と多様化が進むとみてよいでしょう。

参考:令和3年度国内の日本語教育の概要 | 文化庁

令和2年度 国内の日本語教育の概要|文化庁

海外の需要

一時的な落ち込みはあるものの、海外での需要は堅調に推移しています。国際交流基金の資料によると、日本語教育機関の数は1979年度から2021年度までの間に16倍の1万8272件に増えました。

学習者数は29.8倍の379万4714人、日本語教師数は18.2倍の7万4592人となり、国内よりも需要が高い現状がうかがえます。学習者数が多い国は、中国・インドネシア・韓国・オーストラリア・タイ・ベトナムなどです。

上位10カ国はオーストラリアとアメリカを除いて全てアジア地域であり、今後も東アジアと東南アジアでの高い需要が期待できそうです。

参考:2021年度海外日本語教育機関調査結果概要|独立行政法人 国際交流基金

日本語教師の活躍の場

日本語学校

(出典) pixta.jp

日本語教師が活躍できるフィールドは、日本語学校だけではありません。個人の努力次第で、いくらでも活躍の場を広げられます。代表的な就職先・勤務先をチェックしましょう。

日本語学校

日本語教師の勤務先として最も一般的なのが、民間の日本語学校です。主に、授業のみを受け持つ「非常勤講師」と、学校の運営全般にも関わる「常勤講師」の2種類の働き方があります。

実際のところ、常勤講師の枠数は少なく、多くの日本語教師が非常勤講師として働いています。非常勤講師の給与は時給制で、授業のコマ数×時給で換算するのが一般的です。

どちらの働き方も、日本語の文法や発音だけを教えればよいのではなく、歴史や文化、マナーなどについてもしっかりと伝える必要があります。授業の他に、テスト問題作成・採点・授業の準備なども業務範囲です。

日本語学校以外の教育機関

小学校・中学校・高校・大学・インターナショナルスクールなどの教育機関で働く教師もいます。働き方は大きく2パターンに分かれます。

  • 専任の日本語教師として働く
  • 日本語だけでなく、他の教科も教える

専任の日本語教師の採用枠は非常勤が大半で、常勤はそれほど多くはありません。他の教科を教える際は、日本語教師としての経験やスキルの他に、教員免許が必要です。

大学・大学院に勤務するにあたっては、修士や博士の学位と一定の日本語教師経験が求められるケースがあります。留学生が主な対象となるため、生活指導や進路相談を任される機会も多いでしょう。

企業

グローバル化が加速する現代、外国人の雇用を強化する国内企業が増えています。ビジネス目的で来日する外国人の中には、日本語が流暢でない人も含まれます。

仕事に必要な日本語やマナーなどを学ばせるため、日本語教師を企業研修講師として招く企業は少なくありません。日本語学校の非常勤講師は未経験でも採用される可能性がありますが、企業研修の講師は実務重視です。

ビジネスマナーや敬語なども教える必要があるため、教師としてより高いレベルを要求されるでしょう。日本語を話せない外国人が多い場合は、英語や中国語などの外国語スキルが必要です。

海外で教える

海外で日本語を教えるのに必要な資格はありません。アルバイトや個人レッスン、ボランティアであれば、資格がなくても働けるため、日本語教師としてのキャリアを積みたい人にとってはよい選択肢となるでしょう。

一方、海外の日本語学校や教育機関で正式に働く場合は、日本語教師の資格や経験が重視されます。採用条件や求められるレベルは学校ごとに異なりますが、以下のような条件を満たしていると有利です。

  • 大学や大学院で日本語教育を主専攻または副専攻していた
  • 文化庁が認める420単位時間の日本語教師養成講座を修了している
  • 日本語教育能力試験(公益財団法人日本国際教育支援協会)に合格している

日本語教師として活躍するには

講師のイメージ

(出典) pixta.jp

業界で長く活躍するためには、日本語教師としてのスキルを磨き続けることが重要です。しかしそれだけでは、他の教師との差別化が図れない可能性があります。「選ばれる日本語教師」になるためにはどう行動するのが望ましいのでしょうか?

専門性を身に付ける

日本語教師の需要が高まっているとはいえ、全国には多くの日本語教師がいます。資格がなければ従事できない職業と違い、目指すハードルもそれほど高くはありません。「誰にお願いしても同じ」と言われないためには、自分の専門性を確立する必要があるでしょう。

在留資格の種類が増えたことで、日本語学習者の目的は多様化しています。ビジネス日本語を学びたい人もいれば、サブカルチャーに詳しくなりたい人もいるため、生徒のニーズに合わせた教育を提供することが重要です。

近年は、日本の介護施設で働きながら、看護師や介護福祉士の資格取得を目指す外国人が増えています。看護師・介護福祉士の仕事に知見のある人なら、日本語とキャリアの両面からサポートができるため、多くの学校や事業所で重宝されるでしょう。

オンラインレッスンを行う

就労者やビジネスパーソン向けのレッスンには、以前からもオンラインツールが多く用いられてきましたが、新型コロナウイルス感染拡大以降は、日本語学校や教育機関でもオンラインレッスンが取り入れられました。

オンラインレッスンの強みは、教師と生徒の時間さえ合えば、いつでも・どこにいてもレッスンができる点です。日本国内にいる在留外国人はもちろん、海外に住む外国人にも教えられるため、頑張り次第で収入が大きく増えるでしょう。

日本語学校の中には、オンライン授業が可能な教師を募集しているところもあります。ICTリテラシーを備えた人材の需要は、今後ますます増えていくと見込まれます。

求められる日本語教師を目指そう

日本語を教える教師

(出典) pixta.jp

外国人労働者や留学生の増加により、国内の日本語教師の需要はしばらく増加が続く見通しです。海外の日本語学習者の数も堅調に推移しており、仕事がなくなることはないでしょう。

ただし、この状態がいつまで続くのかは分かりません。キャリアを着実にアップさせていくには、生徒のニーズに応えられる日本語教師を目指す必要があります。従来の働き方にこだわらず、デジタルを活用した授業も取り入れていくべきでしょう。

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