土地家屋調査士の将来性は?仕事の魅力や求められるスキルも紹介

土地家屋調査士は、需要・将来性ともに高い仕事です。専門的な知識を備えた資格職でありながら、測量や現況調査といった現場作業も数多く担当します。この記事では、土地家屋調査士の将来性や魅力、求められるスキルを紹介します。

この記事のポイント

土地家屋調査士の需要が高い背景
高齢化社会による相続の増加、空き家問題、所有者不明土地問題といった社会的背景から、土地家屋調査士の需要は高いといえます。
土地家屋調査士の将来性
土地家屋調査士は世代交代の時期が近づいていることや、独占業務を持ち経済情勢にも左右されにくいため将来性が期待できます。
土地家屋調査士に必要なスキル
不動産登記や測量に関する専門的な知識の他、コミュニケーションスキルや屋外作業をこなせる体力が求められます。

土地家屋調査士の需要が高い背景

土地の測量に使用するメジャーと杭

(出典) pixta.jp

現代社会において、土地家屋調査士の需要は高まっているといわれます。その背景には、高齢化社会による相続の増加や空き家問題、所有者不明土地問題などがあります。詳しく確認してみましょう。

高齢化社会による相続の増加

内閣府が発表した2024年の高齢社会白書によると、日本国民の高齢化率(65歳以上の人の割合)は29.1%です。世界全体の高齢化率(2020年)である9.4%と比較しても、高い水準である状況が分かります。

高齢化に伴い、増加が見込まれるのが相続です。遺産相続では土地の売却・分筆(ぶんぴつ)が行われ、この手続きには土地家屋調査士が参加します。

分筆とは、1つの土地を複数の相続人で分け合う際に、その土地を分割する行為です。分筆登記には、土地の境界を確定するための測量が必要になります。こうした一連の手続きを、土地家屋調査士が引き受けるのです。

日本の高齢化の加速により、遺産相続に伴う土地の売却・分筆は今後も増加すると予測できます。土地家屋調査士の仕事も、それに従って増えていくでしょう。

出典:令和6年版高齢社会白書(全体版)|内閣府

空き家問題

日本国内の空き家数は、2023年時点で約900万戸です。過去30年間で、約2倍に増加しています。そのうちの385万戸が、賃貸物件などを除いた使用目的のない空き家です。

活用されていない家屋の適切な管理・活用のため、2014年には「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特措法)」が定められました。この法律は、2023年に強化する方向で改正されています。

このように、空き家の問題は国が解決を進めている社会課題です。空き家の放置は景観を損なうだけではなく、樹木の越境などによる境界争いや、放火・不法投棄のリスクも高めます。

土地の境界決定や空き家化予防に向けた話し合い、空き家所有者に対する説明などは、土地家屋調査士の仕事です。国が対策を強化している問題に対しても、解決に貢献できる職業だといえます。

出典: 令和5年住宅・土地統計調査|総務省

出典: 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律|国土交通省

所有者不明土地問題

所有者不明土地とは、未登記などの原因によって、誰のものであるかが不明になっている土地を指します。これが放置されると、適切な管理がされないために周辺環境の悪化を招きます。さらに、公共事業・土地開発の際にも、所有者が分からないために用地買い取りの交渉ができません。

これまで、相続の際の登記は義務ではありませんでした。しかし、2024年4月より義務化され、政府も所有者不明土地問題の解消に向けて取り組んでいます。土地家屋調査士は、土地・不動産登記の専門家として、この所有者不明土地の管理を担当します。

出典:  所有者不明土地とは?|政府広報オンライン  

出典: 相続登記が義務化されました|東京法務局

土地家屋調査士の将来性

土地の基準点

(出典) pixta.jp

土地家屋調査士には「将来性がある」といわれています。主な理由としては、世代交代が近づいていることや、AIで代替できる業務が少ないこと、独占業務であることが挙げられるでしょう。

近づく世代交代

2021年時点で、7割を超える土地家屋調査士が50代以上となっています。30代以下は5.0%にもなりません。最も多い年齢層は60代で24.2%です。

土地家屋調査士は、測量・現況調査など、外回りで体力を使う仕事もあります。資格試験の合格者平均年齢は約40歳(2023年)であり、世代交代の時期は近いといえます。

出典: 日本全国あなたの近くの土地家屋調査士|日本土地家屋調査士連合会

AIと土地家屋調査士

昨今ではAIが仕事の現場にも台頭していますが、土地家屋調査士に関してはその影響が少ないといわれます。

土地家屋調査士の仕事には、状況に応じて隣人同士の境界紛争に立ち会うなど、感情に寄り添ったコミュニケーションが必要です。また測量をはじめとする現場作業にも、経験則やノウハウが重要になります。AIで完全に代替できる業務は少ないといえるでしょう。

独占業務

土地家屋調査士には、土地家屋調査士法で定められた独占業務があります。具体的には、不動産の表示に関する登記・筆界を明らかにする業務が挙げられます。

「表示に関する登記」とは、不動産表示登記とも呼ばれる公開情報です。土地の所在や利用目的の他、建物の構造や床面積などが含まれます。この登記は、土地家屋調査士でなければ実施できません。

「筆界」は土地の範囲を公的に区画する線の名称です。同様に土地家屋調査士でなければ確定できず、たとえば隣人同士で話し合っての変更などはできません。以上の独占業務があるため、土地家屋調査士には安定して仕事が存在し続けるといえます。

将来性が期待できる土地家屋調査士の仕事内容

土地の測量

(出典) pixta.jp

将来性が十分に期待できる土地家屋調査士ですが、具体的にはどのような仕事があるのでしょうか。以下で土地家屋調査士の仕事内容を解説します。

不動産に関する調査および測量

土地家屋調査士の主な役割は、不動産表示登記のための調査・測量です。測量は、不動産の物理的状況を把握するために実施されます。物理的状況とは、土地や建物の所在や面積、構造などを指す言葉です。

不動産の登記に関する資格では、司法書士が有名です。土地家屋調査士が他の士業と一線を画している点に、フィールドワークの多さがあります。

物理的な状況を把握するためには、足を使った現況調査が欠かせません。土地家屋調査士は、現場作業においても不動産の状況を調査・分析します。

登記の代理申請や審査請求手続きの代理

不動産の表示登記は、本来であれば当該不動産の所有者がしなければなりません。しかし、多くの人は不動産登記に関する知識を持ち合わせていないため、登記の代理申請を行います。

このとき、代理の申請を担当するのが土地家屋調査士です。これは土地家屋調査士の独占業務であり、ほかの職種での代替はできません。

また、この業務に関連して、審査請求手続きの代理業務が挙げられます。不動産表示登記について、登記官(登記に関する事務処理を担当する立場)の処理を所有者が不当であるとした場合に行われる手続きです。

筆界特定の手続きの代理

土地を巡るトラブルの多くは、境界に関するものです。隣の土地との境界が曖昧な場合、各土地の所有者間で紛争が生じるケースは決して珍しくありません。このとき、土地の所有者は「筆界特定」という手段を用い、境界を公的に明らかにできます。

筆界とは、筆界調査委員の調査を通じ、筆界特定登記官が位置を定める決まりです。土地家屋調査士は、筆界の特定を調査委員へ依頼する手続きの代理を務めます。

土地を巡る紛争解決手続きの代理

土地家屋調査士は、筆界特定の依頼手続きの代理に加え、土地を巡るトラブル時の解決手続きの代理も担当します。

土地の境界を巡った民間紛争は、場合によっては訴訟に移行します。しかし、これには手続きに時間を要するだけではなく、相応の費用も必要です。

土地家屋調査士は、弁護士と共同で紛争の間に入り、ADR(裁判外紛争解決手続)によって当事者間での解決を試みます。なお、こうした事態に対応できるのは、法務大臣によりADRの認定を受けた土地家屋調査士に限られます。

土地家屋調査士として働くメリット

土地家屋調査士

(出典) pixta.jp

将来性が高いとされる土地家屋調査士ですが、働く上ではどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、土地家屋調査士として働く主なメリットを2つ紹介します。

専門知識を活用しながら社会に貢献できる

不動産は、現代社会の人々にとって欠かせない要素です。土地家屋調査士は測量や不動産登記、また不動産に関する法律の専門家として、土地・建物の品質維持・改善に貢献します。

例えば、建物を取得してから1カ月以内に申請しなければならない「建物表題登記」の作成は、土地家屋調査士でなければ代行業務を実施できません。土地家屋調査士としての仕事が、人々のより良い生活環境の実現につながります。

景気に左右されにくく安定している

土地の状況に変化があれば、土地家屋調査士の仕事が発生します。官・民を問わずに仕事があるため、経済情勢の影響を受けにくい職業です。

常に一定の需要があることに加え、前述した独占業務の存在もあるため、土地家屋調査士は安定性・将来性ともに高い仕事といえるでしょう。

土地家屋調査士のデメリット

測量する機械

(出典) pixta.jp

これまで見てきたように、土地家屋調査士は高い需要・安定性などの魅力がある職業です。

一方で、働く上で注意しておきたいポイントもあります。ここからは、土地家屋調査士として働く上でデメリットとなり得る点を2つ紹介します。

屋外での作業が多い

土地家屋調査士の仕事は、測量や現況調査をはじめ、現場作業も伴います。納期に合わせて動くため、場合によっては炎天下や厳冬期にも外の仕事があります。遠方や山中など、生活圏から離れた場所で仕事をする場合も珍しくありません。

そのため「オフィスワークだけしていたい」と考える人には不向きです。「オフィスと外でバランスよく動きたい」といった働き方を目指す人にはマッチしているといえるでしょう。

閑散期・繁忙期の差が激しい

土地家屋調査士の繁忙期は1月~3月といわれます。年度末にあたり、企業や自治体からの依頼が重なるためです。この時期には、現場で測量を行ってから事務所に帰って図面作成など、残業も多くなります。

ただし、これは建設関連業に広く見られる状況であり、土地家屋調査士だけが格段に厳しいわけではありません。繁忙期が過ぎると、受注する案件の量も落ち着きます。

土地家屋調査士に必要なスキル

データを取る土地家屋調査士

(出典) pixta.jp

土地家屋調査士になるには、国家資格が必要ですが、その他にも必要なスキルがあります。最後に、土地家屋調査士を目指すために必要な3つのスキルを押さえておきましょう。

不動産登記や測量に関する知識

土地家屋調査士は国家資格の1つであり、取得のためには難関試験の突破が必要です。合格率は例年10%前後と、決して簡単な試験ではありません。

不動産関連の法律の知識を要求される他、測量に関する知識も求められます。図面作成や計算が得意な人は特に向いているでしょう。

出典:土地家屋調査士になるには|日本土地家屋調査士連合会

コミュニケーションスキル

顧客・その隣地の住人・自治体職員など、土地家屋調査士はさまざまな相手と話し合い・交渉を行います。また地元の人々や、他業種の相手とも信頼関係を構築しなければなりません。

「図面作成や測量だけしていたい」と考える人にとっては、厳しい仕事だといえます。コミュニケーションスキルを磨き、人々から信頼される土地家屋調査士を目指しましょう。

屋外作業をこなせる体力

前述した通り、土地家屋調査士の仕事では屋外での作業が伴います。顧客の要望に合わせて作業をするため、天候状況などは選べません。

コンクリートの杭を地面に押し込む、力仕事を1日に複数件こなす場合もあります。体力に自信がある人は、より活躍しやすい職業といえるでしょう。

将来性が期待できる土地家屋調査士を目指そう!

測量をする土地家屋調査士

(出典) pixta.jp

土地家屋調査士の仕事は、不動産に関する調査や測量、各種手続きの代行などです。土地家屋調査士になるためには難関試験を突破する必要がありますが、その先には需要や将来性、安定性の高い仕事が待っています。

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