土地家屋調査士に将来性はある?仕事の内容や資格について解説

不動産登記に関する専門家である土地家屋調査士は、相続に関する案件の増加や若い世代のニーズの高まりなどもあり、将来性のある職種の1つです。土地家屋調査士の将来性が評価される理由や、具体的な仕事内容、業界全体の動きなどを知っておきましょう。

土地家屋調査士の将来性は?人気の理由

不動産登記

(出典) pixta.jp

土地の売買や建物の建築時などに、所有者に代わって当該不動産の登記をするのが、土地家屋調査士の代表的な仕事です。まずは主な役割や需要について、基本的なところを知っておきましょう。

不動産登記に関する専門家で需要が高い

土地家屋調査士は不動産登記の専門家であり、不動産取引には欠かせない国家資格です。不動産登記の中でも「表示」に関する登記のプロフェッショナルで、必要に応じて土地の調査や測量、申請手続きなども行います。

さらに、不動産の管理に関する仕事もあり、職務範囲が幅広く安定した職種として人気があります。

なお、不動産に関する職種では「測量士」も有名ですが、こちらはその名の通り、土地の測量を主な仕事としています。登記申請はできないので、職務範囲は土地家屋調査士の方がかなり広く、収入も高めです。

土地家屋調査士の将来性が評価される理由

不動産登記する男性

(出典) pixta.jp

土地家屋調査士の将来性が評価される理由としては、登記に関する独占業務を有している点や、今後は土地の相続に関する案件が増える可能性が高い点などが挙げられます。主な理由を確認していきましょう。

登記に関する独占業務を持っているため

不動産の表示に関する登記の独占業務を持っているため、土地家屋調査士は仕事として安定していると評価されています。不動産の「表示」とは、土地や建物の物理的な状況を指す概念で、具体的には所在地や面積・種類・構造などを指します。

要は不動産の位置や大きさ・形状のことで、当該不動産の所有者は、これらの情報を法務局に登記する義務を負っています。

土地の表示に関する登記の申請代理は土地家屋調査士の独占業務なので、埋め立てや分筆などで新たに発生した土地がある場合など、登記を依頼されるケースがほとんどです。

個人からの依頼のみならず、国の公共事業に伴う依頼も発生するので、土地家屋調査士の仕事は基本的になくなることはないでしょう。

不動産の相続に関する案件が増えるため

相続に関するニーズの高まりも、土地家屋調査士が将来性のある仕事といわれる理由の1つです。急速に高齢化が進んでいる日本において、今後は相続をきっかけとした不動産の取引が増えると予想されます。

実際、団塊の世代が後期高齢者となり始める時期を皮切りに、土地の売買や文筆が増加する見込みです。それに伴い土地の表示登記を担当する土地家屋調査士も、仕事の案件が増えるでしょう。

若い世代の有資格者が求められているため

現状において、土地家屋調査士の有資格者は中高年世代が非常に多く、若い世代の有資格者が求められている状況です。定年制度のある職種ではありませんが、体力が求められる仕事もあるため、どうしても高齢世代は続けるのが難しい人が出てきます。

今後仕事を引退する人が増えるのは間違いないため、引退者の穴を埋める役割という意味でも、20~30代の活躍が期待されています。

AIの台頭に影響を受けづらい仕事であるため

近年、AI(人工知能)の発展が多くの業界で話題となっており、積極的に導入する企業も増えています。それに伴い、AIに仕事を奪われるといった認識も広まっており、不動産業界の中でも不安になっている人は少なくありません。

土地家屋調査士の場合も、一部定型業務や調査に関する業務などは、AIに代替される可能性はあります。

しかし人間でなければ成立しない業務も多く、独占業務も有しているため、ほかの職種に比べてAIの台頭に影響を受けづらいといえるでしょう。むしろAIを活用することで、大幅な業務効率化が可能になる職種でもあります。

土地家屋調査士の仕事内容

不動産関連資料

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土地家屋調査士の仕事内容は、以下のように不動産に関する調査や測量・登記の代理申請・筆界特定の手続き代理などがあります。それぞれ見ていきましょう。

不動産に関する調査および測量

不動産の表示に関する登記のために、当該不動産の調査・測量をするのが、土地家屋調査士の主な役割です。不動産の物理的な状況を把握するには、正確な測量が欠かせません。デスクワークも多い職種ではありますが、現地での足を使った調査も重要な仕事です。

不動産の登記に関する資格は司法書士が有名ですが、土地家屋調査士はフィールドワークが多い点で、ほかの不動産関連の資格職とは一線を画しているといえるでしょう。

登記の代理申請や審査請求手続きの代理

顧客に代わり、不動産の表示登記の申請を代理するのも、土地家屋調査士の代表的な仕事です。登記の申請代理は独占業務であり、ほかのいかなる職種も代替できません。

不動産の表示登記は、当該不動産の所有者がしなければいけませんが、ほとんどの人は不動産の登記に関する知識を持ち合わせていないので、土地家屋調査士が代わりに申請をするわけです。

また、不動産の所有者が当該不動産の表示に関する登記について、登記官の処分が不当であると考える場合に、審査請求の手続きを代理するのも仕事の1つです。

筆界特定の手続きの代理

土地を巡るトラブルで多いのが、土地の境界に関するものです。隣の土地との境界が曖昧な場合、それぞれの土地の所有者間で、争いが生じるケースは決して珍しくありません。

土地の境界を原因としたトラブルが発生した際、土地の所有者は「筆界特定」と呼ばれる手段により、境界を公的に明らかにすることが可能です。

公に認められた土地の境界が「筆界」であり、筆界調査委員の調査を通じて、筆界特定登記官が位置を特定することになっています。筆界の特定を筆界調査委員に依頼する手続きの代理をするのも、土地家屋調査士の仕事の1つです。

土地を巡る紛争解決手続きの代理

土地家屋調査士は筆界特定の依頼手続きの代理に加えて、土地の境界を巡るトラブルが起こった際に、民間紛争解決手続きの代理をすることも可能です。

土地の筆界を巡る争いでは、訴訟に移行する可能性も考えられますが、訴訟は手続きに時間がかかるだけではなく、相応の費用を用意しなければいけません。

そこで、弁護士と共同で間に入り、ADR(裁判外紛争解決手続)によって、当事者間での解決を図れます。法務大臣によりADRの認定を受けた土地家屋調査士であれば、弁護士とともに紛争解決の代理ができます。

土地家屋調査士の現状と今後

不動産業者

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土地家屋調査士の資格の取得を検討している人にとっては、不動産業界における現状や今後に関しても気になるところでしょう。

いわゆる高度成長期の時代に比べると、不動産取引の案件数はかなり減っているため、土地家屋調査士の仕事は減少傾向にあります。しかし、以下のように世代交代による新規参入の機会も広がっています。

土地家屋調査士の仕事が減っている?

土地家屋調査士は、高度成長期やバブルの時代を経た1990年代から2000年代にかけて、徐々に仕事が減っており、現在も減少傾向にあります。それに伴って平均年収も下降気味であるため、今後さらに厳しくなるという声もあるのが実態です。

しかし一方で、たとえ市場規模は縮小しても不動産の売買は必ず発生するため、独占業務を有する土地家屋調査士の仕事がなくなることは考えられません。働き方に工夫は求められますが、資格の価値が損なわれることもないでしょう。

世代交代により新規参入のチャンスも

土地家屋調査士は上記のように有資格者に高齢者が多く、世代交代が必要な時期にあるため、新規参入のよい機会ともいえます。

また、バブル期などに比べて不動産の取引は大幅に減ってはいるものの、土地家屋調査士は業務範囲が広く、今後は相談業務も増えると考えられます。

例えば、少子高齢化が進むことで不動産の相続に関する案件は増えるでしょう。不動産の調査案件や登記の申請代理はもちろん、新たに筆界特定のニーズも出てくると予想されます。安定して案件を取れる自信があるならば、資格の取得後に独立・開業するのもよいでしょう。

土地家屋調査士として活躍するには?

建設に関する打ち合わせ

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土地家屋調査士として活躍するには、まず資格を取得しなければいけません。資格試験の概要と、主な就職・転職先も押さえておきましょう。

まずは土地家屋調査士資格を取得する

土地家屋調査士の資格試験は、毎年10月の筆記試験および、翌年1月の口述試験からなります。合格に絶対的な基準はなく、上位400名くらいが合格するといわれています。

毎年4,000名ほどの受検者がいるので、合格率は10%程度です。数ある資格の中でも、かなり難易度が高い部類といえるでしょう。

試験内容は民法や登記申請に関するもの、測量に関する問題などです。筆記試験の合格者のみが口述試験に挑むことが可能で、筆記試験は択一式の問題と記述式の問題からなります。

それぞれ基準点があり、どちらも満たしていなければ合格できないので、しっかりと対策を練って試験に臨みましょう。

参考:土地家屋調査士試験|法務省

土地家屋調査士の主な就職・転職先

土地家屋調査士の勤め先は、主に土地家屋調査士事務所や測量会社、建設会社などです。会社員として測量業務に当たったり、代理申請を主な仕事としていたりする人は多くいます。

また、独立開業する人が多い職種でもあり、自ら測量事務所を経営しているケースも珍しくありません。

雇用形態も正社員から契約社員・パートとして勤務している人とさまざまです。どういった職場で働くにせよ、自分に合った環境で働けるように、勤め先は慎重に選びましょう。

将来性を評価して土地家屋調査士を目指す

不動産のイメージ

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土地家屋調査士は昔に比べて仕事が減っているといった評価もありますが、独占業務を有する安定した仕事でもあり、今後は相談業務も増えると考えられます。世代交代も進んでいるので、新規参入のよいタイミングともいえるでしょう。

これから目指す人は、まず資格を取得する必要があります。働きながら試験に合格している人が多いので、まずは試験内容をよく確認した上で、計画的に勉強を進めることが大事です。

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