パイロットに将来性はある?活躍できる場所やキャリアパスを知ろう

航空会社を中心とする民間企業や官公庁で働くパイロットは、厳しい基準をクリアして免許を取得しています。新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた航空業界には、今後の将来性はあるのでしょうか?活躍の場や免許の種類、キャリアパスについて紹介します。

パイロットに将来性はあるのか

航空機

(出典) pixta.jp

航空業界への転職・就職を目指すにあたって、気になるのは新型コロナウイルスによる影響です。コロナ禍には世界的に国際線が停止され、パイロットの需要が回復しているのか不安に感じる人もいるでしょう。将来性やAIによる影響について解説します。

世界的にパイロットの需要が高まっている

コロナ禍によって一時的な需要減少が見られたものの、旅客数は回復傾向にあります。経済産業省によると、航空旅客運送業ではコロナの影響が出る前の2019年12月と比較して、活動指数が15%ほど上回っています。

また、そのような世界的な航空需要の増大に伴い、パイロットの需要は増えていくと考えられているのです。2013年に国土交通省が公開した「我が国における乗員等に係る現状・課題」によると、2030年には世界で年間約8,000人のパイロット不足が見込まれています。

日本でも、高齢化や若手人材の減少により、パイロット不足が進むと考えられています。旅客数や活動指数の回復と人手不足の現状を考えると、将来性の高い職業といえるでしょう。

参考:アフターコロナの中で、どこまで回復したか -旅行・観光-|その他の研究・分析レポート|経済産業省

参考:我が国における乗員等に係る現状・課題|国土交通省

AIの進化による影響は?

大型の飛行機では、機長と副操縦士が乗り込み操縦を担当します。すでに自動操縦が導入されていますが、複雑な作業やトラブル時の対応には人間の力が必要です。

今後、AIによる完全自動操縦が導入される可能性はあるものの、安全面やトラブル時の対策など数々の問題があり、実現化されていません。

人間が必要なくなるほど自動化が進むまでには、長い時間がかかるといわれています。これからパイロットを目指す、または転職を考えているのであれば、AIによる影響を心配する必要はないでしょう。

日本におけるパイロットの現状もチェック

パイロットの男性

(出典) pixta.jp

世界的に人材不足が深刻になっているパイロットですが、日本ではどのような状況なのでしょうか?現状や採用の状況を解説します。

人材不足が大きな課題

パイロットの人材育成には、億単位のコストがかかるといわれています。機長になるには、副操縦士として任用されてから約10年のフライト経験が必要となり、訓練を開始してからの育成期間が長いことも人材不足の要因となっています。

また、飛行機の操縦を担当するには免許の取得や経験が必要ですが、経験を積んでいるパイロットの高齢化が進んでいることも一因です。国土交通省によると、2030年頃には多くのパイロットが退職すると見込まれています。

その対策として、2015年に航空運送事業に従事する操縦士の年齢制限の上限が、65歳未満から68歳未満に引き上げられました。

大型旅客機以外に、救助や防災目的のヘリコプターを操縦する人員も需要が高まっており、免許の種類を問わず人手不足が予想されるでしょう。

参考:我が国における乗員等に係る現状・課題|国土交通省

参考:航空運送事業に使用される航空機に60歳以上の航空機乗組員を乗務させる場合の基準|公益社団法人日本航空機操縦士協会

パイロットの採用状況

コロナ禍では、自社養成パイロットや中途採用を停止している会社もありました。しかし、JALやANAの新卒採用募集では、自社養成パイロットの採用が再開されています。

LCC各社でも、有資格者採用を不定期に行っているようです。特にLCCでは、即戦力となる有資格者を積極的に採用しています。

人材不足やアフターコロナの需要回復によって、有資格者の中途採用は増えていくことが予想されます。転職を考えている場合、保有しているライセンスや技術に見合う求人情報があるか、各航空会社の採用情報を定期的にチェックするのがよいでしょう。

パイロットのライセンスの種類

コックピット

(出典) pixta.jp

航空機やヘリコプターの操縦には、それぞれ対応するライセンスを取得しなければなりません。主なライセンスの種類を紹介します。

参考:パイロットになるには - 国土交通省

定期運送用操縦士

定期運送用操縦士は、旅客機または大型ヘリコプターの機長が持つ免許です。それぞれ、定められた総飛行時間や機長経験を経た人材のみが受験できます。

自社養成パイロットとして准定期運送用操縦士(MPL)の資格を取得し、10年程度の時間をかけてキャリアアップを目指すのが一般的です。事業用操縦士の資格を取った後、副操縦士の経験を積み免許取得を目指す道もあります。

なお、飛行機とヘリコプターの免許はそれぞれ受験資格や試験内容が異なり、同時に取得できるものではありません。基本的には、旅客機や大型ヘリコプターの運転を必須とする職業に就いている人が、キャリアを積んだ先で取得する免許です。

事業用操縦士

事業用操縦士は、遊覧飛行・農薬散布・航空写真撮影飛行など、「事業」として飛行機を扱う場合に必要となる免許です。いくつかの種類があり、自家用操縦士の資格を取得した上で一定の飛行時間を満たし、機長としての経験を積むと受験できます。

事業用操縦士が操縦する小型航空機は、さまざまなシーンで使われます。人命救助や報道など、エアラインへの就職・転職にこだわらない場合は、事業用操縦士の免許取得を目指し、パイロットになる道もあるでしょう。

自家用操縦士

趣味で航空機やヘリコプター、グライダーの運航を楽しむにも資格が必要です。このように個人で飛行機を操縦する場合に必要となるのが、自家用操縦士の免許です。

自家用操縦士の免許には種類があり、飛行機とヘリコプターは、17歳以上で一定の飛行時間を満たすと受験できます。曳航装置付き動力滑空機(グライダー)は、16歳以上で、飛行や着陸などの技術を身に付けていると受験可能です。

なお、航空会社や大型ヘリコプターを扱う会社では、ライセンスを持たない人材を育成し免許取得をサポートするため、航空業界への入社に自家用操縦士の資格が必要なわけではありません。

パイロットの主な活躍の場は?

飛行機の先頭

(出典) pixta.jp

「パイロット」というと大型旅客機の操縦士をイメージしやすいですが、操縦する機体や事業内容によって働く場所は異なります。主な活躍場所と特徴を見ていきましょう。

航空会社

航空会社では、大型旅客機を操縦するパイロットを採用しています。LCC(格安航空会社)と大手航空会社があり、どちらも運航するのは大型旅客機です。

LCCには、Peach・ジェットスター・SPRING JAPANなどが分類されます。日本の大手航空会社として知られるのは、JALやANAです。

旅客機は多くの人を乗せ、国内・海外に運航します。副操縦士または機長として操縦を担当し、長い年月をかけてキャリアを積んでいくのが特徴です。

航空機使用事業会社

航空機使用事業会社は、さまざまな目的で小型機を使って事業を行います。主に小型の飛行機やヘリコプターを扱い、事業の目的や扱う機体によって必要な免許は変わってくるでしょう。

一般的に、事業用操縦士の免許取得が求められます。航空会社に比べると免許取得の難易度が低く、趣味で自家用操縦士の免許を持っている人も目指しやすい業界です。

会社によって業務内容に違いがあり、免許を生かして興味のある分野の仕事に就くこともできます。観光地の遊覧飛行や撮影目的のフライトなど、幅広い仕事があります。

官公庁

官公庁では、業務内容に応じて航空機の操縦を行うケースがあります。自衛隊・警察・消防・海上保安庁などが主な活躍の場です。

必要な免許は業務によって異なるものの、人材育成から行っているケースが多く、自衛隊では航空学校で訓練し、パイロットの資格を得ます。

警察や消防などでは、救助や捜索などさまざまな目的で小型機やヘリコプターを活用しています。有資格者の中途採用もあり、専門学校でライセンス取得後に転職を目指す方法もあるでしょう。

パイロットのキャリアパスは?

空港内を歩く男性

(出典) pixta.jp

パイロットのライセンスは種類が多く、一人前になるには時間がかかります。自社養成パイロットとして勤務する場合、どのようなキャリアを描くのか主なケースを見ていきましょう。

パイロット訓練生として勤務

航空会社の自社養成パイロットは、入社後に地上勤務を行います。すぐに操縦を任されるわけではなく、副操縦士の資格を取得するために基礎的な訓練を行わなければなりません。

大手航空会社の場合、1〜2年ほどの地上勤務で一通りの経験を積み、業務全体の流れを学びます。その後、副操縦士の資格取得を目指し、国内やアメリカで実践的な訓練を積む流れです。

訓練を積み、副操縦士の資格を得ると、機長とともに飛行機の操縦を任されるようになります。入社から訓練を積み、副操縦士になるまでには2〜4年ほどかかります。

副操縦士として経験を積む

副操縦士になった後は飛行経験を積み、10年ほどかけて定期運用操縦士免許の取得を目指します。最初のうちは技術を学びながら、機長のサポートを担当するのが主な仕事になるでしょう。

入社から機長として認められるまでには早くても15年ほどかかり、一般的には40代で免許を取得するケースが多くなっています。

副操縦士として勤務している間も、パイロットとしての適性チェックは行われ、定期的な身体検査と技能審査に合格しなければなりません。

機内の最高責任者である機長

機長になると、機内の最高責任者として権限を持ちます。旅客機を安全に運航し、乗客を目的地に運ぶことが任務です。

基本的な整備は地上班が行いますが、最終点検やスケジュールチェックなど、出発前の確認は機長が担当します。

機体ごとにライセンスが必要になるため、基本的には1種類の機体を担当するケースが多いでしょう。必要に応じて複数の免許を取得するパターンもあり、機長になった後も技量維持や学ぶ姿勢が求められます。

今後も需要が高まるパイロットは将来性も見込める

笑顔の男性パイロット

(出典) pixta.jp

コロナ禍で一時的に旅行や国外への移動が減り、航空業界は大きな打撃を受けました。しかし、新型コロナウイルスの影響が落ち着き、今後は世界的にパイロットの需要が高まると見込まれています。

航空会社の機長・副操縦士だけでなく、小型機やヘリコプターの操縦を担う人材も必要とされています。目指す分野によって必要な免許が変わるため、転職や同業他社からの移籍を検討している場合は、求人情報を詳しくチェックしておきましょう。