教師の気になる将来性は?現状や教師が身に付けるべきスキルも紹介

教師は人手不足とされる職種の1つですが、一方で子どもの数が減少する中で、教師の将来性を危ぶむ声も聞かれます。実際のところはどうなのでしょうか?教師の現状と将来性、さらに教師として活躍するために、今後身に付けるべきスキルなどを解説します。

教師に将来性はある?

女性教師

(出典) pixta.jp

少子高齢化が進む中で、教師の将来を危ぶむ意見は少なくありません。教師の将来性について考える上では、まず教員不足の実情について正しく理解する必要があります。

教師の採用倍率は減少傾向に

全国で子どもの数が減少している影響で、地方を中心に教育機関の統廃合が進むなど、教育機関の数も減少しています。これにより地域によっては、公立学校教員採用選考試験の採用倍率が上昇する可能性はあるでしょう。

しかし、文部科学省の「2023年度公立学校教員採用選考試験の実施状況(2022年度実施)」によると、採用倍率は過去最低の3.4倍(前年度3.7倍)という結果でした。小・中・高等学校のいずれも採用倍率が低下していることが分かります。

受験者数が年々減少していることが、採用倍率低下の一因であると考えられるでしょう。

参考:令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省

参考:令和5年度(令和4年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント|文部科学省

教師の数は不足している

現状、全国的に教師の数が足りていないため、単純な人材ニーズの観点からいえば、教師の将来性はあると判断して差し支えないでしょう。

事実、文部科学省の資料(「教師不足」に関する実態調査)によれば、2021年度の始業日時点における小中学校の教員不足の人数は、合計で2,086人となっています。

さらに高等学校の教員不足の人数は、始業日の時点で217人であり、特別支援学校では255人です。

小学校では学級担任がいない状況を避けるため、本来は担当ではない講師が代替しています。さらに中学校や高等学校では一時的にではあるものの、一部の教科を教えられる教師が不在のため、授業ができない例も報告されています。

こういった例を見る限り、多くの教育機関で教師の需要があるのは間違いないでしょう。

参考:「教師不足」に関する実態調査|文部科学省

教師不足の原因

多くの教育機関で教師が不足している原因はさまざまですが、まず教師のなり手が減少している点が大きな理由として挙げられます。

近年は教員採用倍率の低下が問題視されており、教師のなり手が減っている状況で、学生のほとんどが民間企業への就職を選択しています。

さらに長時間労働をはじめとして、教師の過酷な労働環境がメディアに取り上げられる機会も多く、ハードワークを理由に、教師を職業選択から除外する人は少なくありません。

また、産休・育休を積極的に取得する教師が増加しており、その穴を埋める人員が不足している点や、特別支援学級が増えたことで、より多くの教師が必要になった点なども、教師不足の原因とされています。

参考:「教師不足」に関する実態調査|文部科学省

AIに取って代わられる業務は一部のみ

近年、AI(人工知能)の台頭が各方面に大きな影響を与えており、業種によっては仕事をAIに取って代わられるといった懸念を持つ人も多くいます。

教師の仕事もAIに代替されるといった意見もありますが、AIが代替できる仕事は定型業務がほとんどであり、人間同士のコミュニケーションの中で、必要な事柄を教える教師の仕事自体がなくなるわけではありません。

今後AIによる授業が一部取り入れられる可能性はありますが、人と人のつながりはどういった形であれ必要とされます。むしろAIをうまく活用しながら、効率的かつ有効な授業・講義をできる人材が、教育の世界でも求められるようになるでしょう。

教師の現状もチェック

生徒を指す教師

(出典) pixta.jp

教員の需要や求人状況に加えて、教師が置かれている現状も確認しておきましょう。教師は公務員の立場で働く場合が多く、安定した仕事とされる一方で、家庭や地域からの期待や社会の目もあるので、強い責任感を持って仕事に臨まなければいけません。

家庭や地域からの期待が高まっている

社会構造の変化から、近年は教師に求められる教育活動が複雑化しています。都市化や核家族化の進展などにより、家庭における教育力の低下が問題視されており、学校や教師への期待が高まっている状況です。

教師に対して一定の目に見える成果を求める傾向も強まっており、多くの期待を寄せられている半面、過度なプレッシャーから教師の仕事を辞めてしまう人もいます。

これから教師を目指す人は、そういったストレスを感じながらも、仕事にやりがいを感じられるか慎重に検討することが大事です。

社会から厳しい目にさらされることも

一部の教師による不祥事などにより、学校や教師への風当たりが強まっている点も、教師を目指すならば知っておかなければいけません。

教師がいじめの問題を放置したり、隠蔽(いんぺい)したりして、大きな問題に発展してしまう学校は、決して少なくない状況です。教師による暴力やパワハラなども、度々メディアなどで問題視されています。

教師はかつて聖職者として尊敬の対象だった時代もありますが、平成・令和と時代を経るに連れて、信頼が揺らいでいる点は否めません。

社会から厳しい目にさらされる可能性もあり、心身ともに疲弊している教師も多くいます。そういった現状を理解した上で、教師の責任ある仕事を全うできる人が求められています。

教師の働きやすさへの取り組みが進む

男性教師

(出典) pixta.jp

近年は多くの教育機関で教師が不足しており、政府が中心となって教師不足を解消する施策が打ち出されています。ここで代表的な取り組みを押さえておきましょう。

教師の数が足りていないところに、保護者や社会からの期待値が上がっている現状を受け、文部科学省は教師が働きやすいよう人手不足への対策を進めています。

参考:「教師不足」に関する実態調査|文部科学省

積極的な採用計画や働き方改革

教師不足の解消のため、文部科学省が特に力を入れているのが、教師の正規採用の増加です。それによって35人学級の実現や教科担任制の徹底など、1人1人の教師の負担を減らすことで、教育全体の質を上げる取り組みが打ち出されています。

積極的な採用計画のみならず、教師のなり手を増やすための働き方改革に関する取り組みも進められています。

例えば、公立中学校において教師の大きな負担となっている、休日の部活動の仕事を段階的に地域移行させ、業務から外す試みが進められる予定です。

人材バンクで臨時的任用教員の確保

人材バンクを活用し、臨時的任用教員などの講師登録者数を増加させる取り組みも、文部科学省を中心に進められています。

同省では「学校・子供応援サポーター人材バンク」を開設し、退職教員や塾講師などに登録してもらい、教育現場に適した人材を、学校が必要なタイミングで選べる体制を整備しています。

また、地方自治体の中でも静岡県や愛知県などは、他県に先駆けて教師の人材バンクを独自に設けており、今後ほかの自治体にも広まっていくでしょう。

参考:学校・子供応援サポーター人材バンク / 学校雇用シェアリンクについて|文部科学省

大学などとの連携を強化

各自治体の大学と連携して教師養成塾を運営したり、教師の魅力を伝える講座などを開催したりする動きも、活発化しています。隣接する県同士の教育委員会や大学が連携し、教育・研修システムの構築を図るケースも見られます。

また、教師の養成から採用、採用後のフォローなどの一貫した取り組みも注目されており、養成の段階で大学がコンソーシアム(共同事業体)を創設し、複数の教員免許状を取得しやすくする動きも進んでいる状況です。

今後さらに自治体と教育機関が連携し、さまざまな取り組みがなされるでしょう。

教師の働き方の変化

笑顔で働く女性教師

(出典) pixta.jp

AIに代表されるIT技術の進展や専門家との連携などにより、教師の働き方にも変化が生じています。特に注目すべき動きをチェックしておきましょう。

PCやタブレットによる授業

近年のITのさらなる普及により、PCやインターネットを使った授業や、プログラミングの講義なども盛んに行われるようになりました。

コロナ禍を経てリモート授業も一般的に実施されるようになり、オンラインで課題の提出を受け付ける学校も珍しくありません。

また、電子黒板やタブレットも使われる頻度が増えているため、これから教師を目指すならば、ITをうまく使いこなせる必要があります。

小学校で必修化されるなど、プログラミングの教育も重視され始めているので、教師も相応のプログラミングスキルを身に付けておくことが求められるでしょう。

専門家との連携で問題解決

いじめ・不登校の問題解決のためにカウンセラーと連携したり、部活動などで当該競技の専門家が指導をしたりと、外部との連携を図る機会も増えています。

今後は1人1人の教師が学生の問題・課題の解決に腐心するのではなく、外部とうまく協力しながら事に当たる姿勢が求められます。

組織やチームとして解決できるように、スムーズに情報を共有できる仕組みや、役割分担の明確化が必要です。

参考:教員以外の専門スタッフの参画|文部科学省

教師としてスキルアップするには?

職員室の女性

(出典) pixta.jp

これから教師として長く活躍し続けるには、たゆまぬスキルアップが必要とされます。以下のように、教師に求められる基本的なスキルを磨くのはもちろん、資格の取得も視野に入れておきましょう。

教師の基本のスキルを磨く

長く教師を続けるつもりならば、伝える能力や観察力・洞察力・マルチタスク能力など、教師にとって必要な基本スキルを磨き続けることが大切です。

学生に専門知識を分かりやすく伝える力が求められるのはもちろん、1人1人の状況に合わせて、適切な対応をするための観察力・洞察力が必要です。

また、学習指導をはじめ、行事・イベントの準備から保護者対応まで、並行して進めなければならないケースも多いので、マルチタスク能力も磨かなければいけません。

一朝一夕で身に付けられるスキルではありませんが、基本的なところからコツコツと伸ばしていく姿勢が重要です。研修・セミナーで学べるものもあるので、積極的に参加するとよいでしょう。

教師に役立つ資格を取得する

外国語や心理学、プログラミングに関するものなど、教師に役立つ資格を取得するのも有効です。

英語の教師として活躍したいならば、英語検定やTOEICなどの資格の取得を目指してみましょう。身に付けた英語力を、授業で生かせるようになります。

また、学生の悩み相談に乗ったり、学習に役立つアドバイスをしたりするには、心理学系の資格がおすすめです。

公認心理士や臨床心理士、メンタル心理カウンセラーなど多くの資格があるので、この機会にチェックしてみるとよいでしょう。MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)をはじめ、PC関連の資格も役立ちます。

教師は将来的にも不可欠な職業

笑顔で話す女性教師

(出典) pixta.jp

日本は少子高齢化が急速に進んでいる状況ですが、現状において教師は不足しており、今後さらに人材ニーズが拡大する見込みです。

家庭や地域から高い期待を寄せられる責任ある仕事であり、厳しい目が向けられる場合もありますが、国の根幹を支える重要な職業です。

民間から公教育の分野に転職した例も多くあるので、教育にやりがいを感じられる人は、この機会に教師を目指してみるとよいでしょう。