介護職を対象にした資格はいくつか存在しますが、中にはハローワークの職業訓練を通じて取得できるものもあります。介護資格をハローワークで取得する方法と具体的な手続きを確認し、転職を有利に進める上で活用しましょう。
ハローワークの「ハロートレーニング」とは?
各地のハローワークで実施されている職業訓練を総称して、「ハロートレーニング」と呼びます。介護資格を取得できる講座も、ハロートレーニングの一環として提供されています。大きく2種類に分けられるハロートレーニングについて確認しましょう。
雇用保険受給者が対象の「公共職業訓練」
ハロートレーニングの1つが、雇用保険受給者を対象にした「公共職業訓練」です。「離職者訓練」と呼ばれる場合もあります。何らかの理由で離職した人がスキルアップし、再就職しやすくなるのを目的としている訓練です。
公共職業訓練の一環として、介護職員初任者研修など介護関連の資格を取得できる講座が設置されています。受講条件を満たしているのであれば、受講を検討してもよいでしょう。
開講している講座の種類やスケジュール、受講会場などは、ハローワークインターネットサービスで検索できます。
対象者が幅広い「求職者支援訓練」
雇用保険を受給できない人や、受給期間が終わった人を対象にしており、幅広い人が受講できるのが「求職者支援訓練」です。こちらも就職に必要なスキルの習得を目的として実施されているもので、介護関連の資格を取得できる講座もあります。
雇用保険の関係で公共職業訓練を受講できない人は、求職者支援訓練に受講したい講座がないかチェックしてみましょう。
求職者支援訓練の情報も公共職業訓練と同様に、ハローワークインターネットサービスで検索できます。
ハローワークで取得できる介護資格
公共職業訓練や求職者支援訓練で取得できる主な介護資格は、「介護職員初任者研修」と「介護福祉士実務者研修」の2つです。似たような名称ですが、対象としている人や目的が異なります。それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。
【未経験者向け】介護職員初任者研修
介護職として働く上で必要とされる基礎知識や、実務に直結する応用的な知識・スキルを習得できるのが、介護職員初任者研修です。
これから介護職に転職する人だけでなく、多少の介護職経験がある人も取得を検討してもよいでしょう。習得できる具体的なスキルの一例は、以下の通りです。
- 介護に関する基礎的な知識
- 認知症や老化に関する知識
- 介護に関する実践的な技術
上記はいずれも、介護職として活躍するために欠かせない代表的なスキルです。介護職員初任者研修を修了して資格を取得すると、訪問介護で働けるようになります。
無資格者は介護施設では働けるものの、訪問介護は担当できません。訪問介護も担当したいと考えているなら、資格取得が必要です。
【ベテラン向け】介護福祉士実務者研修
経験を積んで介護福祉士の国家資格を取得したい人が受講するのが、介護福祉士実務者研修です。
介護福祉士国家試験の受験資格を得る方法はいくつかありますが、その中の1つが、3年以上の実務経験を積んでから介護福祉士実務者研修を修了するルートです。
介護福祉士の資格を取得してキャリアアップしたいと考えていて、所定の実務経験を積んでいるなら積極的に受講するとよいでしょう。
介護福祉士の資格を取得すると、訪問介護の現場においてサービス提供責任者として働けるようになります。
参考:[介護福祉士国家試験]受験資格:福祉系大学等:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
介護資格をハローワークで取得するメリット
ハロートレーニングを活用して介護資格を取得する、3つのメリットを紹介します。下記の点が自分にとって魅力的だと感じるのであれば、ハロートレーニングの受講を検討してみましょう。
コストがかからない
ハロートレーニングは、厚生労働省が実施している公的サービスであるため、受講料がかかりません。民間スクールでも介護資格は取得できるものの、受講料がかかるのが一般的です。そのため、コストを抑えて介護資格を取得したい人におすすめです。
ただし、ハロートレーニングは受講料は無料であっても、テキスト代などの教材費が有料になるケースもあります。講座を検索すると自己負担額が表示されるため、どの程度のコストが発生するのか事前に確認しておきましょう。
集中的にトレーニングを受けられる
ハロートレーニングは、日中の時間を使って集中的に受講できるのがメリットです。資格を取得して、効率的に再就職を目指すのに向いているといえるでしょう。
例えば、介護職員初任者研修を受講する場合の訓練期間は、2〜3カ月程度です。この期間で、介護職員初任者研修で必要とされる130時間の講義・実習を済ませるため、集中的・効率的に学べます。
民間スクールでは現職者も併せて対象のため、夜間に開講していたり、1日あたりの講義時間が短かったりするケースがありがちです。
そのような講座は資格取得までに時間がかかるため、離職中に集中して学習したい人にはハロートレーニングがおすすめです。
転職サポートを受けられる
資格を取得したらそれで終わりというわけではなく、ハローワークで転職に向けたサポートを受けられます。
再就職を目的とした講座であるため、受講終了後に作成した就職支援計画書に基づいた体系的なサポートを受けることで、転職しやすくなります。
自分1人で転職活動を進めるのが難しいと感じている人にとっては、うれしいサービスといえるでしょう。
なお、求職者支援制度に基づいた転職サポートが提供されるのは、受講の終了から3カ月間です。
介護資格をハローワークで取得するデメリット
コスト・時間の面でメリットがあるハロートレーニングですが、見逃せないデメリットもいくつかあります。受講前にチェックしておきたい、3つのデメリットを見ていきましょう。
日程・時間帯に融通が利かない
日中の時間を活用して効率的に受講できる半面、日程・時間帯に融通が利かないのがデメリットです。事前に定められた期間に集中的にトレーニングが行われるため、受講者側がそれに合わせる必要があります。
また、常に受講したい講座が開講されているとは限りません。介護資格を取得したいと思ったときに講座が開講されていなければ、別の方法で取得する必要があるでしょう。
まずはハロートレーニングの開講状況をチェックし、開講されていない場合は民間スクールを検討するのがおすすめです。
確実に受講できるとは限らない
ハロートレーニングは、受講を希望する人の全員が受講できるわけではありません。事前に選考が行われ、合格しなければ受講できない仕組みです。基本的な選考の流れは、以下の通りです。
- 募集期間内に受講したい講座に申し込む
- 選考日に指定場所に出向いて選考を受ける
- 選考結果通知日に結果が出る
応募してから結果が出るまでに時間がかかるだけでなく、不合格になると講座を受講できません。選考では面接や筆記試験が行われるため、前もって対策しておきましょう。
手続きに手間と時間がかかる
ハローワークでの手続きに手間がかかるのも、ハロートレーニングのデメリットです。
求職申し込みをしてすぐに受講できるわけではなく、複数回の職業相談を受けなければなりません。そのため、募集期間が終了する間際にハローワークに行った場合は、受講できない可能性が高いでしょう。
ハロートレーニングを活用して介護資格を取得したいと考えているなら、定期的に開講状況をチェックして早めに相談することが大切です。手続きも複雑なため、不備がないように注意しましょう。
ハローワークで介護資格を取得するプロセス
ハロートレーニングで介護資格を取得するまでのプロセスを、具体的に解説します。基本的なプロセスを把握して、スムーズに進めましょう。
参考:求職者支援訓練 受講手続きの流れ|厚生労働省 愛知労働局
ハローワークで必要な手続きを済ませる
介護資格を取得するためにハロートレーニングを受講したいと思ったら、まずは住所地を管轄するハローワークで必要な手続きを済ませましょう。具体的な手続きは、以下の通りです。
- ハローワークに求職を申し込む
- 複数回の職業相談を受ける
- 受講申込書を記入して提出する
- 訓練実施機関に必要書類を提出する
公共職業訓練を受ける人は、雇用保険の受給手続きを最初に行います。必要な書類をそろえてハローワークに行き、求職の申し込みと同時に離職票を提出して手続きしましょう。
参考:職業訓練の申込みを検討しておられる雇用保険受給資格者の皆さんへ |ハローワーク神戸
選考を受ける
無事に申し込みを済ませたら、指定された日に訓練実施機関に行って選考を受けましょう。一般的に、ハロートレーニングの選考では、筆記試験と面接試験が実施されます。
面接試験では、就職活動における面接と同様に、退職理由や転職活動の方向性、キャリアプランなどを聞かれます。スムーズに受け答えできるように、事前に準備を整えておくことが大切です。
筆記試験は文章問題や一般常識問題、計算問題などの比較的簡単なものであるため、そこまで心配する必要はないでしょう。
講座を受講する
選考に合格して受講できることが決まったら、あらかじめ定められたスケジュールにしたがって訓練実施機関に通い、講座を受講しましょう。介護資格を取得する講座の場合、2〜6カ月程度の訓練期間が一般的です。
受講期間中は、毎日朝から夕方まで長時間学習することになるでしょう。介護職員初任者研修の場合は、講座を修了すると資格を取得できます。
介護福祉士を目指す人は、3年以上の実務経験があれば、介護福祉士実務者研修を修了すると国家試験の受験資格を得られます。国家試験を受験し、合格後に必要な手続きを済ませましょう。
就職先を見つける
受講期間が終了してから3カ月間は転職支援が継続するため、定期的にハローワークに通って転職活動を進めましょう。資格を取得することで、転職先の幅が広がるのもメリットです。
求人の中には、応募できる人を有資格者に限っているものもあります。有資格者の待遇を無資格者より優遇している求人も多いため、選択肢を増やしたり、より好条件の求人に応募したりする上で役立ちます。
面接時に資格をアピールすることで、選考を有利に進められる効果も期待できるでしょう。
求人検索エンジン「スタンバイ」でも、有資格者を対象にした介護職の求人を豊富に掲載しています。資格を取得してこれから転職先を探す人は、スタンバイをチェックしてみましょう。
介護資格をハローワーク以外で取得する方法は?
受講できる講座がなかったり、選考で不合格になったりして、ハロートレーニングを受講できないケースもあります。そのような状況に陥った場合の対策として有効な方法を、2つ紹介します。
ハロートレーニングを受講できないからといって諦めず、そのときの状況下で活用できる方法を選択しましょう。
民間のスクールに通う
介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修はいずれも、民間スクールでも受講できます。ハロートレーニングとは異なり一定の受講料が必要ですが、日程の融通が利きやすく講座数も豊富です。
何らかの理由で夜間に受講したい人や、必要に応じてスケジュールを調整しながら修了を目指したい人には、民間スクールがおすすめです。
まずは自宅近くにどのようなスクールがあるのかチェックし、受講料や日程を確認して自分に合ったところを選びましょう。
オンライン講座を受講する
カリキュラムの一部をオンラインで提供しているスクールもあるため、受講にかかる負担を軽減したいのであれば、そのようなスクールを検討しましょう。ただし、介護資格はオンライン講座のみでは取得できません。
その理由は、カリキュラムの一部に演習が含まれているためです。資格を取得するにはスクールに通い、一定の演習に取り組むことが欠かせません。
とはいえ、一部の講義をオンラインで済ませられるのは、負担を軽減する面で大きなメリットがあるといえるでしょう。
ハローワークを活用して介護資格を取得しよう
ハローワークでは、求職者を対象にした訓練としてハロートレーニングを提供しており、その中には介護資格を取得できるものもあります。何らかの理由で離職し、介護職への転職を目指す人やキャリアアップしたい人は、受講を検討するとよいでしょう。
受講手続きが複雑だったり、日程の融通が利かなかったりするなどのデメリットはあるものの、うまく活用できればコストを抑えて資格を取得できます。
資格を取得したら、その資格を正しく評価してくれる施設に転職することが大切です。これから転職先を探す人は、多くの求人を比較・検討した上で、自分に合った転職先を探しましょう。