医療事務として働きたいと考えた場合、どのように資格取得をするのか悩むこともあるでしょう。ハローワークの職業訓練で、医療事務の資格は取得できるのでしょうか?受講条件やメリット・デメリット、取得できる資格の種類を紹介します。
この記事のポイント
- ハローワークの職業訓練で取得できる医療事務資格
- 「医療事務管理士技能認定試験」「医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)」「医療事務検定試験」など、複数種類ある医療事務資格の中から、希望する資格の取得が可能です。
- ハローワークの職業訓練の種類と受講条件
- ハローワークの職業訓練は「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2つに分けられます。失業手当の受給有無等によって受講条件が一部内容が異なるため、ハローワークに確認の上、どちらを受講するかを相談しましょう。
- 職業訓練校で受講開始の流れ
- 適切なコースを選定を行なうため複数回の職業相談・ヒアリングを受けてから申し込みをし行ない、受講のための選考試験を受けます。医療事務の場合、適性検査や面接をするのが一般的です。
ハローワークで医療事務の資格は取れる?
医療事務の資格取得方法はいくつかありますが、ハローワークでも取得が可能です。主な条件と、概要を解説します。
条件を満たせば取得可能
医療事務の資格は、ハローワークが実施する「ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)」で取得が可能です。条件を満たすと、申し込みができます。
ハロートレーニングは求職者支援の一環で、無料で職業訓練を受けながら給付金を受給し、就職を目指す制度です。医療事務以外にも複数の科目があり、自分の適性や希望する就職先に合う訓練ができます。
収入面や求職状況による条件が定められているため、まずは医療事務の職業訓練が受けられるかを確認しましょう。
ハローワークの職業訓練の種類と受講条件
ハローワークの職業訓練は、2つのパターンに分かれています。それぞれの特徴と、受講条件を確認しましょう。
公共職業訓練
公共職業訓練は、主に雇用保険の失業手当を受給している求職者向けの職業訓練です。施設内訓練と委託訓練があり、医療事務は委託訓練の「離職者等再就職訓練」に分類されています。
さまざまなコースが用意されているため、医療事務の訓練がいつどこで行われるのか、確認した上で申し込みましょう。
離職者等再就職訓練は、3~6カ月ほどの短期間が基本です。選考によって訓練する科目が決定し、希望者が多く受講できない場合は、第2希望の科目でも選考が行われます。
求職者支援訓練
求職者支援訓練は、もともと雇用保険の失業手当を受給していない人向けの制度でした。
しかし、2022年7月1日より失業手当の受給者も、求職者支援訓練を受けられるように変更されています。そのため、失業手当受給の有無を問わず申し込み可能です。
失業手当の給付が受けられず、金銭面で医療事務の職業訓練を受けるか悩んでいる場合は、求職者支援訓練で給付金の対象となるか確認してみるのもよいでしょう。
職業訓練の受講条件
公共職業訓練は、ハローワークで申し込み手続きを進め、面接や書類審査に合格すると受講できます。対象者は、主に失業給付を受けている「離職者など」です。
求職者支援訓練は、基本的には失業手当を受給していない求職者が対象ですが、受給している人も対象となりました。失業手当受給中の人の場合は一部内容が異なるため、ハローワークに確認の上、公共職業訓練とどちらを受講するか相談しましょう。
また、職業訓練を受講し一定の要件を満たすと、「職業訓練受講給付金」を受給できます。主な収入要件は、以下の通りです。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
収入以外にも細かい条件があるため、詳しくはハローワークで相談しましょう。
ハローワークの職業訓練のメリット・デメリット
医療事務の資格をハローワークで取得すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?状況によっては、他の方法を検討した方がよいケースもあります。主なメリットとデメリットを確認しましょう。
受講料無料で講座が受けられる
医療事務に限定すると、テキスト代・教材費などの一部は実費となるものの、ハロートレーニングの受講料自体は基本的に無料です。
要件を満たすと、職業訓練受講給付金・通所手当がもらえるケースもあり、給付を受けながら勉強できる点がメリットです。
医療事務の資格取得を検討していて、費用の面で悩んでいるなら、ハローワークからの申し込みを検討してもよいでしょう。
参考:就職につながる「医療事務分野の職業訓練(求職者支援訓練)」を受講しませんか|厚生労働省
:求職者支援制度が変わります|厚生労働省
誰でも受講できるわけではない
ハロートレーニングは募集定員や時期が決まっており、誰でも利用できるわけではありません。受講条件を満たし、面接や書類審査を通過した人だけが受講できるシステムです。
ハローワークに相談し、再就職・求職活動にあたって資格取得が必要であると認めてもらわなければならない点は、デメリットといえるでしょう。
民間の通信講座などで医療事務の資格取得を目指す場合、受講費用を支払えば基本的に誰でも受講できます。受講したい施設・講座が決まっているときや、希望の講座がハローワークで募集されていないときは、民間のスクールも検討しましょう。
ハローワークで医療事務の資格を取得する流れ
ハローワークの職業訓練を受けるには、申し込みが必要です。医療事務の資格を取得するまでの流れを解説します。
参考:求職者支援訓練 受講手続きの流れ|厚生労働省 愛知労働局
ハローワークへ申し込みをする
ハロートレーニングで医療事務の資格を取得したいと考えるなら、まずはハローワークへ出向きましょう。
職業相談の結果、資格取得が必要と判断されれば、職業訓練校やコースの選択に進みます。医療事務の資格取得を検討しているのであれば、病院・クリニック・ドラッグストアなど、処方薬の提供を行っている職業を目指すことになるでしょう。
適性・能力を見極めて、適切なコースを選定しなければならないため、基本的には複数回の職業相談・ヒアリングを受けてから申し込みに進みます。医療事務の募集期限が迫っている場合は、早めに相談をしておきましょう。
職業訓練が受講できる場所
ハロートレーニングに申し込み、職業訓練が受講できる場所は、選択した訓練やコースの種類によって異なります。
医療事務が含まれる「事務系」の資格は、主に民間教育訓練機関などで受講可能です。受講する場所・期間・募集時期は、ハロートレーニングの公式サイトで公開されています。
地域によっても開催状況が異なるため、最寄りの訓練機関で受講ができるかチェックしておくことが大切です。
選考試験を受ける
ハロートレーニングに申し込むと、受講する学校・民間教育訓練機関が実施する選考試験を受けます。施設ごとに内容は異なりますが、医療事務の場合、適性検査や面接をするのが一般的です。
筆記試験や面接を受け、一定の基準に達すると合格となります。筆記試験の合格基準は申し込む施設によって異なるため、内容や基準を確認しておきましょう。
筆記試験は極端に難しいものではなく、漢字の読み書きや計算など、一般常識の範囲を出題している施設もあるようです。
入学手続き後に職業訓練校で受講開始
選考試験に合格すると、入学手続きに進みます。受講する施設の指示に従って、手続きを済ませましょう。
ハローワークを利用して職業訓練を受ける場合、就職支援は訓練中も継続しています。求職中で就職先が決まっていないときは、月に1度ハローワークに出向いて職業相談を行いましょう。
また、職業訓練受講給付金を受け取りながら受講する場合、やむを得ない事情以外での欠席・遅刻があると、給付金の対象から外れてしまいかねません。
やむを得ない事情で欠席する場合でも証明書の提出が求められるため、ハローワークに確認しておきましょう。
ハローワークの職業訓練で取得できる医療事務資格
ハローワークの職業訓練では、複数種類ある医療事務資格の中から、希望する資格の取得が可能です。
受講すれば自動的に取得できるのではなく、任意で試験を受けるケースが多くなっています。コースによって対応する資格が変わる点にも注意しましょう。
医療事務管理士技能認定試験
医療事務管理士技能認定試験は、医療事務の仕事に欠かせない事務処理能力や、レセプト作成に関するスキルを証明できる資格です。もちろん、履歴書にも資格・肩書として記載できます。
試験内容は学科と実技に分かれ、学科の内容は法規と保険請求事務などです。実技では、レセプト点検やレセプト作成の問題が出題されます。
特別な受験資格はなく、誰でも受験可能です。インターネット試験にも対応しており、会場に出向くことなく受験できます。
医科医療事務管理士技能認定試験 | JSMA 技能認定振興協会
歯科医療事務管理士技能認定試験 | JSMA 技能認定振興協会
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
医療事務技能審査試験に合格すると、「メディカルクラーク」の称号が付与されます。医療事務を学ぶ人だけでなく、すでに医療事務として働く従事者のスキルを証明する目的としても使われており、現場のニーズに対応した試験内容が特徴です。
目的に合わせて「医科」「歯科」の2種類から選択でき、誰でも受験できます。学科と実技があり、患者への対応や医療事務の知識、診療報酬請求事務についての知識を確認する内容です。
試験は、「医科」は毎月・「歯科」は2カ月に1回開催されており、自宅で受験できるので試験会場に赴く必要はありません。
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)|資格試験/技能認定|日本医療教育財団
医療事務検定試験
医療事務検定試験は、医療事務の基礎知識を身に付けるための試験です。試験に合格すると、履歴書に「日本医療事務協会主催 医療事務検定試験 合格」と記載できます。
資格試験を受験できるのは、医療事務講座を受講した人です。通学コースで学んだ場合は会場受験、通信コースで学んだ人は自宅受験します。
試験内容は学科と実技があり、医療事務に必要な知識の全般から出題されます。未経験から医療事務の資格取得を目指すのであれば、基礎知識を学べる医療事務検定試験から受験してみるのもよいでしょう。
医療事務検定試験とは|医療事務の資格講座なら日本医療事務協会
ハローワークで医療事務の資格取得を目指そう
医療事務の資格を取得すると、病院・クリニック・ドラッグストアなど、医療関連の施設に就職しやすくなります。
ハローワークの「ハロートレーニング」では、離職者・求職者向けに医療事務の資格取得コースが用意されています。職業訓練受講給付金を受給できる可能性があるほか、就職支援も利用できるため、資格取得を検討しているなら積極的に活用しましょう。
失業手当の給付を受けている場合は「公共職業訓練」、受給していない場合は「求職者職業訓練」が主な受講先です。自分がどちらに該当するのか分からない人は、ハローワークで相談してみましょう。