公認心理師に将来性はある?現状や活躍できる場、必要なスキルも紹介

公認心理師は、比較的新しい国家資格です。資格を取得して働く上で、将来性の有無は気になります。現状の雇用状況や活躍の場、将来性を高める方策についても見ていきましょう。今後長く活躍していくためのポイントも解説します。

公認心理師に将来性はある?

面談する白衣の女性

(出典) pixta.jp

国家資格として認められている公認心理師には、どのくらい将来性があるのでしょうか?まずは、現状と今後の展望について確認します。

今後さらにニーズの高まりが予想される

公認心理師は、精神的な問題を抱える人のカウンセリング・援助を行う仕事です。病院だけでなく、企業・学校での相談や刑務所のカウンセラーなど、活躍の場は多いでしょう。

近年、精神科で精神疾患であると診断されるケースは増えています。厚生労働省が公開する2002〜2017年の精神疾患患者数によると、258万4,000人から419万3,000人へと増加しており、この傾向を踏まえると今後も需要は高まっていくといえそうです。

公認心理師は心の問題に対応し、精神疾患・障害に対する心理支援や一般的なカウンセリングなど、幅広い業務に対応しています。精神疾患以外にも、ストレスを抱えてカウンセリングを必要とする人の数は増えていると考えられるでしょう。

参考:第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 |厚生労働省

将来性と併せて考えたい公認心理師の厳しさ

白衣を着てパソコンを操作する女性

(出典) pixta.jp

公認心理師に限らず、心理職は厳しさを伴う仕事でもあります。公認心理師の資格を取得するまでの道のりや、現状の雇用状況・収入について見ていきましょう。

資格取得までのハードルが高い

公認心理師は、2017年に誕生した比較的新しい国家資格です。基本的には、指定された大学院に通って必要科目を履修するか、大学で学んだ後に実務経験を積むなど、大学院修了と同等の能力があると認められる人に受験資格が与えられます。

現状は経過措置が設けられ、すでに心理職として働いている実務経験者には特例措置がありますが、受験資格を得るまでのハードルは高く設定されているのが実情です。

どのルートであっても、学校に通うコスト・時間がかかり、一定以上の学力も求められます。公認心理師を目指すのであれば、早いうちから進路を考える必要があるでしょう。

参考:公認心理師試験|一般財団法人 日本心理研修センター

平均年収が低く正規雇用が少ない

公認心理師の資格取得は難易度が高いにもかかわらず、雇用の安定性や収入の水準には課題があります。

2020年に厚生労働省の推進事業として実施された「公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」によると、公認心理師を含む常勤心理職全体の平均年収は400万円未満が全体の6割弱を占めており、ボリュームゾーンは350万~400万円です。

国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本人の給与所得者全体の平均給与は年間443万円とされているため、心理職の年収は一般的な平均年収に比べて低めだと考えられます。

また、上記の調査によると、心理職は非常勤の割合が高いのも特徴です。常勤が6割程度に対して、非常勤が4割程度を占めており、正規雇用は多くないといえるでしょう。

雇用先の多くは、精神科を主体とする病院です。心理職を雇用している医療機関は一部にとどまるという点も、考慮しておかなければなりません。

参考:公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査|国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター

参考:令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

公認心理師の将来性向上のために検討されている方策

面談する女性

(出典) pixta.jp

公認心理師の雇用状況や収入に関する課題を解消するため、さまざまな制度・方策が検討されています。主な例を見ていきましょう。

医療機関の公認心理師の増員

現状において、心理職を雇用しているのは医療機関の半数程度です。しかし、医療と心理ケアには密接な関係があり、増員によって幅広い分野での活躍が期待されています。

公認心理師を含む心理職の増員は、2020年の「公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」内でも、方策として提言されている項目です。

メンタルヘルスに関する問題で悩む人や、認知症・緩和ケアなどの医療分野でも、心理的なケアができる人材は求められています。

精神疾患患者の増加という現状を考慮するに、メンタルヘルスの不調を気軽に相談できる専門職は、今後活躍の場が増えることが期待できるでしょう。

参考:公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査|国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター

公認心理師の配置条件の改定

国家資格として心理ケアを担当する公認心理師は、現状においては「必置資格」ではありません。

しかし、心理職を求める声や幅広い業務に対応する人手を確保するため、施設の規模・業務内容によっては、心理職の配置を必須要件とするべきではないかという提言もあります。

医療機関では、心理職を雇用できない理由として「収益性の問題」を挙げているケースが多く、心理ケアに対して診療報酬の導入を検討し、問題解決を図ろうという考え方もあるようです。

心理相談・心のケアが重要視されている近年では、公認心理師のニーズは高まっています。今後、さらに活躍の場が拡大する可能性はありそうです。

専門性向上のための制度の整備

人の心理・精神に関する新たな技術・医療・研究は、年々アップデートされています。資格取得後も、公認心理師は専門性を高めるために勉強を続けなければなりません。

自己研鑽や研究を進めやすくするため、制度の整備も進んでいます。「公益社団法人 日本公認心理師協会」は専門認定制度を開始し、生涯学習や技能の向上を目的として以下の導入を公表しました。

  • 認定専門公認心理師:2023年9月より認定申請受付を開始
  • 認定専門指導公認心理師:2025年度以降に認定申請・登録などの詳細を公表予定

専門性・技能を証明する認定制度によって、勤務先や活躍の場がますます広がっていくでしょう。

参考:Home

公認心理師が活躍する場

資料に記入する男性

(出典) pixta.jp

公認心理師の資格を取得すると、どのような場所で働けるのでしょうか?活躍の場となる分野や、主な勤務先について確認しましょう。

保健医療

医療機関や保健所では、心理ケアを必要とする患者・相談者のために、公認心理師を含む心理職を雇用するケースが増えています。

精神科を主体とする病院・クリニックが、主な勤務先です。心理カウンセリングや精神的な問題に悩む人たちの支援など、幅広い分野で活躍できます。

身体的な疾患で入院・通院している患者を対象に、チーム医療で公認心理師が活躍するケースも増えているようです。心理職を雇用している一般病院・クリニックで、他職種と連携しながら患者の心のケアや面談を行います。

一般の病院では、心理に関する知識以外に、病気・ケガなどの医療知識が求められるケースが多いでしょう。

福祉

福祉の分野では、障害者支援施設や子ども・若者総合相談センター、児童厚生施設などで心理職が活躍しています。

障害者支援施設では、身体・精神に障害を持つ人の心理的援助や、家族の心理ケアなどが主な仕事です。精神的な悩みを持つ子ども・若者のケアを行う、相談センターも活躍の場となるでしょう。

児童厚生施設には児童館・児童遊園が含まれており、心理カウンセラーとして子どもの健やかな生育を促します。

そのほか、児童相談所では虐待・家庭内トラブルなどの問題を抱える児童に対する、サポートが主な役割です。精神保健福祉センターでは、地域住民の心理相談に応じ、電話相談や医療機関の紹介など、多くの業務を担当します。

教育

教育分野では、学校・公立教育相談機関などが主な活躍の場です。学校ではスクールカウンセラーとして雇用・派遣され、児童・学生の心のケアを担当します。

公立教育相談機関は、地方自治体が運営する「教育相談センター」が該当し、いじめ問題や進級・進学に関する相談などを受け付ける施設です。思春期の心の悩みや家族関係のトラブル、発達障害の相談のように、広い範囲の相談に対応しています。

教育分野では民間資格である臨床心理士が活躍していますが、国家資格である公認心理師の資格も活用でき、保有資格の種類を問わず活躍できる分野です。

産業・労働

公認心理師を含む心理職は、働く人たちの心理ケアにも従事します。産業・労働の分野では、職業相談関連の施設が主な勤務先になるでしょう。

ハローワークでは、カウンセラーが就職・労働に関する悩みを聞き、アドバイス・就職サポートに役立てます。

障害者就労支援を担当する「生活支援センター」では、障害者の就労・労働上の悩みについてカウンセリングし、就労支援につなげるのが主な役割です。

そのほか、企業の産業医と連携して、従業員の精神的なケア・相談に対応するカウンセラーもいます。働く上での悩みやハラスメントの相談を受け、適切な対処が求められるでしょう。

司法・犯罪

更生施設や刑務所、家庭裁判所などでも心理カウンセラーは活躍しています。

少年鑑別所・少年院では犯罪を犯した少年たち、刑務所では成人の矯正・更生を担当するのが主な仕事です。矯正プログラムの作成やカウンセリングに対応する心理職は、「心理技官」と呼ばれます。

家庭裁判所では、事件の調査・報告を担当する「家庭裁判所調査官」として心理職が活躍しています。家庭裁判所で扱われる民事案件や、少年事件の対応が主な仕事です。

問題を起こした人の更生だけでなく、研究・調査や施設を出た後の就労サポートなど、業務内容は多岐に渡ります。

参考:心理技官:法務省矯正職員採用

参考:家庭裁判所調査官 | 裁判所

公認心理師として長く活躍するには?

面談をする心理士

(出典) pixta.jp

心理職を長く続けるには、資格取得だけでなく成長も求められます。今後、活躍の場を広げていくために何をすればよいのか、基本的な方向性をチェックしましょう。

資格を取得して専門性を高める

心理職には、多くの関連資格があります。公認心理師は国家資格ですが、関連資格を取得するとさらに専門的な知識・技術が身に付き、仕事の幅が広がるでしょう。

主な資格として、臨床心理士・精神保健福祉士・福祉心理士などが挙げられます。臨床心理士は長い歴史を持つ民間資格で、実績・信頼性の高い心理系資格です。

精神保健福祉士は、精神疾患・精神障害に悩む患者のサポートに特化しています。福祉心理士は、福祉に関するサービスを専門とする民間資格です。

公認心理師として専門性を高めるために、認定専門公認心理師として認定を受けるのも、もちろんよいでしょう。

参考:臨床心理士とは | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会

参考:精神保健福祉士について |厚生労働省

参考:福祉心理士とは?|日本福祉心理学会

独立開業をする

心理カウンセラーは、独立開業が可能な職業です。公認心理師の資格を持っていれば、カウンセラーとしての知識・技術が証明でき、独立にも役立つでしょう。

自分の事務所を構え、仕事を請け負うようになれば、幅広い分野で活躍できます。1つの領域に特化し、得意分野を持つのもよいでしょう。

独立開業までには経験を積み、時間をかけて顧客を獲得する必要があります。それにより、安定して仕事が獲得できるようになるでしょう。長く働こうと考えているのであれば、独立を視野に入れて実績を積むのがおすすめです。

公認心理師は今後も必要な場面が多い仕事

白衣姿の女性

(出典) pixta.jp

公認心理師は心理職の国家資格として、就職・転職に役立つ資格です。医療・福祉・教育・労働・司法分野など、幅広い領域で求められています。今後の将来性が期待できる仕事です。

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