福祉の業種にはどんなものがある?各業種の職種や仕事内容も紹介

少子高齢化が進む日本では、福祉の重要性は高まる一方です。福祉というと、高齢者介護を思い浮かべる人が多いですが、多くの業種から成り立っており、さまざまな職種の人が業界を支えています。代表的な業種・職種を確認しましょう。

福祉業界の業種とは

福祉のイメージ

(出典) pixta.jp

企業や事業所が展開する事業の種別を「業種」といいます。福祉業界は、子どもや体が不自由な人、高齢者などが必要とする支援やサービスを提供する業界です。「児童福祉事業」「老人福祉・介護事業」「障害者福祉事業」などの業種が存在します。

児童福祉事業

福祉には「幸福」という意味がありますが、現代においては「公的扶助やサービスによって普段の暮らしを充足させること」を指すのが一般的でしょう。

児童福祉事業は、児童の福祉に関わる業種です。日本には、児童福祉を保障するための児童福祉法があり、第1条には以下のような記載があります。

全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する

児童福祉事業では、家庭に問題がある子どもを保護したり、保護者の委託を受けて乳幼児・幼児を保育したりして、子どもの健全な成長をサポートします。

出典:児童福祉法 | e-Gov法令検索

老人福祉・介護事業

老人福祉・介護事業は、高齢者の福祉や介護に関する業種です。年を重ねると、認知機能や身体機能が衰え、身の回りのことを自分で行うのが困難になる人も増えます。

身体介護や生活援助を行ったり、レクリエーションの機会を提供したりして、高齢者を支援するのが老人福祉・介護事業の役割です。

日本の老人福祉・介護は、老人福祉法と介護保険法によってルールが定められています。介護保険法は3年ごとに法改正が行われるため、介護業界への転職を希望している人は、内容を把握しておいた方がよいでしょう。

参考:介護保険制度の概要 |厚生労働省

障害者福祉事業

障害者福祉事業とは、心身に障害を抱える人の福祉に関わる事業です。具体的には、食事・入浴・排せつなどの介助をしたり、就労に必要な訓練を実施したりして、障害者の自立をサポートします。

在宅介護が長いと、介護に携わる家族に大きな負担がかかります。障害者福祉事業による預かり介護や生活援助は、障害者とその家族にとって欠かせないものです。

国は、福祉・介護政策の1つに障害者福祉を掲げ、障害福祉サービスの推進や障害者制度の改革などに取り組んでいます。

参考:障害福祉サービスの内容 |厚生労働省

各業種における主な働く場所

保育所

(出典) pixta.jp

福祉業界に就職・転職した場合、どのような場所に勤務するのでしょうか?各業種における代表的な所属先(事業所・施設)を紹介します。

児童福祉事業は「保育所」など

児童福祉事業に関連する代表的な事業所として、以下のようなものが挙げられます。

  • 保育所
  • 学童保育施設
  • 児童相談所

保育所とは、保護者からの依頼を受けて、乳幼児や幼児を保育する施設です。具体的には託児所や保育所型認定こども園などが該当します。

幼稚園は学校教育法に基づいた学校に該当するため、児童福祉の事業所には含まれない点に留意しましょう。

学童保育施設とは、放課後児童健全育成事業に関わる施設です。日中、家に保護者がいない小学生を受け入れている場所で、放課後児童クラブとも呼ばれています。

児童相談所は、18歳未満の子どもに関する相談ができる行政機関です。子ども本人はもちろん、親や教師、地域の人々も利用できます。

老人福祉・介護事業は「老人ホーム」など

老人福祉・介護事業を行う主な事業所として、以下のようなものが挙げられます。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 老人デイサービスセンター
  • 訪問介護事業所

特別養護老人ホーム(特養)とは、常時介護が必要な高齢者に対し、生活全般のサポートを行う施設です。原則65歳以上で、要介護3以上の認定を受けた人が入居できます。

介護老人保健施設(老健)は、65歳以上で、要介護高齢者(要介護1以上)の中でも特に、医療ケアやリハビリが必要な人のための介護施設です。施設内では、介護職員や作業療法士、理学療法士などが活躍しています。

特別養護老人ホームは終身利用が可能ですが、介護老人保健施設の入居期間は原則的に3カ月です。

そのほか、通所の介護施設である老人デイサービスセンターや在宅介護を行う訪問介護事業所、民間企業などが運営する有料老人ホームなどがあります。

障害者福祉事業は「障害者支援施設」など

障害者福祉事業の代表的な事業所としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 障害者支援施設
  • グループホーム
  • 自立訓練事業所

障害者支援施設とは、自宅での生活が困難な障害者に対し、日常生活の支援を行う施設です。身体介護のほか、生活上の相談や自立訓練(機能訓練・生活訓練)なども行います。

グループホームは、共同生活を行う住まいの場です。グループホームは介護を要しない人が対象で、定員は「1ユニットにつき5~9人」「1施設につき最大3ユニットまで」と決められています。

自立訓練事業所では、知的・精神障害者に対し、生活能力の維持・向上を目的とした支援を行います。

児童福祉事業にはどんな職種がある?

保育士

(出典) pixta.jp

日本では少子化が進んでいますが、児童福祉に関する職種のニーズはなくなりません。特に都心部の保育園では、保育士不足が生じています。児童福祉事業の代表的な職種として、保育士と児童相談所相談員について確認しましょう。

保育士

保育士とは、専門的な知識や技術に基づき、児童の保育や保護者への保育指導を行う職種です。保育とは、児童に対する養護と教育を指します。ただ単に児童を預かるだけでなく、成長過程に合わせた幼児教育を行うのが保育士の役割といえるでしょう。

主な勤務先は保育所ですが、児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設・知的障害児施設などでも需要があります。

就労には、保育士資格の取得に加え、都道府県知事に対して登録申請手続きを行い、保育士証の交付を受けることが必要です。資格の取得方法には、大きく以下の2つのルートがあります。

  • 厚生労働大臣が指定する指定保育士養成施設を卒業する
  • 保育士試験を受験し合格する

参考:保育士になるには?-厚生労働省

児童相談所相談員

児童相談所相談員は、児童相談所で子どもに関する相談に応じる職種です。心理検査や心理療法などを担当する児童心理司と、家庭環境や生育歴などを調査・診断する児童福祉司の2種類の職種があります。

子どもや親、地域住民などの相談に応じた後、必要であれば児童福祉施設への入所や里親への委託、指導といった対応を行います。

児童相談所相談員として働くには、「地方公務員試験に合格すること」と「任用要件を満たすこと」が前提です。任用後も、所定の研修に参加する必要があります。

参考:児童相談所相談員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

老人福祉・介護事業にはどんな職種がある?

介護士

(出典) pixta.jp

少子高齢化が進む日本では、老人福祉・介護の職種において人手不足が生じています。ほとんどの職種は、資格取得や研修課程の修了が必要ですが、未経験者でも比較的目指しやすい環境が整っています。

介護福祉士

介護福祉士は、介護に関する専門知識を生かし、身体介護や生活援助、相談・助言などを担う職種です。

介護業界には数多くの資格がありますが、介護福祉士は介護分野における唯一の国家資格です。資格を取得すると、キャリアアップや給与アップが期待できるほか、転職を有利に進められます。

介護職でキャリアを積む場合、最初に介護職員初任者研修を受けるのが一般的です。その後、介護福祉士実務者研修を受講し、実務経験を3年以上積み介護福祉士を目指します(実務経験ルート)。

介護福祉士の受験資格を得る方法は複数あります。社会人の場合、働きながら介護福祉士養成施設に通うか、実務経験ルートを選択するのが望ましいでしょう。

参考:[介護福祉士国家試験]受験資格:福祉系大学等:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

支援相談員

支援相談員は、主に介護老人保健施設に勤務し、入居者やその家族の相談に応じる職種です。相談に乗るだけでなく、入所・退所に関する調整をしたり、自治体の担当者やケアマネジャー、他職種に連絡したりと、業務内容は多岐にわたります。

支援相談員として働くのに必要な要件は自治体ごとに異なりますが、福祉・介護の未経験者や無資格者が支援相談員になれるケースはほとんどありません。

「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のいずれかの資格を取得しておくのが望ましいでしょう。なお、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの相談員は、生活相談員と呼ばれています。

ケアマネジャー

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険制度に基づき、利用者とその家族に最適なケアプランを作成する職業です。

サービス事業者と利用者をつなぐ窓口として、連絡・調整業務も行います。一般的な介護職と異なり、利用者に対する直接的な身体介護や生活援助は行いません。

ケアマネジャーとして働くには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格した上で、介護支援専門員実務研修課程を修了する必要があります。試験の受験資格や研修の日程については、各自治体のWebサイトを確認しましょう。

参考:介護支援専門員(ケアマネジャー) |厚生労働省

社会福祉士

社会福祉士は、高齢者や障害者、生活困窮者など、日常生活を営むのが困難な人の相談に乗り、適切な助言や指導を行う職種です。対象者の状況に応じた支援を提案し、医師やサービス事業者との調整を図ります。

主な勤務先は、介護施設・福祉施設・医療機関・地域包括支援センターなどです。介護施設に勤務する社会福祉士の中には、介護職を兼任する人も少なくありません。

社会福祉士を名乗るには、社会福祉士国家試験に合格する必要があります。社会福祉振興・試験センターのWebサイトによると、受験資格の取得方法は全部で12通りです。

参考:社会福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図):福祉系大学等:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

訪問介護員

訪問介護員は、介護保険法に基づいて訪問介護を行う職種です。訪問介護とは、自分で日常生活を営むのが困難な要介護者の居宅(自宅・有料老人ホームなど)に赴き、身体介護や生活援助などを行うことです。

訪問介護員になるには、介護職員初任者研修課程(計130時間)を修了し、修了証明書の交付を受けなければなりません。ただし、調理や洗濯、薬の受け取りといった生活援助に特化する場合は、生活援助従事者研修課程を修了すれば業務に従事できます。

参考:訪問介護員/ホームヘルパー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

参考:介護員養成研修の取扱細則について

障害者福祉事業にはどんな職種がある?

女性福祉士

(出典) pixta.jp

障害者福祉に関連する職種は、障害者の生活や自立をサポートするのが役目です。障害者といっても、障害の程度や状況は1人ずつ異なるため、相手のニーズに応じた支援を行う必要があります。代表的な職種として、生活支援員とガイドヘルパーを確認します。

生活支援員

生活支援員とは、障害者施設や就労施設などで生活上の支援を行う職種です。利用者の状況に応じた身体介護のほか、自立に向けた就労支援や健康管理の指導などを行います。

生活支援員になるのに学歴や資格は必要ありません。未経験者でも従事できますが、以下のような資格があると就職・転職に有利でしょう。

  • 介護職員初任者研修
  • 介護福祉士実務者研修
  • 社会福祉士
  • 介護福祉士
  • 精神保健福祉士

ガイドヘルパー

ガイドヘルパー(移動介護従事者)は、1人で外出が困難な障害者に付き添い、移動をサポートする職種です。

仕事内容は、利用者の状況によって異なります。例えば、視覚障害のある利用者をサポートする場合、移動介助だけでなく、代筆や代読なども業務に含まれるでしょう。

ガイドヘルパーになるには、都道府県または市区町村が指定した養成研修を受ける必要があります。自治体によっては、以下のような介護職員初任者研修以上の資格を要するところもあるでしょう。

  • 視覚障害者同行援護従業者養成研修
  • 全身性障害者ガイドヘルパー養成研修
  • 知的・精神障害者行動援護従業者養成研修

福祉の業種に向いている人の特徴は?

高齢者と話す福祉士

(出典) pixta.jp

福祉の業種に向いているのは、どのような資質や能力を持った人なのでしょうか?転職を検討している人は、業種との相性をチェックしてみましょう。

人を思いやる気持ちとメンタルの強さ

福祉従事者の役割は、社会的援助を求めている人を支えることです。利用者によって必要なサポートが異なるため、相手の立場に立って物事を考えられる人に向いているでしょう。どの業種・職種を選択するにしても、相手を思いやる気持ちが欠かせません。

さまざまなバックグラウンドを持つ利用者を相手にするだけに、精神的な負担が大きくなりがちです。思い通りに物事が進まないケースも日常茶飯事なので、メンタルが強い人や感情のコントロールがうまくできる人に向いています。

コミュニケーション能力が高い

福祉施設では、利用者や利用者の家族、他の職員と接する機会が多くあり、コミュニケーション能力の高さが求められます。

コミュニケーションとは、文字や言葉、ボディランゲージなどを通じて、意思疎通を図ることです。現場には、心身に障害を抱えている人や心に傷を負った人もいるため、相手に合った方法を模索しなければなりません。

相手の気持ちに寄り添ったコミュニケーションは、利用者やその家族に安心感や元気を与えます。日頃から小まめに接していれば、相手の異変にもすぐに気付けるでしょう。

将来性も高い福祉の業種を把握しよう

介護士

(出典) pixta.jp

福祉業界には、さまざまな業種があります。肉体的・精神的な負担が大きい仕事もありますが、人のために役に立ちたいという人にとって、やりがいは大きいでしょう。

少子高齢化が進む中、人手不足が深刻化している職種もあり、業界未経験者でも転職のハードルはそれほど高くはないといえます。

まずは、仕事に従事するのに必要な資格を調べるところからスタートしましょう。仕事内容や待遇については、求人検索サイト「スタンバイ」でチェックできます。

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