防火管理者とは?仕事内容や資格の概要について解説

防火管理者は多くの人が利用する建物などの火災被害を防止する役割を担います。防火管理者がどのようなことをするのか、どうすればなれるのか、防火管理者の概要や仕事内容、資格と併せて紹介します。

防火管理者とは?

消火器で防火のイメージ

(出典) pixta.jp

防火管理者は、「消防計画の作成」のほか、建物防火のために管理上必要な業務「防火管理業務」を計画的に行う責任者であり、消防法に基づき対象の建物の管理権原者によって選任されることが必要です。

選任に当たっては防火管理講習を受講・修了していることが条件です。防火管理講習は、甲種と乙種に分類されています。乙種は「基礎的な知識及び技能の修得」を目的とし、甲種ではさらに専門的内容となっています。

甲種講習を受講・修了した場合は、防火対象物となる全ての建物で、防火管理者になることができます。乙種講習修了者は、防火管理者に選任できる防火対象物が、小規模なものに限られています。

防火管理講習を修了していない場合でも、一定の立場や経験を持つ場合(学識経験者など)は防火管理者になることができます。主な例は次の通りです。

  • 市町村の消防職員で管理的または監督的な職に1年以上あった人
  • 労働安全衛生法第11条第1項に規定する安全管理者として選任された人
  • 防火対象物点検資格者講習を受講・修了し、免状の交付を受けている人

参考:防火管理講習 | 講習について | 防火・防災管理講習 | 一般財団法人 日本防火・防災協会

参考:消防法8条 | e-Gov法令検索

防火管理者の選任が必要な建物とは?

防火管理者が必要かどうかは、消防法により建物の用途と収容人員で定められています。収容人員30人以上の特定防火対象物(不特定多数の人が出入りする建物)、もしくは収容人員50人以上の非特定防火対象物(決まった人が出入りする建物)では、防火管理者の選任が必要です。

一例を挙げると、映画館、集会場、カラオケボックス、飲食店、百貨店、ホテル、病院、幼稚園、学校、図書館、博物館、寺院などがあり、さらに、老人短期入所施設など火災発生時に自力で避難することが困難な人が入所する社会福祉施設では、建物全体の収容人員が10人以上の場合も必要です。

また、防火対象物の収容人員によって、甲種防火対象物または乙種防火対象物に分類され、それぞれの対象物で受講が必要な講習の区分が異なります。

防火管理者と防災管理者の違い

防火管理者とよく似た資格に「防災管理者」があります。防災管理者は、地震やテロなど「火災以外」の災害による被害を最小限に抑えるための防災管理業務を担う責任者のことをいいます。

防火管理者が火災を対象としているのに対し、防災管理者は火災以外の被害を対象としているのが特徴です。

防災管理者の資格は、防災管理新規講習もしくは防火管理者の資格も取得可能な防火・防災管理新規講習の受講・修了によって取得できます。また、防災管理者資格の継続には、原則5年以内ごとの再講習が必要です。

参考:防災管理講習|講習について|防火・防災管理講習|一般財団法人 日本防火・防災協会

防火管理者になるには?

講習のイメージ

(出典) pixta.jp

防火管理者として選ばれるためには、防火管理における専門的な知識や技能が求められます。では、専門的な知識や技能を習得するためにどうすればいいのでしょうか。ここでは防火管理講習を通して防火管理者になるための方法を紹介します。

防火管理講習を受講する必要がある

防火管理者になるための方法として、防火管理講習を受講・修了する必要があります。

防火管理講習は、都道府県知事や消防本部または市町村の消防長、総務大臣が登録した講習機関(一般財団法人日本防火・防災協会)で行われます。なお、講習修了資格は全国共通です。

防火管理講習には、甲種防火管理新規講習、乙種防火管理講習)、甲種防火管理再講習の3種があります。

甲種防火管理新規講習は、甲種防火管理者として選ばれるための資格を取得可能です。日程は2日間、合計10時間ほどの講習で、防火管理の意義や制度、火気管理、施設・設備の維持管理、訓練・教育、消防計画などについて学びます。受講料は8,000円(テキスト、修了証、諸経費を含む。税込み)です。

乙種防火管理講習は、乙種防火管理者として選ばれるための資格を取得可能です。日程は1日間、5時間ほどの講習で、甲種新規講習の講習内容のうち、基礎的な知識や技能を学びます。受講料は7,000円です。

参考:防火管理講習 | 講習について | 防火・防災管理講習 | 一般財団法人 日本防火・防災協会

再講習が必要になるケースがある

一定の防火対象物において、甲種防火管理者に選ばれている場合、甲種防火管理再講習の受講・修了が必要です。

具体的には、収容人員が300人以上の特定防火対象物において、防火管理者として選ばれた甲種防火管理新規講習を修了している人が、再講習の対象となります。

再講習には受講期限が設けられており、防火管理者に選任された日、甲種新規講習を修了した日から4年以内の場合、講習修了日以後の最初の4月1日から5年以内となります。選任された日が講習を修了した日から4年を超えている場合、選任日から1年以内の再講習の受講・修了が必要です。

なお、日本防火・防災協会が発行した修了書を持っている場合に限り、オンラインでの再講習が可能となっています。

参考:防火・防災管理再講習について | 一般財団法人 日本防火・防災協会

防火管理者の仕事内容や求人

非常灯をチェックする男性

(出典) pixta.jp

防火管理者は、実際にどのようなことをして、どれくらいの需要があるのでしょうか。防火管理者の仕事内容や求人について解説します。

防火管理者の仕事内容

防火管理者の仕事(責務)については、消防法第8条に記載されています。大まかな内容は次のとおりです。

・防火管理に関連する消防計画の作成、届出
・消火、通報、避難の訓練の実施
・消防用設備等の点検、整備
・火気の使用や取扱いに関する監督
・避難または防火上必要な構造、設備の維持管理
・収容人員の管理
・その他防火管理上必要な業務の実施

上記のように、幅広い業務を担当するのが防火管理者の仕事の特徴です。また、防火管理者は専門職ではなく、一般の業務と並行して行わなければなりません。

そのため、防火管理者を選任する場合、防火管理者だけではなく、関係者が協力して防火への取り組みを行うことが重要になります。

参考:消防法 | e-Gov法令検索

付加価値的な資格として扱われる場合が多い

求人情報の中には、防火管理者資格の保有者を歓迎したり、資格保有を採用条件に設定していたりするものが一定数存在します。

そのため、防火管理者資格を保有していることで就職や転職が有利になる可能性がある他、企業によっては資格手当が支給されることもあるでしょう。

ただし、防火管理者そのものを募集する求人は少なく、あくまでも付加価値的な資格として扱われることが多いです。

転職する際は、防火管理者資格の性質を理解しておきましょう。

防火管理者の資格は転職に役立つ可能性あり

防火のイメージ

(出典) pixta.jp

防火管理者の資格は、防火に関する専門知識を有することを証明する国家資格であり、一定の基準を満たす建物に対して必ず選任しなければなりません。そのため、さまざまな企業からニーズがあります。

ただし、防火管理者になるためには、各種防火管理講習を受講・修了する必要があるほか、甲種防火管理者として防火管理者となっている場合は、再講習の受講・修了が必要になるなどの条件があります。

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