コンサルタントにはさまざまなキャリアの選択肢があります。理想の将来像を実現するには、キャリアプランの策定と定期的な見直しが欠かせません。キャリアプランの重要性やプランを立てるポイント、コンサルタントが歩むキャリアの例を紹介します。
コンサルタントにキャリアプランは必要?
コンサルタントとは、クライアント企業の経営課題や事業課題に対し、解決策の提案や実行支援などを行う職業です。コンサルタントとしてキャリアを積むには、自分の目標を明確にした上で、キャリアプランを立てることが重要です。
キャリアプランの重要性
キャリアプランとは、今後のキャリアについての見通しや計画です。理想像を描き、実現のためにやるべきことを1年~数年単位でプランニングします。
日本では、終身雇用制度が終わりを迎えつつあります。先行きが不透明な時代には、会社任せではなく、個々人が自分の向かうべき道を模索しなければなりません。具体的なプランを立て、着実に実力をつけられる人が生き残れる時代ともいえるでしょう。
コンサルティング業界では、コンサルタントの増加によるコモディティ化が進んでいます。コモディティ化とは、市場参入時には価値があった商品・サービスが、市場活性化によってありふれたものになってしまう現象です。
コンサルタントは、多様なスキルを身に付け、自分なりの独自性を打ち出す必要があります。どのようにキャリアを進化させていくかを考える上では、キャリアプランが欠かせません。
キャリアプランを立てるメリット
キャリアプランを立てると、以下のようなメリットが得られます。
- 着実にキャリアが積める
- 仕事への意欲が高まる
- 転職時に企業選びの判断軸が明確になる
具体的な目標やキャリアプランがない場合、目の前の業務をこなすだけの日々になりがちです。主体的にキャリアが積めず、方向を見失うかもしれません。
目標を設定し、具体的なキャリアプランを描くことで、やるべきことが明確になります。プランの実行によって着実にキャリアを積めるほか、仕事へのモチベーションもアップするのがメリットです。
転職時は、キャリアプランが企業選びの判断軸になります。転職におけるミスマッチが減り、新しい職場でも理想のキャリアを築ける可能性が高いでしょう。
コンサルタントのキャリア例
コンサルタントの働き方はさまざまです。どのようなキャリアの選択肢があるのかを確認し、キャリアプランに反映させましょう。代表的なキャリアの例を紹介します。
社内で昇進を目指す
コンサルタントの多くは、コンサルティングファーム(以下、ファーム)に所属します。経営やマネジメントに関わりたい人は、社内で昇進を目指しましょう。
ファームによって呼び名は異なるものの、コンサルタントの役職は大きく以下の4段階に分かれています。
- アナリスト
- コンサルタント
- マネージャー
- パートナー
新卒者や業界未経験者は、アナリストからキャリアをスタートします。コンサルタントの補佐を担うポジションで、情報の収集や分析、資料作成などが主な業務です。
コンサルタントとして経験を積んだ後は、プロジェクトの責任者であるマネージャーに昇進し、アナリストやコンサルタントのマネジメントを行います。
パートナーは、コンサルタントの最高職位です。経営上の意思決定に関与するポジションで、上場企業の役員を上回る報酬を得られる場合もあります。
別のファームに転職する
年収アップやポジションアップ、業務テーマのチェンジなどを目的に、別のファームに転職する選択肢もあります。
コンサルティング業界の市場規模は年々拡大しています。多くのファームでは経験者採用に力を入れており、転職によって年収が大きくアップする人は少なくありません。
転職時は、キャリア形成にプラスになるかどうかという点を考えましょう。目先の年収や待遇だけで転職を決めると、描いていたキャリアのゴールから遠ざかってしまう可能性があります。
事業会社やPEファンドで働く
コンサルタントがクライアント企業に深く関わるのは、プロジェクト期間のみです。プロジェクトを長期的に推進したい人やハンズオンで支援を行いたい人は、ファンドに転職する選択肢があります。
事業会社とは、ファームにとってのクライアント企業に当たります。ポストコンサルタント(ファーム出身者)を社員として獲得し、経営課題の解決を加速させたいという会社は少なくありません。以下のような企業で高い需要があります。
- 外資系企業
- 大手日系企業
- ベンチャー企業
- スタートアップ企業
PEファンドは、事業会社や個人投資家から資金を集め、未上場の株式に投資する会社や機関投資家を指します。PEファンドに転職すれば、企業に投資する株主の立場から経営に参画できるでしょう。
独立・起業する
コンサルタントとしての実力が十分であれば、ファームを退職して、独立する選択肢もあります。ビジネスSNSやWebメディアを使って仲間を募集し、コンサルティング会社を立ち上げる人も増えています。
経営上の意思決定が全て自分でできるため、ファームに所属しているときよりも多くの収入が得られる可能性があるでしょう。
一方で、コンサルティングに必要なスキルと起業家に必要なスキルはイコールではありません。営業力や交渉力がなければ、事業が軌道に乗るまでにかなりの時間がかかります。
すぐに自分で会社を立ち上げず、ベンチャー企業に入社して起業のノウハウを得るのも1つの手です。
キャリアプランを立てるポイント
キャリアプランの立て方にルールはないものの、「プランの立て方が分からない」「方向性が定まらない」という人もいるでしょう。コンサルタントがキャリアプランを立てる際には、どのような点を意識すればよいのでしょうか?
成長領域を見極める
コンサルタントは、幅広い領域を支援する「総合コンサルタント」と、特定の分野に特化する「専門コンサルタント」に大別されます。
将来性や収入は携わる領域によって異なるため、自分の得意分野・専門分野を確立させたい人は、今後の成長領域を見極めましょう。将来性が期待できるのは以下のような領域です。
- IT・デジタル
- 事業の海外展開
- マイナンバー関連
今後は社会のデジタル化や企業のDXが進み、IT人材の需要が一気に高まります。IT戦略の策定やシステムの導入支援ができる「ITコンサルタント」は、活躍シーンが大きく広がるでしょう。
まずは自己分析からスタートする
キャリアの方向性が定まらない人は、自己分析からスタートしましょう。過去のキャリアを振り返ったり、スキルの棚卸しをしたりすることで、自分が今後どのようなキャリアを積み上げていくべきかがクリアになります。
自己分析の方法としておすすめなのが、Will・Can・Mustのフレームワークです。以下の3ステップに沿って考えれば、頭の中が整理されるでしょう。
- Will(やりたいこと):理想の将来像やロールモデル
- Can(できること):今後に生かせる経験・スキル
- Must(すべきこと):将来的に身に付けなければならない経験・スキル
面接でキャリアプランを聞かれたら?
コンサルタントの面接では、「キャリアプランを聞かせてください」「入社後に挑戦したいことは何ですか?」といった質問をされるケースがあります。キャリアプランを聞かれた場合、どのように答えればよいのでしょうか?
応募者のキャリアプランを聞く理由
面接では、面接官の質問の意図を的確に理解し、的を射た回答をする必要があります。まずは、面接官が応募者のキャリアプランを聞く理由を理解しましょう。
- 応募者と企業の方向性が一致しているかを知るため
- 具体的な目標を設定する力があるかをチェックするため
応募者のキャリアプランと企業の方向性が一致していない場合、採用後のミスマッチによる早期離職が懸念されます。社員の離職は企業にとって大きな痛手となるため、キャリアプランを通じて、長く貢献してくれる人材かどうかを見極めているのです。
同時に、応募者に目標を設定する力があるかどうかもチェックしています。コンサルタントの仕事は、計画と実行の繰り返しといっても過言ではありません。キャリアプランが曖昧な人は、マイナス評価につながります。
転職理由や志望動機と関連付ける
「〇〇に力を入れている御社でなら、自分のキャリアプランを実現できると思った」など、応募企業で積むキャリアがキャリアプランの実現につながることを伝えましょう。
転職理由や志望動機とまったく関連性がないプランを伝えた場合、「自社では、あなたが描く夢を実現できない可能性がある」「他社に就職した方がよいのでは?」と思われてしまうかもしれません。
「〇万円の貯蓄を目指したい」「早期リタイアを目指したい」など、プライベート寄りのプランも控える必要があります。
実現不可能なプランは語らない
キャリアプランは実現可能であることが大前提です。業界未経験者が「1年後にマネージャーに昇進し、3年以内にパートナーを目指したい」と語った場合、自分の能力を客観視できていない、または業界・職種についての研究が足りないと判断される可能性が高いでしょう。
キャリアプランは、達成できるものでなければ意味がありません。プランを立てた後は、以下の項目をチェックしましょう。
- 具体性があるか
- 進捗や結果が計測可能か
- 非現実的な目標を設定していないか
- 企業の目標に関連しているか
- 期限の設定があるか
キャリアプランを見直すタイミング
キャリアプランは一度立てたら終わりではありません。定期的に見直し、必要な修正を加えていくのが理想です。コンサルタントがキャリアプランを見直すべき3つのタイミングを解説します。
収入アップ・スキルアップを望むとき
1つ目のタイミングは、収入アップ・スキルアップを望むときです。現職で収入アップが期待できないと感じた場合は、他のファームや事業会社への転職を検討しましょう。
多くのファームでは、優秀なコンサルタントの獲得に力を入れています。特に、採用難易度が高いポジションに転職すると、大幅な収入アップが期待できるでしょう。
将来的なキャリア形成を見据え、業務テーマのチェンジを図るのも有効です。今後の成長を見据え、戦略系のコンサルタントからITコンサルタントに転身する人もいます。
ただし、キャリア形成のためのテーマチェンジは、若手のうちに行うのが望ましいといえます。
ワーク・ライフ・バランスを改善したいとき
2つ目のタイミングは、ワーク・ライフ・バランスを改善したいときです。
コンサルタントは、決められた期間内で一定の成果を出さなければならないため、深夜まで残業が続くケースがあります。プライベートの時間がほとんど確保できず、疲れ切ってしまう人も多いようです。
ただ、近年は働き方改革の影響によって、労働環境の改善が進んでいます。短時間勤務制度(時短勤務)や在宅勤務制度を導入するファームも増えており、「コンサルタント=激務」というイメージが変わり始めています。
マネージャーに昇進するとき
3つ目はマネージャーに昇進するときです。マネージャーに昇格すると、ほとんどのファームでは年収が1,000万円を超えます。
昇進した後、「やっぱり事業会社に転職したい」と思っても、年収1,000万円の給与を提示できる一般企業は少なく、転職の選択肢が限られてしまうのが実情です。
人によっては、転職によって年収が大きく下がり、ライフプランにも影響が出る可能性があります。マネージャーに昇進する前に、一度キャリアプランを見直しましょう。
将来の自分を具体的に思い描こう
コンサルタントのキャリアの選択肢は1つだけではありません。選択によって、将来性や年収が大きく変わるため、最終目標と具体的なキャリアプランを立てましょう。
目標やキャリアプランがなかなか見えない場合は、自己分析やスキルの棚卸しが有効です。コンサルタントの求人情報をチェックし、ポジションや働き方、待遇をリサーチしてみるのもよいでしょう。
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