建築家になるにはどんな手順が必要?建築士との違いと資格についても

建築家は、住宅をはじめとした建物の設計や建設に関わる専門家であり、多くの人にとって憧れの職種として知られています。建築家が携わる具体的な仕事の内容や建築士との違い、建築家になる方法について確認しましょう。

建築家とは

建築についての打ち合わせ

(出典) pixta.jp

世界的に有名な建築家も多く、中には歴史に残る建物を設計している人もいます。建築に関心のある人にとって、憧れの職種としても知られていますが、そもそも建築家とはどういった仕事なのでしょうか?

建築家の定義や位置付けに関して、基本的なところを押さえておきましょう。

一般的な定義は曖昧

建物の設計に関わる専門家として「建築家」は広く知られています。公益社団法人日本建築家協会によると、「建築家(architect)とは建築の設計や監理、その他関連業務など建築関係のプロフェッショナルサービスを提供する職業」とされています。ただ、一般的には「建物に携わる職業の総称」として、漠然と使われているのが実態です。

主に設計事務所に所属して建物の設計に携わる人や、建物のデザインを担当する建築士も建築家と呼ばれており、国内においては定義が曖昧な存在といえるでしょう。

ただし、建築の根本に携わる権威のある職種として知られており、多くの人が建築家を目指しています。

参考:建築家の職能 | JIA 公益社団法人 日本建築家協会

海外では権威ある職業

もともと「建築家」という概念自体は海外から持ち込まれたもので、世界的に権威ある職業として広く認知されています。

国内では、後述する「建築士」と違い、建築家に国家資格はありません。また、必ずしも建築家が建築士の資格を有しているとは限らない点も注意しましょう。建築に関する専門知識を客観的に証明できるのは、あくまでも国家資格である建築士です。

しかし世界的に活躍する有名な日本人建築家も多く、海外では建築士ではなく、建築家自体が職業の名称として確立されています。

例えば、サグラダ・ファミリアで有名なスペインのアントニ・ガウディや、日本の帝国ホテル新館の設計に携わったアメリカのフランク・ロイド・ライトなどは、世界的に有名な建築家です。

日本でも、ル・コルビュジエの事務所で活躍した前川國男や、1970年の大阪万博の会場設計で話題になった丹下健三、1995年にプリツカー賞を受賞した安藤忠雄などが、有名な建築家として知られています。

国内では自称のケースも

前述の通り、日本における建築関連の国家資格は建築士であり、建築家は建物を設計するデザイナーというイメージを抱く人が多いでしょう。建築家が必ずしも建築士の資格を持っているとは限らず、建築家を自称することも不可能ではありません。

実際のところ、すでに設計の大枠やデザインが決まっている物件の施工を担当するケースが多いなど、一般的な認識とは異なる仕事をしている建築家もいます。

日本においては建築家の定義が曖昧なため、一般の認識と実態とが合致していない場合も珍しくありません。

ただし、建築家としてある程度の知名度を得るためには、建物のデザインや設計に携わる必要があります。国内で名の知れた建築家の多くに、代表作とされる建物があるものです。

建築家になるには?

建築設計

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建築家になるためには、具体的に何をすればよいのでしょうか?建築家は自称することも可能とはいえ、建築の仕事をするのであれば、基礎から学ぶ必要があります。

まずは建築の基礎を学ぶ

建築家を目指すのであれば、建築の基礎からしっかりと学ぶことが何よりも大事です。

建築士の資格を持たなくても建築家を名乗ることは可能ですが、国内で活躍している建築家のほとんどは1級建築士の資格を持っています。大学の建築学科や専門学校などで勉強し、建築士の資格取得を検討するとよいでしょう。

詳しくは後述しますが、学校で指定科目を修めて卒業すれば、建築士の受験資格を得ることが可能です。資格の取得とともに建築事務所をはじめ、建築業界に就職・転職をして実務経験を積むことで、本格的に建築家としてのキャリアをスタートできます。

求められる能力

建築家として求められる能力は多岐にわたり、具体的にどういった分野で仕事をするかにより、身に付けるべき力は異なります。

しかし基礎的な素養として、建築の基本や設計・建築に関する法律などの知識は必須であり、図面や模型も作れなければいけません。

具体的な知識やスキルに関しては、その多くが建築士の資格取得を目指す過程で身に付けられます。

ただし、空間や立体の把握や表現に関する能力など、建築家としてのセンスを磨くには、日頃の努力の積み重ねが必要です。インテリアをはじめ、空間デザインの能力もある程度は求められます。

建築家の資格は存在する?

パソコンを見ながら設計する

(出典) pixta.jp

前述の通り、日本では建築家という国家資格は存在せず、建築家として活躍している人のほとんどが建築士の資格を持っています。ただし、日本建築家協会が運営する民間資格である「登録建築家」という制度があるので、取得を検討してみるとよいでしょう。

建築家資格制度「登録建築家」がある

登録建築家は日本建築家協会が設けている資格制度です。安全で快適な建物を提供する責任のある仕事として建築家を位置付け、国際建築家連合(UIA)基準にのっとった、建築に関する資質や能力などを担保する資格制度とされています。

日本建築家協会が建築家のレベルを、一定の基準で証明する資格と考えるとよいでしょう。客観的かつ公正な資格認定のため、同協会が第三者性のある建築家登録認定機関を設置し、その建築家認定評議会が建築家の認定と登録を担っています。

参考:登録建築家申請説明書 2023年度版|日本建築家協会

参考:「登録建築家」建築家資格制度|日本建築家協会

認定・登録に必要な条件

登録建築家の認定・登録には、1級建築士で法定定期講習を修了していること(受講義務がある場合)や、1級建築士の資格を取得後、設計監理業務において統括的な立場を含む5年以上の実務経験を有することなどが条件として挙げられます。

認定申請には認定審査手数料1万5,000円に加えて、登録料1万2,000円が必要です。なお、日本建築家協会の正会員は必ず認定・登録の申請が必要とされており、非会員でも一定の要件のもとで登録建築家への申請ができます。

詳しい認定・登録の条件については、同協会の登録建築家申請説明書を確認しましょう。

参考:2.認定・登録の申請に際して|登録建築家申請説明書 2023年度版|日本建築家協会

建築士・設計士との違い

設計

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建築家は建築士や設計士と混同されやすいため、ここで整理しておきましょう。建築家と建築士・設計士との違いを簡単に解説します。

建築士を名乗るには国家資格が必須

日本では建物の設計をするためには、建築士の国家資格が必要です。資格がなければ建築士を名乗るのはもちろん、業務に従事できません。そのため、建築家を名乗るほとんどの人が、建築士の資格を持っています。

建築士として仕事をするには、学校で指定科目を修了後、試験に合格する必要があります。2級建築士は、建築に関する科目を履修して大学や短大、高等専門学校を卒業していれば実務経験がなくても取得できますが、1級建築士になるには2級建築士よりも多くの指定科目の履修が必要で、さらに免許登録の際に実務経験が必要です。

建築士の種類

建築士には大きく分けて、1級建築士・2級建築士・木造建築士の3種類があります。1級建築士と2級建築士とでは、対応できる建築物の種類や大きさが異なり、前者の方が広く業務を請け負うことが可能です。

1級建築士として登録する上では一定の実務経験が求められるため、まずは2級建築士を取得し、十分な実務経験を積んだ後に1級建築士を取得して活躍しているという人も数多くいます。

これから建築士の資格取得を目指す人は、はじめに2級建築士の取得を検討するのもよいでしょう。

また、木造建築士はその名の通り、木造建築物の設計に特化した免許です。延べ面積が300平方メートル以内で、2階建てまでの木造建造物の設計や監理ができます。

設計士は建築士のサポート役

設計士とは建物の設計をする仕事であり、基本的には建築士のサポート役と位置付けられる職種です。

ただし、建築士が設計士を兼任しているケースも多く、職務範囲が明確に限定されているわけではありません。設計士という資格もなく、建築事務所によって仕事内容に幅があります。

仕事内容はさまざまですが、建築事務所やハウスメーカー、建設会社など幅広い場で活躍しています。人によっては、設計部門のマネジメントを仕事としているケースも珍しくありません。

実力を伴った建築家を目指そう

設計の相談

(出典) pixta.jp

建築家は国家資格ではありませんが、日本では多くの建築家が、建築士の資格を取得して活動しています。これから建築家を目指す人は、まず建築士の資格の取得を目指すとよいでしょう。

ただし、建築士の受験資格を得るためには、指定科目の単位を取得しなければいけません。まずは2級建築士から目指すなど、自分の状況や望むキャリアに応じて、早めに行動の計画を立てることが大事です。

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