音楽療法士になるには?必要とされるスキルから認定資格まで解説

音楽療法士は、音楽を通じて心身のサポートをする仕事で、主に障害のある人のリハビリプログラムを提供しています。音楽療法士を目指すに当たり必要とされる能力に加えて、具体的な仕事内容などを紹介します。資格取得のルートを含めて押さえておきましょう。

音楽療法士になるには?

ピアノを弾く女性

(出典) pixta.jp

音楽療法士として活動するために、資格は必須ではありませんが、以下のように民間団体の資格を取得して仕事をするのが一般的です。まずは音楽療法士の資格について、基本的なところを理解しておきましょう。

2023年現在は免許制ではない

音楽療法士は国家資格が必要だと考えている人もいますが、仕事をする上で必須の資格が設けられているわけではなく、特に免許制ではありません。

しかし、幼児から高齢者まで音楽を通じてサポートをする音楽療法士は、障害のある人に音楽を使ったリハビリを提供する機会もあり、高い専門性が求められます。

そこで、まずは民間資格を取得する人が多くいます。詳しくは後述しますが、現状では主に2つの民間資格があるので、これから目指す人は、まず資格の取得を目指すとよいでしょう。

国家資格化する可能性も

近年は、その専門性の高さから、音楽療法士を国家資格化する動きも出てきています。日本音楽療法学会の報告によると、2023年6月に衆議院第二議員会館において、音楽の力を活用して生きる力を支援する議員連盟(略称 音楽支援議連)の総会が開かれました。

その中で、音楽療法士の国家資格として「音楽支援士(仮称)」を設け、法整備および普及を推進するといった方針が確認されており、将来的に国家資格化される可能性が高まっています。

もともと、音楽を療法として取り入れる試みは古くから各国で行われており、アメリカでは、第2次世界大戦がきっかけとなり本格的に研究され始めました。

日本でも1960年代頃から注目されるようになり、1995年に全日本音楽療法連盟が誕生し、1997年に資格制度がスタートしています。

この流れで本格的に国家資格が設けられれば、今後は音楽療法士の活動に資格の取得が必須とされるでしょう。これから音楽療法士を目指す人は、国家資格化の動きにも注目が必要です。

参考:国家資格化に向けて議員連盟総会が開催されました。|日本音楽療法学会

音楽療法士の代表的な認定資格

ギターを弾く

(出典) pixta.jp

現状において音楽療法士の代表的な認定資格は、一般社団法人日本音楽療法学会による「音楽療法士」の資格と、全国音楽療法士養成協議会による称号の2つがあります。それぞれの概要と資格取得までのルートを確認しておきましょう。

一般社団法人日本音楽療法学会の「日本音楽療法学会認定音楽療法士」

日本音楽療法学会は認定校の卒業生を対象に、日本音楽療法学会認定音楽療法士の受験資格を与えており、筆記試験と面接試験に合格することで、同資格の取得が可能です。

音楽療法士として仕事をするには、音楽や音楽療法に関するスキルはもちろん、医学や福祉・心理学の知識なども必要です。音楽療法士の資格は、これらの知識・技能を有していることを証明できるため、多くの人が資格を取得して活動しています。

参考:「音楽療法士とは」音楽療法士|日本音楽療法学会

資格取得のルート

日本音楽療法学会による音楽療法士の資格を取得するには、まず同学会が認定する学校において、必要な知識を体系的に身に付けなければいけません。

これらの教育機関において必要なカリキュラムを終了すると、音楽療法士(補)試験の受験資格を得ることができ、筆記試験である音楽療法士(補)試験に合格し、さらに面接試験に合格することで、音楽療法士の資格を得られます。

なお、以前は学会が主催する資格受験制度に参加し、講習会を受けることで受験資格を得る方法もありましたが、現在は募集が終了されています。2026年には認定音楽療法士資格の一本化される予定なので今後の動向にも配慮しましょう。

参考:「認定資格の取得について」音楽療法士|日本音楽療法学会

全国音楽療法士養成協議会による称号付与

音楽療法士の資格には、全国音楽療法士養成協議会による「音楽療法士(専修・1種・2種)」の資格もあります。これは同協議会の養成課程を修了した証としての認定称号であり、上記の日本音楽療法学会認定の音楽療法士と同様に、公的な資格ではありません。

しかし、音楽療法に必要な専門教育科目を一定数修めた上で、大学院・大学・短期大学などを卒業・修了したことを証明できるものです。業界内で広く知られている称号であり、認定を受けることで音楽療法士としての専門知識をアピールできます。

称号を得るためのルート

音楽療法士(専修・1種・2種)の称号を得るには、全国音楽療法士養成協議会が指定する学校(大学院・大学・短期大学)において、必要な単位を修めて卒業・修了する必要があります。

取得すべき単位数は専修・1種・2種で異なりますが、いずれも単位取得のみならず、学校を卒業・修了することが要件となっているので注意しましょう。現状においては指定校で学び、卒業するしか称号を得る方法はありません。

ただし2002年度より、社会人が働きながら学べる長期履修学生制度も導入されています。制度を利用すれば在学年限を気にせず、履修科目ごとに授業料を納付することで、最終的に称号を得られる可能性もあります。

詳しくは、同協議会の公式ページを確認してみましょう。

参考:受験生のみなさんへ | 全国音楽療法士養成協議会

音楽療法士の具体的な仕事内容

ピアノを弾く手元

(出典) pixta.jp

音楽療法士の仕事内容は大きく分けて、歌や楽器演奏のサポートと、音楽によるカウンセリングやリハビリプログラムの提供などに分けられます。詳しくみていきましょう。

大きく分けると2種類

音楽療法はまず一緒に歌を歌ったり、楽器演奏をしたりすることで、クライアントの心身によい影響を与えて、運動機能を改善する能動的な療法があります。

また、さまざまな音楽をクライアントに聴かせることで、精神面の治療やリラクゼーション効果を提供する、受動的な療法です。

これら2種類のアプローチを実施するのが音楽療法士の仕事であり、クライアントによって使い分けることで、独自のリハビリプログラムを提供します。

さらにクライアントの経過を観察し、適宜プログラムの内容や計画の変更をするのも、重要な仕事です。

音楽療法士に必要とされる能力

ピアノを弾く女性と高齢者

(出典) pixta.jp

音楽療法士は多くのクライアントと接する必要があるので、コミュニケーション能力は必須であり、さらに楽器の演奏能力なども求められます。音楽療法士として仕事をする上で、求められる能力を確認しておきましょう。

コミュニケーション能力

さまざまな症状を抱えるクライアントと接することになるので、音楽療法士には一定のコミュニケーション能力は必須です。

相手の症状や性格などによって、臨機応変にアプローチを変える必要があるため、うまく意思疎通を図り、信頼関係を構築しなければいけません。

また、医師や看護師・保育士・作業療法士などと連携することもあるので、チームとして成果を挙げるためにも、コミュニケーション能力が求められます。

音楽が好き・楽器演奏能力

音楽療法士は音楽に関する幅広い知識を求められるため、基本的に音楽が好きでなければ、仕事を続けるのは難しいでしょう。

試行錯誤を重ねながら、クライアントに提供するプログラムを考える必要があり、長時間に渡って音楽に向き合わなければならないので、音楽好きでなければ務まらない面があります。

また、クライアントと一緒に楽器を演奏する機会もあるため、ある程度は楽器を演奏できなければいけません。

プロレベルである必要はありませんが、即興で演奏したり、弾き語りをしたりできるぐらいの技能は求められます。楽譜もスムーズに読めるようにしておきましょう。

分析力と思いやりの心

単に音楽を流したり演奏したりするのではなく、クライアントに対してリハビリのプログラムを提供するのが、音楽療法士の仕事です。クライアントに合わせたプログラムを組む必要があるため、その人の特徴や適性を見極めるための分析力が必要です。

さらに障害のある人の支援を含め、一人ひとりに寄り添う仕事でもあるので、人のために働きたいと思える心がなければ、長く続けるのは難しいでしょう。社会福祉に貢献する立場であることを自覚し、自己研鑽を重ねる姿勢が求められます。

音楽療法士として活躍しよう!

楽器を弾く女性

(出典) pixta.jp

音楽療法士になるための方法や、資格制度について解説しました。

現状において、音楽療法士は民間資格のみであり、活動するのに資格は必須ではありません。しかし、多くの音楽療法士が資格を得て仕事をしているので、まずは民間資格の取得を視野に入れることが重要です。

今後、音楽療法士の国家資格が設けられる可能性も高いため、日本音楽療法学会を中心とした業界の動きにも注目しておきましょう。

これから音楽療法士を目指す人は、仕事内容をよく理解した上で、コミュニケーション能力や楽器の演奏スキルなど、さまざまな技能を身に付ける必要があります。専門性の高い仕事で、求められる知識の範囲も広いので、計画的に学んでいくことが大事です。

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