花火師になるにはどうすればいい?必要な資格や求められる資質を紹介

夏になると、各地で花火大会が開催されます。にぎやかなイベントを陰で支える重要な存在が、花火師です。花火師になるには、どうすればよいのでしょうか?技術を習得する方法や必要な資格、求められる資質について解説します。

花火師になるには?

花火職人

(出典) pixta.jp

花火師は、花火の製造や打ち上げなどに携わる職業です。花火師になるにはどうすればよいのか、主な方法を2つ紹介します。

参考:花火師 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

参考:よくあるQ&A | 打揚花火 | 公益社団法人 日本煙火協会

煙火関係の事業所で下積みから始める

花火師になるには、煙火関係の事業所に入社して、技術を身に付けるのが一般的です。煙火関係事業所の採用は、世襲・縁故によるケースがほとんどで、一般に公開される求人は少ない傾向にあります。

また、研修制度などはなく、現場で作業する先輩の技術を見ながら自分で習得するのが基本です。

いわゆる「修行期間」として、一人前になるまで10年近く下積みを経験する場合も少なくありません。入社する上で資格・学歴は問われないものの、花火師になりたいという意欲の強さを見せることが大切です。

繁忙期のアルバイトとして働く

花火大会が頻繁に開催される繁忙期に、臨時のアルバイトとして働く方法もあります。一番忙しい時期になると、臨時の作業員を雇用する煙火事業所もあるからです。

毎年アルバイトとして手伝いながら技術を身に付け、能力を認められれば正式に雇われる可能性もあります。ただし、アルバイトの求人も一般公開されないケースが多いため、自分で事業所を調べて直接問い合わせる姿勢が必要です。

煙火業者は、全国で約130社あります。1社ずつ連絡するのは地道な作業ですし、受け入れてくれる事業所が地元から遠く離れた地域という場合もあるかもしれません。アルバイトで働く場合も、それなりの意志の強さや行動力が求められます。

参考:北海道 | 地域 | 会員リスト | 公益社団法人 日本煙火協会

花火師の主な仕事内容

花火づくり

(出典) pixta.jp

花火師は、具体的にどのような仕事をしているのでしょうか?代表的な3つの仕事内容について解説します。

参考:花火師 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

参考:よくあるQ&A | 打揚花火 | 公益社団法人 日本煙火協会

花火の製造作業

まずは、花火大会などで打ち上げられる花火の製造です。花火は、火薬類取締法に基づいて製造しなければなりません。火薬を扱うので、火花が散る恐れのある電気工具などは使えない工程もあります。

花火の「星」と呼ばれる火薬の粒を作る工程以外は、ほとんどが手作業となるため、熟練の技術が必要です。

酸化剤・炎色剤などの材料を合わせて作った火薬を固め、空中で開いたときの色・大きさ・形などをイメージしながら、球状になるように火薬の粒を並べていきます。なお、花火の製造には、火薬類を取り扱う資格が必要です。

花火大会の準備

花火大会の開催が決まったら、主催者との打ち合わせ・花火のプログラム・都道府県知事への許可申請など、必要な仕事を進めます。特に、さまざまな種類の花火をどう組み合わせて打ち上げるかを決める、プログラムの作成は重要です。

花火大会は、演出によって印象が大きく変わります。プログラムが決まらなければ、製造する花火の種類も決められません。

また、打ち上げに必要な機材の搬入・設置も、花火師の仕事です。搬入・設置は、本番の数日前に開始するケースもあります。

花火の打ち上げ・片付け作業

イベント当日は、製造した花火を運び、決められたプログラム・演出に従って花火を打ち上げていきます。このときも、安全対策を最優先することが大切です。イベントによっては、昼頃から開催を知らせるための花火を打ち上げる場合もあります。

かつては、作業員が導火線に直接着火して打ち上げていましたが、現在はコンピューター制御による遠隔操作が可能になり、現場の花火師たちの安全が確保されやすくなりました。

大会終了後は、翌日までかけてすべての機材を撤去し、飛び散った花火の残骸・火薬などの危険物も回収します。

花火師に必要な資格

花火玉

(出典) pixta.jp

花火師として仕事をするには、火薬類を取り扱うための資格が必要です。資格の種類や取得方法を解説します。

煙火消費保安手帳

花火師になるには、「煙火消費保安手帳」の取得が必須です。煙火消費保安手帳は、花火の打ち上げに従事する人の技能を証明するもので、花火を扱う際は必ず携帯して作業することが義務付けられています。

手帳を取得するには、まず煙火事業所で働きながら、打ち上げの技術を習得しなければなりません。その後、日本煙火協会に技能が認められて会員となり、保安講習を受けることで交付されます。

手帳を交付された後も、年1回以上は保安講習を受けることが必要です。講習を受けずにいると、手帳は失効となります。

参考:手帳制度について | 安全への取り組み | 公益社団法人 日本煙火協会

火薬類取扱保安責任者

「火薬類取扱保安責任者」の資格がないと、火薬類の貯蔵や消費はできません。資格は、取り扱える火薬類の量によって、甲種・乙種の2種類に分けられています。それぞれの違いは、以下の通りです。

  • 甲種:火薬庫に貯蔵する火薬類の量が年20t以上の場合。または、1カ月に1t以上の火薬類を消費する場合。
  • 乙種:火薬庫に貯蔵する火薬類の量が年20t未満の場合。または、1カ月に1t未満の火薬類を消費する場合。

火薬類取扱保安責任者は知事試験であり、毎年9月上旬に各都道府県で実施されます。学歴・経験・居住地を問わず、誰でも受験可能です。

なお、火薬類製造保安責任者(甲種・乙種)の資格を取得している人は、甲種・乙種どちらの試験も免除されます。

参考:公益社団法人 全国火薬類保安協会

火薬類製造保安責任者

火薬類を製造するためには、「火薬類製造保安責任者」の資格が必要です。製造工場で1日に扱う火薬類の量に応じて、甲種・乙種・丙種の3種類に分かれます。1日の火薬類の量は、以下の通りです。

  • 甲種:1t以上の火薬および爆薬・7t以上の硝安油剤爆薬・50kg以上の起爆薬
  • 乙種:1t未満の火薬および爆薬・7t未満の硝安油剤爆薬・50kg未満の起爆薬・300kg以上の信号えん管、信号火せんおよび煙火とその他の火工品
  • 丙種:300kg未満の信号えん管、信号火せんおよび煙火

火薬類製造保安責任者は、経済産業大臣が行う試験で(丙種を除く)、毎年11月上旬に東京都内の指定された場所で実施されます。受験資格は特にないので、誰でも受験可能です。

参考:火薬類製造保安責任者 (METI/経済産業省)

参考:公益社団法人 全国火薬類保安協会

花火師になるために必要な資質

花火玉を作る

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花火師は、どのような人に向いているのでしょうか?最後に、必要な資質について解説します。

体力・忍耐力

打ち上げに必要な機材の運搬・設置などの準備から始まり、終了後の撤去作業までのすべてを行うため、かなりの重労働を伴う仕事です。運搬・設置の段階では炎天下になる場合も多く、厳しい状況での作業に耐えられる体力が必要になります。

また、花火師として一人前になるには、少なくとも数年かかるのが一般的です。危険を伴う仕事なので、先輩職人から厳しく指導されるケースもあるでしょう。

新人研修などはなく、ひたすら先輩の作業を見て技術を習得しなければならないため、忍耐力・強い意志も求められます。

責任感・注意深さ

花火を製造する過程では大量の火薬を扱うため、慎重に作業しなければなりません。わずかな火気でも引火すれば重大な事故につながるので、細心の注意を払いながら作業することが重要です。

打ち上げの際に事故が起きれば、観客も含めて多くの人命に関わる重大な被害が出る恐れもあります。危険物を扱っているという責任感を常に持って、仕事を進めることが必要です。

発想力

発想力やデザインのスキルも、あった方がよいでしょう。花火のデザイン・演出を考えるのも、花火師の大切な仕事です。

観客は、毎回どのような花火が上がるのか、期待しながら見ています。昔ながらの大輪の花火はもちろん、人気のキャラクターなどを模したデザインは、大人も子どもも楽しめるでしょう。

また、近年では演出にも凝るようになり、コンピューターを活用して打ち上げるケースも増えています。パソコンが得意な人は、専用ソフトを使えるスキルを身に付けておくのもおすすめです。

花火師になるには忍耐力や責任感が必要

花火の星

(出典) pixta.jp

花火師としての技術を身に付けるには、数年単位の時間がかかります。研修制度が整っているケースは少ないため、先輩職人の作業を見ながら技術を盗むくらいの気合いや、厳しい指導にも耐えられる忍耐力が必要です。

また、大量の火薬類を扱う仕事なので、事故を起こしてはならないという強い責任感も求められます。

花火師は、世襲・縁故での採用がほとんどとされていますが、繁忙期に臨時の作業員募集の求人を出している事業所もあります。「スタンバイ」にも掲載されているので、小まめにチェックしてみましょう。

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