常勤専従は、主に介護事業の人員配置基準で使われる用語です。施設で働く職員の勤務形態の1つであり、常勤と専従の2つの概念から成り立っています。用語の意味を理解するには、介護事業における人員配置基準や常勤換算のルールを理解する必要があります。
常勤専従とは?定義を紹介
常勤専従は、勤務形態を表す用語で、人員配置基準が定められている介護施設でよく用いられます。介護業界への就職・転職を検討している人は、言葉の意味を正しく理解しましょう。
時間と職務内容を表す
介護事業を運営する事業者(以下、介護事業者)は、介護保険法で定められた人員配置基準や運営基準、設備基準などを満たす必要があります。
中でも、質の高いサービスを提供する上で重要なのが、「人員配置基準」です。施設の利用者・入居者の人数に応じ、決められた数の職員を配置しなければなりません。
常勤専従は、人員配置基準の中でよく使われる用語です。勤務形態の1つであり、「常勤(じょうきん)」と「専従(せんじゅう)」という2つの概念が組み合わさっています。
- 常勤:当該事業所で常勤とされる勤務時間数に達していること(時間)
- 専従:勤務時間を通して、当該サー ビス以外の業務に従事しないこと(職務内容)
つまり、常勤専従とは「常勤で勤務する人が専従で働くこと」を意味します。
参考:人員配置基準等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)|厚生労働省
常勤と非常勤との違い
常勤専従への理解を深めるために、常勤と非常勤の違いを確認しておきましょう。
事業所では、就業規則や雇用契約で所定労働時間を定めています。事業所にもよりますが、週40時間(1日8時間×5日)を基本とするケースが多いでしょう(保健衛生業は週44時間)。
常勤とは、勤務すべき所定労働時間に達している職員のことで、一般的には「フルタイム」と呼ばれます。所定労働時間に達していない職員は、雇用形態にかかわらず非常勤です。
専従と兼務との違い
専従には「専ら1つのことに従事する」という意味があるように、勤務時間を通して、特定の職務以外には従事しない勤務形態を指します。
一方の兼務は、専従と逆の勤務形態で、複数の職務に同時並行的に従事することです。例えば、1日8時間の労働のうち、3時間をホームヘルパー(訪問介護員)、5時間を生活指導員として働く人は、兼務に該当します。
専従・兼務は、常勤・非常勤とは異なる概念です。それぞれの組み合わせによって、以下の4つの働き方に分かれます。
- 常勤かつ専従
- 常勤かつ兼務
- 非常勤かつ専従
- 非常勤かつ兼務
人員配置基準について
介護事業者は、法律で定められた人員配置基準を満たす必要があります。満たせない場合、良質なケアの提供が行えないとして、行政処分の対象になるケースがあります。人員配置基準の目的とルールについて、理解を深めましょう。
入居者に対する職員の数を定めたもの
人員配置基準とは、施設の利用者・入居者に対する職員の数を定めたものです。利用者・入居者に一定水準のサービスを提供し続けるには、十分な数の職員を確保しなければなりません。
人員配置基準には、「人員規模の要件」と「勤務形態の要件」があり、施設の種類や職種ごとに異なるルールが定められています。
例えば、短期入所生活介護では、利用者数が3人またはその端数を増すごとに、1人以上の介護職員または看護職員が必要です。さらに、介護職員または看護職員の1人以上は、「常勤」としなければなりません。
2021年度の介護報酬改定では、職員の離職防止および定着促進を図る目的から、人員配置基準の見直しが行われました。職員が介護・育児で時短勤務をしている場合、週30時間以上の勤務でも常勤として扱います。
参考:人員配置基準等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)|厚生労働省
:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第121条 | e-Gov法令検索
雇用形態に関係なく勤務時間数で決まる
常勤は、「当該事業所で常勤の職員が勤務すべき時間数(週32時間を下回る場合は週32時間が基本)を勤務している者」です。常勤か非常勤かは、雇用形態の正規・非正規とは関係がなく、勤務時間数によって決まります。
例えば、所定労働時間が週40時間と定められている施設において、勤務時間が週40時間以上のパート職員は常勤です。
また、同一の介護事業者が複数の事業所を運営している場合、各事業所は独立した事業所として見なされます。従って、職員が兼務する場合は、各事業所で「非常勤の専従扱い」となります。
人員配置基準についてのQ&A
人員配置基準について、疑問が生じやすい事項をQ&Aで紹介します。介護業界への転職を考えている人や人員配置を行う担当者は、基本のルールを把握しておきましょう。
常勤換算って何?計算方法は?
常勤換算とは、「当該事業所で働いている人の平均人数」を意味します。介護施設には、フルタイムで働く人もいれば、夜勤・パートで働く人もいます。労働時間が異なる人を同じ1人と見なすと、人事配置基準を満たせない可能性があるでしょう。
働く人の正確な人数を把握するためには、「非常勤職員の勤務時間の合計が、常勤職員の何人分に当たるか」を明らかにする必要があります。常勤換算のやり方は、以下の通りです。
- 常勤職員の人数+(非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間)
長期的な休暇の扱いは?
常勤換算において、長期的な休暇はどのように扱われるのでしょうか?有給休暇や出張は、「本人が常勤と非常勤のどちらであるか」で扱いが変わります。
- 常勤の場合:有給休暇・出張は勤務時間に含めるが、期間が暦の上で1カ月を超える場合は、勤務していないものと見なす
- 非常勤の場合:有給休暇・出張は勤務時間に含めない
育児休暇・産後休暇は、1カ月を超えるケースがほとんどです。常勤換算の計算では、勤務していない者として扱います。
休暇明けに、育児・介護休業法に定められた「育児短時間勤務制度」を利用して働く場合、週30時間以上の勤務があれば常勤として扱えます。ただし、以下の要件を満たさなければなりません。
- 雇用契約で常勤職員として雇用されていることが明らかである
- 該当職員の勤務時間が週30時間以上である
- 就業規則などに、短時間勤務制度に関わる勤務時間が明記されている
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第23条 | e-Gov法令検索
「常勤専従」の意味を正しく理解しよう
常勤専従は、常勤で勤務する人が専従で働くことです。介護業界に就職・転職すると、人員配置基準に関連した専従・兼務・常勤・非常勤といったキーワードを、よく耳にするようになるでしょう。
人員配置基準は、あくまでも介護事業者に義務付けられたものですが、施設で働く職員も基本のルールを理解しておく必要があります。
介護業界への就職・転職を検討している人は、求人検索エンジン「スタンバイ」で情報収集をしましょう。