当事者意識とは?意識が低下する要因や高め方のヒントを解説

多くの会社では、社員の当事者意識を高めることに重きを置いています。当事者意識とはどのような意識の状態を指し、なぜ重要とされているのでしょうか?意識が低い人に見られる特徴や低下する要因、高め方のヒントを解説します。

当事者意識とは何か?

考え事をする男性

(出典) pixta.jp

仕事で失敗・ミスがあった際、上司やメンバーに「当事者意識が欠けている」と指摘された経験がある人も多いのではないでしょうか?当事者意識の意味と、仕事における重要性を理解しましょう。

自分事として問題・仕事に取り組む意識

当事者意識とは、「自分がその物事の関係者である」と自覚している意識です。他人事にせず、積極的に関わろうとする姿勢ともいえるでしょう。

同様の意味を持つ言葉として、「オーナーシップ」が挙げられます。直訳すると「所有者」ですが、物事に主体的に取り組む姿勢・マインドを意味する言葉です。他者から課題・仕事を与えられるのではなく、自らが考え出す状態をイメージしましょう。

当事者の対義語は「傍観者」です。当事者意識がない人は、物事を他人事として捉えています。誰かがやってくれるだろうと考えているため、自分からは行動を起こしません。

社会人に当事者意識が必要な理由

当事者意識は、多かれ少なかれ責任感に関連しており、組織としての生産性やパフォーマンス、業績に大きな影響を与えます。

例えば、当事者意識の高い人は仕事の精度や生産性が高く、組織への貢献度も高いのが特徴です。やらされている感覚がなく、自分の任務を完遂することにやりがい・面白みを感じます。

個人の業績は組織の業績に直結するため、多くの企業は当事者意識の高い人材を求めているのが実情です。転職やキャリアアップ、自己成長を望む人は、当事者意識を高める必要があるでしょう。

当事者意識が低い人に見られる特徴

あくびをする男性

(出典) pixta.jp

当事者意識は、普段の仕事ぶりや言動にも表れます。当事者意識の低さを指摘された人は、自分の態度を振り返りましょう。

言われたことしかやらない

当事者意識が低い人は、上司に指示されたことや日々の決まったタスクはこなしますが、あらかじめ割り振られた業務以外には触れようとしません。「指示待ち社員」や「ぶら下がり社員」と呼ばれる状態です。

基本的に、現状を改善したいという熱意・意欲が少なく、仕事では同じ失敗を繰り返しがちです。失敗の原因を深く掘り下げたり、改善策を考えたりする姿勢がないため、自己成長もほとんど見込めないでしょう。

自ら考えて行動する社員が少ない組織・チームは、生産性やパフォーマンスが低く、業績も芳しくないのが一般的です。

自分の意見を言わない

当事者意識が低い人は、自分の意見・考えを表明しない傾向があります。「頼まれているからやっているだけ」という受け身のスタンスなので、自分から積極的にアイデアを出したり、他者の意見に反対したりといった態度がほとんど見られません。

意見を主張すると、自分の発言に対して責任を持たなければならなくなります。「余計な仕事を増やしたくない」「責任を負いたくない」という気持ちが強いため、基本的には誰かの意見に追従します。

危機感が欠けている

自分事として考えていれば、問題が起きたときに危機感を覚えます。チームの成績が下がったり、クライアントからクレームが入ったりした際は、「このままではいけない」「何とかしなければ」と必死に解決策を模索するでしょう。

当事者意識が低い人は、問題を他人事と考えているため、危機感を覚えない傾向があります。楽観的というよりも、どうでもよいと考えている節があり、周囲との温度差が顕著です。

目標達成への意欲も薄く、目標の未達が相次ぐケースも珍しくありません。仕事の精度が低ければ、周囲がフォローせざるを得なくなるでしょう。

当事者意識の低下はなぜ起こる?

頭を抱えるビジネスマン

(出典) pixta.jp

当事者意識を高めたいと思っている人は、原因を明らかにした上で解決策を考えましょう。本人に問題があるケースと、組織に問題があるケースに分かれます。

本人に問題があるケース

当事者意識の低下は、本人の心理と深い関係があります。以下のような心理状態に陥ると、物事を自分事として捉えにくくなる可能性が高いでしょう。

  • 自分に自信がない・自己評価が低い
  • 損をしたくない気持ちが強い
  • 楽をしたい気持ちがある

自分に自信がない人は、周囲からの評価を極端に気にします。失敗への恐怖が大きいと主体的な行動を避けるようになるため、当事者意識も生まれません。

当事者意識を持つことは、責任を負うことを意味します。主体的に行動して損をした経験がある人や、楽をしたい気持ちが強い人は、何事にも深く関わるのを避けるようになるでしょう。

組織に問題があるケース

組織体制や労働環境によって、当事者意識の低下がもたらされるケースもあります。例えば、以下のようなケースで顕著です。

  • トップダウン型で自分の意見が言いにくい
  • 組織全体に変化を嫌う風潮がある
  • 作業が細分化されており、仕事の目的や全体像が分かりにくい

トップダウン型で、指示されたことだけやっていればいいというスタンスの職場では、指示待ち社員が増加します。「意見を主張すると目の敵にされる」「評価が下がる」「サポートが受けられない」という場合も、仕事を自分事にするのは難しいでしょう。

また、社員に作業のやり方・手順を教え込むだけでは、当事者意識は芽生えません。やらされている感覚をなくすためには、作業の目的・意義をきちんと伝える必要があります。

自らの当事者意識を高める方法

男性ビジネスマン

(出典) pixta.jp

自分に当事者意識が欠けていると感じる人は、以下の方法を試してみましょう。日々の心掛けとちょっとした工夫によって、当事者意識はいくらでも高められます。

仕事の目的・意義に対する理解を深める

仕事に着手する前に、「何のためにやるのか」「自分に求められている役割は何か」といった点を、しっかりと把握することが肝心です。

作業のやり方・手順を覚えるだけの場合、「仕事=他人から与えられたもの」という認識が強くなります。単純作業の繰り返しになり、日を追うごとにモチベーションが低下するでしょう。

仕事の目的や意義、自分の役割を正しく理解していると、課題・トラブルに対して主体的にアプローチできるようになるほか、アイデア・改善策も自然に湧き上がるようになります。

明確な目標を設定する

仕事の目的・意義を認識するだけでなく、明確な目標を設定しましょう。当事者意識が低い人の中には、上司の指示に従うことが仕事だと勘違いしている人もいます。

本来、仕事とは自分で目標を設定し、目標達成に向けて努力を重ねていくものです。明確な目標があると、やらされている感覚がなくなり、達成のために何をすべきかを自発的に考えられるようになります。

目標を設定する際は、「〇〇を頑張る」「〇〇に向けて努力する」といった曖昧なものではなく、具体的な数字を盛り込むのがポイントです。時間的な制限がないと先延ばしになってしまうため、達成する期限も設けましょう。

失敗の原因を自分に問いかける

当事者意識が低い人は、「悪いのは相手のせいだ」「目標が達成できないのは労働環境が悪い」など、失敗の原因を自分の外部に見つけようとします。他者に責任を転嫁し、言い訳をするばかりでは成長は見込めません。

失敗をしたときは、「なぜできなかったのか」「うまくいかない理由は何か」を自分自身に問いかけましょう。自分に物事の原因や責任があるとする考え方は、「自責思考」と呼ばれます。

自分の言動を顧み、原因を深掘りすることで、物事に対する主体性や責任感が養われていきます。

当事者意識は自分自身を成長させる

ビジネスパーソンの男女

(出典) pixta.jp

仕事やビジネスで、個人がどれだけ成長できるかは、当事者意識にかかっているといっても過言ではありません。

当事者意識が高い人は、問題や仕事を自分事として捉え、主体的にアプローチします。日々の業務にやりがいを持って取り組むため、結果的に仕事の質・スピードの向上につながるのです。

当事者意識の低さに悩んでいる人は、自分の中で原因を探し、意識を高めるための努力をしましょう。