障害者雇用とは?一般雇用との違いやメリット・デメリットを解説

障害者雇用とは、一定数以上の労働者がいる事業主に対して義務付けられている制度です。求職者にとっては、障害の特性に応じて働けるという利点があります。一般雇用との違いのほか、メリット・デメリットについても解説します。

障害者雇用とはどういう制度?

障害者雇用

(出典) pixta.jp

障害者雇用とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」によって定められている制度です。制度の内容や、一般雇用との違いについて確認しておきましょう。

障害者が特性に応じて就労できる制度

障害者雇用とは、厚生労働省の障害者雇用対策によって進められている制度です。障害者の安定雇用と、障害のある人とない人がともに働く社会の実現を目的としています。

一定数以上の従業員がいる事業主に対し、一定の割合以上の障害者を雇用するよう義務付けているものです。制度を利用して採用されると、それぞれの障害の特性に応じて、適性を生かしながら就労できます。

また、企業に対して合理的な配慮を求めることも可能です。なお、就労に当たっては、原則として「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」「療育手帳」を保持していることが条件となります。

出典:障害者雇用対策 |厚生労働省

出典:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索

一般雇用との違い

一般雇用は、障害者手帳の有無にかかわらず、採用条件を満たしてさえいれば誰でも応募できる求人です。障害者雇用では、応募できる職種などが限られることも多いですが、一般雇用には制限がないため自由に仕事を選べます。

なお、一般雇用枠に応募する際は、「クローズ就労」または「オープン就労」のどちらにするかの選択が可能です。

  • クローズ就労:障害があることを公開しないで働くこと
  • オープン就労:障害があることを公開した上で働くこと

一般雇用の場合、障害者雇用に比べて採用率が下がる可能性があります。また、障害者への合理的な配慮が期待できないため、定着しにくいという傾向もあるようです。

事業主に義務付けられていること

障害者手帳

(出典) pixta.jp

「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、障害者の雇用に関して事業者に義務付けていることがいくつかあります。詳しく見ていきましょう。

法定雇用率は43.5人以上の事業所で2.3%

2023年12月現在、障害者雇用の対象となるのは、従業員が43.5人以上いる企業です。障害者の法定雇用率は、民間企業で全従業員の2.3%(特殊法人等は2.6%)、国・地方公共団体の場合は2.6%、都道府県などの教育委員会は2.5%となっています。

つまり、従業員を43.5人以上雇用している民間企業には、最低1人の障害者雇用が義務付けられているということです。

なお、障害者雇用の支援策強化のため、2024年4月から「対象となる事業所の範囲」と「法定雇用率」を段階的に改正していくことが決まりました。

2024年4月からの法定雇用率は、従業員が40.0人以上の民間企業に対し2.5%、さらに2026年7月からは37.5人以上で2.7%となります。

出典:事業主の方へ|厚生労働省

出典:障害者雇用率制度について

出典:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

募集・採用について均等な機会を与える

募集・採用に当たっては、障害者ではない人と差別することなく、均等な機会を与えなければなりません。例えば、募集の際に、障害者に対してのみ一定の条件を設けるなどの不当な扱いは、禁止されています。

採用基準を満たしているにもかかわらず、障害を理由に候補から外したり、入社後に障害者に対してのみ長期の試用期間を設けたりすることも、差別に当たる行為です。

また、賃金や仕事の割り当て、昇給・昇格などに関しても、障害者と一般従業員の間に不当な差がないように設定することが定められています。

ただし、障害の特性や本人の能力・適性に配慮し、負担の軽い業務に就かせるなどの場合は不当な差別には当たりません。

出典:雇用の分野で 障害者に対する差別が禁止され、 合理的な配慮の提供が義務となりました

特性に配慮した措置を講じる

募集・採用に当たり、障害者に対して合理的な配慮をすることも義務付けられています。障害者からの申し出があれば、企業は特性に配慮した措置を講じなければなりません。

例えば、視覚障害者のための点字・音声による採用試験や、肢体不自由な人が働きやすい環境の整備、精神障害者に対する時短勤務や休暇の許可などが、合理的配慮に当たります。

ただし、費用面の負担が大きかったり、事業活動に影響が出たり、実現が困難だったりなど、事業主にとって過重な負荷となる場合は、求職者との擦り合わせによって決めることが可能です。

出典:雇用の分野で 障害者に対する差別が禁止され、 合理的な配慮の提供が義務となりました

障害者雇用で就労するメリット

車椅子に乗るビジネスマン

(出典) pixta.jp

障害者雇用で就労すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットを3つ挙げて紹介します。

一般雇用より就職しやすい傾向にある

障害者雇用は、一般雇用枠で応募するより就職しやすい傾向にあります。障害者であることを考慮した業務や未経験可能な求人も多く、これまでに就業経験のない人・特別なスキルを持っていない人でも、安心して仕事に就けるでしょう。

選考においても、障害の特性に配慮された中で受けられます。また、応募には障害者手帳が必要になるため、一般雇用枠とかぶらないのもメリットの1つです。

一般雇用に比べて応募者数が少ないので、競争率も低くなる傾向にあり、採用されやすくなる可能性があります。

適切な配慮を受けられる

障害者雇用であれば、障害に対して適切な配慮を受けながら勤務できます。一般雇用枠でも配慮を求めることはできますが、事業主の裁量によって決められるため、必ずしも実現するとは限りません。

しかし、障害者雇用の場合、事業主には合理的配慮を講じることが義務付けられています。そのため、バリアフリー・時短勤務・時差出勤など、必要な配慮を入社前に申し出ることが可能です。

事業主が対応できる範囲での配慮となるため、会社側との擦り合わせが必要となるケースもありますが、一般雇用枠で就職するより働きやすい環境を得られるでしょう。

収入が安定する

障害者の法定雇用率は、従業員の人数に応じて定められているので、大企業ほど雇用枠が多くなります。一般雇用枠での就職が難しい大企業でも、障害者雇用なら採用される可能性が高いでしょう。

一般的に、大企業は福利厚生なども充実しており、障害者も一般の従業員と共通の待遇を受けられます。経営面での不安も少なく、突然の倒産・リストラなどの可能性も低いでしょう。

また、適切な配慮を受けて働けることから、長く勤務しやすいというメリットもあります。勤務年数に応じて昇給なども見込めるため、収入が安定しやすいのも利点です。

障害者雇用で就労するデメリット

障害者手帳

(出典) photo-ac.com

障害者雇用で就労するデメリットについても、確認しておきましょう。一般雇用枠と比較して考えられるデメリットを、2つ挙げて解説します。

働き方が限られる

障害者雇用は、一般雇用に比べて求人数が少ない傾向にあるため、希望する仕事を見つけにくい可能性があります。募集されている職種も限られることが多く、スキルを生かした仕事に就くのが難しいケースもあるでしょう。

入社後も補助的な業務が多くなる傾向にあり、人によっては物足りなさを感じてしまうかもしれません。また、従業員数が法定雇用率の対象外で、そもそも障害者雇用枠を設定していない企業もあります。

一般雇用に比べて就職しやすいとはいえ、そもそも障害者雇用枠を設定している企業が少ない地域などの場合、応募先の選択肢自体が少なくなってしまうでしょう。

一般雇用に比べて収入が低い傾向にある

障害者雇用は一般雇用に比べて、収入が低くなる傾向にあります。これは、障害者だから給料が少ないというわけではなく、業務量や勤務時間の違いによるものです。アルバイト・パートなど非正規雇用の場合も、給料が低くなりやすいといえるでしょう。

また、「最低賃金の減額の特例許可制度」が適用される場合もあります。最低賃金の減額の特例許可制度とは、最低賃金を一律にすることで、かえって雇用機会を狭めてしまわないために、事業主に対して許可されている制度です。

都道府県の労働局長に許可を受けた事業主は、一般の従業員に比べて著しく労働能力の低い特定の従業員に対して、最低賃金を減額できます。

出典:最低賃金の減額の特例許可制度

障害者雇用の相談先

ハローワーク

(出典) pixta.jp

障害者雇用での就職を希望するときは、ハローワークや各相談センターなどに問い合わせてみましょう。主な相談先を3つ紹介します。

ハローワーク

ハローワークでは、障害についての専門的な知識を持つ職員・相談員が、仕事に関する情報を提供しています。就職相談にも対応しており、採用面接へ同行してもらうことも可能です。

就職面接会の開催のほか、障害者雇用を実施している事業主に対し、求職者の適性に合った求人の提出を依頼してもらえる場合もあります。

求人情報の検索は、インターネットからも可能です。就職後は、職場・業務に適応できるよう職場定着指導も実施しています。また、障害者手帳を保有していない人も、就職相談や支援を受けられます。

出典:ハローワークインターネットサービス - 障害のある皆様へ

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営している、職業リハビリテーションの専門機関です。

ハローワークと協力し、障害者からの就職相談・職業能力評価・ジョブコーチ派遣による職場適応の支援など、さまざまなサポートを提供しています。

また、障害者職業カウンセラーが設置されており、就職に向けた職業リハビリテーションを受けることも可能です。精神障害者に対しては、主治医と連携して雇用促進・職場復帰などを支援します。

出典:障害者の方へ|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者の生活の自立を促すことを目的とした公的機関です。全国に設置されており、雇用・保健・福祉・教育・医療・事業主などの関係機関の中心に立って、障害者に対してあらゆる支援をしています。

就業に関するサポートは、職業準備訓練・職場実習のあっせん・就職活動支援などさまざまです。また、日常生活における自己管理についてのアドバイスや、年金など将来の生活設計に関する助言といった生活面のサポートも行っています。

出典:障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省

障害者雇用は障害者の安定雇用のための制度

障害者雇用のイメージ

(出典) pixta.jp

障害者雇用は、障害者が安定して働けるように定められた制度です。障害のある人でも、一般の人と同じように、均等な雇用の機会を与えられなければなりません。

しかし、障害の特性によっては、一般の従業員と同じ環境で働くのが困難なケースもあります。障害者雇用枠で就職すれば、適切な配慮を受けながら働けるので、自分に合った環境で勤務できるでしょう。

求人サイト「スタンバイ」には、障害者雇用の求人も数多く掲載されています。さまざまな職種の募集もあるので、ぜひチェックしてみましょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら