新卒一括採用とはどんな採用方式?通年採用との違いも紹介

「新卒一括採用」は、企業の採用方式の一種です。どのような募集を、新卒一括採用と呼ぶのでしょうか?概要や歴史と併せて、メリット・デメリットを紹介します。通年採用との違いや、新卒者の採用に関わる「就活ルール」についても見ていきましょう。

新卒一括採用とは?概要をチェック

面接官の足元

(出典) pixta.jp

「新卒一括採用」は、日本で取り入れられている採用形態の一種です。どのようなシステムなのか、特徴やこれまでの歴史を紹介します。

日本独自の採用システム

新卒一括採用は、「翌年に卒業を迎える学生を一括で採用するシステム」です。毎年、学生の卒業時期に間に合うよう書類選考や採用面接が行われ、新卒者が入社します。

ほとんどの高校・大学は卒業が3月に設定されており、新卒者の入社は4月頃が一般的です。エントリー・書類選考・採用面接は春から秋にかけて行われ、学生が就職活動を進めます。

世界的に見ると新卒一括採用を導入している国は少なく、通年採用や即戦力を求める経験者採用が一般的です。高校・大学を卒業する人が一斉に就職活動をし、新卒一括採用に応募する形は、日本独自のシステムといってもよいでしょう。

新卒一括採用の歴史

新卒一括採用が日本で一般化したのは、第2次世界大戦が終わり進学率が上がった時期です。

明治から第2次世界大戦直後までは進学率が低く、新卒一括採用と似た形は存在したものの、現代とは目的が異なります。高校・大学への進学者は、一部のエリート層に限られており、幹部候補として入社するのが一般的だったようです。

文部科学省の「数字で見る高等学校」によると、1954年に高校への進学率が初めて50%を超え、1965年には70%を超えていることが分かります。

戦後に進学率が上がり、多くの人が卒業前に就職活動をするようになったことで、企業側も人材の確保を目的に新卒一括採用を強化していったといえそうです。

出典:数字で見る高等学校|文部科学省

通年採用との違い

「通年採用」は、時期や新卒・既卒・留学経験者を問わず、年間を通して人材を募集する方式です。新卒予定者に限らず応募が可能で、一般的な卒業時期である4月入社にこだわらない点が特徴です。

通年採用の中には、第二新卒・経験者を採用するものもあります。未経験者とは採用窓口を分けていることが一般的ですが、時期を問わず採用が行われている点は同じです。

新卒一括採用と通年採用の主な違いは、就職活動や入社時期が自由で、新卒予定者以外でも応募できるところといえます。

新卒一括採用のメリット

人事面接

(出典) pixta.jp

卒業予定の学生を一括で採用する方式には、いくつかのメリットがあります。企業が新卒一括採用を続けている主な理由と、なぜメリットが得られるのか確認しましょう。

採用コストの見通しが立ちやすい

新卒一括採用では、書類選考・採用面接・入社・新人教育など、コストがかかる作業・イベントを同時に進められます。

毎年同じ時期に、同じように採用活動を進めると、どの程度のコストがかかるのかあらかじめ把握できます。入社式や新人教育を一括で進めれば、個別指導に比べてコストがかかりにくいのも特徴です。

新卒時期の一括採用は強制ではないため、状況に合わせてコストを減らしたいときには採用人数を少なくし、イベントに伴うコストを削減するといった手法もあります。

新卒同士の仲間意識を高められる

新卒者を複数人採用すると、同じ時期に働き始める仲間ができます。入社したばかりの環境では、話しやすい同年代との絆が強まり「同期」として仲間意識が出てくるでしょう。

通年採用では入社時期が異なるため、同年代であっても先輩・後輩の図式ができてしまいますが、新卒一括採用なら全員が同時期入社の同僚です。

同じ立場の同僚が複数いると、その中で切磋琢磨し、能力を高めていこうとする気持ちも生まれます。先輩・上司よりも気軽に相談でき、話ができる仲間がいると、企業に対する思いも強くなるでしょう。

新人教育のクオリティーが担保できる

企業での新人教育の多くは、新卒者を集めて同じ場所で行われます。全員が同じ場所に集まり、同じ内容を聞くため、教育の質にばらつきが出る心配はありません。

ばらばらに指導を行うと、教えた人の感覚や状況によって、新人の成長に差が出てしまいます。新人教育を毎年行っていれば、過去の経験から適切な育成方法を見つけ、改善していくのも難しくないでしょう。

新人に対して、できる限り同じクオリティーの教育を施したいと考える企業には、新卒一括採用が向いています。

新卒一括採用のデメリット

就職活動

(出典) pixta.jp

新卒だけをターゲットとする採用方式には、デメリットもあります。近年では新卒一括採用を疑問視する声もあり、デメリットが大きくなれば、今後の採用の方法が変わっていく可能性もあるでしょう。

内定辞退・早期退職のリスク

新卒予定者は、内定を確実にした上で、希望の企業に就職したいと考えています。早く転職先を決め、働き始めたいと考えている社会人とは異なり、卒業までに希望の企業から内定をもらうことが学生の目標です。

1度内定をもらってもそのまま就職活動を続け、より魅力的な企業から内定が出ると辞退する学生もいます。早く内定を出したからといって、全員が入社するとは限らない点はデメリットです。

また、新卒者の多くは実務経験がありません。実際に働いてみてイメージと違った場合、早期退職のリスクもあります。すでに現場を知っている社会人と比べると、定着率が低くなる可能性も考えておきましょう。

社員・学生ともに負担が大きい

新卒一括採用は時期が決まっているため、一時的に大きな負担が発生します。採用を担当する社員は、大量の応募に対応し、選考・面接のスケジュールも卒業時期までに設定する必要があります。

学生も、卒業前の時期を就職活動に充てなければなりません。卒業までに就職先を決めなければならない上に、採用募集が行われる時期はある程度限られています。

一定期間に多数の履歴書を書き、面接のスケジュールを短期間で複数設定するのは負担がかかるでしょう。必要な単位を取る前に就職活動が始まると、学業との両立も意識しなければなりません。

就活ルールの廃止もチェック

就職面接

(出典) pixta.jp

本来、学生の本分は就職活動ではなく学業です。就職活動が学業に影響を与えることがないよう、「就活ルール」と呼ばれるルールが存在します。ルールの概要や、廃止による影響を確認しましょう。

就活ルールとは

「就活ルール」は、早すぎる就職活動が学業の妨げにならないよう、「一般社団法人 日本経済団体連合会(以下、経団連)」が定めたルールです。企業が新卒一括採用を始めてもよい時期を設定し、広報・選考・内定の目安が定められています。

広報活動とは、新卒予定者に対して採用活動の情報を告知し、エントリーや周知を促すものです。卒業年度に入る直前の3月1日以降が、解禁日となっています。

選考活動は、履歴書受付や面接を始める時期のことです。卒業年度の6月1日以降が解禁日です。

内定は、正式な内定を出し、新卒者に通知する時期を指します。卒業年度の10月1日以降が内定日を出す解禁日です。

しかし、経団連が定めたルールは、法律とは異なります。あくまでも、自主的にルールを守ることを促したもので、強制力はありません。

出典:経団連:採用選考に関する指針 (2018-03-12)

廃止による影響

経団連が定めていた「就活ルール」と呼ばれる指針は、2021年卒の新卒一括採用から廃止されています。それ以降、経団連に代わって政府が指針を発表していますが、基本のスケジュールに大きな変更点はありません。

しかし、2024年度(2025年)卒業予定の学生から、一部変更点があります。条件を満たす「専門活用型インターンシップ」を利用した学生に限り、企業が採用活動開始後に学生の情報を利用できるというものです。

今まではインターンシップを利用した学生であっても、該当の学生に対して企業側からアクションを取ることが難しかったものの、改正によって可能となる見込みです。

また、2025年度(2026年)卒業予定の学生からは、条件を満たす専門活用型インターンシップに参加した学生に限り、採用活動や内定の時期を早めてもよいとする指針が発表されています。

出典:インターンシップを活用した就職・採用活動日程ルールの見直しについて|厚生労働省

出典:就職・採用活動⽇程ルールの見直しの概要|内閣官房

企業・新卒ともにミスマッチが少ない就職を

就職活動

(出典) pixta.jp

新卒一括採用は、日本の企業が一般的に導入している採用方式です。新卒予定者をまとめて採用することで、選考や新人教育が1度で済むメリットがあります。

しかし、既卒者や留学経験者の就職など、新卒一括採用の対象とならないケースも増えており、通年採用の重要性も注目されています。

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