ワークライフバランスが重要視される理由は?実際の取り組みも紹介

多くの人が企業選びの際に気にする「ワークライフバランス」とは、具体的にどのような概念なのでしょうか?注目されている背景や、企業・従業員にとってのメリットを紹介します。企業や個人がワークライフバランスを整えるための取り組みも、確認しましょう。

ワークライフバランスとは

ワークライフバランス

(出典) pixta.jp

ワークライフバランスは、仕事をしていく上で重要な考え方です。大まかな意味は理解していても、ぼんやりとしか内容が分かっていない人もいるでしょう。ワークライフバランスの定義と、考え方について解説します。

仕事と生活のバランスを取ること

ワークライフバランスは、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」に出てくる言葉です。概念や言葉は、アメリカで生まれたとされています。

定義は、「仕事と生活を両方充実させ調和を目指すこと」です。経済的な自立に加えて、生活の充実や子育て・介護との両立を目指す考え方が、ワークライフバランスと呼ばれます。

仕事と生活の両立は、働く人にとって大切です。仕事だけに時間を取られ、プライベートが充実していない状況や、生活のために仕事が難しいといった状況を改善するため、ワークライフバランスの考え方が重要とされています。

出典:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章 - 「仕事と生活の調和」推進サイト - 内閣府男女共同参画局

生活だけを重視する考え方ではない

「ワークライフバランス」は、プライベートだけを優先して仕事を減らす意味であると誤解されがちです。誤解を生む原因は、言葉が使われる背景にあります。

子育て・介護に追われて全く仕事ができない人が、「ワークライフバランスを意識して会社に勤めたい」とアピールする場面はほぼ見られません。すでに生活だけで精いっぱいの状況で、さらに仕事をしたいと考える人はほとんどいないためです。

反対に、多忙で仕事ばかりに時間を取られていた人が、「ワークライフバランスを重視して転職先を選びたい」と言うと、仕事を減らしてある程度生活を優先する意味になります。

しかし、プライベートを最優先にして仕事を最低限に抑えるわけではありません。あくまでも、仕事と生活を充実させ、好循環を生み出すための考え方であると理解しましょう。

注目された背景

タイムカードを切る

(出典) pixta.jp

政府がワークライフバランスの指針を発表してから現在に至るまで、ワークライフバランスは注目を集めています。なぜ仕事と生活の充実を目指す考えが注目されるのか、背景を探りましょう。

多様化する価値観

日本では、仕事重視の考え方が主流とされていた時代があります。家庭よりも仕事を優先させ、熱心に働く人が素晴らしいという価値観です。

しかし、女性の社会進出や過労死問題など、さまざまな背景によって仕事に対する価値観は多様化しています。プライベートを優先させたいと考える人も多くなり、仕事だけに縛られる生き方を否定する人もいるでしょう。

仕事をしていれば素晴らしいという価値観が薄れ、生活を充実させる時間が重要視され始めたことが、ワークライフバランスの概念が注目を集めたきっかけといえます。

少子高齢化・人材流出による労働者不足

日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口が少なくなってきています。限られた労働力を効率的に使うため、ワークライフバランスの概念が注目を集めるようになりました。

子育て・出産・介護といったライフステージの変化が起きると、一時的に働けない状態や、仕事に時間を割けない状態が続きます。また、高齢になると、労働の強度や時間を見直す場面も多いでしょう。

どのような変化が訪れても、短時間で効率的に働いたり、一時的に休暇を取ったりという働き方が可能になれば、労働力を効率良く活用できます。

ワークライフバランスの概念は、労働者の負担軽減や効率アップを可能にし、人材流出を防げるのではないかと期待されているのです。

出典:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

ワークライフバランスを充実させるメリット

腕時計を見る男性ビジネスマン

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ワークライフバランスを理解し、仕事と生活を充実させると、企業・従業員どちらにとってもメリットがあります。企業・従業員それぞれのメリットを確認しましょう。

企業側のメリット

企業にとって、ワークライフバランスを充実させるための取り組みは、優秀な人材の確保や労働力の維持に役立ちます。従業員のプライベートが充実すると、仕事へのモチベーションが上がり、生産性が高まるのもメリットです。

企業が従業員のワークライフバランスを充実させるには、福利厚生や休暇制度、柔軟な勤務形態を採用するといった方法があります。制度の充実はイメージアップにもつながり、人材確保に良い影響を与えるでしょう。

福利厚生には、手当の支給や余暇を充実させるためのサービス、収入アップのための資格取得サポートなどが該当します。時短勤務やフレックスタイム制といった働き方の提案も、従業員のライフスタイルに合う勤務形態が選択できるきっかけになるでしょう。

従業員側のメリット

ワークライフバランスの充実は、従業員やその家族にとってもメリットがあります。ストレスが減り、心身の健康や意欲が維持できる点は大きな魅力です。

特に、今まで長時間労働やハードな仕事に悩まされてきた人は、労働環境の改善が期待できます。プライベートが充実し、趣味や余暇に使う時間も増えるでしょう。

子育て・介護などライフステージの変化があっても、働き続けられる可能性が高くなります。一時的な休暇や時短勤務が認められれば、家庭を優先しながら働くことも可能です。

ワークライフバランスを進めるには?

部下を激励する上司

(出典) pixta.jp

ワークライフバランスの改善や制度の導入には、企業側の意識が重要です。従業員の環境を整えるために、企業が何をするべきか解説します。

経営陣が必要性を理解することが重要

ワークライフバランスの考え方を従業員に広めるには、企業全体の意識を統一しなければなりません。意識統一には、経営陣の指揮が必要です。

なぜワークライフバランスが求められているのかを理解し、福利厚生・休暇制度の導入も検討が求められます。

従業員だけがワークライフバランスの重要性に気付いていても、利用できる制度がないと退職やプライベートを犠牲にする結論になりかねません。労働力の活用や人材流出を防ぐためにも、ワークライフバランスを重視した制度設計を進めましょう。

長時間労働の改善

残業が多く休暇が取れない環境では、ワークライフバランスが崩れて生活が犠牲になりがちです。長時間労働をしている従業員が多いときは、労働時間の見直しを行いましょう。

多くの従業員が長時間労働をしている現状は、1人に割り当てられている仕事量が多いことを意味します。人員を増やせるなら問題はありませんが、予算や利益の都合上、簡単にはいきません。

まずは、なぜ長時間労働が増えているのか、原因を探りましょう。効率化できる部分があれば効率化を図り、過度なリスク回避・無駄な作業が生まれていないかチェックします。仕事をスムーズに進めるため、大幅な改革やシステム導入も検討しましょう。

多様な勤務形態に柔軟に対応

多様な勤務形態に対応すると、さまざまなライフスタイルの従業員が効率良く勤務できます。時差出勤・フレックスタイム制・時短勤務・テレワークなど、導入できる勤務形態は豊富です。

時差出勤・フレックスタイム制は、働ける時間帯をある程度自由に選択したい従業員に向いています。

時短勤務は、一時的なライフスタイルの変化により、働ける時間が少なくなった従業員が活用できるでしょう。テレワークを導入すると、交通費の削減に加えて、遠方に住む優秀な人材を確保できます。

柔軟な勤務形態の充実に加えて、従業員の心身をいたわるための休暇制度を取り入れることも大切です。

個人が行える取り組みについて

腕時計を見る男性

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ワークライフバランスを整え、心身ともに充実した状態を維持するには、自分自身の努力も必要です。企業が用意する制度以外に、個人でできる取り組みを紹介します。

仕事の効率を上げる努力をする

個人でも、仕事の効率を上げる努力はできます。仕事の進め方やツールの活用などによって、大幅な時間短縮も可能です。まずは無駄な動きをなくすために、工程や仕事の順序を見直しましょう。

スキルを磨き、スピードアップを目指す方法もあります。業務に役立つ資格取得や、技術を学ぶ時間をつくりましょう。

自分自身の仕事を見直すだけでなく、周囲との連携についても提案できれば、部署全体の仕事がスムーズに回ります。仕事が効率化できれば残業が減り、プライベートの時間を確保できるようになるでしょう。

自身のメンタル面をケアする

ワークライフバランスを整えるには、メンタルの不調を放置しないよう心掛けましょう。休む時間があり、肉体的には疲れていないとしても、ストレスはたまります。

プライベートでゆっくり時間が取れるときはリラックスを心掛け、ストレス発散の方法を見つけておくのが大切です。仕事中のトラブルや人間関係で悩んでいるときは、同僚・上司に相談もできます。

メンタルに不調が現れたときは、メンタルヘルスチェックを取り入れるのもおすすめです。簡単にできるセルフチェックや、専門家への相談を検討しましょう。

ワークライフバランスは古い?新しい考え方

業務時間

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ワークライフバランス憲章の定義は、仕事と生活の調和を広い意味で捉えています。それ故に、誤解も多い言葉です。

定義を明確にするため、他の言葉に置き換えている企業もあります。似た言葉の意味・定義を確認しましょう。

ワークライフマネジメント

「ワークライフマネジメント」は、いくつかの企業・団体で使用されている言葉です。有名な団体として、海上自衛隊が知られています。

ワークライフマネジメントは、「仕事と生活を両方充実させる考え方」です。ワークライフバランスの概念と大きな違いはありませんが、従業員側の自己管理や、企業の成長のために仕事と生活を管理する意味が込められています。

企業全体でワークライフバランスの概念を統一するに当たり、「単に休みを多く取ることがワークライフバランスの充実ではない」「企業の成長や利益の観点から従業員の自己管理を促したい」と考える企業・団体が使用しているようです。

ワークライフインテグレーション

2007年に策定されたワークライフバランス憲章の概念を受け、新たな提言として生まれた考え方が「ワークライフインテグレーション」です。

「ワークとライフのバランスを取る」と伝えると、どうしてもどちらかに優先順位が生まれ、お互いが対立してしまいます。

そこで、「統合」という意味を持つ「インテグレーション」と組み合わせ、対立の図式をなくそうとしたのが登場のきっかけです。

現在のワークライフバランス憲章には「仕事と生活の対立」という概念は見られず、ワークライフインテグレーションの考え方も組み込まれています。

「バランス」という言葉が誤解を生みやすいため、「インテグレーション」を積極的に使用している企業も増えているようです。

ワークライフバランスは転職でかなえる方法も

履歴書

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働き方改革が進み、多くの企業でワークライフバランスの推進や制度の導入が検討されています。利用できる制度がなく、仕事と生活の充実が難しいときは、転職も検討してみましょう。

ワークライフバランスを推進し、魅力的な制度を導入している企業では、仕事を効率的にこなしながらプライベートの確保も可能です。企業の特徴や待遇をチェックしたいときは、「スタンバイ」で求人を探してみましょう。

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