`職場の人間関係の良しあしが、仕事のパフォーマンスやモチベーションに影響することは珍しくありません。上司や同僚との関係性が悪いと、何をするにもストレスを感じ、仕事に集中できないばかりか心身に不調を来す恐れもあります。職場に限らず、人間関係の悩みを長引かせても、良いことは何もありません。手遅れになる前に原因を突き止め、早めに対処しましょう。職場の人間関係が悪化する主な原因と、ケース別の対処法を解説します。
この記事のポイント
- 職場の人間関係で悩む人は少なくない
- 厚生労働省の調査で、職場の対人関係にストレスを感じている人や、人間関係が理由で退職する人は一定数存在することが分かっています。
- 人間関係悪化の主な原因
- 人間関係悪化の原因には、個人的な相性の問題だけでなく、HSPの存在や過酷な職場環境などが挙げられます。
- 職場の人間関係を改善するには
- 明るいあいさつや声がけなど、コミュニケーションの基本を守ることである程度改善できます。相手に原因があり難しい場合は第三者に相談する、環境を変えるなどの手段を検討しましょう。
職場の人間関係の悩みは珍しくない

職場の人間関係で悩んでいる人は、少なくありません。自分だけではないことが分かれば、安心して対策を立てられるでしょう。
約3割が人間関係のストレスを抱えている
厚生労働省が実施した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、事業所に雇用されている労働者のうち、82.7%が職場で強いストレスを感じることがあると回答しています。
そのうち、ストレスの内容について「対人関係」と回答した人は29.6%でした。「仕事の失敗、責任の発生等(39.7%)」「仕事の量(39.4%)」に次いで、3番目に多い結果です。
男女で比べると、男性の26.3%に対して女性は33.7%と、女性の方が多くなっているのも特徴といえます。
出典:厚生労働省|「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」結果の概要|「個人調査」
退職・転職理由の1つにもなっている
職場の人間関係のストレスが高じて、仕事を辞める人も一定数存在します。厚生労働省が2023年に実施した「雇用動向調査」では、転職した人が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した人の割合は男性が9.1%、女性が13.0%でした。
2022年の調査では男性8.3%、女性10.4%であり、全体的に増えていると分かります。また男女ともに、労働条件の悪さや仕事内容への不満といった理由よりも、人間関係の悩みの方が高くなっています。
出典:厚生労働省|-令和5年雇用動向調査結果の概況- |15p
職場の人間関係の悪化が及ぼす影響

職場では、上司や同僚、後輩などさまざまな人と一緒に多くの時間を過ごします。人間関係次第で、居心地の良さも変わるといってよいでしょう。職場の人間関係が悪いと、どのような影響があるのでしょうか。
心身の健康を保てなくなる
職場の人間関係が悪い状況が続くと、心身の健康を保てなくなる恐れがあります。プライベートなら苦手な人や嫌いな人とは関わらずに済みますが、職場ではそうもいきません。
関わりたくない人と毎日関わらざるを得ない状況が続けば、ほとんどの人は精神的なストレスを強く感じるでしょう。
ストレスを感じる日が続くと、気分が落ち込み、食欲がなくなったり眠れない日が続いたりと、健康的な生活を維持できない可能性もあります。
ストレスが倦怠感や体の痛み、動悸などの身体的な症状となって現れるケースも少なくありません。
仕事のパフォーマンスが低下する
心身に不調を来せば、当然仕事にも以下のような影響が出てしまいます。
- 好きな仕事ですらやる気が起きない
- 集中力が続かず、時間がかかる
- ミスや物忘れが多くなる
- 遅刻・欠勤・早退が増える
ストレスで気分が落ち込むと、何をやっても楽しめないため、仕事へのモチベーションが下がります。人間関係が気になるあまり仕事に集中できず、うっかりミスを頻発することもあるでしょう。
身体的症状を理由に遅刻や欠勤が増えることも考えられます。
職場の人間関係が悪化する主な理由

職場によって、人間関係の良しあしはさまざまです。最初は良かったのに、何かのきっかけで悪くなってしまうこともあるでしょう。職場の人間関係が悪化する主な理由を解説します。
コミュニケーション不足
仕事をスムーズに進めるためには、関わる人同士の十分なコミュニケーションが欠かせません。基本的なスケジュールはもちろん、トラブルが起こったときの対処法や相談先など、細かい部分までしっかりと話し合い、共有しておけば、お互いに気持ちよく仕事ができるでしょう。
逆に、十分なコミュニケーションがないまま仕事をスタートすると、すれ違いが生じてうまく回らなくなります。そのような状況が続けば、責任転嫁や言った言わないの水掛け論ばかりとなり、職場のムードが悪くなることは容易に想像できます。
相性が良くない人の存在
相性が良くない人がいる場合も、職場の人間関係においてストレスを感じやすくなります。職場ではどんなに苦手な人とも、一緒に過ごさなければなりません。
仕事に個人的な感情を持ち込むわけにはいかないため、始業から終業まで、常に我慢を強いられる日々が続きます。気にしないように努めていても、相手の一挙手一投足が気に障り、それだけで仕事に集中できなくなることもあります。
過剰な競争意識
個人の成績が収入に直結する職場や、ノルマの厳しい職場でも、人間関係は悪化しやすいといえます。適度な競争意識はお互いに刺激となり、時には協力関係を築くなど、良い方向に働くことが多いでしょう。
しかし競争意識が過剰になれば、周囲が皆ライバルとなり、常に「負けられない」と緊張することになります。仕事の悩みがあっても、ライバルに弱みを見せたくないとの思いから、1人で抱え込んでしまうこともあります。
目標達成へのストレスに、人間関係のストレスが重なり、気が休まる暇がありません。
過酷な労働環境
過酷な労働環境が、人間関係の悪化を招くケースもあります。例えば残業が続いて疲労が蓄積すると、相手を思いやる余裕がなくなり、無意識のうちに辛辣な言葉を発してしまうかもしれません。
達成困難なノルマを課せられ、どんなに頑張っても成果が出ないときも、いら立ちや不満が募ります。皆が自分のことで精いっぱいな状況では、円滑なコミュニケーションは期待できず、職場の雰囲気が悪くなる一方でしょう。
陰口やハラスメントの横行
仕事とは無関係な理由で陰口を言われたり、ハラスメントを受けたりすることで、精神的なダメージを負うケースもあります。
職場での代表的なハラスメントとしては、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントが挙げられます。
パワーハラスメントとは、優越的な立場にいる人が、相手が逆らえない状況を知った上で業務上必要のない言動をした結果、相手の就業環境を害する行為のことです。
相手が嫌がる性的な言動を指すセクシュアルハラスメント、出産育児を理由に退職や減給を迫るマタニティハラスメントも、パワーハラスメントの1つといえます。
陰口やハラスメントが横行する職場では、当事者はもちろん、周囲の人もつらい思いをするでしょう。
HSPが職場の人間関係に影響することも

「HSP」と呼ばれる、生まれ持った気質により、上手に人間関係を築けない人も存在します。HSPの特徴と職場での接し方を見ていきましょう。
HSPとは
HSP(エイチ・エス・ピー)とは、周囲からの刺激に対してとても敏感な人を指す言葉です。英語の「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の頭文字を取って、このように呼ばれています。
HSPは5人に1人くらいの割合で存在することや、あくまでも生まれつきの性質で、育った環境とは関係ないことが分かっています。
HSPは音や光、においなどの刺激はもちろん、他人の気持ちに対しても敏感です。いつも無意識のうちに周りに気を使っているため疲れやすく、人間関係の悩みを抱えやすいといえます。
身近にHSPがいる場合の接し方
職場の身近な人がHSPだった場合、どのように接すればよいのでしょうか?先述の通り、HSPは生まれ持った性質ですから、他人のアドバイスによって変わるものではありません。
「気にし過ぎなのでは」「カウンセリングに行ってみたら」のような、性質を否定したり治療を勧めたりする言動は控えましょう。
仲良くなりたいからといって、自分の悩みを打ち明けるのもよくありません。悩みに共感するあまり、打ち明けた本人以上に苦しくなる可能性があります。
話しかける際は、穏やかな口調を心掛けます。HSPでなくても、怒った顔やイライラした口調で話しかけられるのは嫌なものです。HSPの場合は特に傷つきやすいため、感情をあらわにしないよう配慮しましょう。
折に触れて、相手の長所を褒めるのも効果的です。否定されると落ち込みますが、肯定されればとてもうれしく感じ、前向きな気持ちになってくれるでしょう。
自分がHSPの場合の対処法
自分がHSPで、職場での生きづらさを感じている人も多いでしょう。全ての職場で、HSPへの理解や配慮が期待できるとも限りません。
まずはできる限り、外からの刺激を受けずに済む環境を整えましょう。光の刺激はサングラスを、音の刺激はイヤホンを装着すると和らぎます。
職場に相談し、デスクを静かな場所に移動させてもらってもよいでしょう。職種によってはリモートワークを願い出るのも一案です。
HSPに向いている仕事を探すことで、生きづらさを軽減できる可能性もあります。あまり人と関わらずにマイペースでできる仕事や、豊かな感受性を生かせる仕事などを探してみるとよいでしょう。
自分でできる職場の人間関係改善策

職場の人間関係は、ちょっとした心掛けで改善できることもあります。自分でできる改善策を紹介します。
あいさつや声がけを欠かさない
苦手な人がいるときや、職場の雰囲気が良くないときは、積極的なあいさつや声がけから始めてみましょう。笑顔で元気にあいさつすれば、相手も嫌な気持ちにはなりません。
忙しく緊張感がみなぎっている職場も、お互いにあいさつを交わすことで和やかな雰囲気に変わるでしょう。「ありがとうございます」と、感謝の言葉を小まめにかけるのもおすすめです。
気軽にあいさつや声がけができるようになれば、コミュニケーションを取りやすくなり、仕事もスムーズに進むはずです。
ポジティブ思考を意識する
人間関係が良くない理由は相手にあると思いがちですが、実は自分のネガティブな感情に支配されているせいで、悩みから抜け出せないケースもあります。
相手に対していつもネガティブな感情を抱いてしまうときは、ポジティブな感情に変換してみましょう。
例えば苦手な先輩に対して「いつも口うるさくて嫌だ」と思うときは、「仕事熱心な人」と考えるようにします。すると、先輩の小言も有益なアドバイスとして、素直に受け入れられるかもしれません。
また、ノルマが厳しく常に緊張感が漂う職場は「成長のチャンス」と捉えます。人間関係を気にせず、ノルマ達成に集中すれば、居心地の悪さも気にならないでしょう。
伝え上手・聞き上手になる
人間関係を良くしていくためには、十分なコミュニケーションが欠かせません。苦手な人との会話は避けたいところですが、避けてばかりいては、改善は難しいでしょう。
会話の際は、一方的にならないように意識します。例えば相手のミスを指摘するとき、いきなり相手に非があると決めつけるような言い方をすると、反感を買ってしまいます。
「失礼ですが」「私が勘違いしているのかもしれませんが」のように、柔らかな言葉を添えれば、相手も素直に聞いてくれるでしょう。
普段の会話でも、自分ばかり話すのではなく、相手の話を多く聞くことを心掛けると、お互いに気持ち良く過ごせます。
相手に原因があるときの対処法

職場にはさまざまなタイプの人がいるため、自分の努力だけでは人間関係を改善できないケースも多々あります。明らかに相手に原因があるときの対処法を見ていきましょう。
仕事だからと割り切る
職場はあくまでも、働いて収入を得るために通う場所です。人間関係を気にするあまり、仕事のパフォーマンスが落ちては、本末転倒といえます。
自分の努力にも限界があると思ったら、仕事上の付き合いだからと割り切りましょう。
苦手な相手とは、あいさつや仕事で必要なコミュニケーションさえ欠かさなければ、それ以上深く付き合う必要はありません。自分のやるべき仕事をしっかりとこなし、成果を上げることに集中しましょう。
専門部署に相談する
上司からハラスメントを受けている、同僚から無視されるなど理不尽な目に遭っている場合、自分が悪いのかもしれないと思い努力したところで、改善は期待できません。早めに外部に相談しましょう。
相談先は、人事部や総務部が適しています。客観的に状況を判断し、上司への注意や配置転換、産業カウンセラーの紹介などの措置を取ってくれるでしょう。
会社に相談できないときや、相談しても解決しないときは、公的な相談窓口を頼る手もあります。会社所在地の労働局または労働基準監督署の「総合労働相談コーナー」を利用してみましょう。
異動や転職などで新しい環境に移る
人間関係のストレスがひどく、仕事へのモチベーションが感じられなくなったら、異動や転職などで新しい環境に移るのもアリです。会社の規模や事業形態にもよりますが、転勤や他部署への異動によって、がらりと環境を変えることもできるでしょう。
ただし異動先や転職先でも、人間関係に悩む可能性はあります。また現状から逃げたいあまりに、待遇や仕事の内容をよく確認せずに転職先を選んでしまい、後悔する恐れもあります。
転職の理由が人間関係であったとしても、それ以外の部分にもしっかりと目を向け、自分のキャリア形成に役立つ会社を選ぶようにしましょう。
転職先を探すなら、国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」の利用をおすすめします。豊富な求人から、希望の条件に合う会社を効率的に探せます。
人間関係の悩みを忘れるには

プライベートな時間に職場の人間関係を思い出すと、よりストレスがたまります。上手に忘れて、リフレッシュする方法を紹介します。
趣味に没頭する
仕事以外に熱中できる趣味があれば、良い気晴らしになり、人間関係の悩みをリセットできます。これといった趣味がない人は、この機会に探してみてはいかがでしょうか。忙しくて遠ざかっていた趣味があるなら、再開してもよいでしょう。
趣味を通して、新たな出会いも期待できます。プライベートで良好な人間関係を築けていれば、職場の人間関係が多少うまくいかなくても、それほど気にならないかもしれません。
体を動かす
適度な運動には、心身をリラックスさせる効果があるとされています。人間関係に疲れたと思ったら、あえて体を動かしてみるとよいでしょう。
ただし頑張り過ぎると体が疲れてしまい、長続きしません。散歩や軽いジョギング程度で構わないので、継続することを心掛けましょう。
昼休みに軽くストレッチする、帰りの電車で自宅の最寄り駅の1つ手前で降りて歩くなど、日常生活の一部に組み込むと続けやすくなります。
出典:体を動かす|こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
十分に睡眠を取る
良質な睡眠は、心身の健康維持に欠かせません。職場のストレスのせいで眠れない日が続くと、イライラしたり集中力が低下したりして、余計に人間関係をこじらせる恐れがあります。
翌日に疲れを持ち越さないためにも、十分に睡眠を取れるよう工夫してみましょう。まずは、起床時間の7~8時間前には就寝できるようにします。快適に眠れるよう、寝室の温度や湿度はあらかじめ調整しましょう。
寝る前のカフェイン摂取やスマホの使用も控えます。代わりにアロマの香りや、ゆったりした音楽に囲まれて、リラックスするのもおすすめです。
職場の人間関係の悩みは早めに対処しよう

職場の人間関係に悩む人は、決して少なくありません。悩みの原因も単なる相性の問題から一方的なハラスメントまで、さまざまです。HSPのように、生まれつき人間関係に悩まされやすい気質の人も存在します。
悩みを解消するには、自分を変える方法と、相手と距離を置く方法があります。原因を見極め、適切な対処方法を選び実行しましょう。プライベートな時間を活用し、ストレスを発散することも大切です。
人間関係のストレスは、心身の健康や仕事のパフォーマンスに影響します。自分の身を守るためにも、早めに対処しましょう。