公務員から公務員への転職は不利?メリットや成功させるコツを解説

公務員から公務員への転職を考えている人へ、転職方法や成功させるコツを紹介します。不利といわれる理由やメリット・デメリットのほか、給与や退職金などについても解説するので、転職活動を本格化する前にチェックしておきましょう。

公務員から公務員へ転職できる?

考え事をするスーツの男性

(出典) pixta.jp

公務員として働いている人の中には、「別の自治体で働きたい」「国家公務員から地方公務員へ転職したい」と考える人もいるようです。公務員から公務員への転職は、可能なのでしょうか?具体的な転職パターンを含めて解説します。

公務員から公務員への転職は可能

公務員から公務員への転職は可能です。公務員は、採用方法や活動内容などの点で民間企業と大きく異なる点があるものの、転職を禁止する法令などはありません。

公務員から民間企業への転職者がいる一方で、職種が合わないといった理由から、別の自治体などへ転職する人も一定数存在します。

また、行政実務経験者や公務員経験者の経験者採用枠を設定し、募集している自治体も少なくありません。経験のある職種からの転職という観点で見れば、転職者側にとってだけでなく、受け入れる自治体側にとってもメリットになるといえるでしょう。

公務員から公務員への転職4パターン

公務員から公務員への転職には、大きく分けて4つのパターンがあります。

  • 地方公務員から国家公務員:ハードルは高め。大卒程度の試験を受ける場合は、官庁訪問があるためスケジュールを確保するのが困難。
  • 国家公務員から地方公務員:いったん国で働いたものの、地元・地域のために役立ちたいと思ったなどの理由で転職する人もいる。筆記試験や面接試験では有利になることが多い。
  • 地方公務員から地方公務員:生まれ育った自治体へのUターン転職など。結婚・出産・介護など家庭の事情で転職するケースもある。
  • 国家公務員から国家公務員:一般職から総合職や、法務省から国税庁など専門分野の異なる職種への転職。

公務員から公務員に転職する方法

採用試験

(出典) pixta.jp

公務員経験者でも、別の自治体などに転職するには、再度採用試験に合格することが必要です。転職方法を3つ紹介します。

通常の採用試験を受ける

「大卒程度」や「一般」といわれている枠の採用試験を、受ける方法です。受験資格は年齢要件だけのことが多く、年齢要件を満たせば大学を卒業していなくても試験を受けられます。

自治体によって年齢要件は異なりますが、おおむね30歳までとしているケースが多いようです。しかし近年は、年齢の下限は決めていても、上限を撤廃して59歳まで受験可能な自治体もあります。

特別な資格・免許が必要ない場合もあり、1次の筆記試験と2次の面接試験に合格すれば転職が可能です。採用予定人数は多めですが、新卒も受験対象となるため、十分な試験対策が必要でしょう。

社会人経験者採用試験を受ける

民間企業などでの職務経験者を対象とした採用試験を、受験する方法です。年齢要件を30歳程度までとしていることが多いものの、自治体によっては59歳まで受験できる場合もあります。

ただし、「社会人経験数」の条件は、自治体などによって異なるので注意が必要です。公務員の職歴は職務経験として見なされないケースや、公務員としての職歴は認めても、条件によって募集している自治体の職員は受験できない場合もあります。

大卒程度の枠に比べて、採用人数は少ない傾向にあるため、倍率が高くなる可能性もあるでしょう。筆記試験に合格することはもちろんですが、職歴を武器にして、いかに自己アピールするかが大切です。

行政実務経験者採用試験を受ける

自治体が公募している行政実務経験者採用試験を、受ける方法もあります。行政実務経験者採用試験は、公務員経験者のみを対象としているため、新卒や民間企業からの転職者がライバルにならない点が大きな特徴です。

同じ公務員経験者がライバルとなることから、経験をいかにアピールするかが重要になるといえるでしょう。公務員としての勤務年数や年齢を要件とするほか、募集している職種の経験・資格を必要とされることもあります。

常に募集しているわけではなく、採用予定の職種や人数なども自治体によって異なるので、タイミング次第では希望する職種の公募がない点には注意が必要です。また、採用人数が少なく、倍率は高めになる傾向にあります。

公務員から公務員に転職するメリット・デメリット

地域センターの窓口

(出典) pixta.jp

公務員から公務員への転職には、メリットが多い半面、デメリットも存在します。転職を検討している人は、事前に把握しておきましょう。

メリット

公務員経験があることで、転職先の自治体などに即戦力として歓迎されます。民間企業からの転職とは異なり、公務員ならではの文化を知っていることが大きな強みとなるでしょう。

職種に求められる役割や組織の構造などを理解していることも、有利に働くポイントです。公務員には、県や市の職員が交流して連携体制を強めていく「人事交流」があるため、他の自治体・官公庁の情報を知っている人物は重宝がられる可能性もあります。

また、採用試験を1度経験しているので、試験対策を講じやすい点もメリットです。

デメリット

同じ規模感の省庁に転職する場合、理由をつくりにくいというデメリットがあります。例えば、市役所から市役所への転職の場合、地域によって仕事の差異があまりないことも多く、理由によってはこじつけと受け取られてしまう可能性もあるためです。

「採用しても、同じようにすぐ辞められてしまうのではないか」という印象を与えてしまうかもしれません。面接官が納得するような理由を、考えることが必要になるでしょう。

また、仕事をしながらの受験勉強は、時間の捻出なども含めて容易なことではありません。しっかり計画を立てるだけでなく、モチベーションを維持することも大切です。

公務員から公務員に転職したときの給与や退職金は?

給与

(出典) pixta.jp

公務員の給与は、職務の経験年数と級の組み合わせによって決定され、これらは「俸給表」または「給料表」に基づいています。転職すると、給与にはどのような影響があるのでしょうか?退職金についても併せて解説します。

職歴加算によって採用前の給与が反映される

公務員には、職歴加算という制度があります。職歴加算とは、前職の職務経験が入職時の初任給に反映される仕組みのことです。

職歴加算率は転職先によって異なりますが、転職後の職種との関係性が大きいほど高くなる傾向にあります。

東京都の経験年数換算表(職務経験)を例に見ると、同種の職務の換算率は10割ですが、異種の場合は8割と低くなっています。

例えば、同じ職種に10年間従事していた場合は10年目の公務員の給与が、異なる職種への転職では8年目の給与が反映されるという仕組みです。なお、職歴加算には、前職で発行される在籍証明書が必要になります。

出典:第4章 現行制度の運用状況と制度的課題|東京都の人事

退職金の引き継ぎが可能なケースもある

退職金を受け取らず、前職の勤務年数をそのまま次の職場へ引き継ぐことも可能です(地方自治法第252条の18)。民間の企業では、転職の際に前職の退職金を引き継ぐことはできないので、公務員ならではの制度といえるでしょう。

転職前と後の双方にこの制度がある場合に限られますが、ほとんどの公務員の職場で可能だといわれています。ただし、退職した翌日に入職しないと、引き続き在職したと見なされないので注意しましょう(国家公務員退職手当法第7条第3項)。

引っ越しを伴う場合は、前職の有給休暇消化の利用などによって、スケジュールを調整する必要があります。なお、退職金の額は退職時の給与・勤務年数・退職理由によって決まるため、職歴加算率の影響を直接受けることはありません。

出典:地方自治法 第252条の18 | e-Gov法令検索

出典:国家公務員退職手当法 第7条第3項 | e-Gov法令検索

公務員から公務員へ転職する際の注意点

履歴書

(出典) pixta.jp

転職活動における注意点についても、確認しておきましょう。主なポイントを2つ挙げて解説します。

在籍中に転職活動を始める

現職に在籍している間に、転職活動を始めるのがおすすめです。一般的に、公務員採用の応募から入職まで、3カ月以上かかるといわれています。

退職してから転職活動を始めると、無収入の期間が生じるだけでなく、退職金の引き継ぎもできなくなるので注意しましょう。ただし、万が一不合格になった場合を考えて、転職活動中は職場のメンバーに知られないようにすることが大切です。

また、自治体や省庁ごとに退職願を提出する期間が定められています。退職届を出すタイミングや、引き継ぎにかかる期間を考慮することも必要です。

納得できる志望動機を考える

転職を成功させるには、面接官が納得できる志望動機を考えておくことも大切です。民間企業から公務員への転職の場合、「地域に貢献したい」などの理由だけでも納得してもらえる可能性はあります。

しかし、公務員から公務員への転職の場合、転職を決めるに至った具体的な理由が求められると考えておいた方がよいでしょう。

例えば、地方から都市部の自治体への転職では、仕事の規模感・スピード感の違いなどを挙げて、どのように活躍したいかをアピールする方法もあります。ほかにも、親の介護や家族の転勤など、家庭内の事情による理由は比較的納得してもらえるようです。

公務員から公務員への転職に関するQ&A

考え事をするスーツの男性

(出典) pixta.jp

公務員から公務員への転職で、よくあるQ&Aをまとめました。転職活動を始める前に、不安なことがあれば確認しておきましょう。

転職活動していることはバレない?

転職のために公務員試験を受けても、バレることはないので心配は無用です。受験者のプライバシーは守られているため、自治体の人事担当者の間に情報が流出するといったことはありません。

転職活動をしていると公言しない限り、現職のメンバーや人事にバレることは、まずないと考えてよいでしょう。

ただし、内定が出る前に在籍証明書の提出を求められた場合は、採用が決定する前に知られてしまいます。事前に、在籍証明書を提出するタイミングを確認しておくことが必要です。

公務員1年目の転職は不利になる?

公務員1年目でも転職は可能です。しかし、1年目では実務経験が乏しいため、転職先の自治体にとって経験者を採用するメリットがあまり感じられません。

面接でのアピールポイントや転職理由なども見つけにくいため、採用されるのは難しいと考えておいた方がよいでしょう。

また、転職に成功しても、1年未満の場合は職歴加算されないケースもあります。転職者自身のメリットを考えても、最低2~3年は経験を積んだ上で検討するのがおすすめです。

公務員から公務員への転職は何歳まで可能?

採用試験の、年齢要件の上限まで可能です。大卒程度枠も社会人経験枠も、おおむね30歳までを年齢要件としていますが、上限を撤廃している自治体であれば59歳まで受験できます。

行政実務経験者採用試験の場合は、年齢制限が40代後半までとしている自治体もあるようです。

ただし、採用試験の受験資格の要件は、年齢だけではありません。年齢要件は満たしていても、職歴の条件を満たせずに受験できない場合もあるので注意しましょう。

公務員から公務員への転職方法を知っておこう

スーツ姿の女性の後姿

(出典) pixta.jp

公務員から公務員への転職では、公務員としての職歴を生かせる試験もあるので、各自治体の募集状況などを小まめにチェックしておくとよいでしょう。

転職を成功に近づけるためには、面接官が納得できる理由を考えるなど、試験対策を万全にしておく必要もあります。また、職歴加算や退職金の引き継ぎなどについても、しっかり把握しておくのがおすすめです。

求人サイト「スタンバイ」にも、国家公務員や地方公務員の募集が掲載されています。スマホからも検索できるので、気になる人はチェックしてみましょう。

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