「地方銀行には将来性がない」といわれるのを、聞いたことがある人もいるかもしれません。なぜ、将来性に不安を持たれるのでしょうか?地方銀行の特徴やメガバンクとの違い、働くメリットなどを考えながら、将来性について解説します。
この記事のポイント
- 地方銀行とはどんな銀行?
- メガバンクは大都市を中心に全国や海外で展開している銀行に対し、地方銀行は、各地域を営業基盤とする銀行で、地域密着型の金融に取り組み、中小企業や個人を主な取引対象としています。2023年3月時点で全国に62行あります。
- 地方銀行で働くメリット
- 地域に根ざした業務のため、地域住民や事業主と信頼関係を築き、資産運用や企業支援を通じて地域経済の発展などに貢献できます。また、全国転勤がほぼないため、安定したライフプランを立てやすいでしょう。
- 地方銀行の将来性は?
- 地方銀行は、地域の中小企業との強いコネクションを持ち、地域経済の発展に不可欠な存在として残り続けると予想されます。また、異業種との連携を通じて、地域のインフラとしての力を強化し、地方創生事業にも積極的に取り組んでいます。
地方銀行とはどんな銀行?
地方銀行には、どのような特徴があるのでしょうか?地方銀行の特徴や仕組みのほか、その他の銀行との違いについて説明します。
各地域を営業基盤としている銀行
地方銀行は、各都道府県の地域を営業基盤としている銀行です。その地域を代表する銀行といってもよいでしょう。
他の一般的な銀行と同様に、預金として集めたお金を貸し出し、その金利で利益を得ています。他の銀行との違いは、主に地元の中小企業・個人を取引対象とした、地域密着型の金融に取り組んでいることです。
2023年3月時点で「一般社団法人 全国地方銀行協会」に加盟している地方銀行は、全国に62行あります。
メガバンク・第二地方銀行との違い
メガバンクは「都市銀行」とも呼ばれており、大都市を営業基盤の中心として、全国に支店を展開しているのが特徴です。営業地域の範囲が広く、海外にも拠点を置いて事業を展開しています。
取引先は全国各地の企業・個人を対象としており、サービスの規模の大きさから、中小企業やスタートアップの需要とは合いにくいといえるでしょう。
第二地方銀行とは、旧相互銀行から転換した銀行で、「一般社団法人 第二地方銀行協会」に加盟している金融機関のことです。地方銀行と同様、地域を基盤として地元密着型の営業をしています。
地方銀行の業務内容
地方銀行の主な業務は、メガバンクやその他の銀行と同様に、預金・貸し付け・為替の3つです。しかし、地方銀行ならではの業務の特徴もあります。具体的に見ていきましょう。
預金・個人ローン業務
預金・ローンなどの貸し付けは、地方銀行の基本的な業務です。地域住民の中には都市銀行より、地元に密着した地方銀行をメインバンクにしている人も少なくありません。
その地域に暮らす人々のニーズに対応したサービスを提供している点が、大きな理由といえるでしょう。
地方銀行の中には、県外からの移住者に対して住宅ローンの金利を優遇するなど、地域住民の人口増加を狙ったサービスを提供しているところもあります。
また、結婚・出産など個人のライフイベントに応じた融資などを行っているのも、地域密着型の金融に取り組んでいる地方銀行ならではの特徴です。
地元企業への融資・コンサルティング業務
地元の中小企業への融資も、地方銀行の主な業務の1つです。メガバンクにはできない、地域の事情・ニーズに応じたアプローチによって、地元企業の事業をサポートしています。
また、資金提供によるフォローだけでなく、コンサルティング業務を行っている点も特徴です。シンクタンクや人材紹介などの他業種と連携し、新規分野への進出・販路開拓・DXによる生産性向上やM&Aなど、企業の課題解決を支援しています。
資金力・情報力ではメガバンクに劣るものの、地域の中小企業に対してきめ細かいフォローができるという点においては、地方銀行が優位に立っているといえるでしょう。
為替業務
為替とは、銀行口座間で資金を移動させることです。国内外の銀行への送金だけでなく、公共料金の収納や支払事務、年金・株式の配当金受け取りなども行っており、地方行政のメインバンク機能も果たしています。
為替業務自体においては、メガバンクとの大きな差異はありませんが、利用者側にとっては地域内に支店・ATMが多くあるのが利点です。
また、近年はインターネットバンキングによる為替業務に対応しているところもあり、地域の利用者がより便利に活用できるようになっています。
地方銀行で働くメリット
地方銀行で働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なポイントを2つ挙げて紹介します。
地域に貢献できる
地域住民・事業主と信頼関係を築きながら仕事できるのが、地方銀行の特徴です。地域に暮らす人々のお金の相談に乗り、資産運用・ライフプランなどをサポートできるのは、地方銀行で働いているからこそできる仕事といえるでしょう。
個人だけでなく、企業への融資やコンサルティング業務によるフォローなどを通じて、地域経済の発展に貢献できるため、大きなやりがいを感じられます。
利用者は地域住民がほとんどなので、窓口業務などの対応を重ねるうちに顔なじみになるなど、顧客とのつながりも強くなるでしょう。地元に密着して働きたい人にとっては、非常に魅力があるといえます。
全国転勤がほぼない
地方銀行は、地域に根ざした金融業務を行うため、拠点もその地域内に限られます。そのため、全国への転勤がほぼない点も特徴です。
海外にも拠点を置くメガバンクの場合、国内の各支店だけでなく、国外への転勤を命じられることもあります。
地方銀行なら職場が地域内に限られるため、住宅購入や子どもの進学などに関して、安定したライフプランを立てやすいといえるでしょう。その地域に腰を据えて働きたい人にとっては、大きなメリットといえます。
地方銀行の将来性は?
地方銀行には将来性がないといわれることもありますが、地域にとっては重要な存在であり、今後も残ると予想されます。主な理由を、2つ見ていきましょう。
地域の経済に不可欠なインフラとして残る
地方銀行は、地域の中小企業とのコネクションが強いため、地域経済の発展・活性化にとって不可欠な存在として、残り続けることが予想されます。
メガバンク・ネット銀行などのサービスが拡大しても、事業規模がそれほど大きくない中小企業にとっては、地域の事情に精通した地方銀行が頼りとなる存在です。
経済・産業が都市部に集中しているとはいえ、地方の企業が短期間のうちになくなることはないでしょう。地域の中小企業がある限り、地元の経済にとって重要なインフラである地方銀行も残ると考えられます。
地域活性のための新たな取り組みが進む
金融事業に加えて、IT企業・不動産事業・人材仲介事業などの異業種と連携し、地域のインフラとしての力を強化していくと考えられます。
実際、人口減少の歯止めや地域経済の活性化を目的とした、さまざまな地方創生事業に取り組んでいる事例も少なくありません。
例えば、地域の事業者と提携して地域商社を設立し、新商品開発やブランディングの支援をしているケースもあります。また、古民家など歴史的価値のある資源の活用や、自治体と共同したキャッシュレス化事業などを行っているところもあるようです。
地方銀行で身に付くスキル
地方銀行の将来性に不安があるときは、身に付けたスキルを生かし、他業種への転職を視野に入れるのも1つの手です。地方銀行で身に付くスキルを、2つ紹介します。
財務・金融に関する知識
地方銀行では、毎日の業務で多額のお金を扱うため、金融に関する知識が身に付いていきます。企業への融資を担当すれば、財務諸表などの見方も分かってくるでしょう。
地方銀行で身に付けた金融に関する知識・スキルは、企業の管理部門・経理部門などへの転職で大きな強みとなります。面接でのアピールポイントとするために、ファイナンシャルプランナーや簿記の資格を取得するのもおすすめです。
また、投資についても勉強しておくと、今後AIが発達したときにも代替性の低い人材として生き残れる可能性が高くなります。
法人営業の経験
法人営業の経験は、どんな企業への転職にも役立つといわれています。法人営業は、個人営業とは異なり、ロジカルに訴求するスキルが必要です。
地方銀行の場合、地域の企業の事業主から融資を取り付けるため、より綿密で論理的な営業スキルが身に付きます。
また、事業承継やM&Aなどに携わった経験は、コンサルティング業務などに生かせるでしょう。法人営業のスキルに加えて、財務・経理に関する知識もあれば、さらに転職市場での価値は高くなります。
地方銀行は地域経済に密着した銀行
地方銀行は、地域経済になくてはならない存在です。地域内に限定して拠点を置き、地元密着型の金融に取り組んでいるため、安定したライフプランを立てたい人や、地域貢献に興味がある人におすすめといえるでしょう。
将来性が不安視される向きもありますが、地域住民・中小企業にとっての必要不可欠なインフラとして、今後も残り続けることが予想されます。
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