扶養の範囲内で働くには、年収をいくらまでにすれば良いのでしょうか。2025年から税制が改正され、これまでよく知られていた『103万円の壁』は『123万円の壁』に変わりました。
この記事では、扶養範囲内の年収の計算方法や、2025年の最新情報に基づいた『106万円の壁』『123万円の壁』といった、さまざまな年収の壁について分かりやすく解説します。扶養内で働くメリット・デメリットも確認し、ご自身に合った働き方を見つけましょう。
扶養範囲内の年収を計算するには
扶養範囲内で働くのであれば、年収の計算方法を知っておくことが重要です。年収と所得の違いとともに、年収の計算方法についても詳しく解説します。
年収を計算する期間
年収は、毎年1月1日~12月31日の期間の金額で計算します。そもそも年収とは、勤務先がその年に支払った総支給額を指し、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額です。
年収には、基本給のほか、時間外に働いた分の残業手当・深夜や夜勤の手当・賞与なども含まれます。
12月31日までに支払われる給与を指すため、12月に勤務したとしても支給日が1月であれば翌年の収入として計算され、その年の年収には含まれません。
年収と似ている用語に所得があります。所得とは、年収から必要経費などが差し引かれた金額のことです。給与所得のみの人の場合、収入に応じた給与所得控除額が差し引かれた後の金額が所得になります。
年収の計算方法
年収は、源泉徴収票の「支払金額」の欄に記載されている金額です。しかし、源泉徴収票をもらう前に、年収の金額が必要になるケースもあるでしょう。
その場合、勤務先から渡される毎月の給与明細や賞与明細の「総支給額」から計算できます。直近12カ月分の給与明細と賞与明細の総支給額を合計した金額が、おおよその年収です。
もし手元に給与明細がない場合は、毎月振り込まれる金額の12カ月分に賞与を足しても、おおよその年収が分かります。
一般的に手取り額を0.8で割った金額が、月収とされています。例えば手取り額が8万円の場合、8万円÷0.8=10万円となり、月収は約10万円です。
扶養には2種類ある
扶養には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。扶養範囲内で働きたい場合は、扶養の種類の違いについても知っておくことが必要です。それぞれの扶養の違いについて解説します。
税制上の扶養
税制上の扶養とは、扶養されている方(被扶養者)の年収が一定額以下の場合に、扶養している方(納税者)の所得税や住民税が軽減される仕組みのことです。
2025年からは基準となる年収額が引き上げられました。
- 年収123万円以下の場合
被扶養者の年収が123万円以下であれば、扶養者は「配偶者控除」または「扶養控除」を受けられ、税負担が軽減されます。 - 配偶者の年収が123万円を超えた場合
被扶養者が配偶者の場合、年収が123万円を超えても、すぐに扶養者の税負担が急増するわけではありません。- 年収160万円以下であれば、扶養者は「配偶者特別控除」を満額受けることができます。
- 年収160万円超~201万6,000円未満の場合、控除額は年収に応じて段階的に減少しますが、引き続き配偶者特別控除の対象となります。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、扶養者が勤務する会社の社会保険に被扶養者として加入することを指します。
被扶養者が配偶者の場合、夫や妻の会社の健康保険を利用できるだけでなく、自分で保険料を支払わなくても、第3号被保険者として国民年金への加入が可能です。
社会保険上の扶養に入るためには、パートやアルバイトの年収や勤務時間などに条件があります。
扶養範囲内になる年収額
扶養範囲内になる年収額は、扶養の種類によって異なります。夫や妻の扶養範囲内で働くには、年収と扶養の関係を理解しておくことが必要です。扶養の範囲を決める「年収の壁」について説明します。
【税金の壁】123万円・160万円
税金の扶養に関する壁は、2025年から金額が大きく引き上げられました。
- 123万円の壁(所得税)
被扶養者(扶養される側)の年収が123万円を超えると、被扶養者本人に所得税が課され始めます。 同時に、扶養している方(納税者)は「配偶者控除」や「扶養控除」を受けられなくなり、税負担が増加します。 ※住民税は、お住まいの自治体によりますが、一般的に年収100万円前後から課税対象となります。 - 160万円の壁(配偶者特別控除)
被扶養者が配偶者の場合、年収が123万円を超えても、年収160万円以下であれば、納税者は「配偶者特別控除」を満額受けられます。これにより、納税者の税負担の急な増加が緩和されます。
社会保険に関係する106万円と130万円
- 130万円の壁
原則として、年収が130万円以上になると社会保険上の扶養から外れ、自身で国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を支払う必要があります。 - 106万円の壁
年収130万円未満でも、以下の条件をすべて満たす場合は勤務先の社会保険に加入する義務があり、扶養から外れます。- 勤務先の従業員数が51人以上いる
- 1週間の所定労働時間が20時間以上ある
- 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)ある
- 2カ月を超えて雇用される見込みがある
- 学生ではない
参考:パート・アルバイトのみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省
【160万円の壁】配偶者特別控除の満額ライン
配偶者特別控除とは、扶養者(納税者)が、配偶者の所得に応じて受けられる所得控除制度です。
2025年からは、配偶者の年収が123万円を超えても、160万円以下であれば、扶養者は配偶者控除と同額である満額38万円の控除を受けることができます。
配偶者の年収が160万円を超えると、後述する上限額まで、控除額は段階的に減少していきます。
なお、配偶者が自営業の場合、年間の収入から経費などを差し引いた「合計所得金額」が105万円以下であれば、満額の控除を受けられます。
【201万6,000円の壁】配偶者特別控除の上限ライン
配偶者の年収が160万円を超えると、控除額は段階的に減っていき、年収201万6,000円になると控除額はゼロになります。つまり、配偶者特別控除が適用されるのは、配偶者の年収が201万6,000円未満までです。
自営業の場合は、「合計所得金額」が133万円を超えると控除の対象外となります。
また、この制度は扶養者(納税者)の年収にも上限があります。扶養者の年収が1,195万円(合計所得金額1,000万円)を超えると、配偶者の年収にかかわらず、配偶者特別控除は一切受けられません。
No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか|国税庁
扶養範囲内か計算するポイント
扶養範囲内で働く場合、給与以外にも注意すべき点があります。扶養範囲内かどうか計算する際のポイントを、3つ確認しましょう。
交通費は含む場合と含まれない場合がある
交通費を年収に含めるかどうかは、税金と社会保険で扱いが異なります。
- 税制上の扶養(年収123万円の壁など)
非課税限度額(公共交通機関で月15万円など)までの交通費は、年収に含みません。 そのため、年収を計算する際は、基本的に給与や賞与の総額のみで考えます。 - 社会保険上の扶養(年収106万円/130万円の壁など)
原則として、支給される交通費はすべて収入(年収)に含まれます。 社会保険の扶養内で働きたい場合は、給与だけでなく交通費も含めた総額で年収を管理する必要があるため、特に注意が必要です。
勤務先の従業員数によって条件が変わる
社会保険の「106万円の壁」が適用されるかどうかは、勤務先の従業員数に影響されます。
社会保険の適用範囲は段階的に拡大されており、2024年10月からは、従業員数が51人以上の企業で働く方も対象となっています。
そのため、2025年現在では、従業員数51人以上の企業に勤務し、週の労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上などの要件を全て満たす場合、年収106万円以上で社会保険への加入が義務付けられます。
労働時間にも注意が必要
年収・勤務先の従業員数に加えて、労働時間も社会保険の加入にあたり重要なポイントの1つです。従業員数が対象となる職場で、1週間の所定労働時間が20時間以上ある人は、社会保険への加入が必要となります。
所定の労働時間とは、契約上の労働時間のことです。残業や早出などで時間外労働をした分は、社会保険の加入の対象となる労働時間には含まれません。
ただし、所定より実働の労働時間が重視されるため、2カ月連続で週20時間以上働き、3カ月目以降も同様の実働時間が見込まれる場合には、3カ月目から社会保険加入の対象者となります。
扶養範囲内で働くには
扶養範囲内で働くには、勤務先との調整が必要です。また、必ずしも扶養範囲内で働くことがメリットになるとも限りません。扶養範囲内で働きたい場合の対策とともに、メリット・デメリットについて考えてみましょう。
勤務先に相談しよう
扶養範囲内で働きたい場合は、勤務先に相談することが必要です。主婦や主夫が働く職場では、扶養の範囲内で働きたい人も多いため、扶養内で働けるようにシフトを組むケースはよくあります。
しかし、繁忙期で稼働日数が増えてしまったり、休んでいるパートの代わりに出勤したりして、意図せず収入が増えてしまうケースも少なくありません。
そのような場合は、翌月のシフトを少なめにしてもらうなど、上司に相談してみましょう。また、パートやアルバイトの応募の時点で、扶養範囲内で働きやすい職場か確認しておくことも大切です。
デメリットやメリットも知る
扶養範囲内で働くメリット・デメリットを知った上で、自分に合う働き方を見つけることが大切です。扶養範囲内に収入を抑えて働くと、扶養者の所得税が控除されるなど、世帯全体で納める税金が減るというメリットはあります。
扶養者の社会保険に加入できるので、被扶養者が自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要もありません。しかし、扶養範囲内で働くと、国民年金の第3号被保険者となるため、将来受け取れる年金の額は低くなるというデメリットもあります。
また、キャリアパスを考えても、扶養範囲内で働くにはパートやアルバイトとしての働き方しかできないため、正社員として勤務するのは難しいでしょう。社会保険による保障や生涯年収などを考えた上で、自分にとってベストな働き方を選びましょう。
扶養範囲内の仕組みを知って働こう
扶養範囲には、税制上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。それぞれに年収の壁が決まっているので、扶養範囲内で働きたい場合は仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
扶養の範囲を超えずに働くのか、範囲を超えてキャリアを積むのか、悩む人も多いでしょう。双方にメリット・デメリットがあるので、一概にどちらがよいか断言はできません。
長い目で見てどの働き方が自分に合っているか、配偶者とも相談しながら決めることが大切です。
求人数が豊富なスタンバイを活用して、自分に合った働き方ができる職場を探してみましょう。
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