育休を取得予定の人の中には、どれくらいの期間休暇がもらえるのかわからない人も多いでしょう。育休の期間や延長に必要な条件に焦点を当てて解説します。育休制度を正しく理解して、使いたい人はぜひ参考にしましょう。
この記事のポイント
- 育休の期間は子どもが2歳まで
- 育休の期間は、原則子どもが1歳になるまでです。しかし、それまでに保育園に入園できなかったなどの理由があれば、最大2歳になるまで延長ができます。
- パパママ育休プラス
- 意外と知られていない制度に、パパママ育休プラスとパパ休暇があります。パパママ育休プラスを利用すれば、子どもが1歳2カ月になる前日まで育休期間を延ばすことができます。
- 育休の期間の短縮について
- ご家庭の状況や保育園事情などで、育休の短縮を希望するも方いるでしょう。しかし代わりの人材を雇っている場合など、不利益が及ぶ可能性に考慮し、労働者の一存で予定より早く育休を切り上げることは難しくなっています。
育休とは?

そもそも、育休とはどのような制度なのでしょうか。まずは育休制度の概要を解説します。
育児休業と育児休暇の違い
育休には、育児休業と育児休暇の2つがあります。両者の違いを簡単に表すと、国が定めた公的な休暇制度か、企業が独自に定める休暇制度かの違いです。
「育児休業」とは、育児・介護休業法という法律で定められた休暇制度のことで、条件を満たせば所属する企業に関係なく取得できます。休業中は、雇用保険から給付金が支給され、生活をサポートしてくれます。
一方で、「育児休暇」は企業に設置の努力義務がある制度で、詳しい内容は企業側で定めることが可能です。そのため、必ずしも休暇中に給与が支給されるとは限りません。ただし、企業がルールを決められる分、取得できる期間の融通が利きやすいというメリットもあります。
なお、一般的に「育休」というと育児休業を指し、この記事でも同制度について解説しています。
育児・介護休業法とは
育児・介護休業法とは、労働者による育児や介護に関することを定めた法律です。近年、働き方の多様化や男性の育児参加を促すため、大きな改正が続いています。
特に大きな改正は2022年と2025年に実施されました。
2022年の改正では、男性が子の出生直後に柔軟に取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されたほか、企業に対して社員の妊娠・出産の申し出があった際に、育休制度を個別に周知し、取得意向を確認することが義務化されました。
また、2025年の改正では、子の看護休暇や残業免除の対象が小学校就学前から小学校3年生まで拡大されるなど、子どもが少し大きくなってからの両立支援策が強化されています。
参考:
育休の期間は子どもが2歳まで

育休を取得できる期間を解説します。延長できる条件についても触れているので、しっかりと押さえておきましょう。
最長2歳まで延長可能
前提として、育休を取得できる期間は子どもが1歳に達するまでが原則です。ただし、「保育所に入所できない」などの特定の理由がある場合は、子どもが1歳6カ月に達するまで延長できます。
1歳6か月に達した時点で同じ理由が続いている場合は、再度申請をすることで、子どもが2歳に達するまで延長可能です。なお、延長申請は1歳の時点と1歳6カ月の時点の2段階で行う必要があります。
育休を延長できる条件
育休を延長できる条件は、以下の通りです。
- 子どもが1歳(再延長の場合は1歳6カ月)になる前日時点で育児休業を取得中である
- 子どもが認可保育園に入所できない、親が病気等で育児が難しいなど、引き続き休業が必要である
有期雇用契約の場合は、上記の条件に加え「子の1歳6か月の誕生日(再延長の場合は2歳の誕生日)の前日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでない」ことが条件となります。
なお「保育園に入所できない」とは、申し込みを行ったにもかかわらず受け入れがかなわなかったことを指します。
参考:育児休業や介護休業をすることができる有期雇用労働者について|厚生労働省
給付金の受給期間も延長可能
育休の期間を延長すると、給付金の受給期間も延長できます。
ただし、2025年4月から「保育園に入所できない」ことを理由に延長する際の手続きが厳格化されました。これは、育休延長のみを目的として入所意思のない申し込みをすることを防ぐためで、ハローワークが「速やかに職場復帰する意思があるか」を客観的に確認します。
そのため、延長申請時には市区町村が発行する入所保留の通知書に加え、提出した保育所入所申込書の写しなどが必要です。原則として、入所希望日を子の1歳の誕生日以前に設定していることなどが求められます。
なお、以下のようにやむを得ない事情がある場合は、申し込みをしていなくても延長が認められることがあります。
- 子の病気や障害が理由で、市区町村から保育の実施が困難であると判断され、入所の申し込み自体ができなかった場合
- 市区町村の募集時期の都合で、子の1歳の誕生月およびその翌月の入所申し込みができなかった場合
手続きに不安や疑問がある際は、管轄のハローワークに問い合わせましょう。
夫婦で活用できる育休制度
夫婦が協力して育児休業を取得するための制度を解説します。
パパママ育休プラス
パパママ育休プラスとは、夫婦で育休を取得する場合に、原則子どもが1歳になるまでの育休期間を、子どもが1歳2カ月になるまで延長できる制度です。
夫婦でできるだけ長い期間子育てをしたい人におすすめといえます。利用条件は、夫婦それぞれが育休を取得すること、そして、後から取得する親の育休開始日が、子の1歳の誕生日以前であることなどです。
ただし、夫婦それぞれが取得できる休業日数の上限(母親は産後休業含め1年、父親は1年)は変わりません。
産後パパ育休(出生時育児休業)
「パパ休暇」は2022年10月に廃止され、代わりに「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が始まりました。
これは、通常の育児休業とは別に、男性が子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる休業制度です。この4週間は2回に分割して取得することも可能で、「出産直後の大変な時期に2週間、少し落ち着いた1カ月後にまた2週間」といった柔軟な使い方ができます。
また、労使協定を結んでいれば、休業中に一時的に仕事をすることも可能です。男性の育児参加を強力に後押しする制度なので、ぜひ覚えておきましょう。
育休の期間変更に関する手続きの流れ

育休の期間を変更したい場合に必要な手続きを解説します。育休をできるだけ長く取りたい人は、ぜひ押さえておきましょう。
延長の申請先は勤務先
育休の延長申請は、勤務先に対して行います。育休の給付金の申請は、勤務先が行ってくれるためです。
延長申請の期限は、育休が満了する日の2週間前までです。つまり、1回目の延長申請なら1歳の誕生日を迎える2週間前、2回目なら1歳6カ月になる日の2週間前までに申請する必要があります。
延長の申請は勤務先が行って初めて承認されるため、できれば1カ月前など余裕を持って申請する方が良いでしょう。
延長申請に必要な書類
育休の延長申請の際、勤務先に提出する書類は理由によって異なります。
【保育園に入所できない場合】
2025年4月から、この理由で育児休業給付金の延長を申請する際の必要書類が追加され、手続きが厳格化されています。
具体的には、これまで主とされていた「市区町村が発行した保育所の入所保留通知書」などに加え、以下の書類も必要です。
- 提出した保育所入所申込書の写し
- (ハローワークから提出を求められた場合)その他、入所の意思があったことを確認するための書類
これは、職場復帰の意思を持って保育所の申し込みをしていたかを客観的に確認するためです。 なお、延長の対象となるのは、認可保育園、認定こども園、家庭的保育事業などに申し込み、利用できなかった場合です。
【保育園に入所できない以外の理由の場合】
配偶者の死亡や別居、病気、けがなどが理由の場合は、その事実を証明する書類が必要です。
- 配偶者の死亡・別居: 住民票の写し、母子健康手帳など
- 配偶者の病気・けが・障害: 医師の診断書、身体障害者手帳の写しなど
育休の期間にやっておきたいこと

育休中は、心置きなく我が子と向き合える貴重な時間です。また、育休が明けたらまた職場に復帰するため、体調面への配慮も必要です。育休中にやっておきたいことを3つ解説します。
子どもとの時間を充実させる
育休は子育てのための休暇なので、子どもとの時間を思い切り楽しみましょう。職場に復帰したら、一日中子どもと向き合う時間は取りにくくなります。
おすすめは、平日の昼間に子どもとたくさんお出かけをすることです。週末と比べて人が少ないので、ストレスなく楽しめるでしょう。
「子育て中にお出かけをもっとしておけば良かった」と後悔する人は、少なくないようです。これほどまとまった時間を子どもと過ごせる機会はなかなかないので、悔いのない時間を過ごしましょう。
産後のボディメンテナンスや気分転換を
出産後に体形を戻したいと考える母親は多いでしょう。育休は、体形や体調を整えるちょうど良い期間です。
運動が好きな人は、エクササイズに挑戦してみましょう。妊娠中は体力が落ちることが考えられるので、いきなり激しい運動をするのは避け、体への負担が少ないヨガやピラティスがおすすめです。教室でママ友もできるかもしれません。
地域のベビーサークルに参加して、同じ親同士で交流するのも、気分転換になるのでおすすめです。
復職に向けた準備
育休が明けたら、また仕事の日々が訪れます。せっかくなら、さらにパワーアップして職場に復帰してみてはいかがでしょうか。
まとまった時間が取れる育休中は、資格や語学などを集中して勉強するチャンスです。実際に、育休中に資格や語学の勉強をする人は多いそうです。
自己研鑽だけでなく、職場に復帰した後の家事分担について決めておくことも大切といえます。出産後は、以前よりも夫婦が協力して家庭を作っていくことが必要です。
配偶者に頼みたいことをまとめたり、スケジュールの共有方法を考えたりしておきましょう。時短につながる家電をそろえるのもおすすめです。
育休の期間に関する疑問

育休に関する疑問に答えていきます。ここで不明点を解消し、有意義な育休生活を過ごしましょう。
延長ではなく短縮はできる?
予定より早く保育園に入所できた場合や、自分の親に育児を依頼できる場合には、早めに職場に復帰したいと考える人もいるでしょう。法律上、労働者は職場復帰したい日の1カ月前までに申し出ることで、育休期間の短縮を求めることができます。
ただし、企業側も育休中の社員の代わりとして人材を雇っている可能性があるため、業務の都合上やむを得ない場合は、企業は労働者が希望した日ではなく、企業が指定した日を復帰日とすることができます。
育休期間の短縮を希望する場合は、必ず勤務先と早めに相談しましょう。
育休開始の時期は男女で違う?
女性と男性では、育休の開始時期が異なります。これは、女性に産後8週間の産休が与えられるためです。女性の場合は、産休が終わった後に育休の取得が可能になります。
一方で、男性の場合は配偶者の出産予定日か実際の出生日以降に育休の取得が可能です。
特に、男性は通常の育休とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる「産後パパ育休」という柔軟な制度も活用できます。例えば、母親の産休期間中に父親がこの制度を利用して休業し、夫婦で協力して新生児期を乗り越えるといった活用が可能です。
その上で、夫婦ともに育児休業を取得すれば「パパママ育休プラス」が適用され、原則子どもが1歳までの休業可能期間を、1歳2カ月になるまで延長できます。
子どもの状況に合わせて柔軟に育休を取得

育休は子育てと仕事を両立するための制度です。育休中は給付金が支給されるので、子どもが生まれたらぜひ利用しましょう。
育休の期間は、原則子どもが1歳になるまでです。しかし、それまでに保育園に入園できなかったなどの理由があれば、最大2歳になるまで延長ができます。
育休を予定より早く切り上げる場合は、勤務先との相談が必要です。
パパママ育休プラスや「産後パパ育休(出生時育児休業)」といった制度も整っています。子どもの状況に合わせて、これらの制度を賢く利用しましょう。
トリプルライセンスの税務・労務・法務ワンストップサービサー。
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はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 '22~'23年版 (2022~2023年版)