育休の期間はいつまで?延長に必要な条件と手続きについても紹介

育休を取得予定の人の中には、どれくらいの期間休暇がもらえるのかわからない人も多いでしょう。育休の期間や延長に必要な条件に焦点を当てて解説します。育休制度を正しく理解して、使いたい人はぜひ参考にしましょう。

育休とは?

子育てのイメージ

(出典) photo-ac.com

そもそも、育休とはどのような制度なのでしょうか。まずは育休制度の概要を解説します。

育児休業と育児休暇の違い

育休には、育児休業と育児休暇の2つがあります。両者の違いを簡単に表すと、国が定めた公的な休暇制度か、企業が独自に定める休暇制度かの違いです。

「育児休業」とは、育児・介護休業法という法律で定められた休暇制度のことで、条件を満たせば所属する企業に関係なく取得できます。休業中は、雇用保険から給付金が支給され、生活をサポートしてくれます。

一方で、「育児休暇」は企業に設置の努力義務がある制度で、詳しい内容は企業側で定めることが可能です。そのため、必ずしも休暇中に給与が支給されるとは限りません。ただし、企業がルールを決められる分、取得できる期間の融通が利きやすいというメリットもあります。

なお、一般的に「育休」というと育児休業を指し、この記事でも同制度について解説しています。

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法とは、労働者による育児や介護に関することを定めた法律です。ポイントは2017年に実施された改正で、従来よりも休暇を取得しやすくなったことです。

具体的には、育児休業の期間の延長や取得条件の緩和などが実施されました。育児休暇の設置努力義務が定められたのもこのタイミングです。

また、2021年の改正では社員が妊娠や出産をした場合に、企業側から育児休業についての周知をする努力義務を定め、労働者がより制度を利用しやすい環境を整えています。

参考:
育児・介護休業法が改正されます!|厚生労働省
育児・介護休業法について|厚生労働省

育休の期間は子どもが2歳まで

赤ちゃん

(出典) photo-ac.com

育休を取得できる期間を解説します。延長できる条件についても触れているので、しっかりと押さえておきましょう。

最長2歳まで延長可能

前提として、育休を取得できる期間は子どもが1歳に達するまでが原則です。ただし、条件を満たせば2歳まで延長ができます。

2017年の法改正前は、延長できるのは1歳6カ月まででした。保育園への入所前に期限が切れてしまい、子どもを預けられないまま職場に復帰せざるを得ない状況が生まれる場合があるためです。

しかし、1歳6ケ月まで延長しても保育園への入所が間に合わない場合もあるでしょう。そこで、2017年の法改正により最長2歳まで延長可能になりました。なお、一気に2歳まで延長できるのではなく、1歳6カ月に達した段階で再度申請をする必要があります。

参考:育児休業期間の延長|厚生労働省

育休を延長できる条件

育休を延長できる条件は、以下の通りです。

  • 子どもが1歳(再延長の場合は1歳6カ月)になる前日時点で育児休業を取得中である
  • 子どもが認可保育園に入所できない、親が病気等で育児が難しいなど、引き続き休業が必要である

有期雇用契約の場合は、育休が満了する日までに雇用契約が解消されないことが条件として追加されます。令和4年3月31日まではプラスで同じ雇用先に1年以上勤めていることが条件でしたが、同年4月1日以降はこの条件は撤廃されました。

なお「保育園に入所できない」とは、申し込みを行ったにもかかわらず受け入れがかなわなかったことを指します。

参考:育児休業や介護休業をすることができる有期雇用労働者について|厚生労働省

給付金の受給期間も延長可能

育休の期間を延長すると、給付金の受給期間も延長できます。休業の期間を延長して収入面に不安を抱えている人も、安心できます。

受給期間の延長も、子どもの誕生日以前に保育園の入所申し込みを行うことが条件です。ただし、以下の場合においては申し込みをしなくても延長が認められる場合があります。

  • 子どもの病気や障害により保育所の受け入れが難しく、申し込みをしても意味がない場合
  • 申し込みできる最短の日時が、子どもの誕生日以降だった場合

申し込みに迷った際は、管轄のハローワークに問い合わせましょう。

パパママ育休プラス・パパ休暇の活用

意外と知られていない制度に、パパママ育休プラスとパパ休暇があります。パパママ育休プラスとは、夫婦で育休を取得する場合に、原則子どもが1歳になるまでのところ、育休の期間が子どもが1歳2カ月になるまでに延長される制度です。

夫婦でできるだけ長い期間子育てをしたい人におすすめといえます。利用条件は、遅くとも子どもが1歳になるまでに配偶者が育休を取得すること、夫婦でタイミングをずらして育休を取得することです。

2カ月の延長分は遅く取得した方に加算されます。つまり、1人が1年を超えて育休を取得することはできません。

パパ休暇とは、子どもの出生後8週間以内に父親が育休を取得・終了した際、特別な理由なしでもう一度育休を取得できる制度です。通常、育休を取得できるのは1回のみです。子育てをしたい父親を応援する制度なので、ぜひ覚えておきましょう。

育休の期間変更に関する手続きの流れ

資料を提出する女性

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育休の期間を変更したい場合に必要な手続きを解説します。育休をできるだけ長く取りたい人は、ぜひ押さえておきましょう。

延長の申請先は勤務先

育休の延長申請は、勤務先に対して行います。育休の給付金の申請は、勤務先が行ってくれるためです。

延長申請の期限は、育休が満了する日の2週間前までです。つまり、1回目の延長申請なら1歳の誕生日を迎える2週間前、2回目なら1歳6カ月になる日の2週間前までに申請する必要があります。

延長の申請は勤務先が行って初めて承認されるため、できれば1カ月前など余裕を持って申請する方が良いでしょう。

延長申請に必要な書類

育休の延長申請に必要な書類は、保育所で保育を受けられないことを証明する、市区町村が発行した書類です。保育所とはいわゆる認可保育園であり、無認可のところは含まれません。

証明書には、入所の申し込みを行ったことと、1歳の誕生日、または1歳6カ月になる日以降に保育を受けられていないことが記載されている必要があります。

なお、死別や別居の理由で延長申請を行う場合は住民票と母子手帳、病気などの理由の場合は医師の診断書も提出しなければなりません。

育休の期間にやっておきたいこと

育児のイメージ

(出典) photo-ac.com

育休中は、心置きなく我が子と向き合える貴重な時間です。また、育休が明けたらまた職場に復帰するため、体調面への配慮も必要です。育休中にやっておきたいことを3つ解説します。

子どもとの時間を充実させる

育休は子育てのための休暇なので、子どもとの時間を思い切り楽しみましょう。職場に復帰したら、一日中子どもと向き合う時間は取りにくくなります。

おすすめは、平日の昼間に子どもとたくさんお出かけをすることです。週末と比べて人が少ないので、ストレスなく楽しめるでしょう。

「子育て中にお出かけをもっとしておけば良かった」と後悔する人は、少なくないようです。育休を取得できるのは一度だけなので、悔いのない時間を過ごしましょう。

産後のボディメンテナンスや気分転換を

出産後に体形を戻したいと考える母親は多いでしょう。育休は、体形や体調を整えるちょうど良い期間です。

運動が好きな人は、エクササイズに挑戦してみましょう。妊娠中は体力が落ちることが考えられるので、いきなり激しい運動をするのは避け、体への負担が少ないヨガやピラティスがおすすめです。教室でママ友もできるかもしれません。

地域のベビーサークルに参加して、同じ親同士で交流するのも、気分転換になるのでおすすめです。

復職に向けた準備

育休が明けたら、また仕事の日々が訪れます。せっかくなら、さらにパワーアップして職場に復帰してみてはいかがでしょうか。

まとまった時間が取れる育休中は、資格や語学などを集中して勉強するチャンスです。実際に、育休中に資格や語学の勉強をする人は多いそうです。

自己研鑽だけでなく、職場に復帰した後の家事分担について決めておくことも大切といえます。出産後は、以前よりも夫婦が協力して家庭を作っていくことが必要です。

配偶者に頼みたいことをまとめたり、スケジュールの共有方法を考えたりしておきましょう。時短につながる家電をそろえるのもおすすめです。

育休の期間に関する疑問

事務作業をしながら考え事をする女性

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育休に関する疑問に答えていきます。ここで不明点を解消し、有意義な育休生活を過ごしましょう。

延長ではなく短縮はできる?

予定より早く保育園に入所できた場合や、自分の親に育児を依頼できる場合には、早めに職場に復帰したいと考える人もいるでしょう。しかし、労働者の一存で予定より早く育休を切り上げることはなかなか難しくなっています。

企業側も育休中の社員の代わりとして人材を雇っている可能性があり、その人に不利益が及ぶ可能性があるためです。

育休期間の短縮を希望する場合は、必ず勤務先と相談しましょう。就業規則や育児休業取扱通知書の内容をもとに、繰り上げて復帰の可否を話し合うこととなります。

育休開始の時期は男女で違う?

女性と男性では、育休の開始時期が異なります。これは、女性に産後8週間の産休が与えられるためです。女性の場合は、産休が終わった後に育休の取得が可能になります。

一方で、男性の場合は配偶者の出産予定日か実際の出生日以降に育休の取得が可能です。

パパママ育休プラスを利用すれば、原則子どもが1歳までのところ、1歳2カ月になる前日まで育休期間を延ばすことができます。女性が育休を取得中、子どもが2カ月になる時期に男性がパパママ育休プラスを取得すれば、子どもが1歳2カ月になる前日まで育休期間を延ばすことができ、より長い期間にわたり休暇を得られることになります。

子どもの状況に合わせて柔軟に育休を取得

子育てする男性

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育休は子育てと仕事を両立するための制度です。育休中は給付金が支給されるので、子どもが生まれたらぜひ利用しましょう。

育休の期間は、原則子どもが1歳になるまでです。しかし、それまでに保育園に入園できなかったなどの理由があれば、最大2歳になるまで延長ができます。

ただし、自分の希望だけで逆に育休を予定より早く切り上げて職場に復帰することは不可能なことが多いようです。

パパママ育休プラスやパパ休暇といった便利な制度もあるので、子どもの状況に合わせて柔軟に育休を取得しましょう。

渋田貴正
【監修者】All About 企業経営のサポートガイド渋田貴正

トリプルライセンスの税務・労務・法務ワンストップサービサー。 税理士、司法書士、社会保険労務士。会社設立から、設立後の税務、労務などのサービスを行う。窓口が同じというだけでなく、実際にすべてのプロセスを行う、真のワンストップサービスを提供。
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著書:
はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 '22~'23年版 (2022~2023年版)