【市長インタビュー】琵琶湖の北西、滋賀県・高島市の未来を紡ぐ新生活

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近畿地方の貴重な水源、琵琶湖の北西部に位置する滋賀県高島市。京都からは車で約1時間、電車なら乗り換えなしで約50分の距離にある緑豊かな地域だ。パワースポットとして注目される白鬚神社をはじめ、市内には「桜」や「紅葉」など各種の日本百選に選出された美しい景観が15カ所も点在。近年はインバウンドが急増し、地域ブランド「高島ちぢみ」や特産品の海外販売も勢いづく。日本の原風景を今に残しつつ、持続可能なまちとして進化し続ける高島市。まちの魅力と可能性について、高島市長の福井正明氏に聞いた。

先人の知恵が今に生きる“水源の郷”

高島市は2005年、6町村(マキノ町、今津町、朽木村、安曇川町、高島町、新旭町)が合併して誕生しました。人口は約4万8,600人(2019年4月現在。同市調べ)で、市の面積は琵琶湖を含めると約693㎢と県内一になります。南西は比良山系を境に京都府に、北西は福井県に接しています。いわば、近畿、中京、北陸3地方の結節点です。

都市部への通勤、通学のアクセスも良く、京都までは車、電車ともに1時間ほどで行くことができます。その一方で陸地の約72%が森林で、市の東部は琵琶湖に面した豊かな自然環境を有する。まさに利便性と豊かな自然とをあわせもった地域です。

高島市は琵琶湖とともに生きてきた歴史があり、水を大切にしてきた先人の教え、知恵が、日常に深く浸透しています。琵琶湖の源水の約3分の1が、ここ高島市から注がれていることもあって、人々の環境に対する意識は高く、農業や水産業などの第1次産業は、琵琶湖に負荷をかけない取り組みを心がけているのが特徴です。

澄んだ水があればこその文化、景観があるのも特徴で、水が命ともいえる日本酒の蔵元も市内に5箇所あり、畑(はた)の棚田は県内唯一「日本の棚田百選」に指定されています。また、市役所のある新旭町には、「針江生水(はりえしょうず)の郷」という比良山系の伏流水が各家庭に湧き出す「川端」(かばた)が今も残るエリアがあります。生水を生活用水として使う暮らしの視察に、県内外から年間1万人が訪れるほどです。

「観光」が主要産業として急浮上

高島市はレジャースポットにも事欠きません。琵琶湖はカヌーやカヤックなどのウォーターアクティビティ、湖上からの絶景を堪能できるパラグライダーなど多種多様な楽しみ方があり、比良山系ではトレッキングやキャンプ、冬はスキーと四季折々のアウトドアが楽しめます。

道の駅が市内に4カ所あり、「日本さくら名所100選」に選ばれた、琵琶湖岸約4㎞に渡って続く「海津大崎の桜」など、さまざまな分野の日本の百選に選ばれたスポットが15カ所もあるのも高島市の誇れる点です。

なかでも、約2.4㎞の直線が続く、マキノ高原のメタセコイア並木の紅葉は、ぜひ見ていただきたい風景の一つです。ある雑誌の紅葉名所人気ランキングで、2016年から3年連続全国1位に輝いて、韓流ドラマの名シーンに似た風景ということもあり、海外観光客も毎年大勢詰めかけます。

湖上に鳥居があり“近江の厳島”と呼ばれる近江最古の神社「白鬚神社」も、注目されているスポットで、インバウンド、特に台湾、韓国、中国など主にアジアからの海外観光客が急増しています。

高島市では2016年に、高島における安定した雇用の創出をめざして、インバウンド誘客推進事業に取り組み、インバウンドで最も多い台湾の旅行会社やメディア関係者を招いたり、台湾旅行博覧会に参加したりしてPR活動を展開した経緯があります。

今後もインバウンド誘致をはじめ「観光」を地域活性化の重要なキーワードと受け止めて取り組んでいく考えです。

地域ブランドを海外へ積極的にアピール

観光も高島市の経済を支えるファクターですが、古くから第1次産業が盛んな地域です。農業、水産業、林業、そして近江牛で知られる畜産業など実に多様です。市内には農山村、漁村集落が数多く点在しています。

また、主幹産業は製造業で、扇子の骨、高島硯、綿織物があり、特に繊維のまちとして発展してきた歴史があります。そこで近年、伝統的な織物の「高島ちぢみ」を地域ブランドとして確立するため、市として特産品海外販売戦略事業を2015年から3カ年計画で実施して、若手後継者の新たなチャレンジの場をサポートしました。

マレーシアやインドネシア、台湾での販売ルートの開拓調査をするなかで、現地デザイナーや染色の専門家との出会いを通し、マレーシアで開催されたファッションショーで高島ちぢみを使ったシャツやドレス等が披露されるなど、海外の販路拡大の成果を得ています。 これは繊維産業にかかわる若手後継者のモチベーションアップにつながり、昨年からはこの取り組みに続けと、水産加工品の海外輸出にも取り組んでいます。ウナギの蒲焼やアユの甘露煮などの水産加工品を台湾、香港に向けてPRしたところ、海外の富裕層に支持される傾向にあることがわかり、販売戦略に手応えを感じているところです。

他にも近江牛や日本酒など、段階的に海外の販路開拓を進め、高島市から世界へ、積極的にまちの魅力や特産品を発信していく。それが結果的にまちの安定した雇用につながり、若手の活躍の場をさらに広げていくと考えています。

もちろん全国的に見られる生産年齢人口の減少は、高島市も例外ではありません。しかし、若手後継者の育成、新たなチャレンジの場の創出を行政でも積極的にバックアップしており、それぞれの事業所の自助努力も活発です。

官民一体となってまちを盛り上げていく、活性化していくという大きなうねりは、近年勢いを増しています。

中学卒業まで医療費無料の子育て制度

企業誘致にも新たな動きがあります。琵琶湖に面した約9haの土地で、2020年より会員制リゾートホテルの新築工事が始まると聞いております。

210の客室を有する規模のホテルで、新規雇用と、それにともなう人口増、観光客増加などに弾みがつくのではないかと期待しています。

人口減は高島市の課題の一つですが、急激なV字回復ではなく、緩やかな人口推移への取り組みを進めています。2017年から、ふるさと納税の寄付金を活用して、第2子以降の保育料を完全無料化し、2019年10月からは第1子からの完全無料化を実現しました。

また、中学校卒業までの医療費(自己負担分)もかかりません。入院や通院にかかる負担を軽減するほか、保育料は国基準の約50%にするなど、子育て世代のバックアップ体制を多角的に整えています。

さらに、移住・定住コンシェルジュ事業を立ち上げ、3名コンシェルジュが移住希望者の相談窓口になっています。市内の不動産事業者と連携して、空き家と移住希望者のマッチングを図る空き家紹介システムを構築し、年間を通して約200人の相談件数があります。

実際、コンシェルジュを介した移住件数は、2015〜2019年の累計で150件弱、移住者約300人にのぼり、大学卒業後に県内の別の市町や京阪神へ転出する割合は高いですが、それでも子育て世代が安心して暮らし続けられる地域として、高島市にUターン、Iターンで転入する数は少しずつ増えてきているのが現状です。

利便性があり、環境も豊かで、地場産業の販路拡大や暮らしを支援制度の拡充など、働き方、暮らし方を多角的にサポートしています。移住されてきた方に話を伺うと、地域性、暮らしている人たちの人柄が決め手になったということをよく聞きます。

道で会えば、見ず知らずの人にもあいさつをし、子どもたちも元気よく「こんにちは」と声をかけてくる。そういう純朴な土地柄で、近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の気質が根付いているのか、とても大らかです。

季節ごとにさまざまなイベントや行事を開催しています。まずはぜひ一度、高島市に足をお運びいただいて、まちの魅力を存分に体感してください。

執筆者

地方企業・地方自治体の採用を支援するビズリーチ地域活性推進事業部。魅力的な地方の情報をお届けします。