弁護士になるには資格が必須!受験資格を得る方法から仕事内容まで

弁護士は基本的人権を擁護しつつ、社会正義を実現することを使命とする法律の専門家です。法廷や企業、地方公共団体などあらゆる組織の幅広い分野で活動し、社会生活で発生する争いの予防法や解決策をアドバイスしたり、弁護人として法廷で弁護などを行ったりし
ます。弁護士資格は、司法試験や司法修習など数々の難関をくぐり抜けないと手に入らない国家資格です。

弁護士になるには

弁護士の男性

(出典) photo-ac.com

弁護士になるには、原則として司法試験に合格する必要があります。そして、その受験資格を手に入れること自体が狭き門です。合格後も1年間の司法修習が必須で、終了試験に合格してはじめて弁護士資格を手に入れることができます。他の士業資格に比べ、弁護士資格の取得には多大な労力と時間を要するといえるでしょう。

司法試験の受験資格を得る方法

司法試験の受験資格を持つのは、法科大学院(ロー・スクール)の修了者または司法試験予備試験の合格者に限られます。法科大学院とは、弁護士・裁判官・検事などの法曹関係者の育成を目的とする専門職大学院です。現在、国内で46校が入学者を受け入れています。

修了までの期間は原則3年ですが、入学試験で法律の知識が十分であると認められれば2年で修了することも可能です(法学既習者課程)。法科大学院を修了すると、その年から5年間、司法試験の受験資格が付与されます。

司法試験受験者の大半は法科大学院経由となっており、2021年度の出願者4,226人のうち3,689人が法科大学院を修了した人または修了見込みの人でした。

法科大学院を修了せずに司法試験の受験資格を手に入れる唯一の手段が、「司法試験予備試験(予備試験)」に受かることです。受験資格に要件はなく、年齢や学歴を問わず門戸が開かれています。合格すると、次の年から5年間にわたって司法試験を受験することが可能です。

ただ、法科大学院で学ぶ2〜3年の時間と学費を節約することはできますが、予備試験合格率は2021年度で3.99%と極めて狭き門となっています。

社会人がキャリアチェンジで弁護士を目指す場合、仕事と法科大学院への通学を両立することは容易ではありません。夜間に開講している大学院はごくわずかなうえ、単位取得要件として講義出席回数の下限が設定されているためです。現職を続けながら司法試験を受験するなら、まずは予備試験の合格を目指すのが現実的な選択肢となるでしょう。

司法試験の概要

司法試験は法務省管轄の国家試験です。例年5月に論文式試験が3日間、マーク方式の短答式試験が1日の計4日にわたって実施されます。2021年度の受験者数3,424人のうち、最終合格者数は1,421人でした。なお、司法試験は弁護士を目指す人だけでなく、裁判官・検察官を目指す人も受験します。

司法修習と登録

司法試験合格後、法曹資格の取得を目指す場合は司法修習が義務付けられます。研修期間は、司法研修所での座学2ヶ月間と、各地の地方裁判所所在地に配属されての実務研修10ヶ月間の合計1年間です。

修習生は公務員に準じた身分として扱われ守秘義務を負うほか、副業などは許されません。修習の最後には司法修習生考試が行われ、これに合格してはじめて弁護士となる資格を手にすることができます。

実際に弁護士として業務を行うには、司法修習後、各地の弁護士会に登録をすることが法律上義務付けられています。

具体的な業務内容

近年、弁護士の業務は細分化しており、画一的なイメージで捉えることが難しくなってきました。

例えば、映画やドラマの影響で、弁護士は法廷に立って弁論の攻防を繰り広げるものといったイメージがあるかもしれません。しかし、実際は裁判になる前に争いを予防する仕事(予防法務)の比重が高まりつつあり、法廷には立たない弁護士も存在します。また、法的トラブルの種類も複雑化・細分化されてきているため、自らの得意分野を持って専門的に扱う弁護士も増えています。

取り扱う法律上のトラブルで訴訟化したものは「民事事件」と「刑事事件」にわけることができます。「民事事件」は、個人や法人が各々の権利を主張して争う事件です。相続のトラブルや、金銭の貸し借りのトラブル、離婚裁判や損害賠償請求などをイメージするとよいでしょう。権利の有無は民法などをもとに判断されます。

「刑事事件」は、罪を犯したと思われる人を国家が弾劾する事件です。個人対国家の争いであることが特徴で、検察官が活躍するのは刑事事件です。逮捕・勾留・起訴などといった言葉とセットでニュースに登場するのは全て刑事事件で、刑法などをもとに有罪・無罪が判断されます。

実は訴訟を扱う弁護士の多くが民事事件を中心に手がけており、刑事事件は詳しくないか全く取り扱わないのも普通です。というのも、刑事事件は民事事件に比べて報酬が低く、証拠集めをはじめとする手続きの煩雑さや、裁判が長期化しやすい傾向を考えると割に合わないというのが実情だからです。もちろん、刑事事件を専門に取り扱う弁護士も存在します。
さらに、法廷で白熱した弁論を繰り広げるという弁護士のイメージも、現実とは少し異なります。裁判では、弁論は事前に提出された書類に沿った内容になることが多く、法廷で議論が白熱することはめったにありません。

特に民事事件では、ただ書類を提出するだけで1回の期日が終了することもあります。弁護士の仕事は、裁判所に行く前の書類作成がメインであることが多いのです。ただ、し最近では裁判員制度の影響で、わかりやすい尋問・プレゼンテーション能力が求められるようになりつつあります。

訴訟をメインに扱わない弁護士には、「企業内弁護士」や「インハウスローヤー」と呼ばれる弁護士がいます。企業の法務部などで活躍する弁護士のことで、契約書のリーガルチェックやM&Aなどを手がけ、コンプライアンスに目を光らせており、訴訟になる前の予防法務に従事しているといえます。企業のコンプライアンス意識の高まりとともにポストが急増中です。

さらに最近では、医療機関での事故防止やスポーツ関連会社のマネジメント契約のアドバイザリー業務など、法律知識を生かして他分野のコンサルティングに従事する弁護士もおり、活躍の幅は広がってきています。

弁護士のキャリアパス

司法修習を終えた弁護士志望者の進路として多いのは、やはり法律事務所への就職です。就職活動は修習前から始まりますが、4大法律事務所といわれるような有力事務所では、司法試験の終了直後からインターンへの参加を求められるケースもあります。

なお、各事務所には得意分野や取り扱い分野があり、就職先選びは将来的にどのような仕事をしたいかに左右されるため、大きな事務所ほど人気があるというわけではありません。就職後は、アソ弁(アソシエイト弁護士)あるいはイソ弁(居候弁護士)と呼ばれる雇われの立場で経験を積み、その事務所の共同経営者(パートナー)を目指したり、独立して自身の事務所を開業したりするなど各自の目標を追求することになります。

ただし、近年は弁護士人口の増加により、就職したくてもできない弁護士も増えています。修習終了後すぐに独立せざるを得なかったり(即独弁護士)、知り合いの事務所の一部を有料で貸してもらいながら独自に開業するケース(軒先弁護士)が発生したりするなど、従来のキャリアパスが崩れつつあるようです。

弁護士事務所に就職しない場合の代表的な進路としては、企業の法務部や公務員への就職があります。従来は弁護士人口が少なかったために企業や地方自治体に勤務する弁護士資格保有者はまれでしたが、近年はコンプライアンスの意識の高まりと相まって、企業法務部や地方自治体から弁護士資格保有者への求人が増えています。また、修習終了後に出身大学院に戻り、研究者として活躍する人もいます。

弁護士として経験を積んでから他職種にキャリアチェンジすることも可能です。例えば、「弁護士任官制度」は、幅広い社会経験を持つ弁護士が裁判官になることで法律がより身近なものになることを期待する制度です。2020年までに124人が弁護士から裁判官に転じています(常勤任官者の場合)。さらに、専門知識を生かして法律系資格の予備校講師や、大学教員となるケースもあります。

弁護士の求人について

六法全書と弁護士バッジ

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弁護士は高度な専門職であるため、民間企業への就職を検討しているなら、ハイクラスの求人を得意とする転職関連サービスに案件が豊富です。

民間企業では、修習終了後に弁護士の実務経験がなくても応募できる案件が多くあります。自治体に勤務する弁護士を目指す場合は、修習終了後の年齢により新卒採用枠でも応募可能な場合があるでしょう。

また、中小法律事務所への就職は、まだまだコネを使えるケースも多いようです。法科大学院出身者の場合は、OBや知人などのツテを頼ってみるのもよいでしょう。

求人の給与情報から集計した弁護士の年収帯

厚生労働省が2019年に行った「賃金構造基本統計調査」によると、弁護士の平均年収は720万円程度です。同年、国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、日本人男性の平均年収は540万円、女性は296万円となっています。弁護士の年収は、日本人の平均年収から考えて、かなり高いといえるでしょう。

出典:
日本弁護士連合会(日弁連)
法科大学院協会
法務省
文部科学省「法科大学院一覧」
法務省「令和3年司法試験の結果について」
法務省「司法試験予備試験の結果について」
弁護士法 第9条
日本弁護士連合会「弁護士任官等の実績状況」

弁護士経験者の口コミ

弁護士の女性

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現役弁護士(弁護士経験者)にアンケートを実施。弁護士の仕事の口コミ・評判を集めました。

弁護士のやりがいを教えてください

M.O.さん (男性 / 新潟県)
弁護士 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

自分が担当するのは、ほとんどが離婚裁判や過払い請求など、民事裁判ですので資料を調べたり書類を作ったりするような地味な作業が多いですが、しっかりと依頼人の期待に応えられた時にとてもやりがいを感じますね。

民事裁判は裁判をする前に不安な人も大勢いますが、自分が相談を受けることで依頼人の方が少しずつ不安を解消してくれるので、自分が弁護士として役に立っていることを実感できます。やはり、弁護士として依頼人に頼られるのは、嬉しいですね。

裁判の結果がうまくいかない時は依頼人の方に冷たくされることもありますが、それでも中には、必死に弁護士として動いている自分の姿を見て感謝をしてくれる人もいるので、そういう時に弁護士をやっていてよかったと思うことが多いです。

R.O.さん (男性 / 東京都)
弁護士 勤続年数1年 (職業 : 会社員)

弁護士のやりがいといえば、依頼者との間で信頼関係を構築できることだと思います。
一つひとつの案件で、異なる依頼者が異なる意見を持っている中で、打合せや訴訟を通じ、依頼者と信頼関係を築くことができます。

訴訟で勝ったような場合はもちろん非常にうれしいですし、そこに喜びも感じますが、その結果以上に、仮に残念な結果(敗訴・敗訴的和解)になってしまったような場合でも、依頼者から一生懸命頑張ってくれてありがとう、といった言葉を貰うと、次への活力になります。

また、この仕事はルーティンがありません。同じ仕事がほとんどない仕事であり、飽きることがない、というのが非常に面白いところではないかと思います。
毎日毎日勉強しながら退屈がない、というのもやりがいの一つです。

弁護士になるために努力したこと資格が必要な場合、合格するために努力したこと

M.O.さん (男性 / 新潟県)
弁護士 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

そこまで有名な大学を卒業した訳ではありませんが、大学時代は司法試験に合格する為に法学部でかなり勉強をして、難関の司法試験に合格をしました。2回落ちましたが3回目ではそれまで失敗した教訓を生かして何とか合格できました。

子供の頃から勉強ばかりの人生でスポーツや恋愛などは、ほとんどした記憶がないです。大学時代ですら、恋愛やサークル活動などもほとんどしないで大学の図書館に通って勉強の日々でした。

R.O.さん (男性 / 東京都)
弁護士 勤続年数1年 (職業 : 会社員)

弁護士になるためには、いわずもがなですが司法試験に合格する必要があります。
司法制度改革の結果、基本的にはロースクールを卒業した者に司法試験の受験資格が与えられることになりました。

そのため、ロースクールの合格に向けた勉強に加え、ロースクールに通いながら司法試験に向けた勉強を行う必要があります。

司法試験に合格するための勉強はそれなりに熾烈です。

基本的にはロースクールの自習室にこもり、授業の時だけ教室に行く、といった生徒が大半です。そのため、根気よく勉強すること、そして合格に向けた仲間を作ることが非常に重要になると思います。一人きりで独学で合格するのは中々につらい試験です。模試等も含め、お金が非常にかかることも難点です。

弁護士の将来性についてどう思いますか?

M.O.さん (男性 / 新潟県)
弁護士 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

言うまでもありませんが、弁護士になろうと思ったら、難しい司法試験や司法修習を突破しなくてはいけません。弁護士になる道は本当に険しいです。

苦労して司法試験に合格しても、誰でも優秀な弁護士になれるとは限らないので、やはり弁護士になる前には自分でどんな弁護士を目指すかイメージすることが大切です。

世間的に見たら弁護士はエリートの集まりで、給料もサラリーマンに比べて高く、資格さえ持っていればほとんどの弁護士事務所が採用してくれるので、とても将来性はありますね。
ただ、華やかなイメージが強い仕事ですが、実際は法律相談や事務処理などの地味な仕事が多く、法廷で熱弁をして活躍するようなことはそこまでありません。弁護士会の研修や会議で外出することも多く、意外と体力も必要なので疲れます。最近では司法制度改革で弁護士になるハードルも低くなってきたようですので、もしかしたら数が一気に増えて弁護士自体がそこまで重宝されない時代が来るかもしれません。

R.O.さん (男性 / 東京都)
弁護士 勤続年数1年 (職業 : 会社員)

将来的に安定している職業とは言い切れません。

司法制度改革に伴い、弁護士の数が大きく増えており、弁護士間での競争が過熱しています。特に大都市圏では、以前のような弁護士の態様(いくらでも相談が来て、費用を稼ぐことができる)といった状況はあり得ません。

専門的な色彩を強くしたり、集客方法を考えたりする必要があります。

近年では、弁護士を数多く入所させ、マンパワーを確保することで、ネットで集客した事件の数をこなす事務所もいくつか出てきており、そういった意味での価格破壊も起きている状況です。

その中でどのように生き残るか、専門的なものを磨き、かつクオリティを高めていくことが今後非常に重要になってくるのではないかと思います。