闇バイトは大きな社会問題の1つとなっており、一般的な仕事だと勘違いしていると、犯罪行為の加害者になってしまうでしょう。目先の利益を追及する人は、怪しい求人広告に引っかかってしまうかもしれません。
応募するだけでリスクがあるため、事前に気付くことが大切です。この記事では、闇バイトの見分け方や一般的なバイトとの違いなどを紹介しています。
闇バイトの募集要項やよく使用される隠語などについての理解を深め、誤った選択をしないようにしましょう。
「闇バイトかもしれない」とご不安に思われた方は、すぐに最寄りの警察署に相談しましょう。相談専用電話の短縮ダイヤル「#9110」も利用できます。
この記事のポイント
- 闇バイトとは何か
- 気軽なバイトと見せかけて、特殊詐欺や強盗などの犯罪をさせることが目的です。
- 闇バイトの特徴
- 闇バイトは異常に高額な報酬で人を集める特徴があり、募集要項に「受け」「叩き(たたき)」などの隠語が使われている場合があります。
- 闇バイトに引っかからない方法
- 詳しい仕事内容や広告主の情報が分からない仕事には、応募しないことが大切です。やたらと安全性を訴えている求人にも注意しましょう。
そもそも闇バイトとは?
闇バイトは近年、問題になっている犯罪行為の1つです。詳しい内容や闇バイトが広まるようになった社会的背景などを見ていきましょう。
「バイト」ではなく「犯罪」
「バイト」と聞くと、気軽な労働のように感じられる人もいるかもしれませんが、応募すると以下のような犯罪に巻き込まれます。
- 盗品の運搬
- 違法薬物の取引
- 強盗の実行犯
- 特殊詐欺のかけ子、受け子、出し子
かけ子は不特定多数の人に電話をかけ、お金をだまし取ろうとします。受け子は被害者からお金を受け取る役割のことです。
出し子は被害者のキャッシュカードでお金を引き出す役割を担います。これらの行為に加担すれば、犯罪者となってしまいます。
出典:「闇バイトの実態!」闇バイトはバイトではありません。犯罪です。|埼玉県警察
出典:#BAN 闇バイト 警視庁
闇バイトが広がっている背景
昨今の物価高や非正規雇用の増加、賃金格差などによる若年層・中高年の貧困化が、闇バイトが広がっている原因の1つとされています。
奨学金の返済が苦しく、生活費が足りない状況に追い込まれている学生が、闇バイトに手を染めてしまうケースもあるでしょう。経済的な理由だけでなく、気軽にインターネットやSNSが使えるようになったことも無関係ではありません。
インターネット上の情報を適切に判断し、正しく活用する「インターネットリテラシー」が低い人ほど、引っかかりやすくなります。
また、モラルが低く、犯罪だと分かっていても高額な報酬に目がくらんでしまう人もいるでしょう。
闇バイトに関わるリスク4選
軽い気持ちで闇バイトに手を出してしまう人もいますが、犯罪行為にはリスクしかありません。闇バイトに加担するとどうなるのか、見ていきましょう。
一度応募すると抜け出すのが難しい
闇バイトは応募しただけでもリスクがあります。「1回きりで辞めれば大丈夫」と考えるのは間違いです。
「やらなければ身内に危害を加える」「学校や職場に行く」などと脅され、逃げ出せなくなってしまうケースも少なくありません。
深みにはまる前に警察に相談すればよいのですが、首謀者は応募者に「やるしかない」と思わせる手口に長けているため、追い詰められてしまう人もいます。
また、犯罪組織に個人情報が知られれば、SNSアカウントの乗っ取りや不正利用といった被害に遭う可能性もあります。
応募者は使い捨てにされる
闇バイトの求人は、基本的に犯罪を実行させた後に使い捨てできる人材を集めることが目的です。受け子や出し子に指示する役割も、闇バイトに応募してきた人というパターンもあります。
首謀者は自分の情報を隠して指示するため、警察に逮捕されるのは応募者だけということもあり得るでしょう。
ほとんどの場合、首謀者は捕まらないように行動し、実行犯だけが刑罰を受けるように計画されています。応募者にとって何の得もない行為です。
報酬が支払われなくなる
高額の報酬が提示されていても、本当に報酬が支払われるとは限りません。実行犯として都合よく働かせるため、初めだけ支払われるパターンもあります。
応募者が逮捕されることを見越して、最初に一部の報酬を渡し、実行後に全額を払うというように言いくるめられるケースも考えられるでしょう。
犯罪組織が真っ当に報酬を払うわけがなく、応募者から搾取するように仕組んでいるケースが大半です。いくらかの報酬を得た場合であっても、その後も受け取り続けられる保証はありません。
逮捕される
闇バイトは一般的なバイトとは違い犯罪を行っているため、警察の手が伸びれば逮捕されます。「犯罪だと知らなかった」「脅されていたから」と訴えたとしても、犯罪行為をしてしまった後では意味がありません。
たとえ首謀者から脅されて仕方なく犯罪に関わったケースでも、実際に罪を犯していれば罪状に合った刑罰が下されます。
被害者に重大な損害や危害を加えた場合、過去に前科がなかった場合でも実刑判決が下されるでしょう。社会的な信用が大きく失墜し、その後の人生は困難なものになります。
闇バイトの求人が多く見られる媒体
犯罪行為に関わらないようにするには、闇バイトがどのように募集されるのかを知る必要があります。闇バイトはどこで人を集めているのか、見ていきましょう。
メインの媒体はSNS
闇バイトは主にSNSを利用して募集しています。警視庁の資料を見ると、特殊詐欺の受け子になった経緯の大半がSNSからの応募です。
SNSの広告の中には一般的な求人もありますが、詐欺広告や闇バイトの求人もあるため注意しましょう。連絡手段にはDM(ダイレクトメール)を使うことが多く、簡単に大金が稼げるという内容に釣られてしまう人もいます。
不審なアカウントから連絡が来た際は特に注意が必要です。SNSに投稿した情報を見て、お金に困っていそうな人を狙っている可能性もあります。
また、知り合いであっても、怪しいもうけ話には乗らないようにしましょう。詐欺とは思わずに勧誘してしまっているケースもあるため、きっぱりと断ることが大切です。
出典:特殊詐欺に犯行利用された番号種別件数の推移及び受け子等になった経緯について|警視庁
掲示板など基本的にはインターネット上
SNS以外なら大丈夫とは限らず、インターネット上の掲示板やコミュニティサイト、一般的な求人サイトでもまれに闇バイトの募集が見られます。「よく知られている媒体だから安心」と思わず、内容に問題はないか注意しましょう。
中には、隠語などを使って巧妙に募集している場合もあり、求人情報を閲覧した人からの通報などにより、途中で掲載が差し止めになるケースもあります。
また、「闇バイト 探し方」などで検索したときに出てくる専用サイトにも注意が必要です。安易に利用すると、犯罪者の仲間入りをしてしまうことになります。
闇バイトと一般的なバイトの違い
闇バイトの求人広告には、一般的な企業がバイトを募集する際にはない特徴があります。これらの特徴を知り、応募する前に怪しいと判断できるようになりましょう。
報酬が高額すぎる
闇バイトと一般バイトを見分けるポイントの1つが報酬です。仕事内容と報酬が釣り合っていない求人には注意しましょう。他にも、「時給の記載がない」「なぜその報酬額になるのかが明確ではない」などの特徴があります。
地域によって違いはありますが、一般的なアルバイトで1日8時間働いたときの給料は1万円前後です。「荷物を届けるだけで1件5万円」「日給15万円」など、高額すぎる求人は明らかにおかしいといえます。
中には、高額で口座を買い取るなどと主張しているものもありますが、口座買い取り自体が違法行為なのでだまされないようにしましょう。
連絡手段がDM
闇バイトの募集をかけている首謀者は、自分たちが逮捕されないように通常とは異なる連絡手段を選びます。
連絡手段がメールや電話ではなく、身元を確認が取りにくいDMを使っているケースが大半です。「DMで連絡くれた方のみ」などの文言は、典型的な闇バイトの特徴です。
また、DM以外に匿名性の高いアプリのインストールを要求されることもあります。身元が特定されにくいアプリを使えば、送信者の情報や通信内容が守られるためです。
一般的なバイトでは、メールや電話などでやりとりをします。DMやアプリでのみ連絡を取りたがるかどうかを1つの目安にしましょう。
闇バイト特有の隠語が使われている
闇バイトでは独特な言葉を使用して、人を集めようとしている場合があります。一般的な求人では使われない隠語の一例を見てみましょう。
- 受け:現金や物品を受け取る「受け子」を指す
- 出し:被害者のキャッシュカードを使いお金を引き出す「出し子」のこと
- 叩き(たたき):強盗を意味する
- 葉っぱ、草:大麻などの薬物の取引
- 契約代行:スマートフォンなどの違法な契約代行
など
U(受け子)、D(出し子)、T(叩き)など、アルファベットを使う場合もあります。これらの言葉が出てきたら、闇バイトを疑いましょう。
闇バイトの見分け方・見抜く際のコツ
高収入のバイトを探している人の中には、一般的な仕事だと誤解して闇バイトに応募してしまう人もいます。求人情報が闇バイトかどうかを見抜くコツを見ていきましょう。
仕事内容が曖昧
どこで何をすればよいのか分からないのに異常な高額報酬をうたっているバイトは、まず避けた方が無難です。
高額報酬であっても、仕事内容が報酬に見合うほど大変なものだったり、専門的なスキルや資格が必要だったりする場合は闇バイトの可能性が低いといえます。
しかし、誰にでもできる業務に、常識外れて高額な報酬を出すことはあり得ません。「電話するだけ」「荷物の受け取りのみ」など、具体的な内容が書かれていないものには注意しましょう。
例えば、電話業務を担当する職種にはさまざまなものがありますが、コールセンターでの架電業務や営業のアポ取りなどが一般的な仕事内容です。
応募条件で性別が固定されている
「女性限定」「男性のみの募集」など、募集要項に性別が含まれている求人は闇バイトの可能性があります。
原則として国内での求人で性別や年齢を限定することは、男女雇用機会均等法で禁止されています。にもかかわらず、性別を限定している場合は性別に関連した犯罪行為をさせようとしている可能性があるでしょう。
例えば、「男性のみ」は盗品の運搬や強盗、「10代の女性歓迎」は違法な接客業や売春などをさせようとしている場合があります。
出典:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第五条|e-Gov 法令検索
広告主の情報がない・個人情報を求められる
労働者の募集広告には、職業安定法により氏名(募集主の名称)・連絡先・住所・賃金・業務内容などの情報を記載することが義務付けられています。これらの情報が欠けている場合、故意に情報を隠していると考えられます。
広告主の情報は隠しているのに、応募の段階で応募者の詳細な個人情報を聞き出そうとしてくることも闇バイトの特徴です。この時点で、信頼できない募集主であると見抜くことが大切です。
闇バイトでは応募の際に身分証や銀行口座などの提示を求めてきます。個人情報を犯罪に利用したり、逃げられないようにしたりするためです。
一般的な仕事では面接などで詳しい仕事内容の説明を受け、お互いに納得した上で働くことに同意し、必要に応じて身分証や口座情報を求められる流れとなります。
安全な仕事であることをアピール
「誰にでもできる簡単な仕事」「○○するだけ」という仕事内容なのに、妙に安全性をアピールしてくるのも怪しい求人の特徴です。例えば、以下のような文言にも注意しましょう。
- リスクなし
- 安全に稼げる
- ホワイト案件
- グレー案件
- 犯罪ではありません
違法性がないとアピールすること自体、一般的な求人ではあり得ません。また、労働者の安全が守られるのは当然であり、わざわざ主張する必要はない点も押さえておきましょう。
気付かずに闇バイトに関わってしまったら?
バイト探し中の人の中には「闇バイトだとは思わずに応募してしまった」「個人情報を教えてしまった」という人もいるでしょう。自分や家族が闇バイトに応募しそうになったときや、すでに関わってしまったときの対処法を紹介します。
怪しいと思った時点で手を引く
闇バイトに巻き込まれないようにするには「応募時に身分証の提出や口座情報などを求められた」「仕事内容を詳しく教えてくれない」など、少しでも怪しいと感じた時点で手を引くことが重要です。
闇バイトであることを巧妙に隠している求人もあり、働いた経験があまりない人にとって、見分けるのが難しい場合もあります。
闇バイトと知らずに応募してしまった場合、すぐに最寄りの警察署に相談しましょう。相談専用電話の短縮ダイヤル「#9110」も利用できます。
脅されている場合も警察への相談がマスト
「応募後に個人情報を渡してしまい、脅されている」「実際に犯罪に加担し、辞めようと思っても脅迫をされて抜け出せない」などの場合も、迷わず警察に相談しましょう。
自宅へ行く、身内に危害を加えるなどと脅されているなら家族にも相談し、危険性を知らせます。警察庁は指示役に個人情報を握られ、脅されている場合は確実に保護すると呼びかけています。
1人で悩まず、速やかに相談することが大切です。闇バイトに応募し脅されている人やその家族が警察に保護されるケースは実際にあり、必要に応じて自宅周辺のパトロールなどの対応が取られることもあります。
闇バイトに引っかからない求人の探し方
求人情報を見分ける自信がなく、闇バイトを引き当ててしまったらどうしようと感じる人もいるでしょう。闇バイトを避けるための求人サイトの選び方や、広告主の情報を確認する方法などを紹介します。
信頼性の高い求人サイトを利用する
求人を探す場合は、信頼性の高いサイトを利用することが大前提です。誰が発信しているのか分からないSNSやコミュニティサイトでの求人は、信用しないようにしましょう。
誰もが名前を聞いたことがあるような大手の求人サイトは、情報を掲載する前に内容が審査されているので安心です。
多くの求人サイトは企業からの掲載料や成果報酬などで成り立っていますが、無料掲載が多い求人サイトでは、怪しい求人情報が紛れ込んでいる可能性があります。
もし、自分で探す自信がない場合、学校や自治体などが発信している求人情報を活用するのも1つの方法です。
報酬以外の部分もしっかり確認する
信頼度の高いサイトであっても、昨今では闇バイトが紛れていないとも限りません。一般的なバイトであるかのように巧妙に装っている場合があるため、求人情報そのものも、しっかりと精査することが大切です。
報酬だけで決めると、怪しい部分を見逃してしまいます。広告主の情報や仕事内容、連絡手段なども必ず確認しましょう。
広告主の情報を調べても何も出てこない、尋ねてもまともに答えてくれない場合は、わざと情報を隠しているケースが考えられます。そのようなときはリスクを取らず、応募するのをやめましょう。
広告主の企業情報を確認する方法
気になる求人情報を見つけたら、その企業のホームページがあるかどうかを確認しましょう。企業のホームページから事業内容や本社の場所、役員の名前などが分かります。
また、企業の口コミやレビューを確認する方法もおすすめです。その企業で実際に働いている人の意見があれば、詳しい仕事内容や待遇などが見えてくるでしょう。
中には、ホームページやSNSはしっかりしているように見えるのに、実態が分からず怪しい企業などもあるため、多面的な方法で確認することが重要です。
周りに相談する
自分だけの判断では不安だと感じるのなら、周りに相談することもおすすめです。
アルバイトの経験が豊富な先輩や人生経験が豊富な知人、先生、家族などに「高収入のバイトなんだけど、怪しくないかな?」というように聞いてみましょう。
複数人に相談することで、多面的な意見をもらえます。相談相手は、社会人経験がある人がよいでしょう。学生や働いた経験が少ない人だと見抜くのが困難な場合があるので、相談相手を選ぶことが大切です。
闇バイトの見分け方を理解してリスク回避を
「すぐに大金が欲しい」「短時間で高額を稼ぎたい」など、困っている人の心理を利用して、犯罪行為をさせるのが闇バイトのやり口です。
一度でも応募してしまうと、個人情報を悪用されたり脅されたりするリスクがあるため、応募前に見極めることと、万一のときはすぐに警察に相談することが重要です。
やたらと高額な仕事や、安全性・違法性がないことを訴えている求人広告には注意しましょう。また、そのような怪しい求人情報を見つけた際は、掲載元に通報するのも効果的です。
怪しいバイトかどうか判断しかねる場合、一般的なバイトと比べて報酬が高すぎないかどうかを確認し、周囲にも相談するようにしましょう。