シェフになるには?仕事内容と全国の求人の傾向を紹介

シェフとは

鉄板で肉を焼くシェフ

(出典) photo-ac.com

料理店の厨房で働く料理人を指揮監督する、厨房の総責任者の立場にある料理人を、シェフといいます。シェフという言葉は、もともと英語のchief=チーフ(長)という意味のフランス語であり、厳密にはフランス料理店の総料理長だけをシェフと呼ぶのが正しいですが、国内では西洋料理の料理人を総料理長に限らずひとくくりにシェフと呼ぶことが多いようです。また、国外では寿司職人のことをsushi chef(スシシェフ)と呼ぶこともあります。

シェフの仕事内容

料理人は、調理技術や経験の差により、シェフ(総料理長)を筆頭にいくつかの職位にわかれます。

シェフ(総料理長)の仕事

厨房の最高責任者として料理人の指揮をとるのが総料理長です。本来的な意味のシェフは、総料理長を指します。料理人の中で一番長い帽子をかぶっているのが、西洋料理における総料理長です。料理店にとっては店のイメージを左右する顔役でもあり、調理技術はもちろん知名度も、総料理長を務めるうえで有利な要素です。コンテストなどで受賞歴があったり、メディアへの露出が多い著名なシェフであれば、その人自身のブランド力で顧客を集めることができるためです。

一般の料理人は厨房内で料理を作るのが主な仕事ですが、総料理長に期待される役割は異なります。自ら先頭に立って料理をする総料理長もいますが、厨房内でまず求められるのは料理人たちの監督としての役割です。料理の出来上がりのタイミングをコントロールしたり、仕上がりの味や盛り付けのチェックなど、厨房全体を見渡しながら、料理の味についても指示を出さねばなりません。料理人ではあるものの、厨房では調理そのものよりも、長年の経験にもとづいて料理人をマネジメントすることが求められるといえます。仕入れや原材料費の管理も総料理長が担当することがあり、その場合はより一層、管理職・マネジメント職としての色合いが濃くなります。

トップレベルの料理人としての感性を生かし、新メニューの開発や味付けを決定するのも、総料理長の大事な仕事です。単なるレシピの開発にとどまらず、コース料理の組み立てやサーブのタイミングもて工夫し、料理の演出まで気を配ります。また、料理店の顔として、ときには客席へ挨拶にまわるなど、顧客に対するホスピタリティーも必要になります。

なお、総料理長としてのシェフには店舗に雇用されている人と、独立開業して店舗のオーナーを兼務するオーナーシェフがいます。オーナーシェフの場合も基本的には上記の監督業務などを担当しますが、なかには自らは経営に関する業務に力を注ぎ、監督業務やレシピ開発を2番手のシェフに委ねる人もいます。

スー・シェフの仕事

総料理長を補佐する2番手の料理人をフランス語でスー・シェフといいます。フランス料理以外の西洋料理店ではセコンド、和食の世界では脇板(わきいた)や二番とも呼ばれます。小規模な店舗ではスー・シェフを置かないこともあります。

厨房内では総料理長とともに他の料理人に指示・監督するほか、料理の提供が遅れている調理担当者を手助けすることもあります。総料理長と比べて顧客へ提供する料理の調理を担当する機会が多くなる傾向にあります。

大型店などでは総料理長が不在にしている場合に顧客対応を代理したり、レシピの開発を担当することもあるなど、料理人の事実上のトップとして実務を取り仕切る人もいます。

部門シェフの仕事

ある程度規模の大きい店では、料理の種類や調理法の違いによって担当する料理人が指定されています。西洋料理は前菜・肉料理・魚料理など料理の種類で部門をわけることが多く、それぞれに専門の料理人が割り振られます。その料理人たちを部門ごとに取りまとめる長が部門シェフです。部門シェフの下には一般の料理人と見習いが所属し、指示を受けながら調理を行います。

シェフのキャリアパス

料理人の世界は、腕や経験によって職位が明確にわかれます。総料理長としてのシェフを目指すなら、見習いとして料理店に就職することがキャリアのスタート地点になります。見習いとして皿洗いや食材の仕込みなどを経験したのち、部門の一般料理人、部門シェフ、スー・シェフの順にステップアップして、最終的にたどり着くのが総料理長です。

ステップアップのためには調理技術を身につけるのはもちろん、さまざまな料理や文化に触れて感性を磨くことが重要になるため、複数の店舗で修業したり外国に修業に行って本場の技術と味を学んでくるのも一般的です。また、自店の厨房で腕を磨くだけでなく、料理のコンペなどに出場したりして見聞を広めたり、料理人同士の交流を深めることも有効です。

一定の技術を身につければ、独立開業してオーナーシェフへの道も視野に入れることができます。料理のほか経営にも時間と労力をとられるというデメリットはあるものの、極限まで原価率を高めて味を追求する、一日数組限定にする、店の雰囲気や料理の見た目を個性的にする、といった自身の感性を生かした店作りができるという魅力があります。

また、レストランガイドで高評価を獲得したりメディアへの露出を増やすことができれば、スターシェフとして自らをブランド化することによってさまざまなビジネスを展開することも可能になるでしょう。

シェフの年収は?

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

シェフの求人の給与情報から、シェフの年収帯を独自に集計しました。上記のグラフの通り、300万円台が約24%、400万円台が約28%、500万円台が約26%となっています。日本人の平均年収が男性520万円、女性が276万円で男女合わせると420万円(平成27年分 民間給与実態統計調査より)ですから、平均的な年収といえそうです。ただし、総料理長クラス以外の料理人も含まれている可能性があります。また、オーナーシェフの求人が多くないことに注意が必要です。

シェフになるには

鍋をふるう料理人

(出典) photo-ac.com

料理学校に通い一定の調理技術を身につけてから、料理店に見習いとして就職するのが料理人としての一般的なキャリアのはじめかたです。料理学校を経ずに、料理店に弟子入りを志願することも不可能ではありませんが、格式ある料理店の総料理長という意味でシェフを目指すのであれば、学校でひと通りの技術を習得しておくとよいでしょう。

料理を学ぶことのできる学校には、高校の調理科や短大の調理専攻、調理師専門学校などがあります。学校で料理を専攻することでプロの料理人から体系的な調理技術を学ぶことができるほか、世界各地の料理に対する知見を広めたり、料理人としての基礎を固めたりできます。また、卒業をすれば試験を受けずに登録申請のみで調理師免許を取得できる学校もあります。料理を専攻できる学校法人を探すには、公益社団法人全国調理師養成施設協会が運営する「調理師学校ガイド@web」 が便利です。活用してみてください。

なお、将来的に独立してオーナーシェフを目指すなら、食品衛生責任者という資格をとっておくと便利です。店舗に最低1人は資格者が必要になります。資格は数時間の講習を受けることで取得できます。なお、調理師免許を所持している場合は講習を受けずに申請だけで取得可能です。さらに、経理・労務の知識や経営の視点も身につけておきましょう。

調理師試験の概要

調理師免許を取得するための試験が調理師試験です。調理師免許がなくても料理人として仕事をすることはできますが、免許があれば調理について一定の知識や技術を持っていることを証明できるため、料理店への就職や転職にあたって便利です。

調理師試験は居住地域により主催団体や内容が異なりますが、受験資格は概ね中学校卒業以上で調理に関する実務経験2年以上の人に与えられます。出題内容は食品衛生に関する事項や栄養学、調理理論などで、合格率は概ね60%台です。なお、料理を専攻する学校の卒業者は申請のみで免許を取得することができます。

調理師免許を取得すると「専門調理師・調理技能士」の受験資格を与えられます。公益社団法人調理技術技能センターの主催する学科試験と実技試験により、日本料理・西洋料理・中国料理・麺料理などの専門家として認定を受けることができます。同時に調理師学校の教員資格も与えられます。

シェフの求人傾向は?

グラスが並んだレストランのテーブル

(出典) photo-ac.com

調理師免許は必ずしも必要ではありませんが、調理未経験者は原則として、見習いからスタートすることになります。見習いはアルバイトでの募集も多いので、積極的に応募してみるとよいでしょう。

格式ある料理店の総料理長という意味のシェフの募集は、公開されている求人には多くありません。料理学校OBや修業元などからの紹介や人脈で探すことが多いでしょう。「シェフ候補」といったかたちでの求人は公開されているケースがあります。また、スー・シェフの求人も公開されているものが多数あります。公開されている求人のなかには、専門の料理ジャンルを問わないこともあります。例えば、スペイン料理店の求人であっても、西洋料理の経験さえあれば応募できるといったケースもあるようです。

※文中に記載の各種数値は、2017年6月時点のものになります。

出典:
典拠公益社団法人全国調理師養成施設協会
公益社団法人調理技術技能センター