診療放射線技師になるには・資格・大学・仕事内容と全国の求人

診療放射線技師になるには

レントゲン写真を見せる

(出典) photo-ac.com

診療放射線技師は、エックス線(レントゲン)撮影を行うことから「エックス線技師」「レントゲン技師」などと呼ばれることもあります。診療放射線技師国家試験に合格し、免許を取得しなければ業務に従事できません。同試験の受験資格を得るためには、高校卒業後に放射線技師養成校を修了する必要があります。

養成校の種類と選び方のポイント

診療放射線技師とは、医師・歯科医師以外で唯一、放射線を利用する検査機器を医療目的で操作することのできる職種で、国家資格が必要となります。

代表的な業務は放射線を利用した検査機器の操作ですが、近年は放射線を利用しない検査も取り扱うようになってきており、MRI・超音波検査といった磁気や超音波などを利用した検査機器まで業務範囲が拡がっています。

養成校とは、技師養成のための専門課程を持つ大学や専門学校のことです。診療放射線技師になるために通う学校の、最新の養成校一覧は「東京都診療放射線技師会」のサイトで確認できるので、養成校を目指すならチェックしておきましょう。

それぞれに修業年限やカリキュラムなどの特色があるので、自分に合った学校をしっかり選んで進学したいところです。以下では、学校の種類ごとに特徴を挙げているので、学校選びの参考にしましょう。

大学

4年制。国公立と私立の両方に技師養成校が存在します。国立だと医学部の一学科として、私立だと保健医療学部などの医療関連学部の一学科として設置されていることが多い傾向にあります。

技師養成の課程では臨床実習が非常に大事で、実習した病院によって就職の有利・不利に影響を与えることもあります。医学部を併設する大学に設置された養成校なら医学部附属病院などで高度な実習ができることも多いようです。

また、学部を卒業して学士の学位を取得できるので、研究の道を志す場合に直接大学院へ進学できるという特徴があります。

専門学校

3年制。社会人向けの夜間コースを設置する学校では、4年制のケースもあります。大学よりも早く国家試験の受験資格を得ることができるので、一刻も早く現場で働きたい人におすすめです。

社会人が受講しやすい開講時間の学校や、カリキュラムを工夫している学校もあるため、キャリアチェンジを目指して働きながら診療放射線技師を目指す人が、通いやすいメリットがあります。

一方で、直接大学院に進学することは難しく、研究者への道を視野に入れている人にはあまり向きません。学校によっては、実習先や就職先として特定の病院に強いコネクションを持つようなので、事前に調べておくと、より良い学校選びができるのではないでしょうか。

大学と専門学校のどちらを選ぶにしても、「校内の機器・設備が充実しているか」「実習の受け入れ先として有力な病院とコネクションがあるか」の2点が重要になってきます。診療放射線技師は検査機器を操作するのが仕事ですから、養成校に最新設備があれば学生時代から操作経験を積むことができ、仕事を始めるにあたって非常に役立ちます。

さらに、実習先の病院が最新機器を備えているか、どのような治療を扱うのかによっても、就職前に積むことのできる経験が異なってきます。近年は、どの病院で実習を受けたかを就職の選考で重視する病院も増えつつあるようですので、定評のある実習先病院を確保できている学校なのかどうかはぜひチェックしておきたいところです。

国家試験の概要

受験資格

養成校卒業者と、外国の養成校相当の学校を卒業して外国で技師相当の免許を受けた人などに受験資格が与えられます。

実施日程

2022年は2月17日に実施されました。

試験手数料

2022年は11,400円でした。

合格率

2022年は、受験者3,245人に対して合格者は2,793人で、合格率は86.1%という結果になりました。

合格後、免許取得までの流れ

試験合格後、診療放射線技師として業務にあたるには、免許の取得が必要です。

免許は厚生労働大臣が与えるものですが、免許申請の窓口業務は各都道府県と政令指定都市が担当しています。免許申請に必要な書類や免許発行までの必要期間は、窓口となる自治体ごとに異なりますが、一般的には「健康診断書(1カ月以内)」「戸籍謄本(6カ月以内)」「収入印紙代 9,000円」が必要になります。

疑問点があれば、住民登録のある都道府県もしくは政令指定都市に問い合わせてみるとよいでしょう。

免許取得後の進路

進路として多いのは、やはり病院やクリニック、検査施設などの医療機関です。小規模な施設ではさまざまな検査機器を一手に引き受けることも多いようですが、大規模施設に勤める場合は1つの検査工程に専属ということもあり、専門分野が形成されていくことになります。

また、医療機器メーカーや研究機関に就職する人もいます。ただし、資格や免許を取得していきなりメーカーや研究機関に就職する人は少なく、病院で診療放射線技師として実務を行った経験をもとに機器の開発に従事したり、進学して大学院で学びその知識を生かして研究するといったケースが多いようです。

仕事内容

レントゲン写真と聴診器

(出典) photo-ac.com

診療放射線技師は、主に医療機関で医師または歯科医師の指示のもと、診療を目的として人体に放射線を照射します。医師・歯科医師以外で唯一、放射線を利用する検査機器を操作できる医療資格です。もちろん、診療放射線技師自身は放射線による被ばくを避けるためにコントロールされた環境で検査を行います。

従来は医師・歯科医師が自ら検査機器を操作することも多かったのですが、検査の複雑化や機器の高度化が進んだことによって分業化が進み、今では放射線を利用した検査機器の操作は診療放射線技師が担当するケースがほとんどのようです。

また近年は、放射線を利用しない検査機器も取り扱うようになってきています。例えば、MRI・超音波検査など、放射線ではなく磁気や超音波などを利用した検査機器が該当し、従来は臨床検査技師と看護師が担当していた分野にまで業務範囲が拡がっています。

代表的な業務の例

以下の5つは、放射線を用いる業務の代表例です。いずれも、診療放射線技師は、できるだけ患者の被ばく量を低減するよう撮影方法を工夫するのが腕の見せ所です。

また、「被ばく」という言葉自体に抵抗を感じて不安になる患者もいるので、その不安を取り除くべく説明するのも重要です。

例えば、マンモグラフィーの場合、1回で受ける放射線の量について「飛行機で東京からニューヨークに行くときにも同じくらいの放射線を浴びているんですよ」と説明できれば、患者の不安も取り除けるのではないでしょうか。

一般撮影検査(エックス線検査)

骨格や臓器を透過するエックス線を利用して身体内部の様子を撮影し、病気の発見につなげます。健康診断などで撮影したことのある人も多いのではないでしょうか。

従来はフィルム撮影が主流でしたが、現在はデジタル撮影で画像の明度などを変化させて病気が発見しやすくなりました。撮影する部位はほぼ全身におよび、肺炎・肺がん・結核・心臓の大きさなどを見るための胸部撮影、腎臓結石症・尿管結石症・腹水・腸閉塞などを判断する腹部撮影、骨格の変形や歪みを見る脊髄椎体撮影などがあります。

CT

CTとは、Computed Tomographyの略です。日本語にするとコンピュータ断層撮影といいます。さまざまな方向からエックス線を照射してデータをコンピュータで計算し、身体の断面を表示します。

近年では、3D表示が可能な機種も現れました。造影剤を使用して撮影すると、血管の走行などが一層よく分かるようになります。

マンモグラフィー

マンモグラフィーとは、乳房のエックス線撮影のことです。乳がんの発見に役立ちます。検査には乳房専用の機械を使用し、乳房を圧迫板というプラスチックの板で挟むので、痛みが伴うこともあります。

乳がんの初期段階では石灰化が始まるのですが、石灰化した状態は触診では発見できないのでマンモグラフィーが必要なのです。

PET

PETとは、Positron Emission Tomographyの略で、日本語では陽電子放出断層撮影といいます。放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種です。

がん細胞の糖代謝が通常の細胞に比べて活発であることを利用して、ブドウ糖に類似した構造の放射性薬剤を投与することでがん細胞に印を付けます。それを撮影することでガンを発見します。

放射線治療

高エネルギーの放射線によって腫瘍細胞を破壊する治療が放射線治療です。胸のレントゲンで使用するエックス線のエネルギーの約100倍という高エネルギーの放射線を用いて、腫瘍細胞を死滅させます。

放射線を利用しない業務としては次のようなものがあります。

・MRI
MRIとは、Magnetic Resonance Imagingの略で、日本語にすると磁気共鳴イメージングといいます。1980年に入り実用化が始まった、医療の歴史の中では新しい技術の1つです。

均一の強磁場の中で電波をかけ、体内のいろいろな角度から断層面を写す検査方法です。脳・脊椎・子宮・卵巣・前立腺など複雑な構造の器官の病気を調べるのに役立ちます。

・超音波検査
人の耳に聞こえる音の周波数より高い周波数を、超音波といいます。超音波を人体に当て、返ってくる音波を解析して画像にするのが超音波検査です。

腹部臓器全般・心臓・乳腺・甲状腺・頚動脈などの検査に用いられるほか、エックス線を使用しないので放射線被ばくがなく安全なことから、産婦人科では胎児の診察に使われています。

臨床工学技士との違い

診療放射線技師と同じように、医療機関で医療機器を操作する専門家に、「臨床工学技士」がいます。「臨床工学技士」は、主に人工心肺装置や人工透析装置、人工呼吸器といった生命維持に必要な装置の操作を行う職種です。

それに対し、「診療放射線技師」は基本的に検査のための機器を操作します。さらに、放射線を扱えるのは医療資格では医師・歯科医師・診療放射線技師だけなので、臨床工学技士が放射線を使用する機器を扱うと違法行為になってしまいます。

また、臨床工学技士は医療資格の中で唯一、工学知識の習得が義務付けられており、機器のメンテナンスなども行うエンジニアとしての側面もあります。放射線を扱う機器のメンテナンスに役立てようと、臨床工学技士の中には診療放射線技師の資格も取得してダブルライセンスで業務にあたる人もいるようです。

臨床検査技師との違い

診療放射線技師と同じように、医療機関で医師の指示のもとで検査を行う専門家として「臨床検査技師」がいます。

両者は検査の専門家として超音波検査やMRIなどを利用するという共通点がありますが、臨床検査技師は放射線を扱うことができない点で診療放射線技師と異なります。したがって、臨床検査技師がCTやマンモグラフィーを扱うと違法になってしまいます。

また、臨床検査技師は採血など検査に関わる医療行為が許されるのに対し、診療放射線技師は採血が許されないという違いもあります。

求人傾向

白衣の男性

(出典) photo-ac.com

診療放射線技師の求人は、クリニックや検査機関での募集が多く、研究機関などはあまり見かけません。研究機関は、大学院などで直接募集している可能性もあるでしょう。

求人サイト上で確認する限り、診療放射線技師の求人は実務経験者の募集が多いようです。新卒者を対象にした求人は、各養成校の進路指導課などを通じて募集するといった仕組みになっていると考えられます。

働き方は、正社員から契約・パートまでさまざまです。ライフスタイルに合わせて多様な働き方を選べる職種といえそうです。

※文中に記載の各種数値・内容は、2022年5月時点のものになります。

診療放射線技師の年収・給与

X線写真

(出典) photo-ac.com

診療放射線技師の、給料・時給・年収が気になる人もいるのではないでしょうか?全国の求人の給与情報をまとめて集計し、診療放射線技師の給与帯・年収帯を独自にグラフ化しました。

求人の給与情報から集計した診療放射線技師の年収帯

厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(令和3年分)によると、診療放射線技師の平均年収は510万円程度です。職種を問わない国内の平均年収が400万円台であることを考えると、一般的な年収を期待できそうです。

ただし、分析のもととなったデータは、医療機関・メーカー・研究機関など勤務先の種類による分類はされていないため、勤務先により年収に偏りが出る可能性があります。

出典:
公益社団法人 東京都診療放射線技師会
文部科学大臣指定(認定)医療関係技術者養成学校一覧(令和2年5月1日現在)
厚生労働省「診療放射線技師国家試験の施行」
厚生労働省「第74回診療放射線技師国家試験の正答・合格発表の訂正とお詫び」