獣医師になるには?仕事内容と全国の求人の傾向を紹介

獣医師とは

猫に聴診器を当てる獣医

(出典) photo-ac.com

獣医師は、飼育動物の診療などを行う医師のことで、農林水産省が認定する国家資格が必要です。獣医師法では、飼育動物に関する診療および保健衛生の指導、その他の獣医事をつかさどることによって、動物に関する保健衛生の向上や畜産業の発達を図り、あわせて公衆衛生の向上に寄与するものとされています。獣医師の資格を有していない場合、獣医師の名称や紛らわしい名称を用いて働くことはできません。

獣医師の具体的な仕事内容

犬に寄り添う女性2人

(出典) photo-ac.com

獣医師には一般的に知られているような動物診療だけではなく、多種多様な活動分野や仕事があります。

小動物臨床獣医師

小動物臨床獣医師は、犬・猫などのペットやコンパニオン・アニマル(伴侶動物)と呼ばれる小動物を対象に診察行為を行う獣医師です。一般診療を行うホームドクター(かかりつけ医)の役割を果たす動物病院では、治療だけでなく動物の健康診断やしつけ、栄養相談など動物の飼育を取り巻くさまざまな問題にも取り組んでいます。狂犬病予防対策をはじめ、人と動物の共通感染症(人獣共通感染症)の予防対策も小動物臨床獣医師の重要な役割です。

最近は専門病院も増えてきており、皮膚科、腫瘍科、外科、神経科、動物行動科、歯科、眼科など人の医療と同様の専門科のほか、猫、小鳥、ハムスターやウサギといった動物種ごとの専門病院もあります。

産業動物臨床獣医師

産業動物臨床獣医師は、農村地域などで開業するか、農業共済組合や農業協同組合などに勤務して、周辺の畜産農家に往診する獣医師です。乳牛をはじめ、肉牛、馬、豚、鶏など家畜の診療と病気の予防、飼養衛生管理の指導などを受け持ちます。家畜の伝染病防疫や、家畜の改良増殖の仕事もその活動範囲となります。さらに、動物用医薬品の安全性確保などのための検定試験やその製造、流通、使用に関する薬事監視の仕事も獣医師によって行われています。

公務員(行政)獣医師

厚生労働省および農林水産省では、獣医師免許取得を前提とした獣医系技術職員(獣医系技官)の採用があります。採用区分は「国家公務員総合職(院卒者)相当」となり、一般の国家公務員総合職試験とは別の採用枠になります。本省や検疫所、動物検疫所などが勤務先になり、公衆衛生や感染症対策などの分野において、種々の施策を講じます。

また、各都道府県や市区町村が行う試験を受け、地方公務員として勤務する獣医師もいます。公衆衛生獣医師や家畜衛生獣医師として、食肉衛生検査所、衛生研究所、家畜保健衛生所、畜産・林業・水産試験場、公営の動物園や水族館、動物愛護施設など、さまざまな勤務先があります。

その他の分野

上記のほか、大学や研究所などで研究者として獣医学に関する研究や獣医学生の教育を行っている獣医師や、医師と協力して実験動物を管理するなどバイオメディカル分野で活躍する獣医師、海外技術協力として発展途上国での家畜衛生、公衆衛生の向上指導などを行う獣医師もいます。

獣医師になるには

獣医師になるには、獣医学課程のある大学で6年間学んでから、獣医師国家試験に合格し、農林水産大臣から獣医師の免許を受ける必要があります。獣医学課程のある日本の大学は限られており、現在は、国立大学、公立大学、私立大学を合わせても16校のみとなっています。

なお、動物病院で働きたい場合や動物診療関係の仕事に就きたい場合は、獣医師ではなく、動物看護師という道もあります。動物看護師は、獣医師の補佐的役割を担う仕事で、現在は、コアカリキュラムが導入された専門学校や大学を修了後、一般財団法人 動物看護師統一認定機構が行う試験に合格した場合に、認定動物看護師として活動することができます。

獣医師国家試験について

農林水産省の獣医師国家試験のホームページによると、獣医師国家試験は、必須問題に関する試験(出題数50問)、学説に関する試験(出題数160問)および実地に関する試験(120問)に分けて行われます。

いずれも筆答による多肢選択方式(マークシート)で、獣医学全般について出題されます。なお、具体的な出題対象範囲は、「獣医師国家試験出題基準」により定められており、獣医療の基本的事項、獣医学の基本的事項、衛生学に関する事項、獣医学の臨床的事項の4つのカテゴリから編成されています。

獣医師国家試験の受験者数は毎年1,300人程度です。合格者はそのうち約1,000人で、合格率は例年80%前後となっています。試験は北海道、東京、福岡の3か所で毎年2月中旬ごろに実施され、3月中旬ごろに合格発表が行われます。受験料は1万3,900円です(平成29年5月12日現在)。

出典:獣医師国家試験出題基準(平成26年改正)|農林水産省

獣医師の届出

日本の獣医師免許を有しており、かつ日本に住所がある場合は、獣医師法第22条に基づいて、獣医師の分布、就業状況、異動状況等を的確に把握するため、2年ごとに届出が義務付けられています。期日までに届出をしなかった場合、免許の取り消しや業務停止を命じられることがあります。

獣医師の年収

獣医師 求人の年収グラフ
※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

動物病院、公務員、民間企業の品質管理部など、獣医師の活躍の場はさまざまです。公務員として勤務する場合は、自治体の給料体系に応じて定められます。年収は400万〜600万円台が全体の半数以上を占めています。総務省の「平成28年賃金構造基本統計調査」のデータをもとに算出した平均年収は約569万円です。

出典:
農林水産省
日本獣医師会
厚生労働省