心理カウンセラーとは
心理カウンセラーは相談者が自らの問題を整理し、自分自身で解決の方向性を見いだして自己成長できるよう支援する仕事です。カウンセリングでは相談者の話をよく聞き、共感したり要約したりといった対話をします。心理カウンセラーは、相手の話を聞くプロフェッショナルといえるでしょう。
相談者には、「病気」が原因となっている人や「カウンセリングによって解決できる悩み」を抱えた人などがいます。場合によっては、精神科や心療内科などの医師による治療が必要となることもありますが、なかにはカウンセラーが話し相手になることによって改善する悩みもあります。
心理カウンセラーが幅広い課題に対処するために行うのは、主に「心理療法」と「カウンセリング」です。「心理療法」には、精神分析や行動療法などさまざまな手法があり、心理カウンセラーのほか臨床心理士がさまざまな療法に取り組んでいます。
一方、「カウンセリング」は、リスニングや対話を通して本人の回復を図るアプローチです。実生活における周囲や社会との関わりをはじめ、日常的な問題を取り扱うケースが多いでしょう。
心理カウンセラーになるには
心理カウンセラーは職種名であり、資格保有者でなくとも心理カウンセラーを名乗って業務に従事できます。しかし、プロとして活動している人は、何らかの心理資格を取得していることがほとんどです。精神科の医師や臨床心理士、保健師などが心理カウンセラーの業務を行っている場合もあります。
心理カウンセラーになるためにもっとも確実なコースは、大学の心理学科・臨床心理学科・カウンセリングコースなどで学んで、さらに大学院でカウンセラーとしての専門性を高めることでしょう。「公認心理師」の資格を取得する道も、将来に期待が持てるキャリアパスです。
「公認心理師」は2015年に議員立法により成立した「公認心理師法」に基づき、2018年に初めて第1回国家試験が実施された国家資格です。本格的なカウンセリング業務に就きたい人は、国家資格である公認心理師を目指すと仕事の幅が広がるでしょう。
心理カウンセラーのやりがいとは
心理カウンセラーの資格を取得し、仕事に生かす魅力は何なのでしょうか?他者のカウンセリングという、ほかの職業ではあまり経験できない仕事だからこそ感じられる「やりがい」を見ていきましょう。
相談者の悩み解決に向けたサポートができる
心理カウンセラーの仕事は、悩みを持つ人の話を聞き、解決に向けてサポートをすることです。精神的な問題や気がかりな点を心理カウンセラーに話すことで、相談者の気持ちが整理されていきます。
丁寧に話を聞いていくうちに、問題解決の糸口をつかむこともできるでしょう。カウンセリングを通して人の悩みを解決できるのが、心理カウンセラーのやりがいです。
心理カウンセラーが持つ知識や客観的なアドバイスによって、相談者が気持ちを切り替える助けにもなります。状況によっては共感し、話を聞くだけでも悩みを持つ人に寄り添えるでしょう。
カウンセリングを通して成長できる
心理カウンセラーには、多くの人の話を聞く機会があります。普段出会わないタイプの人から、悩みを打ち明けられることも多いでしょう。
多くの人の話を聞いていくうちに、心理カウンセラー自身の成長が期待できます。仕事をしながら人間の心理について学べるのも、心理カウンセラーの魅力です。
経験を積んでいくと、的確に相手の悩みを把握できるようになります。悩みや問題のパターンを知ることで、自分自身や周囲の人の問題も解決しやすくなるはずです。
自分自身の成長に気づいたとき、「心理カウンセラーをやっていてよかった」とやりがいを感じる人は多いはずです。
高収入を目指せる
心理カウンセラーは企業や学校で働くこともありますが、独立開業もできます。カウンセリングを受けたいと思う相談者が多いほど、独立したときの収入は増加するでしょう。
多くの相談者を抱える人気の心理カウンセラーは、その分収入も高くなります。一般企業のカウンセラーでも、経験年数や実績に応じて収入が変わります。カウンセラーとして働く期間が長くなるほど、収入面でのやりがいも多くなるでしょう。
豊富な経験と実力があれば、カウンセリング以外でも高収入を目指せます。有名なカウンセラーになると、講演会やセミナー開催でも収入を得る人が少なくありません。
心理カウンセラーの仕事内容と活躍分野
ストレスが多いといわれる現代社会では、学校や病院、企業などさまざまなところで、心理にまつわる問題解決をサポートする心理カウンセラーの存在が求められています。人が生活していれば、その生活の場の数だけ悩みがあります。悩みを持つ人がいるところには、必ず心理カウンセラーが活躍できる場があると考えてよいでしょう。
学校
学校や教育センターなどの教育機関では、スクールカウンセラーが活躍しています。スクールカウンセラーは、学校生活を送るうえで悩みを持っている児童や生徒をサポートしたり、育児で悩んでいる親の相談に乗ったりするのも仕事のひとつです。また、児童のサポートで心理的負担がかかる教職員に対して、カウンセリングを行うこともあります。
一般企業
一般企業も、心理カウンセラーが活躍できる場のひとつです。企業においてカウンセリングや研修などを行うことで、従業員が仕事や職場の人間関係の悩みを解決できるよう援助するとともに、健康で生産性の高い組織作りを支援します。精神科などの産業医や臨床心理士、保健師などが心理カウンセラーの業務を行う企業も珍しくありません。
医療機関
病院や診療所などの医療機関で働くカウンセラーもいます。医療機関においては医師や臨床心理士が、カウンセラーの相談ではフォローしきれない心の問題をサポートするのが特徴です。患者とその家族のほか、医療従事者のメンタルケアも行います。
地方公務員
地方公務員として心理カウンセラーを務める「心理判定員」という職業もあります。児童相談所や身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、保健所、福祉センター等の地方自治体各施設において、心理に関する専門知識に基づき、相談対応や診断面接、心理診断、集団療法などを行います。
独立・開業
心理カウンセラーとして経験や実績を積んだ後に、個人のカウンセリングルームを開設するなど、独立、開業をするケースもあります。開業資金が安く抑えられる点や、手続きが簡単である点などから、比較的独立しやすい仕事であるといえます。
心理カウンセラーに関連する資格
心理カウンセラーの領域には、数多くの任意資格があり、さまざまな団体・スクールが、独自の考え方に基づき、独自の基準で独自の資格を発行している状況です。心理カウンセラーに関する代表的な資格を紹介します。
臨床心理士
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。資格取得者は、病院その他の専門施設で臨床心理士として働くことができます。資格を取得するには、指定の大学院を修了する、心理臨床経験を所定年数以上積んでいるといった要件を満たす必要があります。
認定心理士
公益社団法人日本心理学会が認定する民間資格です。大学において同学会が指定する単位を履修後、申請すると認定されます。
カウンセリング心理士
日本学術会議認定の学術研究団体である、日本カウンセリング学会が認定する民間資格です。資格取得申請には、試験方式と推薦方式があり、それぞれ定められた条件を満たす必要があります。
プロフェッショナル心理カウンセラー
一般社団法人プロフェッショナル心理カウンセラーが公認する、全国統一認定資格です。資格取得には認定教育機関での専門知識学習および実習・研修が必要です。認定教育機関は全国の主要都市にあります。
臨床発達心理士
一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構が認定する民間資格です。資格の申請条件は、「発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または修了後3年未満」「発達心理学隣接諸科学の学部を卒業してから臨床経験3年以上」「研究機関での研究職をしている」などです。満たしている条件に応じて筆記試験や面接などの審査が行われます。
心理カウンセラーの求人傾向
心理カウンセラーには、カウンセリングルームだけでなく、病院や歯科医院、薬局などの医療機関、教育機関、介護施設、一般企業など、働く場が豊富です。常勤、非常勤、社員、アルバイト、パートなど、働き方にもバリエーションがあります。心理職の民間資格でも難易度が高い臨床心理士の資格を所持していると、就職に有利です。
資格者でなくとも心理カウンセラーを名乗って活動を行うことができるため、未経験からでも働くことは不可能ではありません。ただ、就職においては現場での心理カウンセリング能力が重視されます。未経験の場合、電話カウンセリングやメール相談などをアルバイトとして行い、経験を積むとよいでしょう。
※文中に記載の各種情報は、2022年5月時点のものです。
出典:
日本のメンタルサポートの現状
臨床心理士資格認定事業|公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
一般社団法人プロフェッショナル心理カウンセラー協会
カウンセリング心理士(旧認定カウンセラー)|一般社団法人 日本カウンセリング学会 公式ホームページ
公益社団法人 日本心理学会
群馬県 心理判定員