司書になるにはどんな方法がある?経験者に聞く仕事内容と目指し方

司書とは

本と眼鏡

(出典) photo-ac.com

司書は本が好きな人に人気の職種です。図書館で働く司書とは、どのような役割を担う存在なのでしょうか。まずは司書が受け持つ仕事を大まかに見てみましょう。

図書館における司書の役割

司書とは、図書館において、資料の選定から貸出、読書案内に至るまでの全般的な業務を行う専門職です。資格には司書と司書補の2種類があり、司書補は司書の補助的役割を担います。どちらも図書館法により国家資格に定められており、司書講習の受講、または大学で必要な科目を履修することで資格の取得が可能です。

図書館法とは、国民の教育と文化の発展を目的とし、図書館の設置や運営に関する必要事項をまとめたものです。図書館を「社会教育のための機関」と定めている社会教育法に基づき、1950年に制定されました。この法律における図書館とは、利用者の調査研究や教養の育成、レクリエーションとしての利用を目的として設置された施設を示しています。

図書館司書の具体的な仕事内容

積まれた本

(出典) photo-ac.com

図書館司書の仕事内容は、主にカウンターでの対応と本の管理です。どちらも図書館で日常的に行われます。ほかにも雑務として、館内の清掃やイベント運営など多くの業務が行われています。

メインとなる「カウンター業務」「本の管理」それぞれについて具体的な内容を見ていきましょう。

カウンターでの対応

司書の主な仕事は、カウンターでの受付業務です。利用者とコミュニケーションを取り、資料の貸出・返却に対応します。貸出の際は内容を確認し、本のデータを読み取るのが基本です。返却の際は本の冊数や内容が合っているか確認し、返却手続きを進めます。

図書館カードの新規・再発行や、本の予約手続きなども業務の一環です。利用者が求める資料を検索し、紹介する「レファレンス」も司書がカウンターで行っています。検索システムを利用するだけでなく、普段から図書館の本に触れている司書の知識が生かせる業務です。

本に関する質問のほか、図書館に対する質問への回答やクレーム処理もカウンターで対応します。カウンターでは、図書館に訪れた利用客に対応する以外に、新しい本の登録作業や修繕、延滞者への電話連絡も行います。

本の整理と管理

司書は毎日の業務の中で図書館の本を整理し、管理しています。返却された本を適切な場所に戻し、利用者が手に取りやすいよう整理するのも司書の仕事です。図書館の本は、利用者が位置を動かすこともあります。定期的に本の状況を確認し、位置を戻す作業も必要です。

位置を戻すだけでなく、定期的な蔵書点検を行うのも司書の仕事です。古い本や修繕・清掃が必要な本は、点検時にチェックされ新規購入や修繕が検討されます。蔵書点検の際にはデータとの照合も必要となり、閉館して行われるのが一般的です。

利用者へ貸し出される資料は、司書が選定しています。図書館に新しく届いた本も分類し、必要なときにすぐ検索できるよう目録を作成します。

司書になるには

勉強をする女性

(出典) photo-ac.com

司書の資格は2種類

司書には、司書と司書補の2種類の資格があります。どちらも図書館における全般的な業務を行うことには変わりませんが、司書補は司書の補助的役割を担います。大きな違いは、資格を取得できる時期です。

司書補は早ければ中学卒業後に講習を受講し修了することで資格を取得できますが、司書は大学か専門学校の卒業、もしくは司書補の勤務経験が3年以上あることが必須となっています。

司書になる方法

司書の資格を取得するには、2つの方法があります。一つは、大学または専門学校で司書講習を修了する、もしくは在学中に必要な科目を履修する方法です。もう一つは、司書補として3年以上勤務し、司書講習を修了する方法です。司書講習は、大学に2年以上在学、もしくは司書補として2年以上勤務した経験があることが受講資格となっています。

司書補になる方法

司書補は、司書補の講習を修了することで資格を取得できます。司書補の講習は、高校または中学を卒業、もしくは高等専門学校第3学年の修了が受講条件となっています。

ほかにも、司書の資格を有している場合は司書補の資格を取得できます。

司書の就職先

司書の多くは、地方公共団体などが運営する公立図書館で働いています。図書館では、幅広いジャンルの書籍や資料を収集・保管し、地域住民に読書を楽しんでもらったり、調査や研究ができるように努めたりします。

司書経験者へのインタビュー

図書館職員

(出典) photo-ac.com

スタンバイでは、実際に司書として働いていた人に、「仕事のやりがい」「努力したこと」「将来性」についてインタビューを実施しました。

インタビューの対象者

女性(山梨県在住)
実務経験年数:5年以上

Q1.司書の資格を取得するために努力したことは?

司書資格を取得するのに国家試験などの試験はありません。学生時代に資格を取ったので、時間の余裕は随分ありました。司書資格を取得するための講義が定員制で夏休みの集中講義だったので、講義を受けるのが一番大変でした。

各単位の試験やレポート前には図書館に籠って勉強したり、同じ司書資格を取るために講義を受けている友人たちと集まって勉強会をしたりしました。レファレンスや児童サービスなど、実践的なレポートも多かったです。

実践部分は経験が物を言うのが大半なので、複数の人数で頭を突き合わせて情報を探すことが多かったです。本が好きで読んでいるということは、スタートラインで情報検索や収集能力が求められました。インターネットだけでなく、新聞や論文の検索ツールを随分活用しました。

Q2.司書の求人を見つけて応募し、採用されるにあたって苦労したことは?

地域によると思いますが、とにかく正規採用の募集が少ないのが現状です。公共図書館に勤めたいと思うと公務員試験を受けることになるので、その対策を取らねばなりません。毎年募集があるわけではないのに、公務員試験なので年齢の上限もあります。ともすれば年齢上限になるまでに、働きたい場所では募集がないという可能性もあります。さらに司書は人気の職業なので倍率も高く、新卒の年に運良く募集があっても、年上の経験者も一緒に受験することが多いので、新卒や未経験者は非常に不利です。

ペーパーテストをクリアしても、面接で経験者が優遇される実情があります。臨時職員やパートの募集は比較的多く見受けられます。採用も地域によってはそこまで難しくありません。有資格者であれば有利かと思います。

Q3.司書のやりがいと将来性についてどう思いますか?

司書の仕事内容は非常に専門性の高いものです。利用者にサービスを提供するために、図書館内の本の配列や資料に対する専門知識、情報をサーチする能力などが必要になってきます。自分のスキルもめきめきあがっていくことを実感できるので、やりがいは大いにあると思います。学校図書館に勤める場合は一人職場となるので大変ですが、その分、自分のやりたいように企画や運営をすることができます。もちろん相性もありますが、やりがいは大いにあります。

しかし、学校の場合は特に臨時職員・嘱託職員・パートなどの雇用となり、学校を兼務して毎日同じ学校にいられないこともざらにあります。やりがいだけでサービス残業をする人もしばしばいます。また雇用形態がこういった形なので後進が育ちません。女性が多い職種で結婚や出産を機に辞めざるを得ないことも多いので、続けたくても続けられないのが実情です。そのため将来性については悲観的にならざるを得ません。

出典:
図書館法|e-Gov法令検索