退職証明書とは?必要なタイミングやもらえないときの対処法を紹介

会社を辞めたら退職証明書が必要になることがあります。入手方法や記載事項をしっかりと理解しておけば、必要なときにスムーズに発行してもらえるでしょう。提出を求められるケースや入手できないときの対処法を紹介します。

退職証明書とは?

退職証明書とペンと印鑑

(出典) photo-ac.com

退職証明書とは、どのような書類のことをいうのでしょうか?まずは、基礎知識や離職票・在職証明書との違いについて解説します。

退職したことを証明する書類

退職証明書とは、『過去に在籍していた会社を辞めた』という事実を証明する書類です。会社側に発行の義務はなく、原則として退職者の求めに応じ会社が発行します。

退職証明書が必要となる代表的なケースは、転職先から提出を求められた場合です。国民健康保険・国民年金に加入するときや失業給付の手続き時にも、提出しなければならないケースがあります。

退職時や転職時に必須の書類ではないため、何度か転職する中で初めて用意を求められた人もいるでしょう。提出しなければならないときに素早く準備できるよう、正しい知識を持っておくと安心です。

退職証明書に記載される内容

労働基準法第22条1項には、退職者から求められたときに記載すべき項目が明記されています。法律で定められている項目は、以下の5つです。

使用期間 在籍していた期間
業務の種類 仕事の内容
その事業における地位 最終的な役職
離職以前の賃金 月給や年収(額面)
退職の事由 退職理由(自己都合・契約期間満了・解雇など)※解雇の場合はその理由も含む

上記以外に記載されるのは、退職者氏名・会社情報・退職年月日・発行日です。所定の書式がないため、会社ごとに独自のテンプレートを用意しています。

参考:労働基準法 第22条 1項|e-Gov法令検索

請求した項目以外は記載されない

退職証明書に書かれる項目は、退職者が自由に選べます。労働基準法第22条でも求められた項目以外は記載しないよう定めているため、会社側は退職者が請求されていない項目を記載できません。

解雇を理由に退職した人の中には、『退職の事由』を書いてもらいたくない人もいるでしょう。退職の事由が解雇の場合は解雇理由も記載されるため、理由によっては転職時に不利になりかねません。

退職理由を請求せず、未記入のまま証明書を作ってもらうことも可能です。

「離職票」や「在職証明書」との違い

退職証明書と間違われやすい書類に『離職票』があります。退職証明書の発行元が勤めていた会社であるのに対し、離職票を発行するのはハローワークです。

退職後に失業保険給付を受ける際や、国民健康保険・国民年金に加入する際など、離職票が必要になることがあります。離職票は統一された書式が用意されていて、公的な効力もある書類です。

また、退職証明書と混同しやすい書類には、『在職証明書』も挙げられます。在職証明書は名前の通り、ある会社に在職していたことを証明する書類です。

在職証明書に記載する項目は退職証明書とほぼ同じであり、退職者が請求したからといって会社が必ずしも発行しなければならない書類ではありません。退職後に在職していたことを証明したい場合は、退職証明書を使いましょう。

退職証明書が必要となるタイミングは?

住民移動、国民健康保険移動、介護保険移動の届出用紙

(出典) photo-ac.com

退職証明書が必要となるのは、退職後の各種手続き時や転職時です。提出を求められる主なシーンを紹介します。

国民健康保険・国民年金に加入するとき

会社を辞めて国民健康保険・国民年金に加入する場合は、住んでいる自治体で加入手続きを行わなければなりません。手続きの際は、退職日を証明できる書類が必須です。

会社が発行する『社会保険資格喪失証明書』があれば、退職日を証明できる書類として扱えます。会社の事情により社会保険資格喪失証明書が用意できない場合は、離職票や退職証明書による代用も可能です。

ただし、自治体によっては社会保険資格喪失証明書しか使えないケースもあります。書類を準備する無駄な時間や手間を発生させないためにも、事前に問い合わせて確認しておきましょう。

参考:会社を辞めましたが、国民年金の加入手続きは必要ですか。|江戸川区ホームページ

ハローワークでの失業給付手続きのとき

会社都合で退職した場合は、退職後すぐに失業保険をもらうことが可能です。ハローワークで離職票を提出して求職を申し込み、7日間の待機期間を経た後に失業保険の支給期間が開始されます。

しかし離職票が手元にない状況なら、待機期間を開始する手続きすら行えません。このようなケースでは離職票の代わりに退職証明書を使うことで、待機期間を開始する手続きを進められる仕組みです。

離職票の発行手続きは退職後に行われるため、手元に届くまでに一定期間を要します。できるだけ早めに失業保険をもらいたい場合は、離職票が届く前に退職証明書を入手するとよいでしょう。

転職先から提出を求められたとき

転職活動中に、就職希望先の会社から退職証明書を出せないかお願いされることがあります。履歴書や職務経歴書の内容に、虚偽がないか確認するためです。

会社が人材を採用する際は、転職者の履歴書や職務経歴書で前職の業務・地位・給料を確認し、採用の判断材料にします。しかし、履歴書や職務経歴書はあくまでも本人の主張にすぎないため、退職証明書で情報が正しいかどうかを確かめるのです。

ほとんどの会社は、情報漏えいを防止するために社員がほかの会社で働くことを認めていません。そもそも本当に前の会社を辞めているか確かめる意味でも、一定数の会社が採用時に提出を求めています。

退職証明書の入手方法

書類に記入するスーツを着た男性

(出典) photo-ac.com

退職証明書は、自動的に発行されて手元に届く書類ではありません。入手方法を覚えて、必要なとき素早く手に入るようにしておきましょう。

前の会社に発行を依頼する

退職証明書は、前職の会社が請求に応じて発行する書類です。あらかじめ記載してもらいたい項目を決めた上で、前の職場に連絡して発行を申請すれば入手できます。

発行回数の制限・やり取りのルールなども存在しないため、会社と話し合って入手方法や期限を決めましょう。

退職者から退職証明書を出してほしいと請求があったら、会社側には遅滞なく発行しなければならない義務があります。ただし、発行の義務があるのは『退職してから2年以内』であり、在職中に社員へ渡すことはできません。

できるだけ早めに退職証明書を入手したい場合は、退職してから間を空けず発行申請ができるように準備しておきましょう。

退職証明書がもらえない場合は?

クリップボードとペンを持った人

(出典) photo-ac.com

退職証明書を入手できない場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?もらえない主なケースと、入手できないときの対処法を紹介します。

入手できない主なケース

会社側に退職証明書の発行が義務づけられる期間は、『退職後2年間』です。2年以上経過している場合は、会社が発行を拒否できるため入手できないことがあります。

また、そもそも会社に発行を申請しなければ送られてきません。会社側が自発的に発行してくれるケースはほとんどないため、必要になれば会社に発行申請を行う必要があります。

辞めた会社と良好な関係を築けていなかったケースでも、なかなか発行してもらえない状況が発生しかねません。仕事を辞めるときは、のちのちの面倒を減らすためにも円満退社を心がけましょう。

もらえないときの対処法

退職後の各種手続きで退職証明書を用意できない場合は、ほかの書類で代用できないか確認しましょう。転職先から提出を求められたケースでも、入手できない理由をきちんと説明することが大切です。

また、前の職場が発行を渋っているなら、会社側に発行義務があることを伝えるのも効果的です。法律を根拠に説得力のある伝え方ができれば、スピーディーに動いてもらえる可能性が高まります。

辞めた会社が発行を渋り続ける場合は、管轄の労働基準監督署に相談しましょう。発行を依頼した証拠があると、相談がスムーズに進みます。

退職証明書の正しい知識を持っておこう

「退職届」と書かれた封筒と書類

(出典) photo-ac.com

退職証明書は、前職を辞めたという事実を証明する書類です。主に国民健康保険・国民年金の手続き時や転職先から提出を求められたときに必要になります。

原則として、過去に在籍していた会社に発行を申請すれば入手できます。しかし、退職から2年が過ぎている場合は、発行してもらえないケースもあるので注意が必要です。

正しい知識を持ち、必要になったときにすぐ入手できるよう準備しておきましょう。

小岩 和男
【監修者】All About 労務管理ガイド小岩和男

就業規則など社内諸規程作りのプロフェッショナル。人事労務コンサルタント・特定社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。企業人時代を含め通算24年の人事コンサルを経験。一部上場企業から新設企業までを支援。セミナー講師、雑誌・書籍の執筆実績も多数。
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著書:
ぜんぶわかる人事・労務
図解即戦力社会保険・労働保険の届出と手続きがこれ1冊でしっかりわかる本