履歴書の本人希望欄には何を書けばよい?暗黙の基本ルールをチェック

書類選考で好印象が残る履歴書にするためには、本人希望欄をどのように書けばよいのでしょうか?知っておきたい基本ルールや書き方を紹介します。実際に記入する際の参考にしてみてください。

履歴書の本人希望欄の基本ルール

ワイシャツ・ネクタイの上に置かれた「履歴書在中」と書かれた封筒

(出典) photo-ac.com

本人希望欄の明確な役割を把握していないと、書類選考を通過できない可能性があります。まずは、基本的なルールを紹介するので確認しましょう。

「希望」ではなく「絶対条件」とみなされる

本人希望欄の『希望』という言葉から、「可能であればこうしたい」と自分にとって望ましい条件を書くものだと思っている人もいるのではないでしょうか?実際は、その条件が満たされなければ勤務できないという『絶対条件』であるという印象を相手に伝えかねない欄になります。

「こうだったらうれしい」といった気持ちで書いてしまうと、それが『どうしても妥協できない条件』と受け取られてしまう点に注意しましょう。

応募先の企業が条件を受け入れられない場合は、それが理由で不採用になる可能性もあります。

本人希望欄の書き方は?

記入途中の履歴書と、万年筆を持つ手

(出典) photo-ac.com

本人希望欄は、どのように記入すればよいのでしょうか?具体的な書き方を、意識したい大切なポイントと併せて紹介します。

分かりやすく簡潔に

本人希望欄は、できるだけ分かりやすくシンプルにまとめるようにしましょう。丁寧に書こうとするあまり、文章が長くなったり回りくどくなったりしないように気を付けることが大切です。

また、自分の能力をアピールする欄でもないため、必要な事実だけを簡潔に書くように心掛けましょう。文量が記入スペースの8割以下になるように意識すると、すっきりとした見た目になります。箇条書きにすることで、分かりやすくなる上に視認性も高まるのでおすすめです。

絶対条件以外は書かない

本人希望欄には、どうしても条件を満たさないと勤務できないなど、妥協できない条件以外は書かないようにしましょう。例えば、親の介護をする必要があるため、自宅から通勤可能な勤務地を希望する場合などが挙げられます。

どうしても譲れない理由があるわけでもないのに、自宅から通勤可能な勤務地希望としてしまうと、入社意欲が低いと思われてしまうことも考えられます。

「可能であればこうしたい」という条件に関しては、履歴書では触れずに、書類選考を通過して面接の機会が与えられてから希望条件を話し合うのがおすすめです。

直接会ったときに条件の擦り合わせをした方が、誠実な印象が残るでしょう。

本人希望欄に書いてはいけないことは?

履歴書と封筒とボールペン

(出典) photo-ac.com

履歴書は、まずは「この人に会って話を聞いてみたい」と思われるものに仕上げることが大切です。本人希望欄に書く内容によっては、マイナスのイメージを与えてしまうこともあるため、注意が必要です。

本人希望欄に書いてはいけないことを見ていきましょう。

給与面について

就職先を決めるときは給与面も大切な要素ですが、具体的な数字を用いて企業への貢献度合いを示せる場合を除き、「自分はこれだけ稼ぎたい」という希望年収や月収のみ書くのはNGです。

条件に給与面を挙げると、『提示した年収以下の場合は入社を希望しない』という意味に受け取られてしまうでしょう。

また、給与面が最も大切な指標である、給与が高いことが第1条件であると誤解されてしまうこともあります。

事前にどの程度の年収なのか気になる場合は、募集要項の情報から推測するのがおすすめです。年収の交渉をしたいのであれば、書類選考通過後、面接で聞かれたときにしましょう。

待遇面について

誰でも「居心地のよい環境で働きたい」と思うもので、仕事をする上で待遇面は大切です。しかし、基本的には書類の段階では待遇面についても書かない方がよいとされています。

書類審査の段階で有給休暇や交通費などについて触れられていると、「自己中心的だ」「仕事に対する意欲が低いのでは」「融通が利かないのかも」などと思われる可能性もゼロではないためです。

書類選考は、面接につなげるための大切な書類なので、印象をよくすることが大切です。待遇面については給与面同様に、面接時や内定が出そうなときに交渉するのが一般的なので、気を付けましょう。

自己PRや志望動機について

履歴書には、必要な情報を定められたスペースに記入するという暗黙のルールがあります。

入社意欲が強い場合、自己PRや志望動機の欄に書き切れなくなってしまうこともあるでしょう。しかし、書き切れないからといって、本人希望欄に書き足すのはNGです。

本人希望欄は、あくまでも『応募企業にどうしても伝えておきたい条件』を書くスペースになります。それ以外のことが書かれていると、『履歴書の書き方を知らない』『マナーに欠ける』など、よくないイメージを与えてしまうこともあるため、注意しましょう。

本人希望欄に記入してよいものは?

未記入の履歴書を手に持つスーツの男性

(出典) photo-ac.com

本人希望欄に書いてもよい項目を紹介します。それぞれの状況にもよりますが、思いつくまま希望を書きすぎると「身勝手でわがままな人だ」と誤解されることもあるため、どうしても妥協できないことだけに絞って書きましょう。

希望職種・勤務地が複数ある場合

企業によっては、同時に複数の職種を募集している場合があります。その場合は、企業側がどの職種に対する応募なのか分かるように、希望職種を明記しましょう。

希望職種が書かれていないと、どの職種でもよいと勘違いされるなど、意思の疎通に支障が出る可能性もあります。

記入する際は、募集要項に書かれている通りに、省略せず書きましょう。例えば、『情報システム部』を勝手に『情シス』や『IT』などと省略したり、言い換えたりしないことが大切です。

また、複数の勤務地で募集しているケースもあるでしょう。基本的には勤務地の希望は書かない方がよいですが、同居している親の介護が必要などやむを得ない事情がある場合は、理由とともに勤務地の希望を書くようにします。

勤務時間に関する条件

勤務時間に関して、どうしても妥協できない条件があるならば、しっかり書くことが大切です。例えば、子どもの保育園の送迎があり残業ができない、通院のため毎月第1月曜日は午後に早退する必要があるなどです。

このような事情がある場合は、事前に企業側に知らせておきましょう。内定をもらった後に、条件が受け入れられないことが分かり、結局入社できなくなったということも起こり得ます。

そうなると、企業側は面接にかけた時間や労力が無駄になるだけでなく、お互いにとって望まない結果になってしまうので注意しましょう。

入社・退職の日付について

いつから就業可能なのかは、企業にとって知りたいことの1つです。転職先を探している人は、現職の都合ですぐに入社できないこともあるでしょう。その場合は、在職中であることを述べた上で、退社予定日や入社希望日を記入します。

また入社希望日が、退職後に休暇を取ってからだったり、失業保険をもらってからだったりする場合もあるでしょう。しかし、このようなことを正直に書いてしまうと、マイナスイメージになりかねません。

そのため、すぐに入社できない理由については、『現職の引き継ぎのため』を理由にするのがおすすめです。

連絡が取れる時間帯

書類選考を通過したら、面接があります。企業から電話で面接のスケジュールを調整する連絡が来る可能性があるため、電話対応ができる時間帯・対応できない時間帯を記載しておくと親切です。

具体的には、『平日の〇〜〇時は、電話対応ができません』『平日は〇時以降であれば、電話対応が可能です』のように書きます。

企業から連絡があるのは、通常は営業時間帯であるため、在職中の人は電話に出られないことが多いでしょう。

その場合は、『留守番電話のメッセージを確認しましたら、できる限り早めに折り返しの連絡をいたします』のように書いておくのがおすすめです。

希望条件が特にない場合

特に伝えておかなければならない条件がない場合は、『貴社の規定に従います』と書きます。『特になし』でも問題ないとされていますが、丁寧さや謙虚さがなくマナーに欠けると思われる可能性もあるので避けるのが無難でしょう。

大切なポイントは、『空欄にしない』ことです。特に希望がなくても、一言書くのがマナーとされているためです。空欄のままだと、「書き忘れたのではないか」「基本マナーを知らない」と思われる可能性があります。

履歴書を書き終わった後のチェック項目は?

履歴書と万年筆

(出典) photo-ac.com

履歴書を提出する前にチェックしたい項目を紹介します。怠ってしまうとマイナスイメージにつながる可能性もあるため、しっかりチェックすることが大切です。

誤字・脱字を確認しよう

書類選考では、学歴やスキル、職歴といった内容だけでなく、読みやすさも大切なポイントになります。履歴書に限らず、読みづらい書類はよいイメージが残らないためです。

特に誤字・脱字があると、読みづらくなるばかりでなく、「見直しをしていない」「注意力が足りない」という印象を与えてしまうこともあります。

書類選考においては、候補者が2人おり、どちらかを選ばなければいけないという状況が珍しくありません。誤字・脱字が多い人と全く書き間違いをしていない人では、ミスがない人の方が有利になることも考えられるでしょう。

間違えていた場合は書き直しをする

たとえ1文字だけだったとしても、書き間違えた場合は最初から書き直す必要があります。修正液・テープを使って修正してはいけないという決まりはありませんが、書き直すのが暗黙のルールです。

そのため、修正して提出すると、入社意欲やマナーに欠けるとマイナスイメージを与えてしまうこともあります。あまりにも修正箇所が多いと、「信頼性に欠ける」と思われてしまうこともあるでしょう。

書き間違いをしないためには、いきなり書き始めるのではなく、まず下書きをするのがおすすめです。鉛筆で薄く下書きをして、その上をペンでなぞる方法もあります。

基本ルールを把握して好印象な履歴書に

スーツの内ポケットに「履歴書在中」と書かれた封筒を差し込む男性

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履歴書の本人希望欄に書く内容は、基本的に『絶対条件』と判断されます。そのため、書く内容はどうしても妥協できない条件のみにとどめましょう。

例えば、職種・勤務地・勤務時間・入社希望日などです。マイナスのイメージを与えてしまうリスクがあるため、給与面や待遇面には触れないことも大切なポイントです。

誤字・脱字に気を付け、書き間違えた場合はたとえ1文字でも書き直し、好印象が残る履歴書に仕上げましょう。

小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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著書:
人材紹介の仕事がよくわかる本
エンジニア55歳からの定年準備