離職票は最短でいつ届く?届かない原因と対処法を徹底解説

離職票は、失業手当の受給を申請する際に必要な重要書類です。離職票は、退職後いつ手元に届くのでしょうか?離職票が届かない場合、そのまま放置してしまってはいけません。離職票が届かない原因と、届かないときの対処法を解説します。

離職票はいつ届く?

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(出典) photo-ac.com

離職票は、正式には『雇用保険被保険者離職票』と呼ばれ、退職したことを公的に証明するために交付される書類です。

退職した会社から離職票がなかなか送られてこず、やきもきしている人も多いのではないでしょうか?退職後、離職票が届く時期について解説します。

目安は退職日の10日~2週間後

離職票が届くのは、退職してから10~14日(2週間)程度かかると考えておきましょう。

会社から退職者へ郵送または手渡しされるものですが、発行元はその地域を管轄しているハローワークです。

会社が独自に発行できる書類ではなく、ハローワークとのやりとりが挟まれるので、退職日から離職票の受け取りまでに日数がかかることは珍しくありません。

離職票の発行から送付までには、以下の手順を踏んでいます。

  1. 会社からハローワークへ退職者の『雇用保険被保険者資格喪失届』と『離職証明書』を送付する
  2. 送付された書類を元にハローワークが離職票を発行し、会社へ返送する
  3. 会社から退職者へ離職票を送付する

参考:雇用保険被保険者離職証明書についての注意|厚生労働省

最短でも2~3日は待とう

会社がハローワークへ必要書類を送りさえすれば、その日のうちにハローワークで離職票を発行してもらい、会社へ送付してもらうことも可能です。

しかし、たとえハローワークから会社への離職票の発行・送付が即日で行われたとしても、会社から退職者への郵送手続きには1~2日かかるでしょう。離職票が会社から送られてくるまで、最短でも2~3日は待った方が賢明です。

よほど急いでいるのであれば、会社まで直接受け取りに出向くのもよいでしょう。それ以外の場合には、数日待たされたからといって不安に思う必要はありません。

退職者からの希望がなければ送付しない会社も

あまり知られていない事実ですが、会社には全ての退職者に対して離職票を交付する義務はありません。退職者が59歳以上の場合は例外があるものの、退職者が希望した場合のみ、その義務が生じるのです。

そのため、退職者から「離職票を出してほしい」と請求されなければ、ハローワークに離職票の発行依頼を行わない会社も存在します。

トラブルを避けるためにも、離職票の受け取りを希望する旨を、退職前に会社に伝えておくとよいでしょう。

離職票が届かない原因は?

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会社に対して離職票を請求したにもかかわらず、一向に郵送されてこない場合もあるでしょう。離職票が交付されるまでのプロセスのどこかで、何らかのトラブルが生じている可能性があります。

離職票が届かないときに考えられる原因について解説します。

会社が手続きをしていない

会社からハローワークに対して、離職票の発行依頼が行われていない可能性があるでしょう。あってはならないことではありますが、会社の繁忙期など、ほかの業務に追われて担当者が手続きを失念しているのかもしれません。

社内の情報共有がうまくいっておらず、退職者が離職票の交付を希望している旨を、担当者が把握していないケースも考えられます。

会社には、退職者が退職した日の翌々日から10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークへ送付する義務があります。

退職者が離職票を請求している場合、その際に離職証明書も同送されますが、この手続きが行われていない場合、離職票の発行自体が行われません。

ハローワークが繁忙期

会社からハローワークへの届け出は正しく行われているものの、ハローワークでの発行手続きが滞っているパターンもあるでしょう。

退職者・転職者が多くなる3~5月は、ハローワークの繁忙期です。雇用保険の届け出や離職票の発行依頼も倍増するため、通常よりも離職票の発行が遅れてしまう可能性があるでしょう。退職者の増えやすい、ボーナス支給直後の時期も同様です。

会社から「すでに発行依頼を出している」と回答があったにもかかわらず離職票が届かない場合、ハローワーク側で手続きが止まっているものと考えられます。

雇用保険の加入条件を満たしていなかった

在職中に雇用保険未加入であった場合、失業手当の申請・受給自体が不可能です。その場合は、離職票が発行されることもありません。

従業員を雇用保険へ加入させることは、労働者を1人でも雇っている会社の義務です。しかし、以下の適用条件を満たさない従業員の場合、その限りではありません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある
  • 昼間学生でない

時短勤務や短期雇用の場合、雇用保険自体に加入していなかったというケースも考えられるので、注意が必要です。

参考:
雇用保険事務手続きの手引き 第4章 被保険者について|厚生労働省
雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

離職票が届かないときの対処法

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退職日から2週間以上たっても、離職票が届かない場合の対処法を紹介します。そのまま放置せず、なるべく早くアクションを起こしましょう。

会社に催促する

まずは、在籍していた会社に状況を問い合わせてみましょう。会社の担当者が、ハローワークへの離職票発行依頼や発行済みの離職票の送付を、うっかり失念している可能性もあります。

その場合、退職者本人から連絡を入れて催促すれば、スムーズにいくことがほとんどでしょう。離職票の受け取りを急いでいるなら、「なるべく早く送ってほしい」と担当者に念押しすることをおすすめします。

退職者から希望があった場合、離職票の交付は会社の義務となります。相手が忙しそうだからといって、引け目を感じる必要はありません。

ハローワークに確認する

会社に催促しても一向に離職票が送られてこない場合は、その会社の管轄区域内にあるハローワークに確認の連絡を入れてみましょう。ハローワークで発行手続きが滞っていたなら、そのまま手続きを進めてくれるはずです。

会社が必要書類の提出を怠っていることが発覚した場合は、ハローワークから会社へ連絡してもらいましょう。何らかの事情で会社へ直接コンタクトを取ることが戸惑われる際も、ハローワークに相談することをおすすめします。

公的機関であるハローワークから連絡が入れば、会社も迅速に対応してくれるでしょう。

弁護士に相談する

コンプライアンス意識の低い会社であれば、退職者に対する嫌がらせとして、離職票の交付を遅らせているケースも考えられます。

賃金の未払い・サービス残業の強要が常態化しているような問題のある会社に勤めていた場合や、円満退職でなかった場合などは、会社が故意に離職票の郵送を行っていない可能性も考えるべきでしょう。

どのような辞め方をしたにせよ、離職票の交付を希望する退職者に離職票を送らないという行為は、許されるものではありません。ハローワークに相談しても事態が好転しない場合は、労働法に詳しい弁護士への相談も視野に入れましょう。

離職票は何のために必要?

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離職票は、会社を辞めた人なら誰でも必要な書類というわけではありません。離職票が必要になるシーンについて解説します。

雇用保険の失業手当(基本手当)を申請するため

在職中に雇用保険に加入していた労働者は、離職後に次の就業先が決まっていない場合、失業手当を受け取ることができます。

失業手当の受給を開始するにはハローワークでの手続きが必要になりますが、その際に不可欠なのが前の職場から交付された離職票です。失業手当の受給を希望する場合は、離職票の請求を忘れないようにしましょう。

しかし、離職後に失業手当を受け取る予定がない人は、離職票を交付してもらう必要はありません。

自分が雇用保険に加入していたかどうか分からない場合は、在職中に受け取った給与明細を確認してみましょう。雇用保険の名目で支給額から天引きされている金額があれば、雇用保険に加入していたと判断できます。

退職証明書では失業手当の申請はできない

国の公的機関であるハローワークから発行される離職票と似て非なる書類に、退職証明書があります。どちらも退職者から希望があった際に発行されるものではありますが、企業が独自に発行可能な退職証明書は公的文書ではありません。

退職証明書は、前職の在職期間や退職日を明らかにする書類として、年金や健康保険の切り替え手続き時に提出することができます。

しかし、失業手当の申請時には前職からの離職を公的に証明する離職票が必要となり、退職証明書で代替することはできません。

離職票はいつまでに必要?

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離職票は、いつまでに手元に届いていればよいのでしょうか?離職票の用途と併せて、詳細に解説します。

失業手当の申請は受給期間である1年以内に

離職票の発行に期限はなく、失業手当の申請にも期限はありません。しかし、失業手当が受け取れるのは、原則として退職日の翌日から『1年間』と定められていることに注意が必要です。

離職票の受け取りや失業手当の申請が遅くなると、失業手当を満額受け取れない可能性が生じてしまう可能性があります。失業手当は複数回に分けて給付されますが、1年という期間中に受け取り切れない場合、その後の給付は打ち切られてしまいます。

退職してから1年が過ぎてしまっていた場合、離職票を受け取っても、失業手当を受け取ることはできません。

年齢、被保険者期間などで給付日数が異なる

失業手当を受給できる日数は、人によって大きく異なります。年齢や被保険者期間、退職理由(自己都合か会社都合か)によって、90~360日の間で異なります。

自己都合で退職した場合の給付日数は90~150日で、会社都合(倒産・解雇など)で退職した場合は90~330日です。

また、失業手当には、申請から受給までの間に待機期間(給付を受け取れない期間)が設けられていることにも注意しましょう。

離職票の提出を行った日から7日目までが待機期間となり、自己都合退職の場合は、そこからさらに2~3カ月の待機期間が設定されています。

なるべく早く失業手当を受給するためにも、可能な限り迅速に離職票を入手し、申請に向かうべきといえるでしょう。

参考:ハローワークインターネットサービス よくあるご質問(雇用保険について)

離職票がなくても仮手続きが可能

何らかの事情により会社から離職票が送られてこず、催促にも応じてもらえない場合、相当な焦りを覚えることでしょう。失業手当を受け取れないとなれば、労働者が受ける不利益は甚大です。

退職日から日数がたっても離職票が届かない場合は、失業手当申請の仮手続きを行うことも視野に入れましょう。

ハローワークによっては、退職証明書などの退職日が明記された書類を持参すれば、離職票なしでも失業手当の仮手続きが可能なケースがあります。

仮手続きを行ってから『4週間後』までに離職票を提出する必要はありますが、なるべく早めに申請を行うという意味においては有効な手段でしょう。

ただし、仮手続きの可否や内容については、ハローワークによって差異がある場合があります。事前に管轄区域内のハローワークに確認を入れましょう。

2週間以上たっても届かなければ問い合わせよう

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離職票が退職者の手元に届くまでには、およそ10日から2週間かかります。この日数が過ぎても離職票が送られてこない場合、会社やハローワークに問い合わせるなど、何らかの対処を行いましょう。

失業手当の受給申請には、前職の離職票が必須です。申請が遅れるほど受給可能期間が短くなってしまうので、なるべく早く離職票を入手し、手続きを完了させましょう。

小西道代
【監修者】All About 労務管理ガイド小西道代

労務トラブルを未然に防ぐ社会保険労務士・行政書士。行政書士法人グローアップ代表、社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。
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