育休明けに転職をしたいと考えているなら、スケジュール感を知った上で計画的な行動が必要です。子育てとの両立が可能な転職ができるよう、注意点や転職先の見極め方を紹介します。退職の意思のスムーズな伝え方も見ていきましょう。
育休明けでも転職はできる?
「育児をしながら以前のように働ける気がしない」「職場には子育てしながら働いている人が他にいないため肩身が狭くなりそう」といった理由から、育休明けに転職をしたいと考えている人もいるかもしれません。
まずは、育休明けの転職は可能なのか、法律的な観点から解説します。
法律的な問題はなし
育児休業は復帰することが原則ですが、法律では育休明けの転職を制限していません。育休明けにすぐ退職し、次の職場へ転職したとしても法的な処罰はないため、状況に合わせて選択できます。
ただしトラブルには注意しましょう。育休明けに復帰せずに転職すると、育休後の復帰を念頭に採用や人員配置を行っている職場へ迷惑がかかる可能性があるためです。
育児休業給付金も返還の必要なし
今の勤務先では子育てとの両立が難しいといった理由から、育休明けに転職したいという場合、育児休業給付金を返還する必要はありません。育児休業に入るタイミングで、退職や転職の意思があったわけではないためです。
ただし育児休業に入るときに、退職したいという思いがすでにあった場合、育児休業給付金を受け取ったり受け取ろうとしたりすると、不正受給となる可能性があります。雇用保険法第61条の9第1項で以下のように定められているため、注意が必要です。
偽りその他不正の行為により育児休業給付の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、育児休業給付を支給しない。
育休明けの転職におけるスケジュール感
育休明けの転職はどのように進めていけばよいのでしょうか?スムーズな転職につなげられるよう、育休明けに転職をする場合のスケジュール感を見ていきましょう。
転職活動のタイミング
転職活動を始めるタイミングとして、育児休業中と復帰後しばらくしてからが考えられます。育休明けからすぐに新しい職場へ転職したいと考えているなら、転職活動は育休が明ける2~3カ月前から始めます。
ただしこの場合だと、育児休業中に退職・転職を決めていると捉えられる可能性があるため、育児休業給付金を満額受け取れない可能性がある点に注意しましょう。
復帰後しばらくしてから転職する場合には、仕事と育児のペースをつかみ、落ち着いてきた頃合いの転職を目指すのがおすすめです。例えば、復帰から6カ月後の転職を目指すなら、復帰後3カ月くらいから転職活動を始める必要があります。
職場に退職を伝えるタイミング
退職するときには、事前にその意思を職場へ伝えておかなければなりません。基本的には、会社ごとに定めている就業規則にのっとって伝えるとよいでしょう。退職する日の1~2カ月前に伝えるよう定めているケースがほとんどです。
また民法第627条第1項では、退職を伝えるタイミングについて、以下の通り2週間前までに伝えるよう定められています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
ただし、復帰予定日の2週間前に退職の意思を伝えると、職場では代わりの人材を採用しなければならず混乱が生じる可能性があります。これは、代わりの人材が決まるまで退職を引き留められることも起こり得る事態です。
この点からも就業規則に従い、早めに伝えるのが望ましいといえるでしょう。
退職の意思を角を立てずに伝える方法
角を立てず穏便に退職したいという気持ちが強いと、つい夫の仕事の都合や子どもの体調などを理由にしたいと考えてしまうかもしれません。ただしうそであった場合には、ばれると信頼が失われます。理由は正直に伝えるのが基本です。
このとき、「いつ辞めても私の自由」といった態度は控えましょう。退職することも退職する時期を決めることも、労働者に認められている権利ですが、円満退職するには「退職させていただく」といった気持ちと態度が重要です。
育休明けの転職で知っておくべき注意点
仕事と子育ての両立を考えて転職したにもかかわらず、計画通りにいかないこともあります。そのような事態を避けるためにも、あらかじめ育休明けの転職の注意点を知っておきましょう。
時短勤務・有給休暇はすぐに使えない
「時短勤務で働くために転職したい」「今より休暇制度が充実している会社へ転職したい」と考えているなら、転職を希望している企業の制度をよくチェックしましょう。
時短勤務や有給休暇が魅力的でも、転職後すぐに利用できない企業は少なくありません。転職の理由が「子育てとの両立」であるなら、転職先をよく見極めることが大切です。
また、働き方そのものを変える必要があるかもしれません。リモートワークやフレックスタイム制などを導入している企業を検討するのも1つの方法です。
新しい仕事に慣れる・育児と両立させる必要がある
転職すると、これまでと異なる環境で新しい仕事をする必要があります。ペースをつかむまでは大変なこともあるでしょう。加えて、職場での人間関係の構築にも気を抜けません。
慣れない仕事に取り組みながら帰宅後は育児をしなければならず、疲れ果ててしまうことも考えられます。仕事に慣れるまでの間は、両立が難しいと感じることもあるかもしれません。
子どもの保育所に影響がある恐れも
育休明けの転職により、保育所の内定が取り消される恐れがある点にも注意しましょう。転職のために今の職場を退職すると、入園のための指数が低くなる恐れがあるためです。
指数の計算は自治体ごとに基準が異なるため、事前に確認しておくと安心です。求職活動中に入園の内定が取り消されることがないか、保育所を利用できるか、職場や雇用形態が変わっても利用できるかなどを問い合わせておきましょう。
転職先を探す際のポイント
転職先を探すときには、育児と両立しながら働きやすい会社を選ぶのがポイントです。どのような基準で選ぶとよいかを見ていきましょう。
子育てに理解がある職場か
育休明けの転職では、子育てに対する理解度が十分な職場であることの見極めが重要です。子どもが小さなうちは、急な体調の変化で休暇を取らなければならないこともあるでしょう。どうしても残業に対応できない日もあります。
子育てへの理解を得られやすい職場であれば、そのような事態にも対応可能です。見極めるときには利用できる制度に加え、育児休業からの復帰率や女性管理職の割合などをチェックするとよいでしょう。
子育て世帯が活用できる制度があるか
転職先選びでは、子育て中にあると便利な制度が整っているかも重要です。時短勤務制度があれば保育所のお迎えに余裕を持ちやすいでしょう。フレックスタイム制度があれば急な通院や行事などに対応しやすくなります。
制度が導入されていることと同時に、実際に活用されているかもチェックしたいポイントです。転職後すぐに利用できるかも確認しておきましょう。
現職・転職先ともに誠実に接することが大切
育休明けでも転職は可能です。ただしタイミングには注意しましょう。転職するタイミングによっては、育児休業給付金が満額受け取れない可能性や、保育所の内定が取り消される恐れがあります。
また、円満退職には誠実な態度が欠かせません。退職の理由を正直に伝え、退職日を調整します。その上で育児に理解のある転職先を選べば、仕事と育児の両立を実現しやすくなるでしょう。
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