退職届の書き方とは?退職願との違いや提出するタイミングも

退職届は会社を辞めるときに必要な書類として知られています。初めて書く場合は何を書いたらいいのか分からず、戸惑うことが多いでしょう。スムーズに退職するために、退職届の書き方のポイントや退職願との違いなどを紹介します。

退職届とは?

退職届

(出典) photo-ac.com

退職届は退職する際に、労働者が会社側に提出する書類です。退職届と聞いて、「退職願や辞表と何が違うの?」と思う人もいるでしょう。

会社を辞めるときに必要な書類は1種類ではないので、混同しやすいといえます。それぞれの意味の違いを見ていきましょう。

退職日が確定した後に提出する書類

退職届は『労働契約の解除』を申し出るための書類です。上司に退職の気持ちを伝え、『退職が確定した後』に提出します。受理されると、労働契約の解除が認められるのです。

一般的な企業では『就業規則』で退職届の提出が決まっており、書類として残る形で提出しなければなりません。

パートやアルバイトの場合は口頭で退職の意思を伝えれば受理されますが、正社員が自分の意思で辞める際は、ほとんどのケースで退職届の提出が義務付けられています。原則として、一度退職届が受理されれば撤回できません。

退職願との違い

退職願は文書や口頭で『退職したい』と願い出ることを指します。退職届とは違って、文書として提出しなければならないと決まっているわけではなく、上司に辞める意向を伝える行為を退職願と呼ぶことが一般的です。

上司に相談せずにある日突然退職届を出すと、引継ぎや人手不足などの問題が生じ職場が混乱します。多くの人に迷惑を掛ける原因になるので、事前に退職願を出して準備をするのです。

退職願をすれば、労働契約の解除が認められるわけではありません。会社側と話し合った結果、退職日が決まれば退職届を出すという流れです。

辞表との違い

辞表を提出しなければならないのは、『雇用関係にない役職』に就いている人です。例えば、代表取締役や理事長などが職務を退くときに用意します。

辞表を提出したからといって必ずしも会社を辞めるわけではなく、辞表を提出した後で、ほかの業務に携わるケースもあります。

一般社員が会社を辞めるケースでは、退職届を出します。ただし、公務員の場合は退職届と辞表は同じものを指すことを押さえておきましょう。

退職届を書く前の準備

退職届とハンコ

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書く要領を得ないまま、思い込みで書き始めてしまうと失敗しやすくなります。失敗を避けるために、退職届を書き始める前に準備しておくべきことをチェックしましょう。

まずは就業規則をチェック

『全社員が共通で守らなければならない決まり』を指し、労働条件に関することや職場で守るべき規律などが記載されています。

さまざまな規則と一緒に、退職に関する決まりも記載されているので確認しましょう。退職までにやるべきことや、退職日の決め方などが決まっている場合もあります。

入社時に配布された書類一式や、社内の内部ネットワークの共有フォルダなどを確認すると就業規則が記載されています。冊子やデータとして保存され、全社員が見られるようにしていることが一般的です。

企業のホームページに掲載されている場合もあるので、確認してみましょう。

必要なもの

退職届を書く際には、『白い用紙』『黒のボールペンや万年筆』『白い無地の封筒』などを用意しましょう。会社側から指定がない場合、用紙のサイズはB5やA4を使用します。罫線入りでもなしでもどちらでも構いません。

鉛筆のように簡単に消せる筆記具は使わないことがマナーです。消せるボールペンは熱で消えることがあるので、消えないタイプのインクで書きましょう。

封筒は120×235mmの『長形3号サイズ』を用意します。中身が透けて見えないように二重になっているもので、郵便番号を記入する枠がないシンプルなものを使いましょう。

むき出しのままではなく、必ず封筒に入れて渡しましょう。シンプルな無地の封筒がどうしても見つからない場合、やむを得ず郵便番号の枠がついたものを使用することも一つの方法です。

退職届の書き方

退職願を書く人

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企業によって若干の違いはあるものの形式は大体決まっており、必要事項を入れて作成します。漏れがあると受理されないので、しっかりと確認しましょう。続いて、退職届の基本的な書き方を紹介します。

基本は手書きだと考えよう

パソコンで作成してもいいのか、それとも手書きでなくてはならないのか頭を悩ませる人もいるでしょう。

退職届の目的は『労働契約の解除を文書で残すこと』なので、パソコンでも手書きでもどちらでも構わないという考え方もありますが、基本的には手書きが好ましいです。

現代では書類作成の際にパソコンで作業することは当たり前ですが、一昔前は重要書類は全て人の手で作成していました。そのせいか、慣例的に退職届は手書きでと決まっている企業もあります。

手書きは面倒に感じられるかもしれませんが、お世話になった気持ちを込めて丁寧に手書きすれば好印象を与えられるはずです。それほど長い文章を書くわけではないので、手書きにしましょう。

パソコンで退職届を作成する場合も、署名の部分だけは手書きします。筆跡は人によって異なるので、効力が問題になるような大事な書類には、確かに本人が書いたことを示すために『自筆の署名』を入れましょう。

退職届の形式

退職届には、書類名・退職の事実・退職日・届出日・氏名・宛名などを書きます。日付は西暦と年号どちらでも構いません。普段、会社が作成している書類に合わせるとよいでしょう。

自分の署名の後には『押印』をします。インク浸透印ではなく印鑑を使用しましょう。宛名は企業の代表者の役職名と氏名を書きます。一般的な会社で必要とされる項目であり、会社によってはフォーマットが決まっている場合もあるので、フォーマットの有無が分からないときは人事部に確認してみましょう。

退職届を書く際のポイント

書類を書く人

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初めて退職届を書く際、さまざまな疑問が出てきます。通常の書類を作るときとは違い、初めて用意するという方も多いでしょう。

書き方のポイントや、書く際の参考にしたい定型文を縦書きと横書きのそれぞれに分けて紹介します。

退職理由は「一身上の都合」でOK

退職理由は人によってさまざまです。キャリアアップを目指して転職する人もいれば、体の不調などを理由に退職する人もいます。

理由をどれくらい詳しく書くべきか悩む人もいるかもしれませんが、退職届は『一定の形式』に当てはめて作成するものなので、詳細な理由は書かず一身上の都合と記載しましょう。

一身上の都合は『自己都合』を意味する定型句で、自分の身に起きたことだけでなく、身内の看病や介護をしなければならないといった家族の事情があるときにも使用できます。

退職届以外でも、履歴書に退職理由を書くときや内定の辞退などで使用する機会がある表現です。

退職理由が会社都合の場合

理由が自己都合ではない場合もあります。会社側の理由等、自分ではどうにもならない理由で辞めなければならないこともあります。

会社都合で退職する際は『事業所閉鎖のため』『退職勧奨のため』など、該当する理由を記しましょう。

会社都合なのに自己都合であるかのような書き方をしてしまうと、失業保険をスムーズに受けられなくなる可能性があります。本来、受け取れるはずだった失業保険の金額が減るリスクを避けるため、正しい理由を記載しましょう。

縦書きで書くのが一般的

退職届は縦書きで書くことが一般的です。会社側から指定がない限りは、縦書きしましょう。

 

【定型文】

退職届

                                    私儀

 

このたび、誠に勝手ながら一身上の都合により、令和四年五月十五日をもって退職いたします。

 

令和四年三月十五日(届出日)

制作部 ○○○○(氏名)印鑑

株式会社○○代表取締役社長 ○○○○殿(宛名)

 

 

冒頭に何の書類なのかが一目で分かるように『退職届』と書き、1行開けて下側に『私儀』と書きます。これは『私事で恐縮ですが』という謙遜の意味がある言葉なので、小さな文字で端の方に記載しましょう。

最後に、退職届を提出する相手の役職と氏名を書いて完了です。

横書きで書く際のマナー

退職届は絶対に縦書きと決まっているわけではなく、会社によっては横書きでの提出が求められる場合もあります。要素は縦書きと一緒ですが、記載する順番が異なる点に注意しましょう。

 

【定型文】
                 退職届
                          2022年3月15日(届出日)

株式会社○○代表取締役社長 ○○○○殿(宛名)

                        制作部 ○○○○(氏名)印鑑

                                    私儀

 

このたび、一身上の都合により、2022年5月15日をもって退職いたします。

 

                                     以上

 

 

冒頭の見出しは中央部に配置し、届出日・私儀・氏名・以上は右揃えにします。会社名や役職名などは省略せずに書くことがマナーです。縦書きと同様に、押印を忘れないようにしましょう。

知っておきたい封入の仕方

封筒と便箋と万年筆

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書き終えたら、封筒に入れた状態で上司に渡します。必ず封筒を用意することがマナーです。

書き方だけでなく、封入の仕方にもマナーがあります。折り方や封の仕方などのポイントを見ていきましょう。

表・裏書きのマナー

表書きは『退職届』とします。中央よりも、やや上に書くとバランスが良く見えるでしょう。裏側の左下に、自分が在籍している部署名と氏名を省略せずに書きます。

使用する筆記具は、退職届を書く際と同じように黒いボールペンや万年筆などを使用しましょう。筆ペンや太いフェルトペンを使うと文字が目立ちすぎてしまうため、あまり主張しすぎない太さのものを使うことがおすすめです。

封筒の入れ方にもマナーがある

書き終えた書類は適当にたたまずに、『三つ折り』にして封筒に入れます。三つ折りとは書類が三等分になるように折る方法のことです。最初に書類の下側を内側に折り、続いて上側をかぶせるように折るだけなので、難しくありません。

綺麗に折れたら、左側に90°回した状態で封筒に入れます。封筒裏面の右手に、書類を開く部分が来るように入れましょう。このように入れると、畳まれた書類をスムーズに開いて読みやすくなります。

最初からのりやシールが付属している封筒を使う場合、封をして手渡しします。封をしてあることを示す『〆』のマークを、ふたと本体の境目に手書きしましょう。何もついていないタイプの封筒は、封をせずふたを折っただけの状態で渡します。

退職届を郵送する場合

手渡しが基本ですが、事情があってどうしても手渡しできないときは郵送が許可される場合があります。郵送できるかどうかは自己判断せず、事前に人事部に確認しましょう。

会社側の許可が取れたら、退職届を入れた白い封筒に封をします。郵送中に中身が飛び出ないように、のりや付属のシールなどを使ってしっかりと封をしましょう。一回り大きな別の封筒に入れ、直接宛名や住所を記載して郵送します。

退職届だけでなく、『送付状』も添えると丁寧です。送付状は拝啓や敬具を使う形式で記入します。時候の挨拶・退職届を送付する旨・お世話になったお礼を書き、最後は相手を気遣う言葉で締め、敬具と記しましょう。

退職届を提出するタイミング

退職届を差し出すスーツ姿の人

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退職届を出すタイミングを間違えると、手続きをする人に迷惑をかけてしまいます。退職日のどれくらい前に出せばいいのか、確認しておきましょう。

民法上では2週間前

退職届を出す時期は、民法では退職の2週間前と決まっていますが、就業規則に記載されているルールに従いましょう。実際には『1カ月前まで』に、退職届の提出が求められるケースが少なくありません。

退職前は引継ぎや挨拶回りなどで忙しくなることが想定される上、有休消化の必要もあるので余裕を持って提出した方が安心です。

理想の流れとしては、退職したい日の2~3カ月前に辞める意思を伝え、会社側と折り合いがついたら1カ月前までに退職届を出し、受理されれば退職の手続きが完了となります。

提出先は直属の上司

宛名は会社の代表者にするので勘違いしがちですが、実際に渡すのは直属の上司です。会社によっては、もっと上の役職の人に渡すように指示されることもあります。

人事部に提出する決まりになっている場合もあるので、社内のルールに従いましょう。渡すときは「大変お世話になり、ありがとうございました」というように、お礼の言葉を添えると丁寧です。

やるべきことを済ませて気持ちのよい退職を

退職届と書類と社員証

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退職前にやるべきことを全て済ませれば、次の職場でお世話になる際にすがすがしい気持ちで働けます。退職願と退職届は名前は似ていますが、別物なので混同しないようにしましょう。

辞める意思を伝えた後、会社と労働者の間で話がまとまって初めて具体的な退職日が明らかになります。退職が決定したら、辞める1カ月前を目安に退職届を提出することが基本です。

退職届を書く際は一般的な定型文の形で出す以外にも、社内でフォーマットが決まっている場合があります。違う形式で提出すると受理されず、事務手続きに時間がかかってしまうでしょう。

急いで書こうとすると、誤字脱字などに気付かないまま提出する心配があるので、時間に余裕を持って準備することをおすすめします。

小寺良二
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド小寺良二

若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー