退職時には源泉徴収票を忘れず入手。発行してくれない場合の対処法も

退職に伴い会社から受け取らなければならない書類の中に、源泉徴収票があります。会社から送付されない場合や、失くしてしまった場合はどうすればよいのでしょうか? 退職後に源泉徴収票が必要となる場面や、発行されない場合の手続き方法などを紹介します。

退職後の源泉徴収票の役割とは?

源泉徴収票

(出典) photo-ac.com

源泉徴収票を見れば、給与やボーナスなどを含んだ会社からの支給額や、所得税をいくら納めているかが分かります。会社員は、年末に会社から源泉徴収票を受け取るので、見たことがある人は多いでしょう。

ここでは退職後に、源泉徴収票が必要とされる場面について見ていきましょう。

転職先での年末調整のときに必要

退職した年に再就職する場合、『新しい会社で年末調整してもらうため』に源泉徴収票が必要です。年末調整の対象者は、原則として当年の年末にその会社に在籍していて、年末調整の必要書類(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書)を会社に提出している人なので、年の途中で採用された人も対象となります。

毎月の給与から天引きされる所得税の額は概算で計算されたものであるため、正確な納税額ではありません。そのため、最終的な所得や受けられる控除が決定する年末に、源泉徴収しすぎている人には還付を、足りていない人からは追加で徴収を行う必要があります。

このとき転職者の場合、前職での源泉徴収票がないと、新しい勤め先では、1月1日から入社までの収入や納税額がわからず、年末調整をする際に正しく計算ができません。退職する会社から源泉徴収票は発行されますので、新しい勤め先に提出するのを忘れないようにしましょう。

確定申告する場合にも必要

源泉徴収票は、確定申告の際にも使用します。退職後、年内に就職しなかった場合は自分で確定申告して、払うべき税額を確定しなければなりません。

多く払いすぎていれば、その分を還付してもらい、不足していれば足りない分を納めます。

また、年内に転職したとしても、新しい職場に源泉徴収票を提出しなければ、以前の会社で納めていた分を合算できません。前職の源泉徴収票の提出が間に合わなかった場合も、自分で確定申告を行います。

源泉徴収票をもらえない場合の対処法

スマートフォンを操作するスーツの人物

(出典) photo-ac.com

源泉徴収票がないと、転職先で年末調整してもらったり、自分で確定申告したりする際に不都合が生じます。源泉徴収票を会社からもらえなかった場合、どのように対処すればよいのか見ていきましょう。

退職した会社が発行してくれない場合

源泉徴収票が送られてこないときは、退職した会社に電話やメールなどで問い合わせましょう。発行のタイミングは会社によって異なりますが、通常は『退職から1カ月以内』に源泉徴収票が送られてきます。

給与所得の源泉徴収票は、法律で交付が義務付けられており、会社は従業員の退職から1カ月以内に源泉徴収票を交付しなければなりません。

会社から給与所得を受け取っている会社員であれば、基本的に催促しなくても会社から送付されます。

参考:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

退職した会社が倒産した場合

源泉徴収票は、退職後に会社から送られてくることが基本ですが、何らかの事情で会社が倒産して会社の存在そのものがなくなってしまった場合は、会社と連絡を取りたくても取れないケースがあるかもしれません。もし連絡が取れない場合には、所轄の税務署へ行って相談しましょう。

入手できない場合は税務署に相談を

以前の会社に連絡し、源泉徴収票の発行を依頼しても送付されないときは、「源泉徴収票不交付の届出手続き」をすることができます。自分で税務署に行って手続きするか、届出書を送付します。

給与明細書を保存してあれば、コピーも一緒に提出しましょう。手続きに対する手数料はかかりません。この手続きにより、税務署から会社に指導が入り、状況が改善する場合があります。

参考:[手続名]源泉徴収票不交付の届出手続|国税庁

源泉徴収票を紛失してしまったら

パソコンを操作しながら通話している男性

(出典) photo-ac.com

退職から再就職までに間が空くと、源泉徴収票がどこにいったか分からなくなる場合があるでしょう。源泉徴収票を失くしたときの手続き方法を紹介します。

退職した会社に再発行を依頼

退職時に源泉徴収票を受け取ったにもかかわらず、誤って捨ててしまったりどこにしまったか分からなくなったりする場合があります。もし失くしてしまったときは、退職した会社に連絡して再発行を依頼しましょう。

ただし、会社によっては再発行の際に、郵送費などを別途請求される場合があります。

万が一、何らかの理由があって再発行を断られてしまったときは、税務署に相談しましょう。

発行にかかる時間は会社による

源泉徴収票の再発行にかかる時間は、会社によって異なるものの、通常は1週間程度で送られてきます。

特に再発行を依頼した時期が担当者の繁忙期にあたるときは、やや時間がかかるでしょう。源泉徴収票の作成を外部委託している場合なども、時間がかかる傾向にあります。

少々時間がかかることを見越して、紛失に気付いた時点で速やかに再発行依頼をしましょう。

源泉徴収票は退職後も大切に保管しておこう

源泉徴収票

(出典) photo-ac.com

源泉徴収票は、確定申告や転職先で年末調整してもらうために使用するので、受け取ったら大切に保管しておきましょう。

一般的には、退職後1カ月以内に送付されますが、担当者が忙しかったりすると、なかなか送られてこないケースもあります。

源泉徴収票の発行は会社の義務なので、たいていの場合は速やかに発行してもらえるはずです。退職後に会社と連絡が取れなくなり、源泉徴収票を受け取れないトラブルが起きた場合は所轄の税務署に相談しましょう。

長友秀樹
【監修者】All About 社会保険労務士試験ガイド長友秀樹

医療機関の人事・労務はお任せ!元製薬会社MRの社会保険労務士
社会保険労務士。社会保険労務士法人NAGATOMO代表社員。MR、人事コンサルタント、医療業界を熟知した社会保険労務士の経験をいかし、病院・クリニックの規模に合わせた人事制度の構築、人事・労務問題をサポートしている。
All Aboutプロフィールページ
公式サイト