ブラック企業の見分け方!求人票から面接内容まで確かめ方をチェック

ブラック企業に入社してしまうと、心身のストレスがたまりやすくなるでしょう。ブラック企業への転職を避けるためには、見分け方を知っておくことが重要です。ブラック企業の特徴や見分ける方法について詳しく解説します。

そもそもブラック企業とは?

デスクワークにつかれている男性

(出典) photo-ac.com

ブラック企業とは、どのような企業のことを意味するのでしょうか?まずは、ブラック企業の概要と主な特徴を理解しましょう。

明確な定義はされていない

ブラック企業とは、労働の条件や環境が悪く、従業員に過度な負担を強いる企業の総称です。明確な定義はなく、厚生労働省も公式にブラック企業という言葉は使っていません。

もともとは、違法な営業を繰り返すような企業を指す言葉として使われていました。若者の就職難が社会問題化した、2000年代後半からスラングとして使われるようになり、現在は『就職をおすすめしない企業』という意味で広く認知されています。

ブラック企業の定義は、個人の考え方や感じ方により異なりますが、企業がウソをつかざるを得ない環境や規定以上の残業・サービスなど、一定の基準は存在します。

ブラック企業といわれる主な原因

ブラック企業には、いくつかの共通した特徴があります。ブラック企業といわれる代表的な要因は、次の通りです。

  • 長時間労働や過重労働を強いられる
  • サービス残業が多い
  • 休日出勤が常態化している
  • 有休取得率が低い
  • 給料が最低賃金を下回っている
  • 従業員の入れ替わりが激しい
  • 人間関係のトラブルが多い
  • ハラスメントが横行している
  • 社員教育を軽視している

コンプライアンス意識が低い企業や、従業員を使い捨てのように扱う企業は、ブラック企業とみなされやすくなります。厚生労働省が定める労働条件の基準を守らないことも、ブラック企業に見られる特徴の1つです。

ブラックになりやすい業界

分厚い資料が置かれたデスク

(出典) photo-ac.com

ブラック企業を避けて転職先を探したいなら、最初に業界を絞るのがおすすめです。ブラックになりやすい主な業界を紹介します。

人手を必要とする業界

業績を上げるために人手を必要とする業界は、ブラックになりやすい傾向があります。企業が増員に消極的な態度を取ると、結果的に1人当たりの労働量が増えるためです。

売上を伸ばすために人手が必要な場合、本来なら企業は人員の増加を検討すべきでしょう。しかし、企業としては限られた人員で最大限の成果を得ようとするため、既存の従業員に無理を強いることになってしまうのです。

人手を必要とする業界には、飲食・運送・旅行・介護・人材・学習塾など、さまざまな業種が該当します。いずれも、システムやツールなどで効率化を図りにくいビジネスです。

個人を相手にしている業界

直接相対する顧客が個人となる業界も、ブラック企業が多いとされています。個人を接客する宿泊・飲食業界や、個人を相手に営業をかける住宅業界などが当てはまります。

接客や営業といった職種はクレームを受けることが多く、対応に追われてブラックな労働環境になりがちです。個人を相手にする業界は休日の業務が増えるため、人手不足にも陥りやすくなるでしょう。

営業職の場合、ノルマが設定されることもあります。厳しいノルマを達成するために長時間労働を余儀なくされれば、働き方がブラック化するケースも多くなるでしょう。

体力や精神力を消耗しやすい業界

ブラックになりやすい仕事としては、体力や精神力を消耗しやすい業界も挙げられます。業務を通して心身に強いストレスを感じ始めると、仕事自体が嫌になることもあるでしょう。

医療・介護・福祉・建設・保安などの業種は、体力や精神力を消耗しやすいといえます。接客を伴うタクシー運転手や、長時間拘束される長距離ドライバーも、ブラックな仕事になりやすい傾向があります。

ただし、これらの業種は企業ごとの労働環境に問題があるというより、業務の構造面からブラックになるのも仕方がない側面があるのも事実です。同じ業界内であれば、どの企業もある程度心身を消耗するのは変わらないでしょう。

ホワイト企業について

パソコンを操作するデスク

(出典) photo-ac.com

ブラック企業の対義語として生まれた言葉が、ホワイト企業です。ホワイト企業の特徴や、転職先として選ぶ際の注意点について解説します。

ホワイト企業の主な特徴

ホワイト企業は、従業員が働きやすいと感じる企業です。劣悪な労働環境で従業員が働きにくさを感じるブラック企業と違い、ホワイト企業は社内の労働環境が充実しています。

ホワイト企業に転職できれば、長時間労働や休日出勤を強いられることは少ないでしょう。働きやすい環境であることから、従業員の入れ替わりが少ない点もポイントです。

また、有休を取得しやすい企業や福利厚生が充実している企業も、ホワイト企業とみなされやすくなります。多くの人にとって理想的な働き方ができる企業なら、ホワイト企業だと判断できるでしょう。

大企業だったらホワイトなわけではない

ホワイト企業を探す際は、企業規模で判断しないようにすることが大切です。福利厚生がより充実している大企業だからといって、全ての企業がホワイトであるとは限りません。

『世間に広く知られている大企業=ホワイト企業』と、安易に判断しないようにしましょう。給与が安くても、働きやすい中小企業は数多く存在します。

また、ホワイト企業における全ての面が、ホワイトであるとは限らないこともポイントです。例えば、離職率の低さでホワイトだとされている企業も、実際に入社すると古参社員のパワハラが横行しているケースもあり得ます。

求人から見るブラック企業の見分け方

給料袋と小銭と電卓

(出典) photo-ac.com

転職活動中にブラック企業を見極めるためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか?ブラック企業を求人で見分ける方法を紹介します。

給与が高すぎ・幅が広い

同業他社に比べて給与が明らかに高い場合は、ブラック企業の可能性があります。高い給与を支給される代わりに、長時間労働を強いられる恐れがあるためです。実際に給与が高い保証もありません。

また、給与の幅が広い企業にも注意しましょう。上限額に目が行きがちですが、実際は特定の技術・資格がなければ高給をもらえないことがほとんどです。

ブラック企業は、求人の給与を高くして人を集めようとする傾向があります。同業種の相場をしっかりと把握することや、給与が高い理由をさまざまな角度から考えることが大切です。

スキルよりやる気をアピール

抽象的な言葉を並べて自社の魅力をアピールしている企業も、ブラックであることを疑いましょう。『感動』『挑戦』『成長』といった言葉で訴えかけてくる求人は、要注意です。

曖昧な表現で人を集めている企業は、実際には多くの人が嫌がるような仕事をさせようとしている可能性があります。求人で詳しい業務内容を示すと人が集まらないため、抽象的な言葉で業務内容をぼかしているのです。

聞こえのいいフレーズに心を動かされた場合は、一度冷静になって求人を見直してみましょう。具体的にどのような仕事をするのか分からなければ、ブラック企業の可能性があります。

仕事内容が具体的に書かれていない

ブラック企業は、求職者の知りたいことを、求人で曖昧に記載する傾向があります。仕事内容・基本給・手当・休日・福利厚生などの情報が不足している場合は、注意が必要です。

企業側も明らかなウソは記載できないものの、なんとか人材を確保しようとさまざまな工夫を凝らしています。結果的に、募集要項の記載が曖昧になりがちです。

休日日数や残業時間に幅があるなら、最低限の日数や時間しか保証されない可能性が高いでしょう。福利厚生の情報が曖昧に書かれている場合は、企業のホームページや面接できちんと確認するのがおすすめです。

頻繁に求人が出ている

求人掲載の頻度を見るのも、ブラック企業かどうかを判断する方法として有効です。ブラック企業は人材が定着しにくいため、求人が頻繁に出る傾向があります。

求人が長期間掲載されている場合も、ブラック企業である可能性が高いでしょう。採用条件が厳しすぎたり、採用後すぐに辞めてしまったりするケースでは、求人掲載が数カ月続くこともあります。

一般的な求人掲載期間は、おおよそ4週間です。長くても2カ月程度求人を出していれば、大半のケースで採用が決まります。2カ月以上掲載が続いている求人には、注意が必要です。

面接から見るブラック企業の見分け方

面接を受ける男女の足元

(出典) photo-ac.com

気になる企業がブラック企業かどうかは、面接でも判断することが可能です。求人ではっきりと見分けがつかない場合は、面接を受ける際に以下のポイントを意識してみましょう。

面接の時間がやけに短い

面接時間が極端に短い場合は、ブラック企業である可能性が高くなります。人員の頭数さえそろえばよいと考えている企業は、面接に長い時間を割きません。

やりとりの内容があっさりしすぎていたり、面接官との雑談に終始したりする場合も、ブラック企業の恐れがあります。企業はとにかく採用したいと考えているため、スキルや人柄の見極めを行う必要がないのです。

面接が終わってから採用が決まるまでの期間が短い場合も、注意しましょう。通常は、採用決定の通知を受けるまでに3日から1週間程度かかりますが、人員確保が急務であればすぐに採用が決まります。

面接で個人的な質問が多い

厚生労働省は、公正な採用選考を実施する目的で、就職差別につながる質問を面接時にしないよう企業に求めています。

就職差別につながる質問とは、応募者の適性や能力と無関係な質問です。尊敬する人物や宗教など本来自由であるべきことや、家族・出身地・生活環境など本人に責任のないことが該当します。

面接で個人的な質問が多い場合は、企業側のコンプライアンス意識が低いと判断できるため、ブラック企業とみなしてよいでしょう。入社後もハラスメントを受ける恐れがあります。

面接官の態度が高圧的

面接官が、面接中に高圧的な態度で臨んでいる場合は、入社後も同様の態度で接してくる恐れがあります。ストレスをためたくないなら、入社しない方が無難です。

面接官の態度が高圧的なケースでは、圧迫面接を行っている可能性もあります。圧迫面接とは、わざと高圧的な態度を取り、応募者のストレス耐性をチェックする面接です。

仮に圧迫面接であったとしても、ストレス耐性を見られているということは、入社後もストレスがたまりやすい企業だと判断できます。長時間労働やパワハラで苦しむことにもなりかねないため、ブラックとみなして辞退しましょう。

社内の雰囲気・共用部が汚い

大半のブラック企業は、社内の雰囲気がよくありません。面接時に会社へ出向いた際、何となく居心地が悪いと感じたら、できる範囲でしっかりと観察してみましょう。

無愛想な従業員が多い場合や、面接を受けに来た応募者への対応がよくない場合も、ブラックかどうかよく見る必要があります。従業員の表情が疲れていたり暗かったりする企業は、職場環境の悪さが影響しているかもしれません。

また、共用部が汚いことも、多くのブラック企業の共通点です。受付やお手洗いなど外部の人から見られる場所が汚ければ、その企業に『自社の印象をよくしよう』という意識はありません。人手不足で清掃ができていない可能性もあります。

ブラック企業を見分けるための情報収集

デスクに置いてあるパソコンと資料

(出典) photo-ac.com

求人や面接以外にも、ブラック企業を見分ける方法はあります。情報収集でブラックかどうか見極める方法を覚えておけば、転職先候補の絞り込みに役立つでしょう。

離職率が分かる「就職四季報」

ブラック企業を見分ける方法としては、東洋経済新報社が発行する『就職四季報』で情報収集を行うのがおすすめです。就職四季報では『3年後離職率』と『平均勤続年数』が分かります。

離職率が高い企業や勤続年数が短い企業は、人材が定着しにくい企業であると判断することが可能です。他社と比べて数値が極端に悪い場合は、ブラック企業の可能性を否定できないでしょう。

就職四季報は、書店に足を運べば2000円程度で購入できます。古本屋なら数百円で購入できますが、離職率や勤続年数は数年で変わる可能性があるため、最新版を購入しましょう。

詳細を確認できる「ブラック企業リスト」

厚生労働省が公表する『労働基準関係法令違反に係る公表事案』を見ると、過去に労働関係の違法行為を行った企業を確認でき、ブラック企業リストとして活用することが可能です。

違反した法令や事案の概要も、企業ごとに把握できます。さまざまな理由で法令違反とみなされていることが分かるため、ブラック企業とはどのようなものなのか理解する資料としても役立つでしょう。

ただし、ブラック企業はこの資料に載っている企業が全てではありません。あくまでも1つの方法として活用しながら、ほかの方法も併用してブラック企業を見分けましょう。

参考:労働基準関係法令違反に係る公表事案 | 厚生労働省

確認しやすい「企業の口コミ」

ブラック企業を見分ける方法としておすすめなのが、口コミの確認です。実際に応募した人や働いていた人の口コミを見れば、企業の雰囲気や労働条件などをより詳細に確かめられます。

企業の口コミは、就職や転職に関するサイトで確認可能です。悪い評価の口コミが多い企業は、ブラックである可能性が高いため、基本的には避けた方がよいでしょう。

ただし、口コミはあくまでも個人の見解によるものであり、うのみにするのはNGです。評価の良し悪しだけでなく、どのようなことが評価の対象になっているのかもきちんと目を通しておきましょう。

ブラック企業に入社した場合の対処法

打ち合わせをする二人の女性

(出典) photo-ac.com

ブラック企業ではないと事前に判断しても、入社後にブラックだと気付くケースもあります。ブラック企業に転職してしまった場合の対処法を知っておきましょう。

社内の専門部署に相談

ブラック企業に入社して悩みが生じた場合、社内に専門部署があるなら相談してみましょう。近年は、中小企業でも専用の相談窓口を設けるケースが増えています。

企業に労働組合があるなら、労働組合に相談するのがおすすめです。社内の相談窓口は、どちらかといえば会社寄りの立場ですが、従業員で構成される労働組合なら、相談者に寄り添った対応を取ってくれる可能性が高いでしょう。

社内のトラブルは、最初に社内で解決を図るのが基本です。第三者に介入してもらうことを検討する前に、まずは専門部署や労働組合に相談しましょう。

匿名で労働基準監督署に相談する

社内に相談先がない場合や、社内だけで解決できそうにない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。厚生労働省の所轄部署である労働基準監督署なら、第三者の立場から問題の解決に向けて相談に乗ってくれます。

労働基準監督署への相談で改善が期待できるのは、長時間労働やサービス残業などの業務的な問題です。人間関係や待遇などに関しては、労働基準監督署への相談で解決するのは難しいでしょう。

中には、「労働基準監督署に相談したことが会社にバレたらどうしよう」と考える人もいるかもしれません。しかし、労働基準監督署には守秘義務があるので、基本的には相談したこと自体が企業にバレる可能性は低いといえます。

万が一のことを考える場合には、電話やメールを使った匿名での相談が可能です。

自分にとって働きやすい職場を見つけよう

会議をする人たち

(出典) photo-ac.com

労働の条件や環境が悪いブラック企業に転職してしまうと、過度な負担を強いられる恐れがあります。転職先を探す際は、できるだけブラック企業を避けるのが無難です。

気になる企業がブラックかどうかは、求人や面接である程度見分けられます。就職四季報や口コミなどの情報収集で、見極めるのもおすすめです。

事前にさまざまな角度から企業を調査し、より働きやすい転職先を見つけましょう。