転職活動中の人の中には、非常勤という働き方について具体的なイメージが湧いていない人も多いのではないでしょうか。非常勤の定義やメリット、向いている人を解説します。非常勤の意味を理解し、転職活動の役に立てましょう。
非常勤とは?
『非常勤』と聞くと、学校の非常勤講師を思い浮かべる人も多いかもしれません。それだけではない非常勤の意味や、働き方を解説します。
フルタイムで週5日働かないこと
非常勤とは、フルタイム(1日8時間で週5日)ではない働き方を指す言葉です。具体的には、1日8時間労働でも週4日勤務の場合や、週5日労働でも1日の労働時間が5時間や6時間などのケースが該当します。
なおフルタイムの働き方は、常勤と呼ばれます。常勤か非常勤かは、雇用契約を締結する際に決定し、給与や福利厚生の内容が決まるのもこのタイミングです。
原則、フルタイム週5日勤務に満たなければ非常勤と呼ばれるため、非常勤の働き方や労働条件は企業によってさまざまです。
職種や企業によって解釈が異なることも
実のところ、労働基準法や労働契約法には、なにをもって常勤・非常勤とするかは規定されていません。基本的には、『1日8時間で週5日のフルタイム勤務』以外を非常勤とする場合が多いものの、企業によっては異なる解釈を取っているところもあります。
例えば、一部の国立大学の中では、定年まで働くことが前提の人を常勤、それ以外を非常勤と定義しています。
求人情報に常勤や非常勤と記載があっても、働き方は企業によって異なる可能性があるので、面接の場でしっかりと確認することが大切です。
正規・非正規は関係ない
常勤・非常勤は、しばしば正規・非正規雇用と同一視されますが、厳密には違います。正規や非正規とは雇用形態を表す言葉であり、就業形態を表す常勤・非常勤とは異なる性質の言葉です。
そのため非正規雇用のアルバイトでも、フルタイムで働いている場合は、常勤とみなされます。逆に正規雇用でも、時短勤務などをしている人は非常勤ということになります。
正規雇用か非正規雇用かを判別する場合は、常勤か非常勤かではなく、求人情報の雇用形態の部分をしっかりと確認しましょう。
非常勤のメリット
非常勤の働き方には、どのようなメリットがあるのでしょうか。非常勤のメリットを3つ紹介します。
時間の融通が利きやすい
非常勤の大きなメリットは、自分の都合に合わせて勤務時間を決められる点です。100%自分の希望通りになるとは限りませんが、育児や介護と両立させたり、将来に向けた勉強の時間を確保できたりしやすいでしょう。
また、非常勤には基本的に残業がなく、残業が発生した場合もきちんと残業代が支払われます。サービス残業がないこともメリットの1つです。
ブランクができた場合に、非常勤として働きながら仕事に慣れていくといったこともできるでしょう。
人間関係のストレスが軽減する
職場の人間関係は退職理由で常に上位を占めており、悩む人は少なくありません。非常勤の場合、フルタイムで働いている人に比べて、職場の人たちと関わる機会が少なくなります。
関わる機会が少なければ人間関係のトラブルに発展する可能性も低くなると考えられ、ストレスを感じにくいでしょう。余計な心配ごとがなく、仕事に集中できることも非常勤のメリットと言えます。
非常勤のデメリット
非常勤にはデメリットもあります。メリットとデメリットの両方をよく把握した上で、どちらの働き方を選ぶかを決めることが大切です。
常勤よりも収入が少なくなりがち
非常勤は常勤に比べて、給与面などの待遇が劣る傾向にあります。非常勤の給与は日給や時給が一般的で、常勤よりも勤務時間や日数が少ないので、給料は少なくなりがちです。休みを取るとさらに収入が減るため、安定しているとは言い難いでしょう。
また、ボーナスや昇給が見込めないこともあり、デメリットでしょう。そのため年収で見たときも収入は低くなります。
会社でキャリアを積み、ポジションや年収を上げていくことも難しい傾向があります。
社会保険に加入できないことがある
健康保険や厚生年金などの社会保険は、常勤の会社員なら誰でも加入できます。しかし非常勤の場合、勤務日数や時間によってはこれらの社会保険に加入できない場合があります。
非常勤の場合、健康保険と厚生年金には、1週間の労働時間と1カ月の労働日数が常勤の3/4以上であれば加入可能です。
社会保険に入っておらず、かつ配偶者の扶養にも入っていない人は、自費で国民健康保険に加入しなければなりません。このような最低限の福利厚生を求める人は、労働時間や日数を考える必要があるでしょう。
スキルアップが難しい
非常勤の社員は、常勤社員のサポート的立ち位置であることが一般的です。そのため、常勤に比べると職場での教育に時間とお金を投資してもらいにくくなっています。
また、非常勤は勤務時間が限られているため、業務を通してスキルや経験を積む機会も限られてしまうでしょう。
非常勤はその勤務体系から、どうしても責任の大きい仕事を任せてもらえないケースが多いでしょう。そのため、新しい仕事にチャレンジしてスキルを磨くといったこともしづらいかもしれません。
非常勤が向いている人
ここまでの内容を踏まえて、非常勤に向いている人を解説します。以下に当てはまる人は、非常勤という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
仕事とプライベートを両立したい人
仕事とプライベートを両立したい人や、仕事以外の活動にも力を入れたい人に、非常勤はおすすめの働き方です。非常勤は自分が働く曜日や時間帯を決めやすいため、育児や介護、勉強中の人は学校のスケジュールに合わせて働きやすいでしょう。
副業を行っており、将来的に独立を目指したい人にも、非常勤は理にかなった働き方と言えます。
反対に上記のような事情がなく、本業で安定して稼ぎたい人には、非常勤はおすすめできません。
ブランクがある人
出産や治療などでしばらく職場を離れていた人は、非常勤で少しずつ仕事の感覚を取り戻してみてはいかがでしょうか。非常勤で働く中で、徐々に体と心のコンディションを仕事モードに切り替えられるでしょう。
せっかく現場に復帰しても、いきなり負担が大きい働き方をすると、長続きしないかもしれません。仕事に慣れてきたら、今の職場で常勤にしてもらうか、常勤の仕事を探してみると良いでしょう。
キャリアアップに向けて勉強したい人
転職活動中の人の中には、目指している職業があり、それに向けて資格やスキルアップの勉強をしている人もいるでしょう。特に難関の資格となると、多くの勉強時間を確保しなければならず、常勤ではなかなか時間を捻出できないでしょう。
そんな人には、非常勤が向いています。勉強のために本業を辞めるという選択肢もありますが、収入が途絶えるだけでなく、経歴にブランクを空けてしまうことにもなります。
せっかくキャリアアップを狙っているのに、転職の足かせになっては本末転倒です。非常勤で働きながら勉強にも力を入れ、資格を携えてから常勤に復帰できるのが理想でしょう。
非常勤職員の一例
非常勤勤務を検討している人に向けて、非常勤で働きやすい職業を3つ紹介します。以下は一例ですが、どのような働き方をするかのイメージを持つことが大切です。
看護師
看護師の中には、非常勤で活躍している人が多くいます。非常勤看護師とは、1週間の労働時間が最大40時間で働く看護師以外を指します。また日勤や夜勤、週2日だけなど、自分の都合に合わせて働けることが大きな特徴です。
非常勤看護師の給与形態は日給もしくは時給制で、時給は1300〜2000円が相場と言われています。ただし地域によって変動が大きく、平均を取ると1500円程度でしょう。時給は低くないものの、ボーナスや退職金がないケースがほとんどです。
非常勤看護師のもう1つの特徴は、任される業務や責任が常勤と変わらないことです。勤務時間は抑えつつも、責任の大きい仕事をしたい人には向いています。
介護士
介護業界では、1週間に勤務すべき時間数に達していれば常勤、そうでなければ非常勤と呼ばれることが多くなっています。非正規雇用であっても、上記の条件を満たして働いている人は、常勤と呼ばれます。
非常勤介護士の多くは、契約社員の一部とパート・アルバイトで勤務する人たちです。時給は950~1300円前後が多く、アルバイトに関しては最低賃金に近いことも多いようです。
常勤は早番や遅番などがあるため、不規則な生活になりがちですが、非常勤の場合はある程度融通を利かせられます。曜日固定や夜勤専門など、働く時間を固定することで、生活リズムを整えられるでしょう。
学校事務
大学をはじめとする、学校事務も非常勤の人が多く働いています。学校事務では、アルバイトやパートの人を非常勤と呼んでいます。主な仕事内容は、常勤社員の補助や、教授が行う研究や業務のサポートです。
基本的には、配属された課の業務を補助することになります。しかし、規模の小さな学校では、課が分かれておらず、教育以外の業務全般を学校事務が担うケースも多くなっています。
募集はハローワークや一般の求人広告、各学校のホームページなどで行われるので、チェックしてみると良いでしょう。
メリットを感じられるなら非常勤もあり
一般的に、非常勤はフルタイムで週5日働かない人のことを指します。しかし、非常勤の意味は、企業や業界によってさまざまです。少なくとも、正規雇用と非正規雇用を指すわけではないので、混同しないよう注意しましょう。
非常勤で働く大きなメリットは、時間の融通を利かせられることです。そのため、育児や介護、勉強などに時間を割きたい人や、ブランクがあっていきなりフルタイムで働くことが難しい人に向いています。
非常勤で働ける代表的な職種には、看護師や介護士、学校事務などがあります。自身にどのような働き方が向いているかをよく考え、メリットがあると判断したら、非常勤という働き方を選んでも良いでしょう。