失業保険の申請方法とは?必要なものや流れ、疑問点まで徹底解説!

転職活動中の生活資金として、失業保険の受給を検討している人もいるでしょう。失業保険の申請方法から受給額の計算方法、失業保険に関するよくある疑問を解説します。失業保険は労働者の強い味方なので、申請方法を理解してぜひ利用しましょう。

この記事のポイント

失業保険とは
失業保険とは通称であり、正式には「雇用保険」と呼ばれます。失業した際にお金がもらえる制度は、雇用保険の中の保障の1つである「基本手当」を指しています。
基本手当を申請する流れ
基本手当の申請はハローワークにて行います。受給条件を満たしているかの審査と「雇用保険受給者初回説明会」に出席が必要になります。また、手当を受け取っている間は定期的に「失業の認定」を受ける必要があります。
基本手当を受給中にアルバイトは可能?
基本手当は前職給与の半分から8割程度となります。受給中にアルバイトなどで収入を得ることは認められていますが、条件があるため注意が必要です。

失業保険とは?

失業保険申請書

(出典) photo-ac.com

失業保険について、会社を辞めたらお金がもらえる制度と何となく思っている人も多いのではないでしょうか?まずは、失業保険についての基本を確認していきましょう。

公的な「保険制度」の1つ

失業保険とは通称であり、正式には「雇用保険」と呼ばれます。多くの人は失業したらお金がもらえる制度と認識しているかもしれませんが、それは厳密には雇用保険の中の保障の1つである「基本手当」を指しているにすぎず、雇用保険制度の中には、失業中の生活保障である基本手当以外にも、様々な給付制度が含まれています。例えば、就職のための教育訓練を受けた場合の給付や、高齢により賃金が一定以上下がった場合、育児や介護のために休業した場合などの給付もあります。

労働者を雇用する事業主は、業種・規模等を問わず農林水産業の一部を除き雇用保険に必ず加入させなければならないので、基本的に正社員であれば全員が加入しています。

雇用保険加入者の雇用保険料は、給与総額に一定の雇用保険料率を乗じた金額が毎月の給与から天引きされています。

基本手当を受け取るための条件

基本手当を受け取るには、「離職の日以前2年間のうち、雇用保険に加入して保険料を納めていた期間(被保険者期間)が通算して12カ月以上あること」が条件です。

ただし、倒産や解雇、そのほかやむを得ない理由で離職せざるを得なかった場合は、離職前の1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あれば基本手当を受け取れます。

もう1つの重要な条件は、ハローワークが定める「失業の状態」であることです。「失業の状態」とは、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない場合です。

ですので、病気やケガで療養中の人や出産や育児のために退職した人など、しばらく働けない状態にある人は退職後すぐには基本手当を受け取ることができません。再就職をサポートするためのものなので、受給を申請する時点で就職活動をしている必要があります。

基本手当の受給期間

基本手当は日当の形で支払われ、もらえる日数を所定給付日数といいます。所定給付日数は、年齢・雇用保険の加入期間・離職理由などによって、90〜360日の間で決められます。

また、基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。受給期間が満了すると、所定給付日数が残っていても手当の支給が打ち切りになります。

特に、自己都合で離職した人には原則2カ月間の給付制限があるため、早めに申請をしないと満額受給できない可能性があるので注意しましょう。

基本手当の申請に必要なもの

離職票

(出典) photo-ac.com

失業保険の申請に必要なものを解説します。申請に必要な書類には、前職からもらうものと、自分で用意するものがあります。

前の職場から送られるもの

前職から送られてくる書類のうち、失業保険の申請に必要なものは以下の通りです。

  • 離職票1
  • 離職票2
  • 雇用保険被保険者証

離職票1と2は、退職後に会社から自宅に送られてきます。離職票の項目は会社が記入するので、退職理由が間違っていないかなど内容を確認しましょう。

雇用保険被保険者証は、入社時に受け取って自宅に保管するパターンと、退職日に会社からもらうパターンがあります。もし紛失した場合は、ハローワークで再発行をしてもらいましょう。

自分で準備するもの

基本手当の申請に必要な書類のうち、以下の書類は自分で用意する必要があります。

  • 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
  • 個人番号を確認できるもの
  • 縦3.0×横2.5cmの写真2枚 ※マイナンバーカードを提示することで省略可
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーが確認できる書類(通知カードやマイナンバーが記載された住民票)1点と、運転免許証などの身元確認書類1点が必要です。

預金通帳やキャッシュカードは、失業保険の振込先となるものです。複数の銀行口座を持っている場合は、振り込みをしてほしい口座のものを提出しましょう。

基本手当を申請する流れ

手帳に記入する女性

(出典) photo-ac.com

必要な書類の準備ができたら、ハローワークで基本手当の申請をしましょう。具体的な流れを、3つのステップに分けて解説します。

ハローワークで求職の申し込みをする

まずは必要書類を全て用意し、管轄のハローワークにて求職の申し込みを行って、離職票1と2を提出します。離職票に記載されている離職理由に異議がある場合は、このタイミングで申し出ましょう。

上記の手続きが完了すると、ハローワーク側で受給条件を満たしているかの審査を行います。無事に条件を満たしていると判断された場合は、「受給資格の決定」がされます。

「受給資格の決定」がされた後、「雇用保険受給者初回説明会」の日時が案内され、7日間の「待期期間」に入るという流れです。この間は、アルバイトなどの就業活動は一切できません。

「雇用保険受給者初回説明会」に出席

7日間の待期期間が明けたら、雇用保険受給者初回説明会に参加します。日時は変更できないので、予定を空けておきましょう。

説明会には、申し込み時に配布された「雇用保険受給資格者のしおり」と、筆記用具を必ず持参します。

説明会では、基本手当の受給に関する詳細が案内されるので、よく聞いておきましょう。このとき、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が配布されます。

併せて第1回目の失業認定日(「受給資格の決定」から約3週間後のハローワークが指定する日)が伝えられますが、これも日時の変更ができないので、指定された日に忘れずに来所しましょう。

定期的に「失業の認定」を受ける

約4週間に一度訪れる失業認定日にハローワークへ行き、失業状態であることが確認されると、失業認定日から約1週間後に手当が振り込まれます。この『失業認定と手当の振込のサイクル』を、再就職先が決まるか所定給付日数が尽きるまで繰り返します。

なお、基本手当をもらうには、次回の失業認定日までに以下のような求職活動が原則として2回以上(基本手当の支給に係る最初の認定日における認定対象期間中は1回)必要です。

  • 求人への応募
  • ハローワークが行う職業相談、職業紹介等を受けたこと、セミナーの参加
  • 許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講など
  • 再就職のための各種国家試験、検定等の資格試験の受験

失業保険の受給条件である『働く意志の有無』は、この求職活動をもって判断されます。ハローワーク、新聞、インターネットなどでの求人情報の閲覧や、単なる知人への紹介依頼だけでは、この求職活動の範囲には含まれません。

失業保険でもらえる受給額について

お札と電卓と資料ファイル

(出典) photo-ac.com

基本手当はいくらもらえるのか、気になっている人もいるのではないでしょうか? 受給額は自分で計算ができます。

基本手当日額の計算方法

基本手当日額とは、1日あたりの給付額のことです。基本手当日額を計算するには、まずは賃金日額を求める必要があります。賃金日額は、『離職前6カ月間の賃金の合計額÷180日』で求められます。

なお、賃金日額には上限額と下限額が定められており、年齢ごとの上限額は以下の通りです。下限額は、年齢問わず2657円です。

  • 29歳以下:1万3670円
  • 30〜44歳:1万5190円
  • 45〜59歳:1万6710円
  • 60〜64歳:1万5950円

賃金日額を求めたら、50〜80%(60〜64歳は45〜80%)の給付率を掛けて、基本手当日額を算出します。給付率は賃金日額が高いほど低くなり、反対に賃金日額が低いほど給付率は高くなります。

基本手当日額にも、以下の通り上限額が設けられています。

  • 29歳以下:6835円
  • 30〜44歳:7935円
  • 45〜59歳:8355円
  • 60〜64歳:7177円

全年齢通して、下限額は2125円です。

参考:雇用保険の基本手当日額が変更になります|厚生労働省

基本手当受給額の計算方法

基本手当の受給額は、基本手当日額×所定給付日数で求められます。自己都合退職の場合、年齢問わず雇用保険の加入期間によって所定給付日数が決まります。加入期間ごとの所定給付日数は、以下の通りです。

  • 1年以上10年未満:90日
  • 10年以上20年未満:120日
  • 20年以上:150日

例えば、基本手当日額が5000円で、雇用保険の加入期間が5年の人の基本手当受給額は『5000円×90日=45万円』です。

参考:ハローワークインターネットサービス 基本手当の所定給付日数

受給が制限される期間に注意

自己都合で退職する場合は、給付制限期間に注意が必要です。給付制限とは、自己都合で退職した人が手当を受け取れない期間のことであり、5年間のうち2回までは『2カ月間』に設定されています。

ただし、過去5年間ですでに2回自己都合で退職していたり、令和2年9月以前に自己都合の退職をしていたりする場合は、給付制限期間が3カ月となる点には気を付けましょう。

倒産や解雇など会社都合の退職の場合や、自己都合でもやむを得ず退職したと判断された場合は、給付制限はありません。7日間の待機期間が終わり次第、受給を開始できます。

給付制限期間中の生活費は自分で用意する必要があるので、特に貯金がギリギリの人は注意が必要です。

参考:「給付制限期間」が2か月に短縮されます~ 令和2年10月1日から適用 ~|厚生労働省 鳥取労働局

失業保険に関する疑問

パソコンの前で手帳をチェックする男性

(出典) photo-ac.com

基本手当について、よくある疑問に回答します。中には、知っておかないとペナルティーが発生するものもあるので、しっかりと押さえておきましょう。

基本手当を受給中に収入があった場合

基本手当は、前職の給与の50〜80%(60〜64歳は45〜80%)までしか支給されないため、それだけでは生活ができない人もいるでしょう。結論をいうと、基本手当の受給中にアルバイトなどで収入を得ることは認められています。

しかし、働いた実績は、収入の有無にかかわらず、アルバイト・パート等した日等を必ずハローワークに報告しなければなりません。基本手当の受給中に収入があった場合は、その日の収入に応じて基本手当が減額されたり、繰り越されたりします。

報告をせずに基本手当を満額もらうことは、不正受給にあたります。不正に受給した金額の返還と、ペナルティーとしてその2倍の額の支払いを命じられるのです。つまり、総額では3倍もの額に達する上、それ以降の受給は不可能になります。

また、アルバイトの時間にも注意が必要です。原則として週に20時間以上の継続的な仕事についた場合は失業状態にないとみなされ、手当の受給を打ち切られてしまいます。

参考:不正受給について(事例等)|大阪労働局

受給期間中に就職先が決まった場合

受給期間中に就職が決まった場合は、所定給付日数が残っていても受給が打ち切られます。

しかし、早期に就職が決まった場合は、再就職手当と呼ばれる祝い金をもらえます。再就職手当の額は、給付日数をいくら残したかによって変わり、詳細は以下の通りです。

  • 2/3以上残した場合:基本手当の残支給日数の70%
  • 1/3以上残した場合:基本手当の残支給日数の60%

早く就職するほど、メリットが大きい制度であることが分かるでしょう。給付日数ギリギリまでもらうために、あえて就職活動を遅らせる必要はありません。

さらに、再就職手当の支給を受けた人について、再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下していてかつ再就職先で6カ月以上勤務を続けた場合は、就業促進定着手当が支給されます。

参考:再就職手当のご案内|厚生労働省

すぐに働けない場合は受給期間の延長も可能

基本手当の受給期間は、離職日の翌日から1年間です。そのため、退職時点で病気・けが・妊娠・出産などで基本手当の受給条件を満たしていない人は、1年間で手当をもらい切れない可能性があります。

しかし、その場合は受給期間の延長手続きができます。延長申請ができる具体的な条件は、「病気・けが・妊娠・出産などの理由で30日以上就業できない日が続くこと」です。

延長できる期間は最長3年間で、もともとの受給期間の1年と合わせると最長で4年間まで受給期間を延長できます。

申請期限は延長した場合の受給期間満了日までなので、無理せず体調に余裕のあるときに申請するとよいでしょう。ただし、申請期間内であっても、申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性がありますので、ご注意ください。

参考:平成29年4月1日から、雇用保険の基本手当について受給期間延長の申請期限を変更します|厚生労働省

基本手当を申請しない選択もアリ?

パソコンに向かいデスクワークする男性

(出典) photo-ac.com

中には、基本手当を受給しない方がよいという意見を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

確かに、申請しないメリットはあります。詳細を解説するので、自分の状況と照らし合わせ、ベストな選択をしましょう。

就職活動の幅が増える

失業保険を申請しない場合、自分のペースで就職活動を進められます。失業保険の受給中は4週間に2回、ハローワークが定める求職活動を行う必要があります。

しかし、失業保険を受給していなければ、そのような縛りはありません。そのため、貯金に余裕がある場合は少しリフレッシュをしたり、これまでできなかった旅行を楽しんだりした後に、就職活動をすることも可能です。

スキルアップのために勉強をする期間を設けてもよいでしょう。

雇用保険の期間を持ち越せる

基本手当を受給すると、これまでの雇用保険の加入期間がリセットされます。しかし、離職後1年以内に再就職すれば、加入期間は持ち越しでのカウントが可能です。

つまり、今回は基本手当を受給せず、次の会社の退職後に受給した場合は、受給額や給付日数が増える可能性があります。

もし再就職先のめどが立っている場合や、万が一のときに備えて加入期間を温存しておきたい場合は、失業保険を受給しないという選択肢もあります。

失業保険について理解して有利な転職活動を

履歴書封筒とスーツ類

(出典) photo-ac.com

失業保険は、再就職までの期間の生活を保障してくれる心強い制度です。雇用保険に1年以上加入していれば誰でも申請できるので、退職後の生活が不安な人はぜひ利用しましょう。

ただし、自己都合での退職の場合は、原則として2カ月間の給付制限期間に注意が必要です。受給期間中はアルバイトも可能ですが、就業実績は必ず報告しましょう。

場合によっては、失業保険を受給しない方がよいケースもあります。自分のペースで就職活動をしたい場合や再就職のめどがある程度立っている場合、雇用保険の加入期間を温存したい場合などです。

失業保険の仕組みや注意点を理解し、自分にとって有利な形で転職活動を進めましょう。

長友秀樹
【監修者】All About 社会保険労務士試験ガイド長友秀樹

医療機関の人事・労務はお任せ!元製薬会社MRの社会保険労務士
社会保険労務士。社会保険労務士法人NAGATOMO代表社員。MR、人事コンサルタント、医療業界を熟知した社会保険労務士の経験をいかし、病院・クリニックの規模に合わせた人事制度の構築、人事・労務問題をサポートしている。
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