転職時に受ける適性検査の目的とは?事前にできる対策も紹介

転職活動中に適性検査を受けることになった場合は、事前に準備を行っておくと安心です。きちんと対策を練っておけば、検査結果で不採用になりにくくなるでしょう。適性検査の目的や主な種類、事前にできる対策について解説します。

転職時の適性検査とは?

試験を受けるマークシート

(出典) photo-ac.com

転職活動中は企業から適性検査を受けるよう求められることがあります。適性検査とはどのようなものなのか、まずは概要を紹介しましょう。

さまざまなテストから応募者を見極める

適性検査とは、応募者が企業に合う人材かどうか見極めるための検査です。応募書類や面接とは異なるアプローチで応募者の適正を見るために、一般的には面接前後に実施されます。

応募者の性格や能力を測るものから、業界の歴史について問うものまで、検査の種類は多種多様です。検査を実施する企業では、適性検査の結果が採用の合否を大きく左右するケースもあります。

かつて適性検査はペーパーテストで実施されるのが主流でした。しかしインターネットが普及している現在は、検査会場や会社に行かなくても受けられるオンラインでの検査も増えてきています。

性格・能力の2つに分かれる

適性検査で問われる内容はさまざまですが、性格を測る検査と能力を測る検査の2つに大きく分けられます。

性格検査は応募者の性格や人格を見るための検査です。考え方の軸や人間性といった要素を定量的に測定し、社風や仕事との相性を判断します。

思考力・論理性・言語力・計算力などを測定する検査が能力検査です。ビジネスに必要な基礎能力が備わっているかどうかを定量的に測ります。

性格検査と能力検査のどちらを受けることになるのかは企業次第です。片方のみの場合もあれば、両方実施されるケースもあります。

適性検査の主な目的

マークシートと消しゴム

(出典) photo-ac.com

企業が適性検査を実施する主な目的を紹介します。検査に込められた企業の意図を理解しておけば、対策を立てる際に役立つでしょう。

社会人としての基本的な知識の有無

適性検査の大きな目的の1つに、社会人としての基本的な知識を持っているかを見ることが挙げられます。

新卒採用の場合、社会人としての基礎知識は内定者研修や入社後の新人研修で身につけることが可能です。しかし、即戦力としての活躍を期待される中途採用者については、社会人としての基礎知識を教える機会は多くありません。

応募書類や面接で基礎知識の有無を判断しにくいこともポイントです。基本的な知識の有無を企業としてきちんと把握したいという目的により、書類選考や面接以外に適性検査を実施するのです。

企業とのマッチ度を測る

応募者と企業とのマッチ度を判断することも、適性検査に込められた目的の1つです。書類や面接では分からない要素を細かく分析し、応募者が企業に合う人材かどうか見極めます。

応募者が入社後に長く働いてくれるのかどうかは、企業にとって大きな問題です。せっかく雇い入れた優秀な人材がすぐに辞めてしまうと、採用コストの負担も増加してしまいます。

そもそも適性検査は、中途採用で応募者の定着率を見るために、多くの企業で導入され始めた検査です。これまで面接官の経験や勘に頼りがちだった部分を適性検査にゆだね、入社後のミスマッチ防止に役立てています。

面接・選考のための資料にする

適性検査は面接や選考の際に用いる資料としても活用されています。適性検査では定量的な結果を得られるため、分かりやすい基準で応募者を振り分けることが可能です。

一度に大量の採用を見込む際は、応募者の数も多くなります。一次面接で応募者を絞り込むのに時間や手間がかかりすぎると判断するケースで、適性検査を使って一気に応募者を減らすのです。

面接前に適性検査が実施される場合は、適性検査の結果が面接時の参考資料としても使われることがあります。口頭の質問と併せて活用すれば、採用が面接官個人の判断にゆだねられるのを防止できます。

適性検査の主な種類

マークシートをチェックする手元

(出典) photo-ac.com

適性検査には数多くの種類があり、具体的な用途や測定領域も検査によりさまざまです。ここでは、多くの企業で実施されている代表的な適性検査と、それぞれの特徴を紹介します。

SPI3

大企業から中小企業まで幅広い導入実績を持つ適性検査が『SPI』です。リクルートが開発した検査であり、現在はSPI3までアップデートされています。

SPIとは『Synthetic Personality Inventory』の頭文字をとったものです。中途採用だけでなく、新卒採用でもよく使われています。

応募者の能力と性格を1つの検査で測定できることがSPI3の特徴です。職務・組織への適応のしやすさや人物イメージなど、面接では分かりにくい部分を把握しやすくなります。

非常に有名な適性検査であるため、事前の対策に役立つ問題集も数多く出版されています。SPI3を受けることがあらかじめ分かっていれば、準備をしやすくなるでしょう。

CUBIC

30年以上の実績を誇る『CUBIC』も、多くの企業で導入実績があるメジャーな適性検査です。性格の特徴や能力、組織適応性などを主に測定します。どちからといえば中小企業での実施が多い検査です。

メンタルやストレス耐性など、面接だけでは測定しにくい面に特化しています。入社後の育成やモチベーションに関するポイントを測れる点も特徴です。

面接時にチェックすべき点が分かるため、面接前に実施されることが多くなるでしょう。中途採用だけでなく新卒採用やコンサルでも活用されている検査です。

SCOA

『SCOA』は基礎能力の測定を重視して行われる適性検査です。基礎能力・パーソナリティ・事務能力を組み合わせて行われます。

パーソナリティと事務能力は企業によって組み込まないケースもありますが、基礎能力の検査は必ず実施されます。基礎能力の検査で測定されるのは、言語・数理・論理・常識・英語の5つです。

パーソナリティの検査では、職場における固有の行動パターンを測定します。事務能力の検査で測定するのは、実務に求められる照合・分類・言語・計算・読図・記憶の6領域です。

中途・新卒ともに多くの企業で導入されており、対策本も販売されています。SCOAを受けることになった場合は、特に基礎能力の検査についてしっかり準備しておきましょう。

適性検査に落ちる人の特徴

スーツで資料に記入する男性の手元

(出典) photo-ac.com

適性検査で評価が低くなる人には共通の特徴があります。以下に挙げる代表的な特徴を知り、実際に検査を受けるときの参考にしましょう。

極端な回答をする

適性検査で極端な回答をしてしまうと、検査で落ちやすくなります。物事に対する考え方に偏りが見られる場合、柔軟な対応に難があるのではないかと判断されるためです。

例えば、『自分の主張は曲げない』といったニュアンスの質問にすべて『よく当てはまる』と答えてしまうと、『周囲の意見を聞かない意固地な人』と思われかねません。

理想論に固執した回答も危険です。『うそをつくのは良くない』に全面的に賛成した場合、ある程度の建前も必要になる社会に馴染まない人だと捉えられてしまいます。

適性検査では基本的に正直な回答をするほうがよいものの、あまりにも極端な回答にならないよう微調整する必要があるでしょう。

回答の時間が長すぎる

適性検査に落ちてしまう人の特徴としては、回答にかける時間が長すぎることも挙げられます。そもそも適性検査は質問が多いため、時間がかかりすぎて回答できなかった質問があった場合、評価は大きく下がってしまうでしょう。

回答の時間が長すぎることで、うそをつかれているのではという印象を与えやすい点もポイントです。性格検査ではあまり深く考えず、基本的には素直な気持ちでスムーズに回答を進めていきましょう。

能力検査で回答に時間がかかりすぎると、単純に能力の低さを疑われかねません。正誤が分からない場合もとりあえず回答し、未回答の質問を残さないことが大切です。

回答に矛盾がみられる

適性検査の回答に矛盾が生じている場合は、検査で落ちやすくなります。「考え方に一貫性がない」「正直に回答していない」と思われるためです。

検査内の矛盾だけでなく、応募書類や面接との矛盾を生じさせないことも重要です。適性検査では立派な回答になっていても、応募書類や面接との間に矛盾があると評価は下がります。

適性検査での矛盾は、うそをつこうとした場合に生じやすくなります。できるだけ正直に回答していけば、矛盾は生じにくくなるはずです。ある程度の微調整はしつつ、適性検査では正直な回答を心掛けましょう。

性格検査の対策

手帳を記入する女性の手元

(出典) photo-ac.com



適性検査の性格検査を受ける際は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。性格検査に臨むときの対策について解説します。

自分の正直な気持ちを出す

適性検査の性格検査では自分の内面を掘り下げられます。できるだけ自分のことを良く見られたいと思うあまり、性格検査では要所でうそをついてしまいがちです。

しかし、自分の性格と乖離した回答をすれば、入社後に困ることにもなりかねません。「この人は実際はこんな性格だったのか」と思われてしまい、仕事や人間関係にも悪影響が出る恐れがあります。

検査結果だけでなく入社後の自分のためにも、性格診断では基本的にうそをつかないことが重要です。転職することだけを目的にせず、転職後の影響も考えて検査に臨みましょう。

事前に性格診断で練習する

性格検査の対策としては、事前に性格診断を受けてみるのもおすすめです。インターネット上で見つかる無料の性格診断ツールを試しに受けてみれば、どのような結果が出るのかを事前に把握できます。

あらかじめ性格診断ツールで練習しておけば、虚偽の回答をしていないかもチェックすることが可能です。性格診断の結果を踏まえて分析すれば、改善できそうな部分も見えてくるでしょう。

事前に性格診断を受けておくことで、テストのスピード感にも順応できます。何回か無料ツールで練習しておけば、本番でもスムーズに回答を進められるでしょう。

できるだけ素早く回答する

大半の性格検査では制限時間が設けられます。未回答の質問を残さないためにも、できるだけ素早く回答を進めていくことが大切です。

性格検査の種類によっては、30分の検査時間で200~300の質問に回答しなければならないケースもあります。それぞれの質問に対してじっくり考えていると、すべてを回答することが難しくなるでしょう。

未回答の質問があると『時間配分を上手にできない人』『自己分析ができていない人』とみなされやすくなり、評価が下がってしまいます。自分に合う回答がない質問も、自分に近い回答を素早く選ぶようにしましょう。

能力検査の対策

試験勉強のイメージ

(出典) photo-ac.com

ビジネスで求められる基礎能力を問われる能力検査は、性格検査に比べ対策を立てやすい検査です。できるだけ高い評価を得られるように、しっかりと事前準備を行っておきましょう。

基本の数式を復習する

適性検査の能力検査は、基本的に非言語系と言語系に分かれています。非言語系では中学・高校で習った問題が出題されるのが一般的です。

四則演算・2次方程式・分数・グラフなど、数学の基礎をあらためて学習し直しておきましょう。正確性だけでなく計算スピードを意識することも重要です。

言語系の質問では語彙力・文法力・読解力を問われます。非言語系と同様に中学・高校レベルの問題がメインです。

一般常識の問題では時事問題が扱われることもあります。新聞やニュースに目を通し、教養を深めておきましょう。

問題集で対策する

能力検査については問題集が数多く出回っています。汎用性の高い書籍だけでなく、検査の種類ごとに特化した問題集がある点もポイントです。

能力検査は出題傾向がある程度決まっているため、問題集を一通りこなしておけば有効な対策になります。実施される検査の種類が分かっているなら、専用の問題集で傾向を捉えておきましょう。

計算問題を長期間解いていなかった人にとっては、久しぶりに計算をするとかなりの時間がかかるものです。問題を解く行動に慣れるためにも、問題集に取り組んでおくのがおすすめです。

検査の対策をしっかりして本番に臨もう

勉強する男性

(出典) photo-ac.com

転職時の適性検査では、応募書類や面接では分からない要素を見極められます。その主な領域は性格検査と能力検査の2種類が一般的です。

性格検査と能力検査はそれぞれに有効な対策があります。適性検査の結果で不採用にならないためにも、しっかりと事前の対策を行った上で本番に臨みましょう。

小寺良二
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド小寺良二

若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
All Aboutプロフィールページ

著書:
美文字履歴書の書き方&マナー